80: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:41:55.13 ID:iX/HvtXE0
――だめ、違う、こんなこと――私は心の中で叫んでいた。
しかしそれとは反対に、私の腕は紗枝ちゃんの背中をしっかり抱いて離さなかった。
混乱と後悔の渦の中で、もうひとりの私が叫んだ
――紗枝ちゃんを手放したくない。彼女とひとつになりたい。それ以外は、何もいらない――
胸が張り裂けるような思いだった。
そしてこの苦しみから逃れる方法はただひとつ、彼女のその眠りのように優しいキスを受け入れることだけだった。
私は息をするのも忘れ、腕の中で紗枝ちゃんの血がどくどくと波打つのを感じていた。
数秒、数分、もしかしたら、永遠……どれくらいの間、私たちはそうしていただろう?
夜の向こうで、雷光が走った。
私たちはいつの間にかキスするのを止めていた。
そしてじっと向かい合ったまま、お互いの瞳の中を探るように見つめていた。
「…………」
どちらかが、何かをしゃべったらしかった。
しかしそれは雷鳴にかき消されて聞こえなかった。
私は――あるいは紗枝ちゃんは――二人にしか分からないような合図の微笑を浮かべて、それからもう一度、お互いの唇に小さく触れるだけのキスを交わした。
穏やかな……そう、私たちにはそれで十分だったのだ。
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