51: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:05:17.47 ID:iX/HvtXE0
「――――はい」
疲れた体をベッドから無理矢理起こして、暗がりの部屋をのそのそと歩いていく。
涙をぬぐい、扉を開けると、部屋着の紗枝ちゃんが廊下に佇んでいた。
「夜分遅くにごめんやす……寝るところやったん?」
「いえ、ちょっと横になっていただけです」
「……入っても?」
「ええ、どうぞ」
私は紗枝ちゃんを招き入れて、それから部屋の明かりを点けた。
一瞬、涙を悟られはしまいかと躊躇したけれど、なんだかもう、それすらどうでもよくなってしまった。
紗枝ちゃんを座らせて、私はベッドの上に腰掛けた。
私は沈黙を恐れてすぐテレビの電源を入れた。
バラエティ番組の賑やかな声々が空虚に響く。
夜は九時を回っていた。
「今日はほんまに、お疲れさんでした」
「紗枝ちゃんこそ、お疲れ様でした。私なんか、いろいろとご迷惑をおかけして……」
私はそう言いながら彼女の方へは顔を向けず、代わりにテーブルの足なんぞをぼんやり見つめていた。
そうしていると、また、鼻のあたりがツンとして、顔が熱くなった。
みっともない、恥ずかしい、そう思うと余計、自分が惨めに思われてきて、これ以上、声を出したら本当に泣いてしまいそうだった。
視界の隅で、紗枝ちゃんが静かに立ち上がるのが見えた。
私は部屋の隅の一点を見つめたまま、彼女が隣に腰掛けるのをベッドの揺れる動きで感じた。
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