69: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:22:32.83 ID:iX/HvtXE0
が、どちらにせよ泣いている彼女に対して私がしてあげられることと言ったら、物言わぬ人形のようにじっとし、彼女の欲しがるままにこの肉体を差し出すくらいなものだった。
けれど私にはそれだけで十分だったのだ。
自然に湧き出る水のように望むまま彼女の渇きを潤し、そうして無条件に自らを与え続けながら同時に、私自身、彼女に何かを与えられてもいたから……。
やがて紗枝ちゃんは私の腕の中で眠ってしまった。
私は彼女を起こしてしまわないよう、ゆっくりと手を伸ばして冷房の温度を少し下げ、それから足元の薄い羽毛布団を引っ張ってきて彼女の肩へ掛けた。
微かに熱を帯びた彼女の頭が私の鼻先にシャンプーの香りを漂わせている。
子猫のように儚い寝息が私の胸元で泳いでいる。
窓の外、カーテンの向こうでは巨大な街が、低い唸り声を上げながら焦げ付いた夜の底に沈んでいる。
私たちの夏休みがもうすぐ終わる。
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