水本ゆかり「人形の檻」【ゆかさえ】
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68: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:21:56.53 ID:iX/HvtXE0

「うちが死んだら、ゆかりはんも一緒に死んでくれる?」

ある夜、ベッドの中で突然、紗枝ちゃんが言い出した。
蒸し暑い夜で、私たちは少しばかり汗をかいた後だった。

私は暗闇の天井をぼんやり見つめながら、その声色に込められた意味をゆっくりと噛み締めて、

「うん」

と答えた。

すると彼女は何も言わずに私に抱きついてきて、強引に自分の方へと振り向かせた。

なんだろうと思っていたら、彼女はぐずぐずと鼻をすすっていて、どうやら泣いているらしかった。
私が、どうしたの、と驚いて尋ねても、彼女は無言のまま、抗議するように私の胸へ、その涙に濡れた目をぎゅっと押し付け震えてばかりいた。

これが彼女なりの甘え方なのだ、と思った。
だから私は、彼女が語り出さないうちはそれ以上、自分から理由は聞かないことにした。
それに、聞いたところで素直に答えてくれるような彼女でもなかった。

その頃、すでに私たちは言葉や会話によって心を通わせることにあまり関心を持たなくなっていて、不完全な、取り繕ったような愛の言葉を囁くよりかは、お互いの沈黙と視線と肌とを、その未分化な身体をそのまま交わらせる方がずっと私たちの愛の形にふさわしい、そんな風に考えるようになっていた。

この考えは果たして愚かな思い上がりだろうか?
信頼と甘えを履き違え、愛と恋を区別することのできない未熟さが私たちを怠惰な安楽へと落ち込ませている……確かに、それもひとつの見方かもしれなかった。
あるいは私自身、彼女の本当の心を知りたいと願っていながら、一方ではその正体を怖れていたせいかもしれなかった。



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