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真・恋姫無双【凡将伝Re】4

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58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/12/28(土) 11:06:13.53 ID:3AfxkL/70
強い爺ちゃんで真っ先に浮かんだのは朝倉さんちの宗滴三かな…そのお方でも撲滅できなかった宗教狂いもマジパネエが
59 :青ペン [sage]:2019/12/30(月) 00:14:59.93 ID:lSoQxd+Mo
個人的には水野勝成かなぁ…
↑30代暴れまくり60でもパネェ
60 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2019/12/30(月) 21:18:30.89 ID:iBLF60Rs0
大久保彦左衛門は実際の印象ないです
上泉信綱が最高にして最強というイメージ

個人的には、佐久間象山と大村益次郎が生きてたら歴史がそれなりに変わったと思っています
ですが、どっちも人格がアレなのでどっかで暗殺不可避かなあって

でも万次郎は酷使したいし江川英龍は過労死せんようにしたい

そうなったらどんな世界になったかを観測したいっすなあ
61 :赤ペン [sage]:2019/12/31(火) 22:17:06.57 ID:lLGJ+Qr00
今年もあとわずか…来年もよろしくお願いします
62 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/01(水) 06:56:30.58 ID:lDibUuBz0
明けましたおめでとうございます!
本年もよろしくお願いします。
今年での完結は難しいですが、なんとかかんとかしたいです。

蕪農家として独立ワンチャンあると思ってます。
頑張るぞいっと。
63 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/02(木) 14:17:46.55 ID:J2kZHEdW0
ようやくあっちの予約投稿終わったわ
しんどかったすわ
明日から頑張ろうそうしおう
64 :俯瞰者 ◆e/6HR7WSTU [sage saga]:2020/01/03(金) 12:24:50.12 ID:bWmA4woE0
謹んで新年の喜びを言上仕ります(明けましておめでとうございます)

兼業蕪農家としてアドバイスすると、「数こそは力」「忙しなく動くな」「最低利益は常に確保せよ」これですね。
蕪専業なら、撤退資金は絶対必要ですよ。蕪仲買は手数料が命ですんでとにかく動かそうとしますのでね、それもばかにならない。
撤退資金の温存先なら日本国債かなぁ。
そういや専門系にしかニュースになってませんが、例のリクシル騒動。あれで結構損食った人いるとおもいますよ。
私も漬けてますが珍しく追証払いましたね。乱高下が一番迷惑。

さて今年はまずは新しい命に全力です。おとっつあんになるんだし、いやならせてほしいっす(超願望)
年末に靖国の御霊にすがりましたし、新年は氏神様に三回頭下げましたし、なんなら伊勢の御二方にもお願いしておきましょうかね。
「子供の顔が見れたら死んでも」で嫁に思いきり引っぱたかれましたwwwそりゃそうか。

本年もよろしくお願い致します。
65 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/03(金) 19:41:37.76 ID:LwXD1POj0
>>64
明けましたおめでとうございます!本年もよろしくお願いします。

>兼業蕪農家としてアドバイスすると
やったぜ

>「数こそは力」「忙しなく動くな」「最低利益は常に確保せよ」これですね。
元手がないとリターンがアレっすからねえ
動きは、それなりですかねえ。かつては数百円の利益でキャッキャしてましたw
いやまあ、ランチ代稼げたらええやん!みたいなw
離角が一番難しいですね。上への握力は割と弱いっすわw

>蕪仲買は手数料が命ですんでとにかく動かそうとしますのでね
基本的に自分との戦いなので、卸さんが凸してくることはめったにないですね。
禿Gの時には2回ほどありましたが、その後上司さんからお詫びの連絡がありましたな
あれは空売りでインしたかったw

>例のリクシル騒動
鹿サポなので情報はすっごく見てました。あれはひどい事件だったね(日暮感)
久美子さんHDよりはマシかな?屋台骨まではいかへんかったから。あ、手は出してないです。
まあ、損ぶっこいてるのも多いですけどね、街のホットステーションとかレモン堂とか!
鉄は国家なりはどうしたもんかなってw

>さて今年はまずは新しい命に全力です。
ここは本当にね。本当に。こればっかりは。。。


>嫁に思いきり引っぱたかれましたw
こういうさりげない惚気が素敵なご夫婦だと思います。
健やかなれ。

本年もよろしくお願いします。
66 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/03(金) 21:50:07.96 ID:LwXD1POj0
では今年もよろしくお願いしますということで投下します
67 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/03(金) 21:50:35.35 ID:LwXD1POj0
董卓、叛す。そして何進、馬騰、朱儁を誅滅。
遺勅により今上帝を廃位。弘農王とする。
弘農王とは劉協の陳留王と比較し、相当位の低い地位である。
劉弁はこれに異を唱えず、大人しく皇位を譲った。
そして至尊の座に就いた劉協により、董卓は相国となり絶大な権力を手にした。漢王朝をその手に握ることになったのである。

その報せは衝撃を以って中華を駆け巡る。

最も衝撃が大きかったのは間違いなく袁家であろう。先帝たる、現弘農王への輿入れに向けて調整をしていた矢先の変事である。
これで動揺しない方がおかしい。
それを何とか抑えきっている沮授と郭嘉の能力と尽力は賞賛されるべきであろう。無論、あらゆる支援を行っていた張紘にもそれはあてはまる。
今のところ袁家の首脳の行方については情報が途絶えている。死んだとも、捕えられたとも伝わってはいないのだが。

「……そろそろ、抑えきれないかもしれません」

常ならば涼やかな笑みを浮かべる沮授が、流石に疲労困憊といった風に呟く。

「いや、沮授はよくやってるぞ。もう董卓の謀反から三か月だ。これまで表立った動きがなかったってのは、すげえことなんだぞ」

張紘の言葉は本心ではあるが、慰めにしかならない。
袁家の今後は誰が担うのか。水面下では動きが本格化している。留守居役が沮授であるのもそれを助長するのだ。
袁家の権力争いからは身を遠ざける彼の姿勢(スタンス)は、能あっても欲なしと好意的に取られていた。彼はあくまで袁家の補佐に徹するというのは袁家の共通認識である。
だから、逆に、である。
誰が袁家を牛耳っても、沮授さえ抱き込めば。と思う輩が出てくる。無論それを座視する沮授ではないのだが、袁家の後継争いに口を出すわけにもいかないという二律背反(ジレンマ)。

「こうなると、いかにも袁胤様の件は痛かったですね……」

まさに痛恨、である。
68 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/03(金) 21:51:02.44 ID:LwXD1POj0
袁紹の予備として袁逢は袁術を産んだ。だがその袁術が輿入れとなれば予備がいなくなってしまうのだ。
その座には袁胤があるはずであった。であるからこそ不穏な動きがあっても袁胤は誅されなかったのである。
李儒の一手はこの上なく袁家に深刻な影響(ダメージ)を与えていたのだ。

「幸い、景気はいい。そのおかげで民の動揺はない。
ほんと、それだけが救いって感じかなあ……」

不穏な空気も、目前に迫っていた黄巾の脅威に比べれば雲の上の出来事。目前の好景気により袁家領内の民は落ち着いている。
黄巾賊残党は半ば流民と化して袁家領内に流れ込む。それを養うために大規模な公共工事――大規模農場や鉱山、橋梁建設に街道や港湾整備他多数――が計画、実行される。その需要に応えるために各種生産活動は全力(フル)回転。
それを支えるための財政出動があるが、袁家の金蔵は揺るぎもしない。
治安出動のための軍備の強化も相まって、袁家領内は空前の好景気に沸いていた。
それがあるから、これまで袁家内部の蠢動も抑えられていたのではあるが。

「流石にそろそろまずいですね。
いや、つい数か月前までは袁家は盤石と思っていたのですが……」

肩を落として盛大にため息と弱音を吐く。張紘の前だからこそであろう。
張紘も深く懊悩の表情を浮かべる。ぐったりとした様相の親友にかける言葉もない。

そんな二人を黙って見ながら茶を淹れ、甲斐甲斐しく茶菓子を出していた赤毛の女性――赤楽――が呆れたように口を挟む。

「本当に君ら二人だと辛気臭いな。
あの暢気かつ軽佻浮薄かつ女好きであれこれ厄介ごとを呼び込む御仁がいないと見てられないのだな」

そしてつかつかと歩みを進め、張紘の頬を引っ張り、弾く。
盛大に。

「い、痛いぞ?!」

恋人の抗議の声に赤楽はフン、と呆れたように鼻息を一つ。

「当たり前だろうが。痛くしたんだからな。
 目が覚めたかな?ああ、それは結構。
そもそもだ。あえて聞こうか。これは本気で疑問なのだがね」

やれやれ、といった風の仕草から問う視線は炎。
それが二人を射貫く。

「君らはあの御仁がこんなことで儚くなるなんて本気で思っているのか?」

それは決定的な言。これまで敢えて口にしなかったもの。

「これは手厳しい。確かに二郎君の安否についてはあえて口にしていませんでしたとも。
 ですが、それは最悪を想定していたからこそです。
 備えはしています、が……。
 いえ、これは甘えというものですかね」
「よせやい、おいらだって認めたくなかったのさ。
 それは、思っても、言ったらそうなっちまうんじゃないかって、な」

やれやれ、とばかりに赤楽は肩をすくめる。

「便りのないのは良い便り。あの御仁がこんなことでくたばるはずはないさ。
 君らは義兄弟なのだろう?君らが信じてやらなければ誰が信じるというのだ?」

ニヤリ、と口を歪ませる麗人に沮授と張紘は呆然とする。彼女は最悪に備えろ、と言ったのではなかったのか。
そんな二人の表情を愉快そうに見て再び口を開く。双眸は力に満ち、碧眼は炎すら纏いそうで。

「あの御仁、ひいては仕える主君がこんなことでどうにかなるはずはないだろう。
 考えても見ろ。まあ、袁紹殿の豪運については語るに及ばないよな?
 ここではあの御仁についてだけ語ってみようか」

艶然と微笑む。楽しそうに。
69 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/03(金) 21:52:47.10 ID:LwXD1POj0
「たまたまお忍びで市場に来ていたらたまたま居合わせた張紘と私に出会ってその場で口説き落とした。
 たまたまふらりとこれまた街中を歩いていたら李典、楽進、于禁という俊才に出会い、登用した。
 たまたま立ち寄った料理屋で知り合った典韋殿を、たまたま立ち寄った町で見かけ、そのまま登用した。
 武者修行と称して出奔したら旅先で皇族に連なる劉璋殿を助け、誼(よしみ)を結んだ。
 更にその道中で程立、趙雲、郭嘉なぞという傑物が野盗に襲われている現場に巡りあって、なんだかんだで全員登用した。
 ――こんなに天に愛されている御仁がこんなことで果てるわけがないだろう」

文句あるか?とばかりに、どちらかと言えば薄い胸を張る赤楽に張紘は苦笑する。

「いや、すまねえ。確かに二郎は生き汚いからな。こんなことで死ぬはずはないや。
 おいらとしたことがどうにもいけねえや。随分弱気になってたみたいだ」

「そうですね。二郎君ならばそれこそ何をしてでも同行されている方々を無事に送り届けるでしょう。
 いや、女は強しと言うべきですかね?いや、これは妬いてしまいそうですよ、張紘君」

言いながらも沮授は舌を巻く。時折見せていた明敏さに加えてこの事態においても全く揺るがない。
彼女であれば袁家内部においても柱石となれるであろう。間違いなく。

「クク、沮授殿。
よしてくれよな。これは岡目八目という奴さ。私にとっては結構他人事だからな?
 おのずと見える景色も違うというだけさ。
 ウン、そうだな。もっと言えば一度死んだような身さ。だからあれこれ好き勝手に言えるってだけ。そしてね」

――身一つで惚れた男一人ならばいかようにも養ってみせるさ。

そんな、無言の悪戯っぽい目線を受けて沮授は苦笑する。

「そうですね。僕らの動揺。それはたちまちに波及してしまうでしょう。そうですよね。
 いや、今日はご馳走様でした。色んな意味でね。
 二郎君が帰ってきたときに余計な気苦労を背負わせないようにするとしましょうか。
 ええ、本当にご馳走様でした」

訪れた時と同様に、にこやかに。しかし含んだ表情は変わって明るく、沮授は席を立つ。

「なに、漢朝全てを敵に回してもお釣りがくるほどですよ。気楽にいくとしましょう」

それも全てはあの男が無事であったならば、である。
言外のそれを理解して張紘も笑う。

「二郎は楽をしたがるからなあ。だったら先回りして徹底的に楽をさせてやるってのもいいな」

「それはいいですね。
 いつも二郎君には驚かされてばっかりですから、たまには僕らが驚かせてやるのもいいかもしれません」

「その時の二郎の顔、見てみたいもんだな。
 いやあ、楽しみが増えたな」

軽口を叩く二人を見て赤楽は暢気にむしゃり、と茶菓子を頬張るのであった。
70 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/03(金) 21:54:01.09 ID:LwXD1POj0
本日ここまですー感想とかくだしあー

タイトル案
「その頃の南皮 男子会編」

いまいちなので、もちっとおセンチなのオナシャス。
71 :青ペン [sage]:2020/01/04(土) 03:19:21.77 ID:o6ZV7E2Fo
>>70
新年乙ー。
んー、そうね。
【時の奔流に抗うは龍の担い手】
かなぁ
72 :赤ペン [sage saga]:2020/01/04(土) 16:48:56.35 ID:9aX5fMzJ0
乙でしたー
>>69
>>いや、女は強しと言うべきですかね?いや、これは妬いてしまいそうですよ、張紘君」    間違いでは無いですがちょっと【いや、】と言いすぎかな?
○いや、女は強しと言うべきですかね?いやはや、これは妬いてしまいそうですよ、張紘君」  それとも先の方を【いやはや……女は強し】にしたほうが良さげかな?

今回はペケマーク付けるような部分は無かったのでムリクリ一か所
袁紹様以下主要な人員の生死不明は痛いよね…雷簿に付き従った100人足らずもその全員が次代の幹部候補だったし
むしろ幹部になったら迂闊に外に出れなくなるから今のうちに首都の観光しとこう、みたいな感じだったのかもしれん
それにしてもこうして見るとやっぱり違和感…怠け者の劉弁をわざわざ廃さなくてもそのまま何進の後釜に座っても良かっただろうに
劉協に配慮する必要がどこの誰にあった?逆に劉弁が病気を拗らせなかった(を殺さなかった)理由は?あの3人は殺すしかなかったといえばその通りだけどそれで言うなら求心性のある劉弁も殺すしかなさそうだけど
この辺考えるとあの怠け者も結構面白いことになりそう
73 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/04(土) 19:25:58.98 ID:5YCEdtDt0
>>71
どもです。

>【時の奔流に抗うは龍の担い手】
かっけえ
時の奔流はいいですね。これは使うかもですよ本当に!ありがとなす!

>>72
赤ペン先生いつもありがとうございますー!

>今回はペケマーク付けるような部分は無かったのでムリクリ一か所
滅茶苦茶久しぶりですねそれってw
頑張るぞいっと。

>袁紹様以下主要な人員の生死不明は痛いよね…雷簿に付き従った100人足らずもその全員が次代の幹部候補だったし
割とこれはマジでしんどい
マンチェスターUのボビーさんが味わったアレよりしんどいかもしれないっす

>むしろ幹部になったら迂闊に外に出れなくなるから今のうちに首都の観光しとこう、みたいな感じだったのかもしれん
それはあるかもしれません。幹部候補生の交流もかねた、あれか、修学旅行的な!

>それにしてもこうして見るとやっぱり違和感…
ご考察楽しみにして、ますーw
太陽と月のあれ、好評でしたよ!
74 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/04(土) 21:32:34.44 ID:5YCEdtDt0
郭嘉は手元に届いた書付にため息を漏らす。
どこをどうやったのか、厳重に情報封鎖されている洛陽からの便りである。送り主は、彼女の親友。

「反董卓、連合。ですか……」

その五文字のみが記されていた書付。巧妙に隠蔽されたそれにより、親友の無事を知る。
そして苦笑する。大きく出たものだ、と。
今の袁家にそのような余裕はない。内部の権力闘争を押さえるのに精いっぱいなのが現状。
矢継ぎ早に出された大規模投資計画により、官僚の業務負荷を増大させて暗躍できぬようにするのもそろそろ限界であろう。
そもそもの根幹に対しては何ら対策を打てていないというのが実際のところである。

……こうなると郭嘉が重用されるようになった経緯、後ろ盾であった存在――無論紀霊その人である――そのものが足を引っ張る。
郭嘉の能力は万人が認めるものではあったのだが。

「おやおや、これはどうもお疲れの様ですね。少し休まれた方がよいかもしれませんね」

声をかけてきたのは、今や袁家の屋台骨を一身に支える沮授である。
貴方こそ憔悴しきっているではないか。
そう言ってやろうとして振り向く。そこには、にこやかな笑みはそのままで、見違えるように生気に満ちた表情である。
誰だこれは、などと思う。
いや、涼やかな笑みに胡散臭い香りがまとわりつく。そういえば沮授という人物は本来こういう感じであったか。

「……。
そうですね。正直、見違えました」

郭嘉の言に沮授は笑みを深める。
くすり、という笑みの口元にはごまかされない。鋭い視線が周囲を睥睨しているのだ。
ふむ、何があったか知らないが本調子に至ったということであろうか。
探る郭嘉の視線を真正面で受け止めて尚笑みは柔らかく、深い。

「いや、正直僕も追い詰められていたようで。知人に叱られましたよ。
 辛気臭い、ってね」

一体誰がこの青年にそんな言葉を投げることができるのだろうか。さしもの郭嘉も言葉を失う。

「いささか、現状維持に汲々としすぎたかもしれません。袁紹様や二郎君が帰還した時にこれでは呆れられてしまいます。
 いかにも袁家の首魁となるには権謀術数に長けねばなりません。ですがそれでは足りません。
 さて、蠢動する方々。様々です。
 郭嘉さんから見てどう思われますか?」
 
75 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/04(土) 21:33:00.60 ID:5YCEdtDt0
ふむ、と郭嘉は幾人かの顔を思い浮かべようとするが、どれもこれも小粒にすぎる。
なるほど。袁紹というのは傑物なのだと今更ながらにそう思う。
彼女の日輪の如き光輝が目に焼き付いているためであろうか、有象無象はいずれも取るに足りない存在に思えてしまうのだ。
なるほど。

「――陰謀ごっこで袁家を牛耳って、私たちの主人面しようとする凡骨たちが多いなと思ったものです。
いえ、夢想するのは勝手です。ですがその夢に酔っているのに付き合うというのは実際苦痛でしかないですね」

我が意を得たりとばかりに沮授は微笑む。
なるほど、本来の彼はこうなのかと郭嘉は内心で沮授という人物の評価を改める。
唯々諾々とした官僚かと思えば、こんなにも覇気があるのではないか。袁家の差配を任される訳である。
非常時にこそ、その人物の真価が発揮されるというのは誰の言葉であったろうか。
なるほど。

「ええ、そうですね。袁家の本領は武に在ります。袁家に覇を唱えるのであれば、武勲なくしては叶わぬというのは必然というもの。
 ええ。袁家の当主が滞在する邸宅を襲い、紀家の宿将を討つ。このような暴挙に対して黙するなぞありえません。
 一当てせねば武家として面目が立ちませんもの」

いささか挑発的な言を郭嘉は吐く。
探るような視線の郭嘉に沮授は応える。にこやかに。

「そうですね。大義名分なぞ勝ってから考えればいいでしょう。
 まあ、必要最低限のことは陳琳さんにお任せするとしましょうか」

沮授の言に郭嘉は声を出して笑う。ああ、それは適任だ。さぞかし名分を起草してくれるだろう。

「では。そちらのあれこれは、お任せしますよ。流石に僕が出るわけにはいきませんから。
 取りあえずはお任せします。二郎君が惚れこんだ軍才、当てにしていますよ?」

す、と眼鏡を整えて郭嘉は応える。
託されたものを確認する。

「では、任されました。これより袁家は反董卓連合を糾合します。
 まずは涼州に遣いを出し、馬家軍と連携を謀ります。これにより二正面作戦を強います。
 此方は、まず星を如南より呼び戻して兵を率いさせます。襄平よりは公孫賛殿を招聘。彼女の白馬義従あれば董家軍の騎馬軍団に伍することも可能でしょう。
 そして南方よりは孫家に派兵を求めます。最悪将だけでも。彼方は歴戦。客将としても使い様があります」

次々と流れる郭嘉の言。それに沮授は満足げに頷く。流石である、と。
眠れる獅子はいよいよ起きようとしているのだろう。

郭嘉が語る百の戦略に対して、沮授は千の内憂を想定する。
それらを全て平らかにして、沮授は微笑むのだ。

そして、郭嘉という軍事的才能の塊がいよいよ本領を発揮することになるのはこれ以降のことである。
76 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/04(土) 21:34:21.19 ID:5YCEdtDt0
本日ここまですー感想とかくだしあー

題名案は

「臨戦」
「臨戦、その前に」


なんかいまいちなので、格好いい奴オナシャス
77 :青ペン [sage]:2020/01/05(日) 08:27:00.38 ID:viekSq/jo
>>76
乙なんだよー
前回の流れから【龍の背に乗るは鬼才】
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/06(月) 20:39:16.51 ID:A0cM2VU/0
乙ー
ありそうなのにこの二人の組み合わせは珍しい気がします
そのせいかいつもに比べると袁家の(官僚達の)どろどろした感があんまりないですね

色置いてみたら一応見られる程度になったので(p:BL)
ttps://light.dotup.org/uploda/light.dotup.org629287.png.html
(475×800、56.1kb)
ttps://light.dotup.org/uploda/light.dotup.org629288.png.html
(1286×3164、179kb)

いつものお年賀お待たせしました(待ってません
一応凡将伝(Boshouden)大好き(Love)の略です(何
BLに引っ張られ過ぎたのか一樹きゅんが妙に恵体にww
気が向いたらその内仕上げたいなぁ
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/06(月) 20:41:02.02 ID:A0cM2VU/0
間違えましたBonshoudenでした
重ね重ね申し訳ありません
80 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/06(月) 20:58:45.70 ID:MCe9xQOR0
>>78
やったぜ
支援絵ありがとうございますー嬉しいワッショイ

>ありそうなのにこの二人の組み合わせは珍しい気がします
大体三人一緒ですからね。仕方ないね。
まあ、実務者協議としては二人はなかよし!じゃなくてそこそこ打ち合わせしてると思うんです。
うん、描写してないだけですね!

>気が向いたらその内仕上げたいなぁ
楽しみにして、ますーぶへへへへ
81 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/06(月) 20:59:50.61 ID:MCe9xQOR0
>>77
どもです。

>【龍の背に乗るは鬼才】
流れが出る題って考えたらやってないんですよね
その弐とかでやってるので

こういう連続性は思いつくのすげえなって。
嫉妬。
82 :赤ペン [sage saga]:2020/01/08(水) 17:49:36.69 ID:MhjvHt710
乙でしたー
>>76
>>眠れる獅子はいよいよ起きようとしているのだろう。  間違いが本当に見当たらないので違和感があったここを
○眠れる獅子はいよいよ起きようとしているのだ。  もしくは【起きるのだろう】ですかね【〜しようとしているのだろう】だとなんか仮定が二重っぽく読めますので
○眠れる獅子はいよいよ目を覚まそうとしているのだ。  もしくはちょっと弄ってこんな感じ?【眠れる獅子はいよいよ目覚めようとしていた。】とかも有りかもしれない

ところで>>「――陰謀ごっこで袁家を牛耳って、〜中略〜「ええ、そうですね。袁家の本領は武に在ります。〜中略〜いささか挑発的な言を郭嘉は吐く。
これだと>>「ええ、そうですね。 の部分も郭嘉の言葉っぽく誤読しそうなので
>>我が意を得たりとばかりに沮授は微笑む。 これの前に移動させて
○いささか挑発的な言を吐く郭嘉に、我が意を得たりとばかりに沮授は微笑む。 とかにした方が良さそうかな?と思います

そりゃまあ袁紹様と比べても見劣りしないような人がいたら既にそれ相応の派閥になってるわ
83 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/09(木) 22:04:21.18 ID:QMZNhXRi0
>>82
赤ペン先生いつもありがとうございますー!

>そりゃまあ袁紹様と比べても見劣りしないような人がいたら既にそれ相応の派閥になってるわ
これがまあ、袁胤様でしたのですよね。

続きも頑張るぞいっと。
84 :赤ペン [sage saga]:2020/01/14(火) 13:05:26.03 ID:0VCnxJNF0
そう言えば向こう見てて気づいたんだけど
>>凡人と絡新婦(接触編)
>>実際どう考えても騙しにきているとしか思えないんだよなあ・・・・・・。

このあたりまで3点リーダーの使い方間違ってたんですね……知らん振りしとく?
85 :青ペン [sage]:2020/01/14(火) 14:15:46.04 ID:L0aqVzNMo
>>84
あっちは修正利くから
気づいたらするんじゃないかなっと
86 :赤ペン [sage saga]:2020/01/14(火) 15:30:09.99 ID:0VCnxJNF0
つ?○○ !○○
本来ならスペース空けないといけないらしいけどローカルルールと言う事にして空けていないんよ
それにしてもナロウのアニメ化作品見ると世界観が訳わかめで二次創作の便利さがよく分かる…女が強かろうが時代的にあり得ないものがあろうが原作にそれっぽさがあれば気にしなくていいから
逆に1から作ると常識を知らないはずの転生主人公が主席入学したり、中世ヨーロッパっぽい異世界でマヨネーズ作ったり、商品(奴隷)を滅茶苦茶雑に扱ってる商人がいたりすると読者から突っ込まれたりするからなあ
87 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/14(火) 19:25:36.57 ID:GCp+HjRp0
り、リソースは有限じゃけえ……
手が空いたら対応したいという気持ちがあるということは忘れず、大切にしていきたいと思っております。
88 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/14(火) 21:18:38.00 ID:GCp+HjRp0
約束した董家ルートも実装できてませんしねぇ
いや、筋は完成したんよ
出力するリソースが足りないのん

早く農家にならねば
89 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/14(火) 21:50:19.07 ID:GCp+HjRp0
☆その頃の劉璋ちゃん

「こら、ここから出しなさい!
 こんな所に私を閉じ込めるとか、どういうつもりなの!」

こんな所と言うが、ずいぶんと立派な邸宅である。
それは分かっている。
それでも劉璋は黙らない。
何が起こったか。おおよそのことは理解している。ならば、それならば、だ。
自分にしかできないことがあるのだ。
皇族である自分にしか。

「弁君に会わせなさい!協君を呼びなさい!」

敢えての呼び方。そしてそれが出来るのは自分のみ。
二人の橋渡し、仲立ちなんてできない。そういう状況でもない。
それは理解している。

それでも。

それでも皇族として劉璋には義務がある。世を平らかにする義務がある。
そして自分に価値があるというのも理解している。学んだ知は力であると確信する。
自分の身に価値があるということを最大限に利用する。

そうして知った事実にはちょっと脱力してしまったりしたものだが。
いや、自分を守るべき厳顔がとっくに逃亡していたというのは、流石に思うところがあった。
だがしかし、考えれば彼女は母である劉焉の部下。
であれば今の洛陽の状況を確実に伝えるというのはそれが本来の業務であるのだろう。
馴染んで、気安かったのは確かだが。
それはまあ、そういうことなのだろうと劉璋は割り切っている。割り切った。

それはそれとして自分のできることをするのみ。

自分の言jは、けして無視できないものである。
それを理解している劉璋は、発声を鍛えることにする。
どうせならば洛陽全土に自分の叫びを伝えよう。

「えっと、声量には肺活量だったかな。肺活量って確か息が苦しいほど鍛えられるのよね。
 それには鍛錬あるのみ、と。
 水練が一番いいって二郎は言ってたけど流石に無理よね。
 だったら走るか、馬術か、よね」

劉璋としては宮廷内を身軽な格好で走って、ついでに情報収集をしたかったのだが、流石にそれは許されることはなかった。流石に。
なので、幽閉されている劉璋がひたすら馬術に興じていたというのは、複数の資料に記されているのである。
90 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/14(火) 21:51:30.95 ID:GCp+HjRp0
本日ここまですー感想とかくだしあー

正直最近、JANE使いづらいんですよねえ。
いいや、誤差範囲内ですが。

書き込みと本スレの切り替えができないとか、なんとかならんかなあ。
91 :赤ペン [sage]:2020/01/15(水) 00:07:01.43 ID:+nwLZWTs0
乙でしたー
>>89
>>馴染んで、気安かったのは確かだが。 はて…いつだったかの黄巾に兵を出す出さないで溝が出来たと思ってたけど修復できたんか(安堵)…そして即行で投げ捨てたんか(溜め息

>>自分の言jは、けして無視できないものである。  これは単純なミスですな
○自分の言は、けして無視できないものである。  もしくは【自分の言葉は、】かな?

乗馬は許されたんか…まあ小さい馬で馬も走ると言うより歩く程度だったのかも知らんが
いっそ馬走らせる場所で劉璋ちゃん走らせちゃいかんのか
92 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/15(水) 20:50:15.26 ID:Hvp11W2u0
>>91
赤ペン先生いつもありがとうございますー!

さて

>乗馬は許されたんか…まあ小さい馬で馬も走ると言うより歩く程度だったのかも知らんが
>いっそ馬走らせる場所で劉璋ちゃん走らせちゃいかんのか
ちょっと面白いかもしれませんね。
考えてみよう
93 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/16(木) 20:02:13.86 ID:LgjHVKE/0
明日は阪神大震災の日です
なんで悲惨な記憶を掘り起こすことしかメディアはしないのか
そこから復興したとか未来に希望を見いだすようなことが何故出来ないのか
やっても数字が取れないのかなあ
後ろ向きで鬱々とばっかりしているようなのが、と
不景気な面してる方が視聴率とれるのかなあ

NHKの特集予告で思いました
でもNHKって視聴率関係ないよねスポンサーいないし

ああやだやだ辛気くさい

以上、愚痴でした(これはこれで後ろ向き)
どうにも調子がよくないなあと
94 :青ペン [sage]:2020/01/16(木) 21:03:34.39 ID:UlvST0T/o
>>93
わすれちゃいけない。
でも引きずっちゃいけない。


難しいよね。
95 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/16(木) 21:06:52.87 ID:LgjHVKE/0
>>94
自分自身被災者ですが、本当にね。
悲惨な話の方が飯の種になるってのはいけないな、と思います。
最近では災害の時の自粛について反論異論が出るようになってマシだなと思うのです。
マグマのような感情を込めて書き溜めするのぜ。
96 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/16(木) 21:12:21.06 ID:LgjHVKE/0
「ち、父上が死んだ……?
 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!そんな馬鹿なことがあるか!
 あんなに強い父上がやられるはずがないだろう!」

三か月前のその慟哭を厳顔は忘れることはないだろう。悲痛な、幼子(おさなご)のようなその声は何かしら胸をうつものがあった。
……厳顔がここ涼州にいるのには理由がある。
董卓が起こした変事の詳細について可能な範囲で情報を集め、辛くも洛陽を脱した彼女が向かったのは益州ではなく、涼州。
最も激発する可能性が高いのが涼州であったからだ。可能性としては袁家もあるが、馬家と違い未だ当主はじめとした首脳は行方不明。
なれば袁家は捜索に力を注ぐであろうという判断である。

一方馬家については馬騰の死亡が確認されている。
馬超はいささか直情径行にあり、暴発する可能性は大いにあった。その場合益州にも派兵の要請が来たであろう。
まあ、函谷関で防がれる分には問題ないが、馬超の武勇を考えれば洛陽まで迫る可能性もある。
そのまま押し切ることもありえるであろう。その場合、劉璋を人質とされている益州が兵を出すことはありえず、それを逆恨みされることもありえる。
故に馬超の暴発を抑えるために厳顔は涼州に赴いたのである。

無論、劉璋を置き去りにしたことに対する風当たりは厳しいものがあるであろう。
だが、同じく囚われるよりは主君に正確な情報を送り、その上で最善を尽くすことこそが肝要。
直接的な地位も権力も持たない劉璋が害される恐れはほぼないと言っていい。
名よりは実を。主たる劉焉が常々言うことである。
そして厳顔は益州と密に連絡を交わしながら涼州にある程度の影響を築くことに成功していたのである。

「とは言ってもねえ。多分お姉さまもうすぐ爆発するとたんぽぽ思うなー。
 まあ、これまで抑えていたのが不思議なくらいだしね」

肩をすくめながら馬岱は厳顔に言う。そろそろ限界だと。

「とは言え、函谷関は要害。更に韓遂の蠢動もある。いかにも動くのは不利であろう。
  何より、相手は主上を奉っておるぞ?
 武の名門馬家を逆賊とするのは本意ではなかろう?」

お主ならば分かっておるじゃろとばかりに厳顔は馬岱に目線を向ける。
馬岱は、たははと手を振り。笑って応える。

「いや、あのね。何て言うのかなあ。こんなに厳顔さんと私たちで認識に差があるとは思ってなかったなあ。
 確かに月さん……いえ、董卓は今上陛下を擁立してるよ。でも、それは大したことじゃない。
 厳顔さんも分かってるんでしょ?今上陛下が正統だとは言えないということ。
 ならばそれを糾すのが武家の名門たる馬家の義務なんだよね。董卓を配下にしていた馬家ならなおのことだよ。
 おじ様からよく言われてたんだよ。『命を惜しむな、名を惜しめ』ってね。
 あの時は分からなかったけど、今ならよく分かる。
 うん、覚悟完了、って奴かな」
97 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/16(木) 21:12:47.59 ID:LgjHVKE/0
「な、なんと?
 しかし、韓遂は難物なのだろう?」

くすくす、と馬岱は澄んだ笑みを浮かべる。いかにもおかしげに。いや、これは見知っていた馬岱なのであろうかと厳顔は瞠目する。
その表情に迷いなく、面差しには覚悟が現れている。

「うーん。正直、今のお姉さまだったら鎧袖一触だと思うなあ。
 それに韓遂だって根っこは同じだと思うよ?何せおじ様の義兄弟だしね。
それでなお立ちふさがるならばまあ、錦馬超の真価、というやつ。その武威ってやつ。それを、ね。
身をもって知るんじゃないかな?」

「……匈奴はどうする。背後の備えは」

「洛陽を落としてから返す刀で蹂躙すればいいでしょ。匈奴に領土欲はないからね。あっさり逃げると思うし。
 まあ、もし長城を越えて本当に来たならば、こちらも長城を越えるだけだし」

血で血を洗う戦場を駆け抜けた少女と、要害に楽園を築こうとしていた艶女の認識の差は埋めがたく。

「お姉さまをね、止めていたのは。準備が整っていないからというのは厳顔さんにも言ってたよね。
 あれは方便じゃなかったの。
 そしてその準備は整ったんだなこれが。
 ああ、そんな顔しないでほしいなあ。たんぽぽ嘘は一度も言ってないし。勝算だって十分あるしね」

勝算?首を傾げる厳顔に馬岱は笑いかける。

「うん。馬家が万全に戦の準備を完了したんだから、袁家だって同じだと思うよ?
 根拠?
 だって、二郎様とたんぽぽは気が合ったもの。武家の匂いがしたもの。
だからおじ様もあんなにも気に入ってたの。分かるかなあ。分からないかもしれないけどね。
 袁家と馬家は似た者同士だよ。そりゃあ、色々と違って見えるし、実際違うんだろうけどね。でも、根っこは同じ」

さて、お前はどうする?益州劉家はどうするのだと笑う。
これが連綿と国境を守っていた武家の凄味かと厳顔は思う。ならば。

「劉璋様には申し訳ないことになるかもしらんな……」

主たる劉焉に送る書状の内容を推敲しながら厳顔はそうつぶやいていた。
98 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/16(木) 21:13:15.11 ID:LgjHVKE/0
◆◆◆

「という訳で、どうやら袁家は出兵の準備をしているようですね」

諸葛亮の報告にふむふむと北郷一刀は頷く。なるほど、袁紹という盟主がいなくとも歴史の流れは変わらぬのかと。

――県令として劉備が任地に赴任し数か月がたつ。余り紀霊と友好的な関係を結べていないこともあり、とんでもない僻地、荒地に左遷されるのではないかという危惧は杞憂に終わった。
前任者はそれなりに有能、それなりに善良であったようでよく治められている。
これまで政に携わったことのなかった劉備一行にはあれこれと丁寧に引継ぎすらしてくれており、今のところ大過なく治められている。

――劉備の治世についての領民の評判はすこぶるいい。清貧を地でいく劉備の人徳もあるが、官庫を開いたことが大きい。
二千人の義勇兵を養って余りあるほどのそれを領民に還元したのである。
余程の天変地異でもない限り問題はない程度に食糧、金銭の貯蓄を減らす。更には付き従う義勇兵には開墾を命じる。
屯田兵、と北郷一刀が命名した彼らは実に熱心に地を耕している。きっと秋の収穫には大いなる実りがあるはずである。
なに、慣れぬ農作業も農徳新書さえあればある程度の収穫は見込めるというものである。

――閑話休題。諸葛亮の報告を受けて北郷一刀は口を開く。

「反董卓連合、か」

その推察が自らのそれと重なり諸葛亮は改めて自らの主人に心服する。これだけの限られた情報でそこまで至るとは、と。

「洛陽で暴政を敷く董卓。大いにありえますね」

諸葛亮の言に劉備は戸惑う。

「え、でもでも!
月ちゃんがそんなことするかなあ。あんなにいい子だったのに。
 ねえ、ご主人様。本当に月ちゃんがそんなことするって思う?」

劉備の疑問は無理からぬこと。あの穏やかな娘が権力を求めて蜂起するなど。

「だから、ここにいちゃあそれも分からないから。だから俺たちも洛陽に向かおう。
 本当に何があったのかを見極めよう。もし、月が本当にそんなことをしていたのなら、叱ってやろうよ。
 そして、誰かに騙されているんだったら救ってやろう。
 きっと洛陽に向かい挙兵がある。それに乗じて俺たちは俺たちで動こう。
 きっと俺たちにしかできないことがあるはずさ」

そう。思えば劉備が飛躍したのは反董卓連合での活躍からだったはず。
だったら、そういうことなのだろうと北郷一刀は思う。
天下三分の一つを占めながらも徒花と散った蜀。
自分がここにいるのはきっと彼女らを導くためなのだ。それが、右も左も分からぬ自分を守ってくれた彼女らに対する恩返しのはずだと北郷一刀は確信する。
桃園の三人に加えて伏竜と鳳雛がいるのだ。何を畏れることあろうか。

「桃香、頑張ろうな。皆が笑って暮らせる世界のために!」

そう、まさに北郷一刀と劉備。それは雌雄一対の剣であるのだ。
99 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/16(木) 21:13:41.33 ID:LgjHVKE/0
本日ここまですー感想とかくだしあー
100 :青ペン [sage]:2020/01/17(金) 01:04:48.83 ID:auBaa/izo
>>99
乙なんだよー

【西涼に馬家気炎を挙げ大徳は都に走る】

かなぁ
101 :青ペン [sage]:2020/01/17(金) 01:06:53.79 ID:auBaa/izo
>>95
ぶっちゃけるとおいらも2016の被害者ではある。
まあ、被害ほぼなかったけどね。
だから、あの言葉が出た次第さね
102 :赤ペン [sage saga]:2020/01/17(金) 15:23:52.54 ID:W7xtXCNi0
乙でしたー。昨日の事のように思い出される。とかテレビで言ってたけど…いい加減踏ん切り付けて過去のことにして前向いて歩いていいと思うけど
>>96
>>馬岱は、たははと手を振り。笑って応える。  間違いと言うほどでは無いですが
○馬岱は、たははと手を振り、笑って応える。  の方が良さそうかな?手を振った後の笑顔に含みを持たせたいなら【たははと手を振り……わらって応える。】とかどうでしょう
>>97
>>それでなお立ちふさがるならばまあ、 上の方は父の言葉を思い返してる感じもあったのでそのままでいいかと思いますがここは彼女自身の言葉っぽいので
○それでなお立ちふさがるならまあ、  【ならば】だとちょっと硬い感じがするのでちょっと違和感
>>錦馬超の真価、というやつ。その武威ってやつ。それを、ね。 【やつ】が2回続くとちょっとしつこい感じが
○錦馬超の真価、……その武威ってやつそれを、ね。      でどうでしょう
>>98
>>余り紀霊と友好的な関係を結べていないこともあり、とんでもない僻地、荒地に左遷されるのではないかという危惧は杞憂に終わった。  そうされる危惧があっても趙雲をスカウトするあたり…というかあの件は良くないことをちゃんと諫言したんかあわはわ軍師
>>本当に何があったのかを見極めよう。 間違いでは無いですがこの場合の意味だと
○本当は何があったのかを見極めよう。 の方が良さそうかな?

ところで、さ>>前任者はそれなりに有能、それなりに善良であったようでよく治められている。 この人が溜めてた【領地の財産】を
>>二千人の義勇兵を養って余りあるほどのそれを領民に還元したのである。  こうすることで劉備の評判を良くするとかなかなかできる事じゃないよね
と言うか屯田兵とか既に農徳新書で使われてるんでねーの?フジリュー太公望が鍬を振る動きと剣を振り下ろす動きは似てるとかなんとか言ってたし
そもそもこいつらは何なんだ?基本領主の土地を耕して戦争の時は兵士になる(命と稼ぎを搾取されるブラックと言うのもおぞましい何か)?基本は農民(耕した土地は自分のもの)で戦争の土地は兵士になる(そりゃ戦国時代の足軽だ)?
よっぽど裕福か騎馬民族に四六時中狙われてて常備軍で防波堤してるのでも無けりゃ平時の兵士の食い扶持稼ぐために元から領兵たちも土地耕してそうだが
兵農分離するってことは基本的に何の生産性もない存在を作るってことなんだが…そしてそいつらが食うための給料を領主が出す
前任者が兵農分離してたんなら袁家の意向で多分ココ匈奴の略奪をうける場所だし、してないなら既に農徳新書ブースト受けて十分開墾されてそう(劉備SUGEEされなさそう)
103 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/20(月) 21:04:24.08 ID:KqZ5Idpj0
どもです。
ちょっと間が開きましてすみませんです。


>>100
>【西涼に馬家気炎を挙げ大徳は都に走る】
かっこい!
この勢い的なものは本当に妬ましい

>>101
正直余計なことを言ったかもです。
まあ、金出すならルミナリエ的なものにも金出せよ!と思うのです。毎年資金難らしいし。


>>102
赤ペン先生いつもありがとうございますー!
うひょう。

>昨日の事のように思い出される。とかテレビで言ってたけど…いい加減踏ん切り付けて過去のことにして前向いて歩いていいと思うけど
たとえば殺人事件案件なら絶対そうなりますよね熊谷とかね

>前任者が兵農分離してたんなら袁家の意向で多分ココ匈奴の略奪をうける場所だし、してないなら既に農徳新書ブースト受けて十分開墾されてそう(劉備SUGEEされなさそう)
劉備すげーできないからこそ、飛躍が必要なのです。多分。
正直平時の事務仕事ってすごい手柄とか無理ですもの。
そういうとこで飼い殺しにしたかったんですよ。

なお野心。
104 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/20(月) 21:38:26.16 ID:KqZ5Idpj0
政権奪取より数か月。
賈駆は相国となった董卓の腹心として国政を思いのままにしている、と世間一般では思われている。
権勢をいいことに先帝に退位すら強い、権勢は留まるところを知らない、とされている。
だが勿論、実際はそうではない。
董卓を人質に取られ、最早李儒――或いはその背後――の操り人形に近しい。
朝廷の人員からは冷たい目で見られ、官僚たちからも面従腹背(サボタージュ)状態であるのが実際のところである。
それでいて、辛うじて政権運営が果たされているのは賈駆の有能さと勤勉さを示すものであろう。
とは言え、最早それは恐怖政治に近しいほどに成りはてている、あまりに不服従の過ぎる官僚は幾人かが見せしめとなっている。
それを見てまた官僚が反感を募らせるという悪循環を分かりながらも賈駆は止まることが出来ない。

そして更に扱いに困るのが禁軍である。
呂布、或いは張遼に押さえさせようとするも内部の政治的抵抗が激しく、ままならない。
だが、意に沿わない武力集団を抱えることほど危ういことはない。煩悶しながらも打つ手なく賈駆は摩耗していく一方である。
そんな時に来客が告げられる。
正直それどころではないと門前払いしようとするも。

「ここで李儒、か……。通しなさい」

ぎり、と歯ぎしりしながら賈駆は身なりを整え、軽く化粧して出迎える。

「あら、思ったより元気そうね。お仕事は順調かしら?」

くすくす、と笑うこの女を今すぐ縊(くび)り殺してやりたいとばかりに無言で賈駆は李儒を睨む。

「やだ、こわいこわいわね。そんな目で見られたら、やあね。うっかり手が滑っちゃいそうねえ」

にまりと何かを示唆しつつ李儒は笑う。蛇のような湿度に賈駆は改めて嫌悪を感じ、それを押さえ込む。
105 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/20(月) 21:38:52.55 ID:KqZ5Idpj0
「何の用よ」

素っ気なく賈駆はもはや態度を繕おうともしない。どうあっても、何をしても事態は改善されないのである。目の前の存在に忖度しても自分がすり減るだけである。

「いえね。あまりにも貴女が大変そうでね。正直、色々と回ってないでしょう?
 いえね、よくやっているとは思うのよ、本当に。でもね。あまりにお粗末だから心配になってね。 
 多少なりとも助けてあげようかな、って思ったのよね」

「アンタに助けてもらうくらいならば今ここでアンタを刺すわよ。
 どうせボクでは無理だろうから、そろそろ武官でも呼ぼうかなって思ってるくらい」

「怖いわねえ。でもまあ、なんでだか私は嫌われているみたいだから。
 だから、貴女の助けになりそうな方を紹介しようと思ってね」

す、と手を上げる。それが合図であったのであろう。人影が姿を現す。

「何だな。この状況だと僕は悪者一直線なんだが……。
 もうちょっと話の流れとか、そういうものについて気配りしてほしいなあ」

苦笑しつつ姿を現したのは皇甫嵩。賈駆が取り逃がした漢朝の大物の一人である。

「な、なんで!アンタら、あんたらっ!
 そうか、そうか……っ!
最初から、つるんで、たの……ね!」

絞り出すよな賈駆の言葉に、皇甫嵩は困ったような顔を浮かべる。

「そう思われても仕方ないけどね。まあ、経緯は置いておこう。そしてはっきり言おう。
 君らの統治は見ていられない。ああ、見ていられない。
 だからね、せめて禁軍の面倒くらいは見てあげようというのだよ。
 それで大分違うだろう?」

確かにそうだ、その通りだ。禁軍を皇甫嵩が押さえてくれるならば、相当賈駆も楽にはなる。
だが、それでいいのかと思う。それはいけないと思う。この、目前の男は信用してはならないと本能が警告してくる。
だが、それでも賈駆には選択肢はあってなきが如し。李儒が提示した選択肢をどうこうできるわけもない。それでも。

「まあ、思うところはあって当然さ。僕だって思う所あるしね。
 ただまあ、それで被害をこうむるのは、か弱い民たちさ。
まあ、ひとまずよろしくね。
 ああ、主上にもご挨拶しときたいなあ。頼まれてくれるかな?」

にこやかな皇甫嵩を苦々しげに賈駆は睨む。
だが、確かに、確かに皇甫嵩が禁軍を掌握するにつれて賈駆の負担は減っていったのである。
故に賈駆は皇甫嵩その人の真意は捨て置くことにする。

いや、それを深く考える余裕なぞなかったと言ってもいいであろう。
まさに忙殺、であった。

そして、それより暫し時を置き、時代を動かす人物が再び舞台に姿を現すことになる。
その報を受け、賈駆は項垂(うなだ)れ、皇甫嵩は舌打ちする。そして李儒はほくそ笑むのだ。

その無益さ。
それに気付くにはもう少し時が必要となる。
106 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/20(月) 21:39:37.23 ID:KqZ5Idpj0
本日ここまですー感想とかくだしあー

題名募集しまくりんぐですよ本当に!

今回は前回と合わせてなんかしたいですねというか、次からがいよいよなので区切りたいというか。

よろしくお願いします。
107 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/21(火) 21:23:39.49 ID:kZuWh2Jg0
――目の前に広がるは曇天。今にも雨が降りそうな黒いそれは、今の漢王朝の行く末を思わせる。
どんよりとした空気は重く、湿っぽい。ひょっとしたら薄く雨粒が落ちているのかもしれない。それくらいに粘つく空気だ。
それでも、それでも俺はこうして生きている。だったら歯を食いしばってでも生きるしかない。前に進むしかない。

などと珍しくシリアスさんと仲よくして雰囲気に浸(ひた)っている俺に声がかけられる。いや、人間暇だとロクなこと考えねえってことさね。

「旦那!あね……呂伯奢様がお呼びだ――ですぜ!」

あいよと軽く応えてどっからどうみてもごろつき寸前の男に手をひらひらとさせて持ち場を離れる。
今の俺は呂伯奢率いる商会の用心棒……ぽい感じで振舞っている。
呂商会は母流龍九商会がカバーできていない南皮から洛陽の北回りのルートを牛耳る商会だ。
その会頭たる呂伯奢と知り合ったのは俺が放浪している時にたまたま――って訳じゃあない。

「お呼びだそうで。入るぞ」

応えも聞かずに戸を開け、室に踏み込む。

「おや、お早いお着きだことで」

出迎えるのは着飾った妙齢の麗人。艶然と笑いながら俺を差し招く。優雅なその様は貴人のもの。漂う色香は成熟したそれであり、思わせぶりにしなをつくる。
まあ、普通に魅力的な麗人ではあるのだが、それどころではないのである。今の状況がね、それどころじゃないのですよ。

「うるせえよ。さっさと用件言えってば」

「つれないねえ。そんなんじゃ女にもてないよ……と言いたいところだけど、そうでもないみたいだしね。
 ま、いいさね。南皮までの道程に敵影なし。明日払暁に発つことにする。
 二刻もすりゃあ無事に我が家への帰還がかなう見込みさね」

くすり、と妖艶と言っていい笑みで呂伯奢――ええい、面倒だ。張燕がそう言う。
そう、俺が、俺たちが南皮までの道程を、身を任せたのは黒山賊であった。

「まあ、しかし驚いたよ。まさかアタシ達のとこに来るなんて思ってもみなかったからね」

艶然と、しかし苦笑気味に張燕は呟く。

「そうかい。お前さんがそうなら、他の誰にも読むことはできんってことだろうからな。そりゃあよかったよ」

洛陽を脱出した俺たちが身を寄せたのは薄汚い寒村。洛陽からほど近いそこは実は黒山賊の出先機関。
政局、機を見るに敏。その張燕は中央の動きには非常に高い関心を寄せており、いち早く動きを捉えるために村一つを買収していたのだ。
その、いわば隠れ里的なそれを俺が知っていたのは張燕に渡された一枚の地図。黒山賊のそのようなアジトを克明に記したそれのおかげだ。

「でもねえ、思わなかったのかい?アタシが、アンタたちを売る、ってことは」

挑発的なその言葉。
まあ、そうよねえ。でもね。

「ないね。生死を問わず、洛陽に俺たちを売ったとしたら黒山賊に未来はない。
 面目にかけて袁家は本気で黒山賊を討つさ。それくらいは自明の理。そんな選択をするかね」
108 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/21(火) 21:24:05.25 ID:kZuWh2Jg0
張燕は、フン、と何か拗ねたように口を尖らせる。

「ああ、そりゃあ勘弁願いたいねえ。あたしゃ大きな博打は勘弁さね。
 一世一代の大博打に勝ったんだからさ、あとはこつこつと積み重ねていきたいものだよ」

そして、打って変わったようにけらけらと軽やかに笑う。
そう、そうだからこそ。それが分かっていたからこそ俺は黒山賊を選んだのだ。表面的には不倶戴天の黒山賊――実際は馴れ合いも甚だしいのだが――に身を預けたのだ。
それは成算あってのこと。張燕という女傑を高く評価しているからこそ、である。

「まさかに、黒山賊を率いる女傑がなあ。言行不一致甚だしいとはこのことだろうな」

「おやおや、アンタがそれを言うのかい。袁家という巨大な組織を牛耳るアンタがそれを言うかね。
 まったく。重ねて言うけどね。あたしゃ分の悪い賭けは大嫌いでね。アンタだってそうじゃないのかい?」

フン、と一つ笑って俺は言う。

「賭け事は、胴元に限る」

その言に呵呵大笑する張燕。いつぞやもこうだったな、と思い出す。
黒山賊の本拠地に身を寄せた時に、裂帛の気迫をひた隠しにしながら問われた時だ。

――曰く、アンタの目指すところはどこだ、と。

無論、応えてやったよ。さっさと隠居したい、ってね。隠居した後にあれこれ悩むのも面倒だから、世は平らかでないといけないと。
だから、俺はさっさとのんびり隠居したいだけだと。そのために色々やっていると。
いや、張燕みたいな麗人が呆けた顔というのは中々見れないから、ある意味眼福であったのだろう。艶姿の今よりもきっとね。

まあ、張燕が恐ろしいのはそれだけではない。いつまでも野盗なんかやってられないとばかりに母流龍九商会に目端の利く者を数十名送り込んできた。
そしてでっちあげたダミーカンパニーの呂商会。これにより直接物流に携わる。南皮から洛陽までの最短ルートはもともと黒山賊が押さえていたこともあり、これが莫大な利益を生む。
張燕がしたたかなのは、これを呂商会独占としなかったことだ。他の商会もそのルートを使う。ただし護衛料がマージンとして上乗せされるので、価格的優位性はダントツ。
野盗まがい、というよりほとんど野盗の集団であった黒山賊を、一部とはいえそうして使いこなし、十万とも言われるその数をきっちり養う。しかも合法的に。
その、ソフトランディングのための調整能力というか、統率能力というか、先見性に俺は感嘆しきりなのである。

「まあ、黒山賊と袁家は不倶戴天の敵だけどな」

ぴしり、とそれでも馴れ合うつもりはないと一応主張してもまあ、蛙の面になんとやらである。

「ま、固いことはいいっこなしさ。そら、一献」

いつのまにか手にした酒を、これまたいつのまにか掴ませた酒杯に注いで張燕はにんまりと笑う。俺もしょうがないから、笑う。

「そうだな。できることなら、長いお付き合いであってほしいね」

「おや、嬉しいことを言っておくれでないかい。そうだね、どうせならより親しくなっとくかい?」

むわり、と成熟した女の色気が俺を取り巻く。肌を重ねるか、と露骨に問うてくる。

「いや、俺は情に流されるからな。それはやめとく」

あらそうかい、と残念そうに身をひるがえす。

「ま、きっちり南皮まで送り届けてやるよ。姫さんたちと一緒にね。
 今後とも。どうぞお引き立てのほどを」

その言葉を聞き流し、思う。
明日だ、明日には帰れる。南皮に帰れる。
それから、どうするんだ?決まっている。でも、気が進まない。それは許されない。

室に一人。

酒精を呷りながら、意識が混濁していくのを心地よく迎えて、沈む――。
109 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/21(火) 21:24:36.61 ID:kZuWh2Jg0
◆◆◆

郭嘉は其の報を受け、走りだした。
それが真ならば、真ならば。
――郭嘉はそれほど身体能力に恵まれてはいない。いや、劣っていると言ってもいいであろう。
謀士なんぞにはそれほど価値を求められない世の中だ。彼女は大いに苦しんだ。
脳髄の冴えを誇ろうとも、武家に於いては枝葉末節。故に、約束された声望を捨て、流浪したのだ。
遠回りをしたように思う。結局今自分が仕えるのは袁家なのだから。だが、かけがえのない友人に恵まれた。

郭嘉は走る。既に脳髄には必勝の戦略が幾筋も出来上がっている。
だが、その根源を、前提を満たすための材料がまだ足りない。だから郭嘉は走る。脆弱な心肺が悲鳴をあげる。
その悲鳴すら弱々しく、ひゅぅ、と鳴る。それでも郭嘉は棒となった足を前に進める。そして夜明けの一番鶏を合図に開く城門。
そこに立つ青年を見る。

多少薄汚い恰好であっても見失うものか。全く。身を隠すならば得物くらいは取り繕うべきなのだ。
必死に呼吸を収めて、努めて平静に声をかける。

「お早い御着き、とは言えませんね。ともあれ、ご無事でなによりです。
 それでは、後ほどに。落ち着いたらご相談と承認を頂きたいことがあります」

踵を返す郭嘉に戸惑ったような声が追いすがる。

「え?稟ちゃん?ちょっとそれ冷たくない?久しぶりの再会なんだし、もうちょっとこう、反応があると思うの。
 あれ、稟ちゃん?稟ちゃんさーん?」

フン、と郭嘉は決して振り返らない。
その彼女の脇を弾丸と化した幼女――多分典韋だろう――が通り抜ける。
後方でドゴォ!と微笑ましい音響が響き、やや遅れて駆けてくるのは、もう一人の親友。常山の昇り龍。

「おお、稟よ。主が帰って来たというのは真か?
 いや、これまでも幾度もそのような報はあったが。稟が動くということは今度こそは、という奴だな」

この、心根が真っ直ぐな親友になんと言ってやろうかと思うのだが。

「そうですね。どうやら今回は確かだったようです。どうぞ歓迎はお任せしますとも」

きっと、立場的にも、性質的にも、彼の横に立つのは武人であるべきだ。
誰にともなく言い訳しながら郭嘉は歩を進める。自らの責務を果たすべく。

反董卓連合。既に考え付く状況において袁家は最終的に勝利する。
それを郭嘉は確信するのであった。
110 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/21(火) 21:25:25.24 ID:kZuWh2Jg0
本日ここまですー感想とかくだしあー

題名案は、
「凡人、還る」

ですけどもちっと色気あるやつが欲しいなあ欲しいなあ。
よろしくお願いします。
111 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/22(水) 21:39:19.64 ID:+gB018zg0
さて、大騒ぎです。南皮は大騒ぎです。
そりゃあそうよね。消息不明だった幹部が揃って帰還したんだから。
稟ちゃんさんとか流琉とか星とかは俺の顔を見たらそれで納得したけど、中枢の官僚はそうもいかないわけで。
呂家の馬車から麗羽様と美羽様が降り立った時のどよめきはすごかった。
いや、お二人の御髪というのもあるとは思うけどね。
それも、麗羽様の一喝で皆通常業務に帰っていった。流石麗羽様。オーラ半端ない。流石です麗羽様。さすれい。
今も動揺する領内安堵のため各方面に送る書状をしたためられている。

美羽様だって拙いながらも頑張ってらっしゃる。具体的には如南の動揺を抑えるために色々とご尽力されてらっしゃるのだ。
なんでも、如南攻防戦で功のあった奴らに書を出すそうだ。十傑衆に、四十七士、かあ。十傑衆の中に沙和の名を見て愕然としてしまったのは内緒だ。
七乃は張?に引き継ぎをしている。

「……聞いているのですか?」

稟ちゃんさんが俺に冷たい目線をくれる。ありがとうございます!ありがとうございます!という性癖はないので、普通に謝る。ごめんねって。

「ああ。風から聞いてたから、な。反董卓連合。それに異はないさ。ないとも。
 だが、馬家を函谷関に向かわせるのはなしだ」

俺の言葉に怪訝そうに稟ちゃんは聞いてくる。

「何故です。純軍事的に、敵に二正面作戦を強いるのは有効ですよ?
 しかも董家軍に将帥少なく、その効果は計り知れません」

確かにそうだろう、そうだろうとも。
112 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/22(水) 21:39:45.72 ID:+gB018zg0
「稟ちゃんさん、よ。勝ちゃあいいってもんじゃあないんだよ。
 袁家が本腰を入れるんだ。勝てばいいってもんじゃあない。
 つまりな。
誰が漢朝を背負うのか。ここからは、それを問う戦いになるのさ。
 だからね。有力諸侯だけじゃない、全諸侯に使者を放て。
 敢えて言えば、そうだな。お前らはどっちに与するか、ってね」

――ショー・ザ・フラッグ゙!

「こっから先は漢朝全土を相手取るくらいの意気込みでないといかん。
 そして、袁家は勝者でないといかん。勝たねばならんのさ。色々とね。
 そして、勝つ算段は任せるよ」

「さて。ご信頼はありがたく、確かに。
 しかし、いいのですか?賈駆殿は……」

情を通じた愛人だろう、と鋭く俺の心を抉る。

「……。詠は、詠ちゃんは、さ。優先順位を間違えない。きちんと大事なものを選べる子だ。
 だから、月を選んだ。だったら、そういうことだ。そういうことさ。
 何度やっても同じ選択をする。そういうこと、さ」

ああ、そうだ。そうだろう。きっと月を誰かに人質に取られたとかそういうことなんだろう。
だとしても、俺にも譲れないものはある。大事な人がいる。だから。

「では、諸侯に檄文を発します。既に草稿は陳琳に作らせていますので推敲をお願いします。
 ……それでよろしいのですね?」

「ああ。脅し付けろ。どっちにつくか、選ばせろ。兵を出せないならば銭か物資を拠出させろ。
 従わない奴らは……。まあ、勝ってから考えよう。精々見せしめにしてやろう。
 単に勝つだけじゃない。逆らう気を起こさないくらいに徹底的に勝つ」

無論、圧倒的な戦力を見せつけるのは敵というよりは。

「諸侯に見せつける。袁家の武威をな。
 そして、勝つ。無論、勝つ。
洛陽にて暴政をする董卓を討つのは袁家だ。
 そこんとこ、よろしく」

「承りました。なるほど、董卓は暴政を敷くのですね。
 ええ、風が洛陽に残るというのはそういうことなのでしょう。董卓の治世は、荒れるのですね」

フン、と応じるしかない。そうか、風ならばそれを果たすだろう。やるのだろう。
俺にだって思うところはある。あるのだ。

「――雷薄が、やられた。奴の下に付けてた若手もそうだ。みんなだ。
 袁家の次代を担う奴らが死んだんだ。皆死んだんだぞ。
だからさ。
 袁家を敵に回すってことはどういうことかを、示さないといけない。いけないってことだ。
 ああ、そうだな。それでこそ破邪顕正ってもんだ」

「……よろしいでしょう。なれば袁家の総力戦、ご相談申し上げます。ええ、ご相談申し上げますとも。
 勝つのみにあらず、大いに結構。大いに結構ですとも」

「……頼んだ。頼む」

心から、頭を下げる。負けられない。負けてはならない。その思いが今更背を貫き、身を震わせる。

――おずおずと伸ばされて、俺を包んだその手は思いのほか、温かかった。

◆◆◆
113 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/22(水) 21:40:41.74 ID:+gB018zg0
「まあ、ご無事でなにより、と言わせてもらいましょう」

沮授の言葉を聞きながらぐびぐびとお酒を頂いております。いやあ、美味しい。
沮授と張紘。俺の半身とも言える義兄弟。多忙極まる中お時間いただきまして恐縮でございます。あれ、半身が二人いたら俺、いらなくね?とか言ったら、流石にそれは笑えない。と冷たい視線が来た。
すまぬ。

「ほんと、これで沮授なんか相当狼狽えてたからな。いや、勿論おいらもだけどな。
 二人揃ったら辛気臭いことこの上なかったみたいだぞ」

マジか。お前らが鬱々としているなんて想像もつかんのだが。

「それで、陳琳殿に檄文を書かせるんだろ?概略は二郎が指示したって聞いたが」

――反董卓連合。それに参加を呼び掛ける檄文は陳琳に任せている。そしてその骨子は俺が指示した。
とは言え、それはこれしかないというもの。

「君側の奸を除く。それしかないだろうさ」

漢王朝に叛くのではない、佞臣を除くための蜂起なのだ。陳腐ではあるが、それしかないとも言える。

「――二郎君はそれでいいのですか?」

「いいも悪いもない。やらなけりゃあ、やられる。それだけさ」

「そうですね。益体もないことを言ってしまいましたね。ですが、二郎君の本気度が分かってよかったですよ。
 そして、袁家と相対するならばその最大の敵を動員するはずでしょう、彼女ならば。
 ええ、そうです。匈奴と結び、けしかけるでしょう。僕ならそうします。そうしない理由がない。
 かなりの譲歩に利権を提示してでもそうします。それほどまでに匈奴は、強い」

ああ、そうだろう。俺だってそうするよ。袁家と対するとしたら外患を招いてでも牽制せんとまともな勝負にならない。
だが、そうはならない、そうはさせない。

「袁家の戦力、武家四家を洛陽に向けたならば確かに匈奴からしたら好機だろうさ。だが、そうはさせない。
 沮授に留守番は頼むけど、丸投げはしない。
 袁家の総力を挙げるって言ったろ?なりふりかまわないって言ったろ?
 だから、さ。ここが勝負どころなのさ。匈奴、なにするものぞ。
 出し惜しみはしない。俺が頭を下げればなんとでもなる……と、思う……」

多分。なんとかなると思う。なれ。なってくだしあ。

「そうかい。二郎がそう言うなら、きっとそうなんだろうさ。
 おいらたちだって二郎の助けになるからさ、何でも言ってくれよ」

勿論、頼りますとも。特に張紘は俺の計画の中枢だってーの。
まあ、それはともかくである。
やれることはきっちりやる。やるよ。やるとも。
だから、さ。

「匈奴への備えは一番の懸案事項だ。洛陽に向かうは袁家の旗本、そして武家四家総出だ。
 後背が無防備なんて、匈奴にとってはいい狩場さね」

「まあ、二郎君がそこまで言うのです。
 期待してますよ、腹案とやら」

「まーかせて」

最も信頼する二人に頭を下げ、戯れ、前後不覚になり。
そして向かうは英傑なのだ。
真正面から臨み、頭を下げる。願う。吠える。そして叶う。
 ありがとうございます。

◆◆◆

――田豊、麹義。袁家の至宝。
両名現役復帰。袁家の、漢朝の北方の護り手となる。
114 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/22(水) 21:42:49.24 ID:+gB018zg0
本日ここまですー感想とかくだしあー

いけてる題名募集しまくりんぐですよ本当に!

案はなんだろ

「ここから始まる」
「総力戦」

ほんといまいちなのでよろしくお願いします。
115 :青ペン [sage]:2020/01/23(木) 07:18:24.63 ID:UviEGQ6wo
>>105
乙なんだよー

【巡りし毒】かね、シンプルに。

>>114
こっちは【両翼、再び】
116 :赤ペン [sage saga]:2020/01/23(木) 11:41:53.84 ID:ZBhG6pUL0
乙でしたー
>>104
>>「やだ、こわいこわいわね。 ちょっと違和感が
○「あらやだ、こわいこわい。 それとも【「いやだわ、怖いわね。】とかどうでしょう

>>だが、意に沿わない武力集団を抱えることほど危ういことはない。 そうだ!敵対してる李儒に紹介された皇甫嵩に任せよう! …なんて冷静で的確な判断力!!本能が信用してはいけないと警告してるし多分理性でも任せてはいけないとなってるけど…KOOLに判断するんだ

そもそもせっかくの悪名を使わないのがイカンよね…先帝(無能)とか何進(成り上がりの肉屋の倅)はまだしも元直属の上司の馬騰さんを殺した時点で恩義やら情理で思いとどまる人と認識されるわけないんだから
董軍をさっさと集結させて禁軍に踏み絵させて洛陽にある馬家の屋敷辺りでお焚き上げしなきゃだし、皇帝が代替わりしたんだから洛陽に住む文武百官で謁見して来ない奴の家は打ちこわししてきた奴らを接待してるうちに家宅捜索もしなきゃだし
言ってはなんだけど大恩ある馬騰さんやら袁家の将を無意味に殺した以上有象無象を殺す事に有意義さを求めちゃ筋が通らん…目についた、くらいの理由で適当に殺して恐怖政治しなきゃ
117 :赤ペン [sage saga]:2020/01/23(木) 12:51:03.10 ID:ZBhG6pUL0
さて続きを
>>107
>>「旦那!あね……呂伯奢様がお呼びだ――ですぜ!」          誰だっけ?と思ったら曹操にイチャモン付けて殺されたと噂の人か
○「旦那!あね……呂伯奢(りょはくしゃ)様がお呼びだ――ですぜ!」  普通に名前読めるかどうか微妙なんで振り仮名ふっといた方が良さそうかな
>>108
>>無論、応えてやったよ。さっさと隠居したい、ってね。 ここは問いかけに対してなので
○無論、答えてやったよ。さっさと隠居したい、ってね。 《問答》としてこっちかな?《あんたは世を泰平に出来るのか?》と問われたなら《できる》と応えてもよさそうですが
>>それから、どうするんだ?決まっている。でも、気が進まない。それは許されない。 これだと【どうするかは決まっている。でも(本当は)それは許されない】みたいに読めるので
○それから、どうするんだ?気は進まない。でも、それは許されない。決まっている。 それとも【決まっている。気は進まない。でも、それは許されない。】の方がいいかな?
>>109
>>後方でドゴォ!と微笑ましい音響が響き、 音響は響くものだからこれだと所謂頭痛が痛いみたいな
○後方でドゴォ!と微笑ましい音が響き、  もしくは【音響が上がり、】とかどうでしょう

近くにいるはずの本来の主の袁紹様にも声をかけてあげてw二郎ちゃんだけにお帰りって言ってさっさと踵返すとか女なら大体察しちゃうゾ
そもそもお帰りを一番に言うためだけに走ってるのもどれだけの見回りに目撃されたやらwww
118 :赤ペン [sage saga]:2020/01/23(木) 13:44:16.18 ID:ZBhG6pUL0
肺炎とか怖いなーとづまりしとこ
>>111
>>だが、馬家を函谷関に向かわせるのはなしだ」  そういえば函谷関(かんこくかん)も振り仮名あった方がいいか?
○だが、馬家を函谷関に向かわせるのは無しだ」  【話だ】と読み間違えたりするかな、しないかな
>>112
>>フン、と応じるしかない。そうか、風ならばそれを果たすだろう。 風がそうすることは二郎ちゃん分かってたよね?自分から「董卓の治世は荒れる」って言ったし
○フン、と応じるしかない。そうさ、風ならばそれを果たすだろう。 もしくは【そうだ、】の方がいいと思います

実際なあ【愚帝】、【肉屋の倅】、【戦争狂】まではぎりぎり対外的に無力化の言い訳が立ったのに…馬騰さんに張遼ぶつけるしか無かったとはいえ袁家に無名差し向けたのは…いっそ自分が交渉に行くか何進殺したら返す刀で呂布に陳宮と代わってもらって陳宮を袁家に向かわせれば
それにしても今回は張燕さん大分色々と得られたな…まさか二郎ちゃんに「抱いたら情がわく」とまで言われるとは。
何時二郎ちゃんが自制を辞めて黒山賊ブッコロになるかとか、漢王朝と完全敵対したら漢王朝への兵力増強の言い訳に使ってたけどこれでもう言い訳する必要もねえ!からの不倶戴天ルートを常に考えてただろうに
そして次郎ちゃんの恐ろしい所はこれを本気で言ってるけど同時に情を交わした詠を悪名かぶせて殺すと喧伝することよ…
張燕なら当然二人の関係も、董卓の治世も、今回の裏側も、大体辺りを付けれるだろうし…下手したら梁剛さんの件も知っててもおかしくないよね
二郎ちゃんのこの公私のバランス感覚があるからこそ張燕もここで袁家に張ったんだろうなあ…
119 :赤ペン [sage saga]:2020/01/28(火) 17:47:52.08 ID:GjEYmFqa0
間違えた…辺りを付けるってなんだよ。当りを付けるだわ

さて、ここから月詠生存ルートを考えなくては…顔がつぶれた女性の死体を董卓だってことにしてつるし上げるか。丁度素材に使えそうな奴もいることだし
問題は董卓たちの顔を知ってる相手か…義勇軍擬きはまだしも曹操がなあ。借りが高くつきそうだし
120 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/28(火) 20:29:33.32 ID:X4YAPSA40
風邪引いてしまいました
回復したが抵抗力が落ちている
食べて寝ような日々でした(言い訳)

>>115
どもです。

>【巡りし毒】かね、シンプルに。
これは良案。よき。

>こっちは【両翼、再び】
シンプルでよきです。ほむ。

>>116
赤ペン先生いつもありがとうございますー!

> …なんて冷静で的確な判断力!!本能が信用してはいけないと警告してるし多分理性でも任せてはいけないとなってるけど…KOOLに判断するんだ
草不可避w
KOOLはpowerワードですねほんと。

>そもそもせっかくの悪名を使わないのがイカンよね…先帝(無能)とか何進(成り上がりの肉屋の倅)はまだしも元直属の上司の馬騰さんを殺した時点で恩義やら情理で思いとどまる人と認識されるわけないんだから
ぐうの音も出ないとはこのことですね!その通りですわ。

>言ってはなんだけど大恩ある馬騰さんやら袁家の将を無意味に殺した以上有象無象を殺す事に有意義さを求めちゃ筋が通らん…目についた、くらいの理由で適当に殺して恐怖政治しなきゃ
それを思っても、出来ないのですよね。
やってもうた感

>>117
>二郎ちゃんだけにお帰りって言ってさっさと踵返すとか女なら大体察しちゃうゾ
なるほどですね。でも稟ちゃんさんのいっぱいいっぱい具合他を結果として匂わせることができているということでひとつ
>そもそもお帰りを一番に言うためだけに走ってるのもどれだけの見回りに目撃されたやらwww
こっちが本命でしたw

>肺炎とか怖いなーとづまりしとこ
奈良、名古屋、札幌!ジェットストリームアタックをかけるぞ!

>実際なあ【愚帝】、【肉屋の倅】、【戦争狂】まではぎりぎり対外的に無力化の言い訳が立ったのに…
詠ちゃんは謀略を夢想しても実行するとへたれる。はっきりわかんだね。ということで一つ。

>それにしても今回は張燕さん大分色々と得られたな…まさか二郎ちゃんに「抱いたら情がわく」とまで言われるとは。
流石張燕さん考察の第一人者。その視点はありがたいのとなるほど感ありました。やったぜ

>同時に情を交わした詠を悪名かぶせて殺すと喧伝することよ…
やっぱり張燕さん安心できないじゃないですかーやったー

>二郎ちゃんのこの公私のバランス感覚があるからこそ張燕もここで袁家に張ったんだろうなあ…
張燕さん、お気づきかもしれませんが大好きなキャラです!
121 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/28(火) 21:18:34.99 ID:X4YAPSA40
はあ、と大きくため息を漏らし、ずびりと茶をすする。うん、まずくないけど美味しくもない微妙な味。ごくごくと一気に乾す。
うん、これだよこれ。これを飲むとなんか安心するのだ。うん、つまり陳蘭が淹れてくれたお茶である。
ぼへ、とぐったりしている俺に何か言うでもなく、まったりとした時間が流れていく。
それが何と言うか、とても落ち着く。だから、ちょっと甘えてみたくなる。

「雷薄が、逝ったよ。あいつ、結局孫の顔を見ずに、さ。
 馬鹿だよな。意地張らずにさっさと会っとけばよかったのに」

悪態を、吐く。そして
手招きを一つ。
ぎゅ、と陳蘭を抱き寄せる。柔らかい感触が、落ち着く。
黙ったままの陳蘭の――ちょっと低い――その体温に落ち着く。

「詠と、月と、さ。事を構えんといかんことになった。
 まあ、色々あった。色々あったんだ。
 少し、疲れた。流石に、堪えた」
 
詮無い愚痴を垂れ流す。誰にも言えない。こんな俺は誰にも見せられない。
だって俺の背には袁家が、幾万の兵が、幾百万の民がいるのだから。

「賈駆さん、でしたっけ」

うん、と頷いて陳蘭に抱きしめてもらう。
背を撫でられる感触が、とても落ち着く。

「私、頭よくないから二郎さまに気の利いたこと、何も言えないです。
 でも、ずっと、ずっといっしょです。
 それに、ご無事でよかったです……。
 心配しました。とっても、とっても心配しました」

きゅ、と。
ふと気づくとその身体は細く震え、双眸からはぽろぽろと大粒の涙が零れ落ちる。

「もう、離ればなれは嫌です。お傍に、置いてください」

ぐ、と抱きしめる。手にした温もりが懐かしく、愛おしい。

「無論だ。賽は投げられた。これからは決着の時さ。
 でもさ。
……やっぱ陳蘭が傍にいないと調子が出ないんだなって」

お前がいないとダメだなんて言える相手はやっぱりこの子だけなのかもしれない。
みっともないとこを見せ、見られ、愚痴を垂れ流し、弱音を吐く。
この子の前ならそれが許される。

「当たり前です。わたし、二郎さまよりお姉ちゃんなんですから」

涙と鼻水でくしゃくしゃな顔で、それでもとびきりの笑顔で得意げに笑う。
今は、今夜だけは甘えよう。
幼子(おさなご)のように身を寄せ合い、傍らの温もりに安心し、俺は意識を手放す。
明日からは、頑張るから。明日からはみっともないとこ見せないから。そう誓いながら。

ただいま。

――おかえりなさい。
122 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/28(火) 21:20:00.83 ID:X4YAPSA40
本日ここまですー感想とかくだしあー

前回、前々回合わせての投稿が納まりいいかな

今回は、今回のみならば
「お帰りなさい」
かなって

イイ感じのやつ、オナシャス

それはそれとして、皆様、移動時はマスク着用オナシャス
123 :赤ペン [sage saga]:2020/01/29(水) 13:57:04.28 ID:R9P2fMOt0
乙でしたー
今回は直し無しかな…

まあ弱音を吐ける相手って言うなら祖授張紘もいける気もするけど…あと程立も大徳に当てられた時に助けられたし黄巾潜入の時も…
このいい意味で空気のような、二郎の体の一部のような一体感…幼馴染は負けフラグなんて言わせねえな
124 :赤ペン [sage saga]:2020/01/29(水) 14:18:27.68 ID:R9P2fMOt0
と言う事で遡って誤字報告を一つ(ォィ
>>凡人の事業計画
>>だからと言って食べる量を減らすなんてのはナンセンス。 《乱が起きる理由は?》→《ひもじいのが嫌だから》で、答えがこれだとそれひもじいですやん!?
○だからと言って食べる口を減らすなんてのはナンセンス。 100の食料を100人で分けるよりは100の食料を10人で分けた方がお腹いっぱいになるよね!というのはナンセンス、という意味ではこれかな?もしくは【食べる人】でも良いかな?

最初の>>30くらいまでの所はノータッチしてたんですね、探せばまだあるかな…
125 :青ペン [sage]:2020/01/30(木) 06:39:58.31 ID:2YipqqpXo
なんか小説推敲支援ソフトなるものがあるらしいずぃ

ttps://crocro.com/pc/soft/novel_supporter/
126 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/01/30(木) 22:01:23.89 ID:5B62vMf40
>>123
赤ペン先生いつもありがとうございますー!

そしてやったぜ。超久しぶりじゃないでしょうか。やったぜ。
いやまあ、短いからね、分かって増すとも。

>まあ弱音を吐ける相手って言うなら祖授張紘もいける気もするけど…
愚痴ならなんぼでもいけますけどね、やっぱ見栄ってのもあるというか、その二人に弱音はマジ窮地

>あと程立も大徳に当てられた時に助けられたし黄巾潜入の時も…
醜態見せてるからこそ、というか陳蘭ちゃんが特別なのやで、ってことで一つ

>このいい意味で空気のような、二郎の体の一部のような一体感…幼馴染は負けフラグなんて言わせねえな
大勝利Vやねん

>>124

>と言う事で遡って誤字報告を一つ(ォィ
きゃあ!
勘弁してください
もしくはあっちで指摘してくださったらぽちっとボタン一つで修正されますので一つ
り、リソースは有限なので……っ!

>>125
そういうのもあるのか。

まあ、勢い任せなのでそういうの導入してみてもいいかな。
ワードのチェック機能と比べたらどうなんでしょ
127 :俯瞰者 ◆e/6HR7WSTU [sage saga]:2020/02/02(日) 09:42:31.76 ID:j823vfdX0
乙です。
陳蘭さんの癒し愛人感が半端ない。『陳蘭ハンパナイ』
ホンマ、離したらあきまへんえ。子供でけたらちゃあんと認知して籍入れて養育費の面倒は見るんやでぇ(なんちゃって京言葉)
こんな彼女も前線にかりだした鬼畜がおるけどね(紀霊dis)

絶対二郎ちゃんは権力で陳蘭さんの縁談破壊しまくった過去があるはずだ(決めつけ)

続き期待です。それとごめんなさい。
128 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/02/02(日) 21:15:39.99 ID:VQW40nQ40
>>127
どもです。

>陳蘭さんの癒し愛人感が半端ない。『陳蘭ハンパナイ』
ありがとうございますー!うひひ。
癒やし愛人、いい表現ですねえ。まさに、って感じです。

>ホンマ、離したらあきまへんえ。子供でけたらちゃあんと認知して籍入れて養育費の面倒は見るんやでぇ(なんちゃって京言葉)

実は死亡フラグ満載の子でしたがなんとかかんとか生き残っております。

>こんな彼女も前線にかりだした鬼畜がおるけどね(紀霊dis)
だ、だって奥向きのことでできることあんまりないんす、多分

>絶対二郎ちゃんは権力で陳蘭さんの縁談破壊しまくった過去があるはずだ(決めつけ)
ここだけは我が儘に我を通しそうですね、互いに

頑張りまする
129 :赤ペン [sage saga]:2020/02/03(月) 13:11:07.78 ID:UaRlL9Z/0
基本的に破壊する前にそもそも発生しないようにしている。に一票
戦わずして勝。これぞ絶対勝利の法則よ
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/03(月) 19:33:09.16 ID:HaVTL71ZO
陳蘭さん出てくると
テレサ・テンの歌が脳裏に流れてくるんだが
131 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/02/03(月) 21:16:38.25 ID:jmj/ziso0
>>129
どもです。

>基本的に破壊する前にそもそも発生しないようにしている。に一票
>戦わずして勝。これぞ絶対勝利の法則よ
ほむん
確かにまあ、あれだけ幼少期からイチャイチャしてたら周りは察するでしょうねw

>>130
どもです。

>陳蘭さん出てくると
>テレサ・テンの歌が脳裏に流れてくるんだが
出会いは誰より早かったからセーフw

時の流れについては、キャラロスト時のBGMですねわかりますん
ロストイベントは前も書いたかもしれませんが、最初期に既に完成されておりました
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/03(月) 22:04:22.87 ID:HaVTL71ZO
> 時の流れに
花の名前の戦艦の二次SSを思い出した
二次創作読むきっかけになった作品でした
133 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/02/03(月) 22:30:00.84 ID:jmj/ziso0
袁家よりの檄文はあまねく諸侯に届けられた。
無論、北方において対匈奴の盾としてある公孫にもそれは届いている。
むしろ事前に、袁紹以下が帰参する前にも打診があったほどだ。それに応じるために準備は整えていた。
北方の備えをしつつの参戦。そう、黄巾の乱の時でも公孫賛は全力を出してはいない。

「はは、やっぱり麗羽も二郎も無事だったか。さもありなん、だな。
 あいつらがそんなに簡単にくたばる訳がないんだよ。
そんなこと、私は知ってたけどな!」

「ご高説勇ましくお見事。
不安げにあちこちと、うろうろと彷徨う姿。
それは行く宛のない迷子のようであったと記憶している。
だが安心してほしい。こと、ここに至って、だ。
そのようなこと、誰にも言うつもりはない。士気に関わる案件であるのを私は理解している。
 涙目で私にあれこれ弱音を吐いていたのも――」

 淡々と述べる韓浩の言葉に、公孫賛は悲鳴と抗議の声を同時に発する。

「うわあああああああ!言うな!忘れろ!忘れてくれー!」

まあ、こんなものかと韓浩は追及の手を収める。
なに、仮の主の平常心を取り戻させるのもお役目というもの。
ぜえぜえと呼気荒い公孫賛を見やり、頷く。これでこそだ、と。
それはそれとして、だ。
韓浩はぎり、と歯を噛みしめる。常になく、額に皺が寄る。

「ま、まあ、そのなんだ。黄巾の時と同じく留守は任せた」

いささか想定よりも消耗した感のある公孫賛の言。それに韓浩は首を横に振る。
決意を胸に。
言説は相変わらず淡々としているが。

「それには及ばない。今回は私も参軍する。させてもらう。
 田豊、麹義の両名の武威で匈奴の蠢動は抑えられる。これは確実。
 なれば戦力の分散は愚策というもの」

淡々と語る韓浩。
だがしかし、公孫賛はそこに隠しきれない熱を感じ取った。感じてしまった。

「いや、韓浩が参軍してくれるなら百人力だ。実際、ほんと、助かる。
 でも、有利不利じゃなくて、理由があるんじゃないか?」

公孫賛の言葉に韓浩は言葉を選び、それでも言う。言うのだ。
常になく、ほとばしる。

「雷薄どのが、討たれた。紀家の宿将である雷薄どのが。だ。
……実際、小生意気な小娘でしかなかった私だ。それなのに何くれとなくよくしてくれた。
 常々、恩義は返さねばと思っていた。
 そう、雷薄どのが討たれた。討たれてしまった。
それについて、いささか以上に思う所がある。

 ――参軍の許可を」

素直じゃないなあと公孫賛は思う。
恩人が志半ばに討たれた。だから仇を。
実に普通の話なのに。

「いいさ。韓浩が来てくれるなら、千人力だ。見せてやろうじゃないか、公孫の武威を。
 董家軍の騎兵も武名あるけどな、白馬義従も捨てたもんじゃない」

頷く韓浩の肩を抱き、公孫賛は笑う。
この無表情で無愛想な腹心――借り物ではあるが――の思いは無駄にはしない。するものか。
準備は万全。高らかに公孫賛は命じる。

「白馬義従、出るぞ!」

漢朝騎兵の最精鋭一万、洛陽を目指して出撃。

◆◆◆
134 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/02/03(月) 22:30:33.68 ID:jmj/ziso0
くすり、と曹操は艶やかに笑う。
これでなくては、と軽やかに笑う。

「ふふ、そうよね。そうでなくてはいけないわ。麗羽、二郎。
 まさか董卓に捕えられるとは思っていなかったけども。
 正直、心が躍るわ……」

身体も、火照る。
艶然と笑う。きっと失ったものの大きさに身を震わせ、それでも前を向いて進むのだろう。
その覇気、意思の力を思うほどに曹操の官能は刺激される。

「か、華琳様!御身はかけがえのないもの!
 ここは戦力の温存もあるべく――」

ぎろり、と曹操は腹心たる荀ケを睨む。興醒めなことを言うなとばかりに。

「いい?桂花。
 私はね、この中華。盗むよりはね」

奪いたいのよ――。

そう。であるからこそ袁紹の発した檄文。
それが描く反董卓連合の絵図。
それが示す、強いる選択。董卓が牛耳る漢王朝を選ぶかどうか。
……いや、これは選別の儀式に近いのだろう。

「ふふ、面白くなりそうだわ」

なに、面白くなければ面白くするだけのこと。

曹操。
紀霊が最も警戒する英傑が見据える未来は定かならず。
ただ、その覇気は比類なきものであった。

曹家軍、洛陽に向け出陣。

総勢一万の大軍。いずれも精兵。
135 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/02/03(月) 22:30:59.79 ID:jmj/ziso0
◆◆◆

「桔梗さんは益州に帰らないの?」

馬家は既に軍を発している。そこに届いた袁紹による檄文。それに応じて馬家は函谷関を大きく迂回して反董卓連合への合流を目指す。
ちゃっかりと言っていいかもしれない。同行する厳顔に馬岱は不思議そうに問いかける。

「うむ。劉璋殿が囚われているのでな。益州劉家は動かん。じゃが、此度の戦に我が主は注目されておる。
 故にまあ、生き恥を晒しながらもこうして同道を願っておるというわけじゃ」

にまり、と口を歪める厳顔の心根を読めるほど馬岱は人生経験が豊富ではなく、それに思いを馳せるほどに智謀に自信もなかった。
故に、そういうものとして受け入れる。おかしな動きをすれば、その時はその時である。
戦場は千変万化。ならば目の前の事象を受け入れ、動くのみ。ましてや馬家当主たる馬超が決を下したのだ。それを支えるのが役目と馬岱は心得ている。
それをずっと、物心ついた時から期待されていたのだから。
それを疎かにしては敬愛する叔父に顔向けができないというものである。

「しかし、本当に韓遂を北方の護りに充てるとはのう。いやはや、たいした肝の太さじゃ」

揶揄したような口調。それに乗らずに馬岱が応えるのはあくまで飄々。

「んー、たんぽぽはいつでも本気だよ?韓遂さんが何かしたら、洛陽を落とした後に取って返す。
 そして今のお姉さまは無敵だよ?
 ねえ?」

これまで無言で馬を進めていた馬超がうっそりと応える。

「……誰だっていい。立ちふさがるやつは切り捨てる。それだけだ」

馬岱は苦笑する。馬超本来の闊達さは見る影もない。だが、こちらの言に受け答えするだけましになったと。
そして目にしたならば、牽制にはもってこいである。

「おお、怖い怖い。
今の馬超殿の前に立つ輩には憐れみすら覚えるのう」

茶化す厳顔の言葉にも馬超は眉一つ動かさない。

「ああ、そうさ。父上が死んだんだ。それ相応の報いはくれてやる。くれてやるとも。
 ――殺してやる」

いささか、いれこみすぎかなと。
馬岱にも思うところはあるにしてもこれはいひどい。

「……まあ、二郎さんがきっとその場を準備してくれるよ、ね!お姉さま」

意識して馬岱は馬超の意識を誘導しようとするのだが。

「二郎……。そうか、あいつも、狙われたんだな……」
「そ、そうだよ?だから、ね?」
「あいつは助かって、何で父上が……!」

その言に馬岱は顔を引きつらせる。しまった、話の持って行き方を間違えたかと。

「き、紀家の宿将の雷薄さんを……。ううん、それより、許せないのは董卓だよね、お姉さま。
 特に張遼なんか、あれだけ目をかけられてたのに、さ!
 ――お姉さま、頭を冷やしてね。武ならともかく、騎兵の運用ならば相当な遣い手だよ?」

慌てて矛先を逸らす。かつての盟友に。

「――は!少しはやるかもしれないけどな、叩き潰してやるよ」

にまり、と厳顔は内心ほくそ笑む。
どうやら益州に鎮座する主に色々と面白い情報が届けられそうだ、と。

――反董卓連合、一枚岩にあらず。
136 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/02/03(月) 22:31:31.83 ID:jmj/ziso0
◆◆◆

「穏、どうしたものかしらね」

袁紹より届いた、その檄文を手に孫権は腹心の陸遜に問う。
既に沮授より内々に出兵の打診……というより要請があって後のこと。
既にある程度出兵の準備は出来ていたので特に混乱はないのだが。

「そうですねえ。陣構えをもうちょっと豪華に、派手にしてもいいかもしれませんねえ。
 どうせこうなっては勝つのは袁家ですし」

既に袁家の勝ちを確信した陸遜に孫権は問う。

「――穏も袁家の勝ちは揺るがないと思うの?」

検算する。

「無論。負ける要素はほぼありません。
で、あればここは全力で袁家に張るべきかと思いますねぇ〜。
 長沙の太守の座すらまだおぼつかない孫家。声望が今は何より欲しいところです。
 そうですねぇ。もっと言えば」

荊州を頂けるくらいには活躍してみせましょうかと。

「――なるほど。いずれ劉表殿は益州に赴くと。
そしてその後釜には袁術殿が宛てられる予定だった、と。
 だけれども彼女は皇后となる身。空白地となりかねない荊州は確かに狙いどころね。
 あまり欲張っても仕方ないし、そこを此度の目標としましょう。
 ただ、それにはそれなりに手柄を挙げないといけないわね?」

陣構えはどうするのかと孫権は問う。

「まずはいかに此度の出兵に力を入れているかということを示すためにも、蓮華様にご出馬願います。不肖私が補佐を。
 そして副将にはシャオ様。その補佐には孫家最強の……」

「思春ね。確かに江賊上がりの思春の声望を上げるには絶好の機会。
 当然明命も連れて行くわよね。守りは祭がいれば大丈夫でしょう。そうね、亞莎もそろそろ責任ある立場で経験を積むべきだものね。
 でも、シャオまで連れて行くとなると、万が一の時が困ると思うけど」

一つ考え込んで孫権は眉を顰める。

「だからいいのです。それくらい大きく賭けるべきです。そしてシャオ様は袁術殿と懇意。なれば……」

それに孫権は得心する。

「そうね。袁術殿は皇后、いずれ国母となるべきお方。
なれば此度の仕儀に心を痛めているはず。
 シャオは当然お慰めするでしょうね。となれば。袁術殿と孫家の繋がりを諸侯に知らしめることができる。
 ……江南の一豪族と侮られることもなくなるわね」

無論、それだけではない。孫尚香は兵卒に絶大な人気がある。天真爛漫なその言動だけではない。
実際、兵を操るのも末恐ろしいくらいに巧みなのである。或いは瞬間の判断においては孫堅をすら凌ぐかもしれない。
よろしいとばかりに手を打ち、孫権は陣構えを命ずる。

「孫家百年の計はここより始まる。
 穏、頼りにしてるわよ」

「無論、お供いたします。ええ、二郎様にいいところ見せちゃいましょう!」

「じ、二郎は関係ないでしょ!穏!」

軽やかに主の怒気――とは言えぬほどのたわいもないものだが――を躱しながら陸遜は笑う。
いよいよ、戦場でまみえることになるのだ。
あの男は、いかなる絵図を描いてくれるのだろうか。いっそ敵でないのが残念なほどに心は昂ぶる。

褥での睦み合いを脳裏に思い浮かべ、陸遜は人知れず艶然と笑うのであった。
137 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/02/03(月) 22:34:22.36 ID:jmj/ziso0
本日ここまですー感想とかくだしあ

題名案については、

「鏑矢」

ですが、いまいちなのでオサレなやつオナシャス
オナシャス

頑張る。今を一生懸命頑張るんや。なのでガソリンをオナシャス。
前に進むために。前に。
138 :赤ペン [sage saga]:2020/02/04(火) 12:58:48.07 ID:1vO9QCos0
乙でしたー
>>135
>>馬岱にも思うところはあるにしてもこれはいひどい。 最近はこういうケアレスミス以外は減ったなあ、と感じたり
○馬岱にも思うところはあるにしてもこれはひどい。  違和感を感じたり、胸先三寸で決まったりしなくなったよね
>>――お姉さま、頭を冷やしてね。武ならともかく、騎兵の運用ならば相当な遣い手だよ?」  固い感じが違和感を
○――お姉さま、頭を冷やしてね。武ならともかく、騎兵の運用なら相当な遣い手だよ?」   喋り言葉としてはこの方が良さそうかな?
>>にまり、と厳顔は内心ほくそ笑む。 顔に出ておりますぞ厳顔殿!内心が隠せておりませぬぞ?
○厳顔は内心ほくそ笑む。      それとも【にまり、と厳顔は内心の笑みを隠しきれない。】とかかな?

雷簿さんやっぱり慕われてたんやなあ…いったいどれだけの兵卒が雷簿がつき従ってるからこそ二郎に忠誠を誓ったことやら
韓浩のこれほどの激情は二郎にまだ帰りたくない、と言った時以来か?イライラで言うなら桃色の時に静かに燃えてただろうけど
さて…ここはあえて荀ケを評価してみるか。状況から言って曹操が参銭しない理由はないのにあえて止めに回ったのは【艶然と笑う】ほど猛ってたから落ち着かせたのかね
夏候惇は一緒に燃え上がるだろうし夏侯淵もこの状況だったら止めることは無いだろうからここで曹操を落ち着かせられるの彼女くらいなのよね
昔の曹操しか目に入らないようなネコミミだったら曹操の怒りを買うことを恐れて忠言なんぞしなかったろうし(しなくても大きな問題は起こらないだろうし)むしろ【艶然と笑う】曹操にうっとりしてたかもしれんな
ところで馬超さん的には【上司を裏切って切り殺した董卓】と【上司を置き去りにして逃げ出した厳顔】を重ねて嫌がらせ(温和な表現)したりしない?
あの場(洛陽)にいたのに生きてるって意味では二郎と一緒やで
孫家は…凄い良い所を上手く突いてくる感じがw公私を無理なく両立させてると言うか…私的な利益と公的な利益を一挙両得してるね。多分尚香も生死不明を聞いたときはガチで助けに行こうとしただろうし今回も裏表無く無事な袁術に抱き着く、いや、裏も表も合わせて袁術の無事を喜ぶか
139 :赤ペン [sage saga]:2020/02/04(火) 15:48:30.98 ID:1vO9QCos0
そういえば
>>133
>>「それには及ばない。今回は私も参軍する。させてもらう。 他でもいくつか使ってますが>>【参軍】軍事についての相談に関係する こと。軍の計画に参与すること
○「それには及ばない。今回は私も参陣する。させてもらう。 なんとなく違和感があるので>>【参陣】陣営に参着すること。軍陣に 加わること。 の方が良さそうかな?

【参軍】だと軍師っぽいと言うか、後方支援とか兵站管理とかでも良さそうかな?【参陣】だと轡を並べると言うか共に戦場に向かう感じがする
140 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/02/05(水) 20:59:25.34 ID:qJZTEwJZ0
>>138
赤ペン先生いつもありがとうございますー!

>最近はこういうケアレスミス以外は減ったなあ、と感じたり
い、一応自分でもチェックはしてるんですがやはり目が滑りますw

>雷簿さんやっぱり慕われてたんやなあ…いったいどれだけの兵卒が雷簿がつき従ってるからこそ二郎に忠誠を誓ったことやら
あの韓浩ですら恩義を感じてたくらいですからね
その雷薄も先代のとーちゃんに拾ってもらって……そうやって回っていくんやなって

>韓浩のこれほどの激情は二郎にまだ帰りたくない、と言った時以来か?
感情というか意思の発露はそうですが、今回はもっとですね

>状況から言って曹操が参銭しない理由はないのにあえて止めに回った
ほむ。確かにそうですねえ。なるほどなあ。

>あの場(洛陽)にいたのに生きてるって意味では二郎と一緒やで
ばっちょさんがそこまで考えが及ぶようならまた違った展開があるんだよなあ……
かなしみ

>孫家は…凄い良い所を上手く突いてくる感じがw
実際美味しいとこいきますよねw
141 :赤ペン [sage saga]:2020/02/06(木) 11:14:43.25 ID:QhMYgiqV0
>>ばっちょさんがそこまで考えが及ぶようならまた違った展開があるんだよなあ……
えっ馬超さん厳顔にどういう経緯でこっちに流れてきたか聞いてるよね?
むしろ短絡的に「自らの仕えるべき主を囮にして逃げ延びるなど恥を知れ―!」とか言って斬りかかりそうなものだと…
それともほとんど面識のない厳顔はどうでも良いけど知り合いの二郎には「なぜ父上を助けてくれなかった」とか思っちゃったのかなあ…同じ家に住んでたわけでも無いのに
142 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/02/06(木) 20:52:09.19 ID:hLXKEP5b0
ほむ。
ばっちょさんが厳顔についてマイナスなものを抱かないのは確定なのです。

めっちゃ久々にコンマ判定でもしてみましょう
末尾コンマで判定

1-3元々馬家との交渉を劉焉に命じられていたので、本当に無実。
4-9↑の予定だったのだが、ゴタゴタからなんとか逃げてきた経緯をごまかしている
0実は術者で思考誘導している
143 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/02/06(木) 20:53:25.15 ID:hLXKEP5b0
ということで、元々の仕込みがあってそれを利用してごまかしているということ。
これ劉焉さんマジでやべー陰謀家ですね
144 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/02/06(木) 21:07:47.43 ID:hLXKEP5b0
術者だったらどうしようと土器土器しました
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/02/07(金) 10:34:29.85 ID:1m4b0ZOa0
乙です
本当は董卓による襲撃があって逃げてきたんだけど、タイミングよく(悪く)馬家に交渉に来ているときに洛陽で劉璋が囚われたのをたまたま聞いたってことにしたってことでFA?
146 :赤ペン [sage]:2020/02/09(日) 17:47:32.68 ID:2z4d1fZO0
そういえば
>>105
>>絞り出すよな賈駆の言葉に、皇甫嵩は困ったような顔を浮かべる。  ここにもあった
○絞り出すような賈駆の言葉に、皇甫嵩は困ったような顔を浮かべる。 ですかね

ふと考えると袁術と劉弁の関係性から言って迂闊には殺せないのか
場合によってはそこから袁家との関係緩和に成り得るし
147 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/02/11(火) 21:37:38.60 ID:rLBTnl7I0
>>145
どもです。
そういうことでございますということになりました。

>>146
>ふと考えると袁術と劉弁の関係性から言って迂闊には殺せないのか
>場合によってはそこから袁家との関係緩和に成り得るし
誰が誰をでせうか

詠ちゃんは風ちゃんをコロコロできないというのであればそうです
148 :赤ペン [sage saga]:2020/02/12(水) 09:35:22.63 ID:4su2VJgH0
ああ、いや劉協派閥と言うか…この世界線でここまでやった以上反董卓連合の御輿になりうる劉弁を押し込め(軟禁)で済ませて殺さない理由ってなんだろな、と考えたんだけどね
逆に言えば劉弁君を殺しちゃうと劉協派閥(劉協がいるとは言っていない)がいざという時(董卓が負けた時)に出せる手札が劉弁君くらいだな、と
そしてこの手札を上手く使えば反董卓連合の発起人の袁家に「自分たちは何とか劉弁を護ってたんだ」とか言って温情を貰いつつ、袁家との関係を修復して他の諸侯も皇帝の一族が生きてるなら激発はしないだろうと踏んでるんだろうな、と
リアルではそういうのが特にないから病死()しちゃうけどこの状況なら劉弁の価値ってかなり高いよな、と思ったり
149 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/02/12(水) 21:09:37.24 ID:RxlJYC8G0
>>148
ほむ。

>劉弁を押し込め(軟禁)で済ませて殺さない理由ってなんだろな、と考えたんだけどね
いや普通に先帝をコロコロするってハードル高杉案件ではないでしょうか。
そんなんできひんやん普通……

>逆に言えば劉弁君を殺しちゃうと劉協派閥(劉協がいるとは言っていない)がいざという時
なるほどですね

よし!
150 :赤ペン [sage saga]:2020/02/13(木) 09:15:14.95 ID:S7ZYez4l0
>>そんなんできひんやん普通……
リアル先輩がリアリティー君をぶん殴った案件?まあリアルだと【董卓じゃ!董卓の仕業じゃ!】されてるから真実は闇の中ではあるけど
151 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/02/13(木) 21:17:48.24 ID:HUnWV9g80
天気晴朗なれど波高し。
時代の波濤は否応なく襲いかかる。敵味方の区別なく。

ついに袁家は兵を発したのである。発した。

麗羽様が率いる旗本一万五千。軍師は稟ちゃんさん。
俺が率いる紀家が一万。
斗詩率いる顔家が一万。
張?率いる張家が一万。
猪々子が率いる文家が一万。
真桜率いる工兵が五千。
陳蘭が率いる弓兵が五千。
袁家だけで六万五千の大軍である。

その兵站を司るのが張紘だ。食糧だけじゃなく、武器防具、その他雑貨に至るまでについても傘下の母流龍九商会が請け負う。
そこに諸侯の軍勢が加わる。ばっくり把握しているだけで白蓮とこから一万、華琳とこも一万、馬家から一万五千、孫家が五千。
確実に計算できるのは以上の戦力。
他の諸侯の兵には正直期待していない。というか、勝つだけならば袁家の兵力だけでやれるし。やるし。
後はまあ、勝手働きと称して有象無象が褒賞を求めてやってくるくらいだろうか。まあ、数千くらいだろうから大勢に影響はない。はずである。

そこいらへんをも織り込んで張紘は動いているだろうから、多分大丈夫だろう。何せ張紘だぜ。多少の誤差程度くらいはなんとかしてくれるさ。
だからこそ、そこを狙われると困ったことになるんだけどね。俺なら狙うし。
でも、だからこそ張紘の身の安全は赤楽さんの出番だ。あのおっかない美人さんが秘書兼護衛としているから大丈夫。
つまり、何が言いたいかというと、勝ったも同然!ってことだ。
これは勝ったなガハハ!

……。

いや、まあ、なんだ。メイン軍師たる風ちゃんがいないとこの思惑がどうかという答え合わせもできないから、ちょっと心配なのも確かであるのだ。
ほら、稟ちゃんさんとか、忙しいから俺の思惑とかぼんやりとした絵図の相談とかできないじゃない。アホなこと言ったら怒られそうだし。

「全く。思い違いも甚だしいですね。貴方はもう少し自分の立場というものを、重みを認識するべきです」

って。
げえ、稟ちゃんさん!

「ってなんでここにいるのさ。忙しいだろうに」

俺の言葉を聞いた稟ちゃんさんがにじり寄ってくる。with眉間に皺である。ふふ、こわい。

「その認識には正直戸惑うどころか呆れすら感じます。
いいですか。此度の反董卓連合を率いるは袁家。その武の責任者は二郎殿、貴方です。
 その貴方がふらついていてどうするのですか!
 いいですか。貴方の号令で十万を超す軍勢は動くのです。不甲斐ない様を見せてはいけないというのは先刻ご承知でしょう!
 ご心痛はあってもそれを見せてはいけない。それに――」

遮る。

「すまん。余計なことを言わせた。言いづらいことを言わせた。すまん、そしてありがとう。
 んで、俺に対する気遣いは無用。この身は袁家に仕えるが本懐。
 つうか、そうだな。
董家幹部を斬る覚悟ならば、既にしているとも」

だからさ、と笑いかける。

「味方の犠牲を少なく、戦後の不安要素をも少なく。
 勝ち馬に乗りに来た諸侯の勢力を削りながらも完勝する。
 なに、敵も味方も生身さね。斬れば死ぬんだ。
――斬っても死なぬ僵尸(キョンシー)に比べれば、さ。
楽なもんじゃないかい?」

踊らされるのはもうこりごりだ。

「そろそろ、清算せんといかん。頼りにしている」

立ちふさがるは月配下の諸将。だが、真に討ち取るべきは背後のくそったれ。

「頼む。俺なんて適当に使い潰してくれていいから、頼むよ。
完全勝利を、頼む。
 頼んだ」

「――もとよりそのつもりです。
 ええ、二郎殿。貴方のお好みの、つまらぬ戦いを積み上げてみせましょう。
 戦う前から勝ちが約束されたような、それでこの中華を塗り上げてみせましょう。
 戦わずして勝つのが最上ではない。きっちりと中華に袁家の武威を刻み込むとしましょう」

多分俺は稟ちゃんさんの言ってることの半分くらいしか分かってないのだろうと思う。
だが、それでも譲れないものはあるし、思う所もある。
そうして、挑むのだ。
こんなにも、やりたくない戦(いくさ)を。
152 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/02/13(木) 21:18:30.14 ID:HUnWV9g80
ほむん

本日ここまですー感想とかくだしあー

題名案「進軍」

よさげなの、オナシャス
153 :赤ペン [sage saga]:2020/02/14(金) 16:01:54.91 ID:E8KDhz250
乙でしたー
>>151
>>そこに諸侯の軍勢が加わる。ばっくり把握しているだけで白蓮とこから一万、 【ばっくり】だとなんか大口開けてる感じがする
○そこに諸侯の軍勢が加わる。ざっくり把握しているだけで白蓮とこから一万、 《大まかに》ならこっちの方が一般的かな?
>>後はまあ、勝手働きと称して有象無象が褒賞を求めてやってくるくらいだろうか。 台所仕事?>>【勝手働き】
○後はまあ、義勇兵と称して有象無象が褒賞を求めてやってくるくらいだろうか。  まあ劉備みたいなことをするやつとか、頼まれたわけじゃないけどあんたの味方するぜ!(後でお礼は頂戴ね)みたいなのも一応義勇兵…義勇兵だから
>>貴方はもう少し自分の立場というものを、重みを認識するべきです」   間違いでは無いです
○貴方はもう少し自分の立場というものを、重みを、認識するべきです」  ただここに一拍置いたほうが良さげかな?ともしくは【立場と言うものの重みを、認識】とかどうでしょう
>>戦う前から勝ちが約束されたような、それでこの中華を塗り上げてみせましょう。 ちょっと違和感が…間違いと言うほどでは無いけどこれだと【それで】が何を指してるのかちょっと分かり辛いので
○戦う前から勝ちが約束されたようなそれで、この中華を塗り上げてみせましょう。 最初は【塗り潰す】とかも考えたけど別に袁家で統一しようとはしてないしそこはこのままで

何となくだけど二郎ちゃんはまだ漢を延命させようとしてて、華琳辺りは先を見据えて袁家の手札を暴こうとしてる感じが…義理95と私怨5くらいで動いてそうな公孫に私怨60義理20、義務20くらいの馬家、損徳勘定70義理30くらいの孫家。かな?
袁家?別に国をとる気はないから二郎ちゃんが延命させたいって言うならまあ…ムリそうなら仕方ないから上に立つか。みたいな?余所が上に立っても構わないけど袁家が言う事を聞いたらいいですね?とか言いそう
154 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/02/14(金) 21:18:11.46 ID:tuto3YZH0
>>153
赤ペン先生いつもありがとうございますー!
ほむ。

>【勝手働き
これ、ググっても出ないのですね。
ローカルなとこで見たのでやめとくか。好きな言葉だったのですがw

>何となくだけど二郎ちゃんはまだ漢を延命させようとしてて、
いや別に所詮システムなんだからそれでよくね?
というやつです

>華琳辺りは先を見据えて袁家の手札を暴こうとしてる感じが…
手駒になるはずだった宦官の損耗次第じゃないっすかねえ

>義理95と私怨5くらいで動いてそうな公孫に私怨60義理20、義務20くらいの馬家、損徳勘定70義理30くらいの孫家。かな?
私怨の塊の韓浩もこれにはにっこり
孫家はもっと軽そうなイメージw

>袁家?別に国をとる気はないから二郎ちゃんが延命させたいって言うならまあ…ムリそうなら仕方ないから上に立つか。みたいな?余所が上に立っても構わないけど袁家が言う事を聞いたらいいですね?とか言いそう
国をとるのは、中枢を握ると同義なんやなって
なので、割と現状に対する認識も違う可能性もありますね

まあ、今のところ袁家は利益あって盤石ですな
ガハハ勝ったな。
155 :赤ペン [sage saga]:2020/02/19(水) 10:55:24.65 ID:Zm6RXC+70
SAOみたいなのってダメージ算出はどうやってるんだろうか?とふと思った
例えば力が100の戦士が攻撃力200の剣を装備してて守りが50の戦士が防御力100の鎧を装備してるとして、パンチとキックでダメージは変わるのかとか、剣の刃の部分と腹の部分で変わるのかとか、袈裟切りと切り上げで変わるのかとか、そこまでリアルにできるとしたら装備品の数値はどうやって決まってるのかとか
攻撃力10の人が防御力200の人に目つぶしを仕掛けて効果はあるのかとか…素早さの数値が倍近く違ったら体感時間も変わったりしないのかとか(まさか素早さ=足の速さじゃないよなとか)
156 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/02/20(木) 20:57:51.00 ID:mnjV/Xve0
「華琳さん、歓迎いたしますわ」

おーっほっほ、と高笑いする袁紹。内心曹操は苦笑するのだ。
変わらないな、と。
そしてそれでこそ、とも思うのだ。それでこそ、一手打った甲斐があったというもの。
そう、自分の一手により彼女は無事洛陽を脱したのだが、それを微塵も気にした様子もない。
この図太さ、あるいは面の皮の厚さは見習うべきであろうか。いや、本人は全く素なのであるのであろうけれども。

それはともかく、真名を交わした親友――これで曹操は袁紹を親友と思っているのである――の出迎えに曹操は気を良くする。
無理もない。袁紹が自ら出迎えたのだ。これは破格の扱いである。
反董卓連合を主催する袁家、その当主自らの出迎えは大いに曹家軍の立場を強めるものなのだ。
宦官の手先、元締め。ややもすると、敵視されても仕方ないのだ。
それを一気に解消してくれたのだ。笑みもこぼれるというものである。

「ええ、麗羽。
わざわざの出迎え、ありがとうね」

あくまで公的な立ち位置ではなく、私的な関係を押し通して曹操は軽やかにほほ笑む。
なに、自分の笑みなぞ安いものだ。目の前の親友、と比べればその価値は天と地である。
だからこそ曹操は袁紹と親しげに笑い、哂うのだ。実にいい友達を持ったな、と。

久方ぶりの邂逅に話は弾む。袁紹とて愚物ではない。ましてや袁家を率いるのだ。話題の共通事項は多い。
或いはかつてよりも有益な関係だったかもしれない。そう思うが、それもどうでもいい話。
そう思う、そう思った。そしてそれがいかに甘い認識だったかと痛感するのだ。
目の前の現実に。

◆◆◆

「――麗羽、これは、なに?」

十数万の軍勢が集まるのだ。大天幕くらいは想像していた。だが、目の前にあるのはそんなものではない。
煉瓦と土塁で固められた防壁。それだけで瞠目してしまうものだが、それどころではない。

「なに、と言われても困りますけども……。
華琳さん、貴女の逗留先でもあるのですわ。不備については随時改善しますとも。
 一旦は納得してほしいものですわね。
 いえ、むしろご不満なところがあればおっしゃってくださいな」

曹操は暫し自失する。そして、苦笑。
そして、ここで自失した自分を恥じようとも思わない。
なぜならば、目の前にあるのは要塞、とは言えないまでも。
ちょっとした砦以上のものである。
今現在もその領域を増やすべく人夫が工事を進めるそれに、流石の曹操が絶句するのだ。

「まさか天幕なんかに、このわたくしが逗留するわけにはいかないでしょう?
 反董卓連合に与(くみ)する皆さんが集結するのにも時間がかかりますし。だったらきちんとした宿泊施設は必要ですもの。
 流石に兵卒の皆さん全てには行き渡らないですけれどもね」

曹操は内心頭を抱える。前提とする地力の桁が違う。母流龍九商会より糧食の提供を打診された時に感じたのもそれだ。
不用意に借りを作る愚を犯さず、自前で賄ってはいる。おそらくそういう諸侯がほとんどではあろうが、時が過ぎるほどに袁家から提供される糧食に依存せざるをえなくなるだろう。
じっくりと腰を据えてその名が轟く二つの関を攻略するのだろう。ああ、そうだ。董卓軍のみならず諸侯の軍勢、財政をも磨り潰すということか。

やってくれる。
やってくれた。

そしてこの絵図を描いたであろう男の姿を認め、曹操は極上の笑みを漏らす。
そう、やはりあの男は自分の前に跪くべきなのだ。もっと早くに、多少強引にでも本気でそう動くべきであった。
猫科の猛獣の笑みを浮かべ、曹操はにこやかに笑いかける。

「――あら二郎、息災そうでなによりだわ」

――反董卓連合、未だ集結には時が要される。それまでの時を曹操は無駄にするつもりなんてこれっぽっちもなかった。
157 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2020/02/20(木) 20:59:13.18 ID:mnjV/Xve0
◆◆◆

「ふう、今のところ兵站は順調、か」

張紘はあちらこちらからもたらされる報告書に目を通し、やれやれとばかりに伸びをする。

「そうだな、街道の整備も順調に進んでいる。時が味方であると確信できるほどに、だ。
これはかなり楽ができそうだな。
 そら、だから少しくらいは息抜きしてもいいだろうよ」

白湯(さゆ)ですまんがな、と。赤楽が詫びながら武骨な湯呑(ゆのみ)を差し出す。

「まあ、そうだな。あまり気を詰めてもいいことないや。
ありがたくいただくとするか」

ずびび、とすすって尚、視線は遠くある。
脳裏には物資の調達と配分の計画。それが浮かんでは消えていく。

「まあ、実際十万余の軍勢への手配なんぞできるものかと思っていたのだがな」

なんとかなるものだなと赤楽はくつくつと、笑う。つられて笑う張紘の笑みはどちらかと言えば苦笑寄りであろう。

「まあ、なあ。それもきっちりと物資の確保を沮授がしてくれてるからさ。
今まで何進に遠慮して、進めていなかった洛陽への街道整備も進むし、だぶついてた食糧もはける。
 今はそれほどでもないけど、諸侯からの引き合いも増えるだろうしな」

実際、ぼろ儲けもいいとこさ。
と張紘は肩をすくめる。

「せいぜい高く売りつけてやればいいさ。あちらだって戦後の利権が目当てで参軍しているんだ」

地力のある者は戦後を見据えて返済を選ぶだろうってさ、と張紘は苦笑する。
参軍した諸侯の財布事情まで見据えて、すり潰す。なんとも悪辣なことさ、と。

「ふむ、流石と言うべきか、気が早いと言うべきか。既に戦後を見据えているのだな、あの御仁は。
 まあ、尋常にやれば、だ。
どう考えても負ける要素もないことだしな。
黄巾の乱で蓄えられた諸侯の力を削ぎつつ、勝つ。か。
 二兎、追うのは大変だな」

まあな、と曖昧に笑って張紘は歩き出す。物資の集積場に向かう。現場で何をするわけでもないのだが、総責任者の彼が姿を見せるだけで現場は引き締まるのである。

薄い笑みを浮かべつつ赤楽は付き従う。油断なく周囲に視線を配りながら。
どこに刺客がいるか分からないのだ。自分が董卓軍ならば目の前の青年をまず狙う。それだけで兵站は破綻するのだ。袁紹や紀霊なんていう警備や護衛が厳重な人物よりよほどお手軽かつ重要人物なのだ。
餓えた軍の行く末なぞ哀れなものだ。それを赤楽は痛いほどに理解している。故に気を抜かない。

◆◆◆

「ふーむ、劉焉殿は不参加か。まあご息女が人質にとられてるから仕方ないかー。
 劉表殿は五百の弓兵のみ、か。やはり積極的には関わらないか。でもその分物資の提供を、ってとこかねえ」

一応皇族に連なる方だし、軍を率いる方にも挨拶しといた方がいいかと張紘は決断する。

「少数精鋭って奴かな。おいらでも聞いたことがある方だ」

率いる将の名を見て呟く。

「ほう、いったいどなたが率いてるのか聞いてもいいか?」

「構わねえよ、これからちょっくら挨拶に行くしな」

――黄忠というのが、その将の名であった。
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