92:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 22:18:13.42 ID:8Bqh101l0
視線を下にやると、ラフィが赤い瞳を爛々と輝かせてこちらを見上げていた。
「ナイトメアの感覚は、人間には分からない。理解を促すだけ無駄だと思う」
でも、と言いかけたアリスの視線を追って床を見て、ジャックは問いかけた。
93:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 22:19:32.06 ID:8Bqh101l0
ジャックは考え込んでから手を伸ばし、アリスの頭を優しく撫でた。
「もう大丈夫だ。遺跡に行く前にはどこにいたんだい?」
「それが……どうしても思い出せなくて……」
94:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 22:21:33.06 ID:8Bqh101l0
ジャックは息をついて、立ち上がってからアリスの隣に腰を下ろした。
そして彼女の小さな頭を抱き寄せて胸に引き寄せる。
びっくりしたような顔をした少女に、ジャックは言った。
「少しこのままでいるといい。安心するまで」
95:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 22:22:43.17 ID:8Bqh101l0
「ここは『ハッター』の領地だよ。その中でも、十五番目のシェルターに当たる」
「ハッター……?」
「私達が『ナイトメア』と呼んでいる悪魔のことだ」
その単語を聞いて、アリスは息を呑んだ。
96:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 22:23:35.17 ID:8Bqh101l0
「ナイトメア……って、何ですか?」
問いかけたアリスに、ジャックは少し迷ったようだったが答えた。
「それが分かったら、私達も少しはどうにか動けるんだがな……」
97:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 22:24:40.15 ID:8Bqh101l0
目の疵を指でなぞり、ジャックは呟くように言った。
「私の妻と娘も、ナイトメアにやられた。目の前でね……切り裂かれて死んでしまったよ」
アリスは、細切れになり血を撒き散らした兎を思い出した。
98:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 22:25:18.69 ID:8Bqh101l0
「記憶喪失……と言っていいのかな。そんな状態の君に頼むのは気がひけるんだが、もう少ししたら一緒に来て欲しい」
「どこにですか……?」
不安そうな顔をしたアリスに、彼は続けた。
99:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 22:26:05.00 ID:8Bqh101l0
◇
太陽が沈み、あたりを暗闇が包んだ。
生き物の気配がない森には、黒い水が流れる音と、樹木が風になびくザワザワとしたノイズ以外響いていない。
100:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 22:26:48.25 ID:8Bqh101l0
その中を足音も立てずに、俯いた大勢の兎人形と、頭が異様に大きな醜男が歩いていた。
男は鼻歌を歌い、手に持ったステッキを振り回しながら歩いている。
右目の義眼がカチ、コチ、という音とともに時計回りに回転しあらぬ方向を向いている。
そこで彼は、懐から
101:1 ◆58jPV91aG.[saga]
2021/07/19(月) 22:27:37.67 ID:8Bqh101l0
軍隊のように、ボタンの目を赤く光らせた兎達も歩みを止める。
男は懐から金色の懐中時計を取り出し、蓋をパカリと開けた。
そこから、妙にざらついた女性の声が響く。
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