94: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 13:06:54.79 ID:iX/HvtXE0
お風呂から上がって夕食をとったあと、しばらく部屋でだらだらとテレビを見ていた。
そうして私が座布団の上に横座りしていると、ふいに紗枝ちゃんがごろんと転がって私の膝を枕にした。
今日ばかりは彼女も、普段の緊張を解いて私に甘えきるつもりらしかった。
私はそうして猫のようにちょっかいをかけて遊びだした彼女の、さらさらした髪を優しく撫でつけながら、いま流れているニュースが気になって仕方がないといった風でテレビに見入っていた。
私たちはそれから寝る前にもう一度、温泉へ入りに行こうとした。
が、今度は私たちの他にも客人が一組、すでに浴場に入っていたらしかった。
脱衣所に着くと何やら楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
「あっちで少し時間潰しとこか」
私たちは引き返して旅館入口にあるロビーの椅子に並んで座った。
卓球台でもあればええのになぁ、などと彼女がぼやくのをよそに、私は近くに置いてあった雑誌棚に何気なく手を伸ばした。
観光ガイドブックや婦人雑誌、絵本、それらの間にふと薄い小冊子が紛れているのを発見して、見てみると何かの付録らしい間違い探しの本だった。
最初は、暇つぶしにやってみよう、くらいの気持ちだった。
ところが間違いを二、三見つけた辺りから急に難しくなって、突然、全く先に進めなくなった。
しばらく悩んで、これ、絶対おかしいよ、と紗枝ちゃんにも見せてみたら、彼女はふふんと鼻を鳴らし、うちに任せとき、などと言って余裕そうにイラストを眺めだした。
彼女の笑顔はそう長く持たなかった。
その表情はやがて真剣に、ついには困惑と恐怖の色に変わっていった。
彼女は、おかしい、おかしい、と呟きながら、もはや鬼気迫る様子で間違い探しに集中しだしていた。
一方、私は早々に匙を投げ、彼女が熱心に挑む姿を横からただ眺めていた。
「ね、紗枝ちゃん、お風呂……」
「待って、あともう少し……」
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