4: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 08:47:53.29 ID:iX/HvtXE0
そのようにして、私があのお屋敷に思いを馳せる時は、いつもそこにお母さまの面影を重ねて見ていた。
「お母さまって、まるで暖炉みたい。そこに座っていらっしゃるだけで、どんな寒い冬でも暖かくなるような気がする」
ある時、私がふと思いついた感想を呟くと、それを聞いたお母さまは可愛らしくお声をあげてお笑いになって、
「おかしな子。それじゃあお母さまは、夏になったら用済みね」
とすましたようにおっしゃるから、
「そんなこと……!」
と慌てて自分の言葉を打ち消して、それから、悲しくなった。
お母さまもお母さまで、私が傷ついたと見るや否や、困り顔で「冗談ですよ」などとおっしゃって、そっと私の手を取ったりした。
そうした動作の一つ一つまでもが、美しかった。
テーブルの上に投げ出した私の手のひらに、気付くとお母さまのお手が触れている。
遠慮がちに、まるで傷つきやすいガラス細工の表面を撫でるように、私の指を包む。
少しうつむき加減に私と繋いでいる手を見つめ、それからためらいがちにお顔を上げて、次に、私を見る。
そうすると、今度は私がうつむいてしまう番なのだった。
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