水本ゆかり「人形の檻」【ゆかさえ】
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86: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:47:36.98 ID:iX/HvtXE0

それから私たちは雨が上がってすっかり涼しくなった十月の夕暮れを二人、歩いて買い物へ出かけた。

紗枝ちゃんが夕飯を作ってくれるということで、煮物やら、魚やら、それらに必要な食材を買い揃えたあとは、少し贅沢な、普段は買わないような高いお菓子を買って、子供みたいにはしゃぎながら寮に戻った。

帰宅して、さっそく紗枝ちゃんの部屋のキッチンに食材が並べられた。
最初は私も手伝おうとしたけれど、彼女があんまり手際良く調理していくので、やがて私が手伝えることもほとんど無くなってしまい、手持ち無沙汰になった私は最終的に、彼女の料理姿を後ろからじっくり観察して時間を潰すことにした。

「そないじろじろ見んといてやぁ。やりにくくてしゃーないわ」

言いながら彼女は笑っていた。


出来上がった料理は、それはもう見事だった。
湯葉と豆腐の澄まし汁や、南瓜の煮付け、だし巻き玉子、秋刀魚の塩焼き、それから、金平、おくらの和え物、茄子の揚げ浸し、小早川家秘伝の漬物なんてものまで、食べきれないくらいの食事が小さなちゃぶ台に並べられた。
それで私が、盛り付けの美しさや色彩の豊かさにいちいち感銘を受け、紗枝ちゃんすごい、などと褒めちぎっていたら、彼女は「作りすぎてもうた」と照れくさそうに言って、

「はよ食べまひょ。働いたらお腹すいてきたわぁ」

などと誤魔化すようにせかせかと食べ始めてしまうのだった。
そんな彼女のいじらしい姿を見ていたら、なんだかもう、それだけで胸がいっぱいになって、私はつい、箸を持った手を止めて、彼女に見惚れてしまった。

食べひんの? 彼女が不安そうに尋ねる。
私は、ううん、と首を振って、写真、撮ってもいい? そう聞くと、彼女も喜んで携帯を持ち出して、二人で記念写真を撮った。

それからあとはもうひたすら、おいしい、おいしいと言いながら、目の前の料理をどんどん平らげていった。
私好みの濃い味付けで、本当においしかったから、最後にはすっかり満腹になってしまって、結局、デザートは明日食べようということになった。



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