39: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:27:45.57 ID:iX/HvtXE0
不安はなかった。
心構えはできていたはずだった。
緊張こそしていたけれど、うまくやってみせる自信はあった。
そういう意味では最初、私を気遣ってくれた紗枝ちゃんの方が不安そうに見えたくらいだった。
それでも私たちは本番直前の、カメラの回らない通しのリハだって問題なくこなしてみせたのだ。
今日はこのままいけばすぐ終わるだろう、そう思っていた。
実際、致命的と言えるほどのミスを犯したわけではなかった。
撮影は、多少遅れたとはいえおおむね予定通りに進んでいった。
私がしでかした多くの失態は、監督や紗枝ちゃんや他スタッフのフォローによってすぐ挽回できる程度のものだったし、それによってことさら誰かに責められたり、叱られたりということもなかった。
しかし、それでもやはり、現場の空気が徐々に失望と侮りの色に変わっていくのを意識せずにはいられなかった。
最初は、台詞が飛んだ。
今まで一度も間違えたことのないシーンで、ふと、頭が真っ白になり、固まってしまった。
次は、移動するタイミングを間違えた。
微笑むべきところでうまく表情を作れなかった。
何気ない会話で、急に、声が震えてしまった。
これまで一度もしたことのないようなミスが続き、やがて焦りをコントロールすることもできなくなった。
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