90: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 13:03:02.45 ID:iX/HvtXE0
それから私たちは、手ごろなお店でランチを摂ったあと、買い物をしたり、スイーツのお店を巡ったり、商店街を端から端まで練り歩いて、気付けば三時間近くもショッピングを満喫したのだった。
実際に買ったものはそんなに多くなかったけれど、私たちは学校も勉強も、アイドルのお仕事の事も綺麗さっぱり忘れて、二人きりのデートを思う存分楽しんだ。
そうして私たちはすっかり満足した気になって、このあと何しようか、などと話しながら、通りから少し外れた小さなカフェで休憩していた。
「お土産、どないしよか?」
独特な香りの苦いコーヒーをちょびちょびと飲んでいたら、紗枝ちゃんが何気なく尋ねてきた。
私はふと顔を上げ、店内を見渡した。
窓際に座っている私たちの他には二組の客が、ここから少し離れたテーブルに座っている。
「それなんだけど、私、紗枝ちゃんのプロデューサーさんにも何か買っていった方がいいような気がする」
「へ? どうして?」
「だって、この前のことで迷惑かけちゃったし……」
「そんなん、気にせんでええのに」
「……でもやっぱり、きちんと挨拶に行った方がいいと思う。私、紗枝さんとお付き合いさせていただいてます……って」
ちょうどコーヒーカップに口をつけていた紗枝ちゃんが、急に何か飲み込んだような奇妙な声を上げた。
と思うと、苦しそうに自分の胸をとんとんと叩いて、
「けほっ、けほっ……もう、笑わせんといてや!」
そう言ってテーブルナプキンを口にあて、涙目になりながら笑いだした。
私は首をかしげて、
「私、おかしなこと言ったかな?」
「ふ、ふふっ、いや、それやとまるで両親に結婚の挨拶しに行くみたいやん、あ〜おかし」
言われてみれば、と思ったけれど、私は紗枝ちゃんがなぜ笑っているのかは分からなかった。
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