65: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:19:49.17 ID:iX/HvtXE0
ただひとつ、不安があったとすれば、私たちの秘密を誰かに悟られはしまいかということだった。
私たちは表向きにはいつもと変わらず、気の合う友人同士を演じていた。
あるいは勘の鋭い人ならもしかしたら、私たちの間に時折交わされるさりげない目配せや意識的な距離感から何らかの気配を感じ取ったかもしれない。
とはいえ、勘繰られたり、察せられる程度ならまだ誤魔化すことはできる。
問題だったのは、紗枝ちゃんが時として人目につくような場所でさえいじわるになり、私たちの努力を無に帰すような危険へと自ら飛び込もうとすることだった。
例えば、私たちが二度目のロケに赴いた際、ホテルのロビーで唐突に彼女にキスされたことがあった。
その時のロケは四日間の泊りがけで、私と紗枝ちゃんはツインルームで一緒に寝泊りしていた。
それなのに彼女は、わざわざ人目につきやすい場所で偶然を装うように私の唇を盗み、挙句、私が慌てふためく様子を見て楽しんでいた。
私をからかうために、あるいは私たちの愛を試すために、しばしば彼女はそうやって無謀とも勇敢ともつかない賭けをした。
時には変装しているのを良い事に街中で堂々とキスをせがむことすらあった。
私はそのたびに困り顔をして彼女を暗に非難しながら、かと言ってはっきりと拒むこともできず、結局なし崩し的に受け入れてしまうのだった。
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