23: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:10:52.03 ID:iX/HvtXE0
外はあいかわらず息詰まるほどな猛暑だった。
私たちはオフィス街のささやかな並木道を二人で並んで歩いて行った。
おしゃべりしながら歩いていると、この不快な暑さも幾分まぎれるような気がした。
一方、紗枝ちゃんは私ほど暑がっているように見えない。
京都の蒸し暑さに比べたらこれくらい大したことじゃないのかも、などと考えながら彼女の私服姿を眺めていたら、あることに気が付いた。
「その帽子、かわいいですね」
「そう? うちはあんまし被り物って好きやないんけど」
「日差し避けですか?」
「それもあるけど、一応あいどるやし、これでも変装しとるつもりなんよ」
変装!
私は思わず感心して「芸能人みたいですね」と口にした。
すかさず紗枝ちゃんが「なに言うてはりますのん」と突っ込んで、それから二人で小さく笑った。
「変装なんて、私ほとんど考えたこともなくて……」
「せやねえ、ゆかりはんはも少し自覚を持った方がええんかもしれんなぁ」
自覚、と言われてドキッとした。
紗枝ちゃんはそんな私の驚いた顔を覗きこんでいたずらに目を細め、
「こないなべっぴんさんが無防備に歩いてたら、あいどるやなくても声かけられてまうやろ」
とからかった。
実際、街を歩いている時に声をかけられることは珍しくない。
東京に来たばかりの頃はそういうナンパ行為をあしらう術を知らず、友達にずいぶん心配されたものだった。
アンケートに答えてほしいと声をかけられ、得体の知れないビルに連れて行かれたこともある。
あれは確か化粧品の購入契約だったか、そんな説明を受けた後、○○プロのアイドルをやっていると話すと途端に相手方の腰が低くなり、そのまま丁重に帰されたのだった。
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