55: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:08:46.71 ID:iX/HvtXE0
まぶしい月明かりに照らされた夜の海のように、漆黒に輝いていた。
その深い暗闇の奥底に、未知の、巨大な気配を湛えながら、何も知らない小船を波に揺らしている二つの瞳……
それが彼女の正体なのだった。
私はもはや逃げ出すことも叶わず、甘い死を願って身を投げる女のように、彼女の中にどこまでも沈んでいった。
「ゆかりはんの目、ほんま、綺麗やなぁ……ずっと見ていたいくらい」
彼女はそう言ってさりげなく私の手を自身の胸にあてがった。
柔らかい服の上から小刻みに心音が伝わる。
「分かる? こう見えてうち、けっこう緊張しとるんよ。あんましゆかりはんが綺麗やから……」
彼女は悪意のある笑みを浮かべて私をそこへ引きずり込もうとした。
あの時と同じように、私の心はたったひとつの感動に支配され、そしてついに私は、自分のすべてを彼女に預けたいという衝動の他には何も考えられなくなった。
「もう、欲しがりさんやなぁ。……ほな昼間の続き、しよか……」
私をじっと見つめたままの紗枝ちゃんの顔が、ゆっくり迫って来たと思うと、次の瞬間、私たちはキスをしていた。
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