水本ゆかり「人形の檻」【ゆかさえ】
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81: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:42:41.28 ID:iX/HvtXE0

帰り道、私たちはひとつ傘の下、半身を雨に濡らしながらぴったりくっついて歩いていた。

「明日の週刊誌が楽しみやなぁ」

出し抜けに紗枝ちゃんが言いだした。
何の話だろう、そう思って私は無邪気に尋ねた。

「何か、気になるニュースがあるの?」

すると紗枝ちゃんはしばらく間を置いて、

「……ゆかりはんは呑気でええどすなぁ」

と言ったきり、質問には答えてくれなかった。

紗枝ちゃんも週刊誌なんて読むんだ、私はそんなことを考えながら、雨粒が跳ねる道を彼女の歩幅に合わせて歩いていた。
やがて赤信号に捕まって、傘を手にぼうっと雨夜のビルを見上げていたら、唐突に彼女の言っていた事の意味を理解して、さあっと血の気が引いた。

「私たち、記事にされちゃうのかな……?」

隣で、彼女がぷっと吹き出した。

「じょーだん、さっきのは冗談どすえ。うちらみたいな半端もん、すくーぷしたって誰も関心持たれへんやろ」

彼女はそう言うけれど、やはり私は不安だった。

もちろん、覚悟していたことではあった。
でも、いざ世間に私たちの秘密が知られてしまうことを考えると、自分の行動が果たして正しかったのか、自信が持てなくなる。
それがたとえ限られた範囲のごく狭い世間であっても……

いや、むしろ私が本当に恐れていたのは、世間などという曖昧なものでなく、もっと具体的な、私のすぐ身近にある何かではなかったか?
けれど、それが一体何だったか、私はすぐには思い出せなかった。



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