78: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:39:53.06 ID:iX/HvtXE0
怒鳴りつけられたような気分だった。
思考力を奪われ、言葉にならない声が私の喉から搾り出された。
私の心臓はもはや彼女の手のひらの上にあり、まるで命乞いをするようにどくどくと波打っていた。
あとほんの少し、その手に力を込めさえすればいとも簡単に握り潰されてしまうような儚い命……
いつの間にか私を見つめ返していた彼女の、その凶器のような光を湛えた瞳が、私にそんなイメージを思い起こさせた。
この時、思わず私が彼女から目を逸らしてしまったのはけっして彼女の怒りと罰を恐れたためではない。
ましてや気まずい沈黙をごまかすためでもない。
私の心は奇妙な興奮に包まれていた――かつてこれほどまでに彼女の正体に近づいたことがあっただろうか?
しかも、彼女の情熱と殺意に濡れた瞳の美しさといったら!
そこにあるのは怒りでも悲しみでもなく、憐れみと哀願に傷ついた痛々しい欲望だった。
私はようやく理解した……いや、実はずっと前からすでに分かっていたことだった。
彼女はただいたずらに私を傷つけようとしていたのではなく、そうするより他に私を求めるすべを知らないのだ。
だから私は彼女から目を逸らさずにはいられなかった、その弱さがあまりにも愛おしくて哀れだったから。
もしこのままお互い見つめ合っていたらきっと私は自らの命をも惜しまず彼女に捧げてしまっただろう、この愛と喜びの全てを伝えるにはそれしかないと思ったから。……
が、それも一時の錯覚にすぎなかった。
やがて私は胸の奥からこみ上げてくる興奮をとうとう押さえきれず、再び彼女の視線と向き合った。
しかし彼女の漆黒の瞳に貫かれても私は死ななかった!
私が夢見ていた甘い死の運命は所詮、ただの憧憬でしかなかったのだ。
ところが私の中に芽生えだしたこの激しい感情は宿主が死の願いを果たせなかったために行き場を失ってしまい、結果として私の身体を衝動に任せるまま突き動かした。
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