【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part7

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182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2025/07/27(日) 07:57:33.68 ID:fJEcAFvUo
魔女たちなら力付くで連れ戻せそう
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2025/07/27(日) 14:59:01.82 ID:GEu9jyVLO
強キャラ属性スライムの中のトップともなると敵に回すとかなり厄介そう
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2025/07/27(日) 17:26:24.72 ID:K6NZPwaxO
黄スライムと灰スライムにも名前あるのかな?
過去の募集キャラの流用?
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2025/07/27(日) 17:54:16.67 ID:fJEcAFvUo
ヴィア筆頭にクロシュヴィアの分株たちはデロデロ派なのだろうかこれから敵になるのか
186 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2025/07/27(日) 18:10:43.62 ID:wcKb1zkK0
クロシュヴィア氏の説得はものすごく困難ですが、スライムが集まればクリティカルなアイデアが湧くかもしれません。三人よれば文殊の知恵、船頭多くして船山に登るというコトワザもあります
スライムが多い場ではモニョモニョというスライム語のおしゃべりが聞こえてきそうですが、実のところスライム語は人の耳では聞き取りづらい周波の音なため、スライムたちがはしゃいで大騒ぎしても人間にとってはあまりうるさくないようです。でもぴょんぴょん飛び跳ねたりすれば流石にうるさいかもしれません

魔女集会の面々は強い力を持っていますが、クロシュヴィアを強引に連れ戻すのは至難だと思われます。クロシュヴィア氏は普段はとぼけていますが、本気を出した場合の脅威度・危険度はあのカリス・ノーランドを超える――と大魔女クローディアは思っています。そのような恐ろしい相手なので、クロシュヴィアの感情を刺激するようなやり方は悪手となる可能性が高いでしょう

全てのスライムが強いわけではありませんが、カリス・ノーランドが目を付ける程度にはスライム類のポテンシャルは輝きを秘めています。そしてその中で伝説とまで言われたクロシュヴィアは実際すごいのですが、当然敵に回すととても厄介であると言えるでしょう。しかしクロシュヴィアを止めるならば、衝突は避けられないかもしれません

黄スライムと灰スライムに固有の名前はありません。カリス・ノーランドが名前を与えなかったからです。なお本人たちや周囲の者たちは、黄色ちゃん、灰色ちゃんというような呼び方を採用している場合が多いです
フレアさんは過去に募集した案を使わせていただきましたが、黄スライムさんと灰スライムさんにそのような原案はありません

クロシュヴィアの株分けといってもクロシュヴィアにその思考・思想を支配されているわけではないので、最終的に彼女らがどう判断するかは彼女ら自身の心に委ねられています。とはいえ元々がクロシュヴィアだったことを踏まえると、デロデロ思想に共感しやすい面はあるかもしれません
187 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2025/07/27(日) 18:11:11.22 ID:wcKb1zkK0
 今クロシュが描いたデロデロ世界の絵「」デロデロ

黄スライム『んわぁ〜!』モニョニョ

灰スライム『デロデロだ……』モニョモニョ

セイン「この絵に描かれた世界のことか」

スライムクロシュ『うん。セインさんには……前に、砂漠で、聞いたかも……』モニョモニョ

セイン「ああ。僕の考えはあの時と変わらない。悪いことではない、と思う」

スライムクロシュ『んへへ……』モニョモニョ

妖精「ちょっとクロシュ、喜んでどうするの。これを実現しようとしてるクロシュヴィアを止めたいんでしょ?」

スライムクロシュ『んわ……!』モニョッ

ヴィア「……クロシュヴィアが、これを実現しようと……。もしかしてデロデロ教のことですか?」

妖精「うん。みんな、デロデロ教のことは知ってる?」

黄スライム『あんまり!』モニョニョ

灰スライム『聞いたこと、あるくらい……』モニョモニョ

セイン「多少なら」

妖精「じゃあ改めて説明すると……デロデロ教っていうのは、伝説スライムのクロシュヴィアが指導者を務める新興宗教団体。前にクロシュが芸術都市でそれと同じような絵を描いたんだけど、クロシュヴィアがそれに感銘を受けて設立したらしい。教団の目的はその絵に描かれているように、全てがデロデロに溶け合った世界を実現すること。そうすることで、世界に生じるあらゆる苦しみや悲しみを克服するのが狙い……なんだよね?」

スライムクロシュ『うん』モニョモニョ

黄スライム『わあ〜! それすっごくいいと思う!』モニョモニョ

ヴィア『……』

灰スライム『……? クロシュは、デロデロ教と関わってるわけじゃないの……?』モニョモニョ

スライムクロシュ『うん……クロシュヴィアちゃんとは、友達だけど……わたしは、関わってないと思う……』モニョモニョ

灰スライム『そうなんだ』モニョニョ

黄スライム『ねえ、灰色ちゃんはどう思う?』モニョモニョ

灰スライム『ん……まあ、良いんじゃないの。みんなデロデロになれば……面倒なこと、減りそうだし……』モニョモニョ

黄スライム『んわわ〜!』キャッキャ

スライムクロシュ『ヴィアさんは……どう……?』モニョモニョ

ヴィア「……率直に申し上げれば……私も、同じ意見です。理想的な解の一つではないかと思います」

妖精「やっぱりスライムにとっては抵抗のあることじゃないんだなあ……種族の差を感じる……」


 扉「」ガチャッ

フレア「みんなここにいたの!? ずるいよ、私たちだけ仲間外れなんて!」プンスコ

アイス「………クロシュ、さいてい……」ジト


スライムクロシュ「〜〜!?」モニャニャ!?

セイン「……すまない、仲間はずれにしたつもりはなかったんだが……」

黄スライム『ねえねえ、それならフレアちゃんとアイスちゃんも一緒に考えよ!』モニョモニョ

アイス「?」

フレア「何のお話?」

 *
188 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2025/07/27(日) 18:11:39.68 ID:wcKb1zkK0
フレア「デロデロ世界……! すごいこと考えるんだねえ、クロシュちゃん……!」

スライムクロシュ『んへへ……』モニョモニョ

灰スライム『……フレアとアイスから見て、どう……? 二人とも、一応スライムが混ざってはいるらしいけど……基本的には、人型だから……意見を聞いてみたい……』モニョモニョ

フレア「うーん……実を言うと、よくわからなくて想像がつかない……というのが正直なところかなあ……」

スライムクロシュ『そうなんだ……』モニョニョ

フレア「ごめんね! 私もみんなみたいにデロデロに溶けてスライムの姿になれれば、わかるようになるのかなあ?」

妖精「どうだろう……まあ、無理にわかるようになる必要もないと思うけど」

スライムクロシュ『アイスちゃんは……』モニョモニョ

アイス「……アイスは……やだ」

スライムクロシュ「!!」ガーン!!

アイス「……よくわかんないけど……ばかクロシュのおもいつきなら、きっと、まちがってる……」

スライムクロシュ「!!!」ガガーン!!!

フレア「あ、アイスちゃん!!」

セイン「アイス……誰が言ったかで物事の良し悪しを判断するのは良くない。クロシュが言ったかどうかではなく、言ったことの内容を考えて判断して欲しい」

アイス「…………」

スライムクロシュ「……」

アイス「……まあ……いいんじゃないの……。デロデロになっても……」

スライムクロシュ「!」パァァァ

アイス「……やっぱりうそ。デロデロなんて、だめ」

スライムクロシュ「!!」ガーン!!

妖精(カリスがいなくなってもアイスの態度は相変わらずなんだ……)

 *

セイン「しかし僕の知る限りでは、デロデロ教は奇抜な団体ではあるもののその活動は穏当なものだったはずだ。なぜ急に方針転換を?」

スライムクロシュ『えっと……デロデロ教の、子が……この前の世界めくれで……消えちゃって……』モニョモニョ

セイン「……!」

スライムクロシュ『クロシュヴィアちゃんは……全部、自分のせいだって、思って……。もう、こんなことにならないように……デロデロ化を、急ごうとしてるみたい……』

フレア「そうなんだ……」

スライムクロシュ『……でも……デロデロは……デロデロ自身を、救えないかも……』モニョモニョ

黄スライム『え、どういうこと?』モニョニョ

スライムクロシュ『みんなが、デロデロになれば……それでみんな、救えるって……わたしも、思ってた……。でも……デロデロの中心になる、スライムの心は……たぶん……最期まで、現実にいなきゃ、いけない……』モニョモニョ

灰スライム『えっ……。じゃあ、デロデロは……世界中の命を救ったら……最期には、独りぼっちになっちゃう……?』モニョニョ

スライムクロシュ『うん……。クロシュヴィアちゃんは……それで、良いって……。自分が犠牲になって、みんなを救えれば、良いって……思ってる、みたい……』モニョモニョ

フレア「そんな……」

スライムクロシュ『だから……わたし、反対した……。でも……クロシュヴィアちゃん、聞いてくれなかった……』モニョモニョ

ヴィア「……」

スライムクロシュ『みんな……クロシュヴィアちゃんを、思いとどまらせる方法……何か、ない……?』モニョニョ

セイン「……」


↓1コンマ
01-05 デロデロをもう一つ作れば良いかも!
06-20 デロデロが自分で自分を救えれば良いかも?
21-80 殴って止めるしかない
81-95 根気強く説得を続けるしかない
96-00 ???
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2025/07/27(日) 18:13:22.88 ID:ufSbvn6qo
さて
190 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2025/07/27(日) 20:19:59.61 ID:wcKb1zkK0
セイン「……死者への想いが原動力になっているなら……言葉を尽くしても、届かないかもしれない」

スライムクロシュ「……」

セイン「それでも……昨日、クロシュヴィアがクロシュとの対話に応じたのなら……可能性はあるのかもしれない」

スライムクロシュ「……!」モニョ

フレア「……そうだよ! クロシュちゃんがクロシュヴィアさんのことを想う心は……きっと、クロシュヴィアさんに届いてるよ! だから、根気強く説得を続ければ……!」

灰スライム『カリスよりは、説得の余地があると思う』モニョモニョ

黄スライム『うん! わたしもそう思う!』モニョモニョ

スライムクロシュ「……!!」モニョニョ

妖精「まあそうだよね。決定的な方法なんてない。あとは、頑張って説得を続けるくらいしかないよ」

スライムクロシュ『うん……!』モニョニョ


ヴィア「……」

アイス「……おばさん……はんたいなの?」

ヴィア「え……あ、いえ……少し考え事をしていただけです」

アイス「ふうん……」

ヴィア「………あなたは……アイスさんは、どうお考えですか?」

アイス「べつに……きょうみない……」

 ☆クロシュヴィアに対して説得を続けようと思いました

 ◇
191 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2025/07/27(日) 20:20:25.99 ID:wcKb1zkK0
―聖ヴァレリオ教会 宿泊室

アリシラ「……」

クロシュ「アリシラさん」

アリシラ「クロシュちゃん? どうしたの」

クロシュ「………アリシラさんの、お父さんと、お母さんと……お話、する……?」

アリシラ「えっ、急になんで?」

クロシュ「……えっと……もう一度……ちゃんとお話、した方が……良いと、思って……」

アリシラ「ああ……そういえば喧嘩別れみたいになっちゃってたっけ。別に良いよ、特に話すこともないし」

クロシュ「……でも……アリシラさんのお父さんとお母さんは……お話、したいって……」

アリシラ「ええ〜……」

クロシュ「……」ジッ

アリシラ「……はあ、わかったよぉ。クロシュちゃんにはいっぱい助けてもらったしね……」

クロシュ「!」パァァァ

 ◇

―クロシュの夢
 夢の診療所

アリシラ「……」

アリシラ父「……」

アリシラ母「……」

クロシュ「……」


↓1コンマ
01-05 決裂
06-00 収束
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2025/07/27(日) 20:20:46.11 ID:Y7cUmTmC0
193 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2025/07/27(日) 21:29:00.76 ID:wcKb1zkK0
 *

アリシラ「――…」ポロポロ

アリシラ父「――」ニコニコ

アリシラ母「――」ニコニコ


クロシュ(……お話……うまくまとまったみたい……。良かった……)

不死鳥の羽根「ふむ……。クロと少し似た状態みたいだけれど、特に処置は必要なさそうね」

クロシュ「!」

不死鳥の羽根「彼女の中の魔王は、既に死んでいる。以前と性格が変わったように見えるのは、極度のストレスと魔王の残滓が与えた力の影響。平静な環境で暮らしていれば良くなると思うわ。まあ……完全には元に戻らないかもしれないけれど」

クロシュ「そうなの?」

不死鳥の羽根「でも、性格の変化なんて普通に生きていても起こり得ることよ。悲観することもないわ」

クロシュ「そうなんだ」

魔族の医者「しかし君たちとここで話せるのもあと僅かな間か。少々名残惜しくもあるな」

不死鳥の羽根「クロシュと一緒に暮らしていれば、いつでも機会はあるんじゃないかしら?」

クロシュ「うん……!」

 ☆アリシラが両親と仲直りしました

 ◆
194 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2025/07/27(日) 21:29:29.07 ID:wcKb1zkK0
―夜
 王都セイントレア 地下食堂

 ワイワイ キャッキャ

フラナ「今宵は私の奢りよ! 好きなだけ食べて飲みなさい!」

黄スライム『んわわ〜!』キャッキャ

レイ「お、奢り……!! タダごはん……!!」

クル「今のレイは毎日タダごはんでしょ」


妖精「王都にこんなレストランがあったなんて」

スライムヴィア「ここは、王都の地下に隠れ住む魔族たちの寄り合い食堂なのです。ここでなら私たちスライムも、人目を気にせず元の姿で食事を摂れるんですよ」

クロシュ「わあ……!」

スライムヴィア「食材は自分で用意する必要がありますが、今回は魔族国の方々がたくさん搬入してくださったようなので、フラナ様の言う通り好きなだけ飲み食いできそうです」

妖精「なるほど……災害支援のついでにここの魔族への支援もこっそりしたわけね」


↓1〜3 食材を1〜2つ選択
肉類:トリ肉、ケモノ肉
魚介:ウミザリガニ、イクラマス、オオキイサザエ、スカイマグロ
野菜:セイントレア草、キャベツ、長寿トマト、マジカルトリュフ
穀物:ウルティ米、パスタ麺、パン、ヤマイモ、オオキイ豆、甘もろこし
果実:森林木苺、コガネリンゴ、シャイニングマスカット、常闇木苺
卵乳:トリの卵、オイシイミルク、クリームチーズ、北国バター
特殊:スライムゼラチン、フェアリーシロップ、ブラッドワイン、精霊樹のジャム、上白糖、香辛料
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2025/07/27(日) 21:31:08.89 ID:icu77vFQO
ヤマイモ
クリームチーズ
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2025/07/27(日) 21:31:52.35 ID:3x0vDkAKO
ブラッドワイン、スカイマグロ
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2025/07/27(日) 21:32:16.88 ID:Ujdt05uz0
シャイニングマスカット
精霊樹のジャム
198 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2025/07/27(日) 22:43:49.09 ID:wcKb1zkK0
 マッシュヤマイモとクリームチーズのパルフェ「」ポン!
 スカイマグロのレアロースト「」ポン!
 精霊マスカットブラッドワインソース「」ポン!

ローガン「おお……! 中央に鎮座するは、多層に仕立てられたマッシュヤマイモとクリームチーズのパルフェ……!! そしてその周囲には、ファン状に配置されたスカイマグロのレアローストか……!! 上からかけられている透き通った赤いソースは――精霊樹のジャムとシャイニングマスカットとブラッドワインを煮詰めて風味を濃縮したソース!!」

クロシュ「れあろーすと……はんぶんナマの、ロースト……!!」

妖精「これはまた豪勢に仕上げたなあ。見てるだけでお腹いっぱいになっちゃいそうだ」

エバンス「フッフッフ、実際に味わってからお腹いっぱいになってくれ」


アイス「……」ヒョイ パクッ モグモグ

クレア「あ、こら。いただきますをちゃんと言わなきゃだめですよ」

アイス「む……いひゃひゃひまふ」モグモグ

クレア「ちゃんと飲み込んでから!」

 *

 ワイワイ キャッキャ モグモグ

スライムクロシュ「〜〜♪♪」モニョモニョ モグモグモグ
黄スライム「〜〜♪♪」モニョモニョ モグモグ
灰スライム「〜〜♪」モニョモニョ モグモグ
スライムヴィア「〜〜…♪」モニョモニョ モグモグ
フメイ「……♪」モグモグ
フレア「♪♪」モグモグ
セイン「……」モグモグ
アイス「……」モグモグモグモグ

ローガン「香ばしく焼き上がった表面と、しっとりとレアに仕上げられた内側……これこそまさに、スカイマグロの作り出す新世界!!」

クレア「パルフェも美味しいです。滑らかで厚みのあるマッシュヤマイモに、コクと酸味のあるクリームチーズがものすごく合っています。フルーツワインソースの甘みが、それをさらに引き立てて……」

レイ「おいひい〜〜〜〜!!」モグモグ

ミラ「本当に美味しいや。たまにはパスタ以外も良いね」モグモグ

ミスティ「美味しい以外の感想は浮かばないわ……」モグモグ


 ☆ブラッドワイン、精霊樹のジャムを使い切りました

 ☆明日の終わりまで、戦闘時にコンマ+30が加算されます

 *
199 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2025/07/27(日) 22:57:55.24 ID:wcKb1zkK0

フラナ「……さて、と。あなたがイリスの母君で間違いないのね?」トスッ

ティナ「はい。お初にお目にかかります、魔族国元首フラナ・バイオレット殿」

フラナ「そう固くしないで。今ここにいるのは、ただの吸血鬼フラナ・バイオレットよ」

ティナ「そうか。ではそのようにさせていただこう」

フラナ「ええ。イリスには世話になっているから、お礼を言わせて」

ティナ「こちらもイリスから聞き及んでいる。何度もイリスの助けになってくれたそうで――」

 トスンッ

フレメア「へえ、あんたがあのお節介なイリス・プラネットの親なんだ」

ティナ「貴女は……」

フラナ「……ごめんなさい。こいつは姉のフレメア・バイオレットなんだけど、まだちょっと躾が必要なの」

フレメア「ああん? 躾が必要なのはおま――」

 ビシッ!

フリューゲル「はいそこまで。あなたたちは誇り高きバイオレットの血を引く者なのだから、こんなところで喧嘩しないの」

フラナ「うっ……申し訳ありません、母上」

フレメア「む〜……わかったよ」

フリューゲル「ごめんなさいね、ティナ・プラネットさん。私はフリューゲル・バイオレット……聞いたことがあるかもしれませんが、今はただの吸血鬼なので……普通に接してくださると嬉しいですわ」

ティナ「あ、ああ……。こちらこそ、よろしく――」


イリス「……ええと、これはどういう状況なんですか?」ヒョコッ

ティナ「イリス。まあ、その……バイオレット家の皆さんと、お互いに自己紹介をしてたところだ」

 ◇
200 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2025/07/28(月) 01:03:00.43 ID:G5sg+pmK0
―夜
 王都セイントレア 中央広場

 噴水「」シャワシャワ

クロシュ「……」


妖精「いつの間にか食堂にいないと思ったら、こんなとこに一人でいたの? 危ないよ」パタパタ

クロシュ「あ、妖精さん」

妖精「夜風に当たりたかったの?」

クロシュ「……うん。それと……いろんなこと、考えてた……」

妖精「いろんなことか……。まあ、考えるべきことはまだまだたくさんあるよね」

クロシュ「うん……」

妖精「……でも、世界樹の光を集めるっていう一番大きな仕事は片付いたんだ。少しくらい、気を緩めても良いと思う」

クロシュ「うん……」

 噴水「」シャワシャワ

 ◇

―地下食堂

 ワイワイ キャッキャ

妖精「思えば遠くまで来たものだよね。初めは、あの燃える集落でなんにもできずに立ち尽くしてたあかちゃんスライムがさ……」

クロシュ「……妖精さんが……いてくれたから……良かった……」

妖精「なあにそれ。私は大したことしてないでしょ」

クロシュ「んーん……。妖精さんが、いなかったら……わたし、きっと……あそこから、ずっと、動けなかった……」

妖精「イリスが駆けつけたお陰でしょ」

イリス「あの時の話? あの時は火の手が見えたから、急いで向かったんだ。そしたらクロシュちゃんたちがいて、泡の魔法で包んで助けたんだけど……今思えば、いろいろ早とちりしすぎだったよね。反省……!」

クロシュ「んーん……ありがと……。妖精さんも、イリスさんも……ミスティさんも……!」

ミスティ「え、いや……あの時の私は、面倒事に関わりたくなくて距離を置いてたし……別に感謝は不要よ……」

妖精「でもミスティのお陰で馬車より速いソリに乗れたから、ものすごく助かったよね。なんだかんだ言いながら王国騎士との戦いにも参戦してくれたし」

ミスティ「いや、まあ……あそこで見捨てるのはあまりにも寝覚めが悪そうだったし……。でもその判断で、まさかこんな大きな旅路に巻き込まれるなんて思いもしなかったわね。ふふ……あなたを助けて良かったわ、クロシュ」

クロシュ「んへへ……」

イリス「それは私も同感! あの時クロシュちゃんを助けたことが、ここまで大きな旅に繋がるなんて全然予想できなかった。結果的にものすごく良い旅になったから、本当に良かったよ」

クロシュ「うん……!」

妖精「本当に奇跡みたいだよ。あんな時にすごくお人好しな奴らが通りかかって、クロシュを助けてくれて、その流れが今こうして世界を救うことに繋がったんだもの」

イリス「すごく壮大だ……!」

ミスティ「ふふ……私たち、もしかして英雄ってやつなんじゃないかしら?」

妖精「ダークヒーローなのは間違いない」

 *
201 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2025/07/28(月) 01:32:52.20 ID:G5sg+pmK0
妖精「魔族国では、ローガンと出会ったんだよね」

ローガン「うむ。悪漢に因縁を付けられてる君たちを助けた覚えがある」

イリス「その後、クロシュちゃんがローガンさんに一緒に来て欲しいって言ったんだよね」

クロシュ「んゅ……だって……」

妖精「実際、その判断は正しかった。ローガンは頭ぼさぼさでヒゲも整えてないおじさんだったけど、義理堅くて頼りになる騎士だったんだもの」

ミスティ「見る目があったということね、クロシュは」

クロシュ「んへへ……」



妖精「それでなんやかんやあってフラナのとこに行ったら、革命に勧誘されちゃったんだよね」

フラナ「あら、あの時の話? 懐かしいわね。正直に言うと勧誘に乗ってくるとはあまり思っていなかったわ。ローガンとミスティの二人は反対していたし、その反対理由ももっともだったから」

ミスティ「そうね……正直に言うと、あの当時私はあなたを信用していなかった。最悪捨て駒扱いされるんじゃないかとも思っていたから、革命軍に参加なんてするつもりは全くなかったわ」

クロシュ「でも、わたし……王国の、やってること……許せなかった……」

イリス「うん……私も……。絶対に許せないって思ったの」

ローガン「フッ……。結局は私も、君たちのようなうら若い乙女を守って死ねるならそれも悪くない……と考えを改めたのだったな」

ミスティ「はあ……今思えば、私って最初からずっとお人好しだったのね……。結局イリスたちを放っておけなくて、革命軍入りしちゃうんだもの」

フラナ「………今だから白状するけれど、当時は実際丁度良い手駒が手に入ったとしか思わなかったわ」

イリス「ええっ!?」

ミスティ「ええ……」

ローガン「うむ……そんなような気はしていた」

フラナ「でも、その後あなたたちと話をしたり訓練に付き合ってあげたりする内に考えを改めた。当時は自分でも知らなかったのだけれど、私って情に絆されやすい性格だったみたい」

イリス「よ、良かったです。フラナ先生が情にほだされやすい性格で」

妖精「でもイリスの師匠ってフラナの友人だったんでしょ?」

フラナ「ええ。でもそれは守ってやる理由にはならない、と当時は思っていたわ。あの頃は私ピリピリしていたのよ」



妖精「革命の時は大変だったよね。私とクロシュは擬態を駆使して住民とかを騙したり、魔族に襲われる聖女をなんとか助けたり、暴走する魔族たちの姿を聖女に見せつけてやったり……」

聖女「あっ、あの時のことですか!」ヒョコッ

クロシュ「……妖精さん、ちょっとひどかったと思う……」

妖精「いやまあ……でも理想論を吐き続けるつもりなら、あれくらいは知っておいて欲しかったっていうのもあるんだよ。ここ最近は随分ましになってきたけど、昔はあんなようなのはしょっちゅう起きてたんだ。たぶん、今でも世界のどこかでああいう惨劇は起きてる」

クロシュ「……うん」

聖女「……そうですね」

妖精「あの時は、どうせ現実を知って潰れるなら早い方が良いって思ったんだ。でも聖女は潰れなかった。それどころか奮起して、今は魔族と人間の対立をなんとかしようとがんばってる。私が思っていたより、ずっと立派だったよ」

クロシュ「んへへ……聖女さんは、立派……!」

聖女「………ありがとうございます。クロシュさんと妖精さんが思うような、立派な私に……本当になれたら、良いのですけど……」
202 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2025/07/28(月) 01:33:20.26 ID:G5sg+pmK0
イリス「革命の戦いは大変だったよね。王国の隊長格がものすごく強くて」

ミスティ「ええ……苦戦を強いられたわ……」

イリス「フラナ先生が駆けつけてくれた時は一気に戦況が覆って、凄かったよね……」

ローガン「うむ……当時はその恐ろしき戦闘能力に、味方でありながら身震いしたものだ」

フラナ「何言ってるの、今のあなたたちはもう私と遜色ないわよ?」

イリス「え、そうなんですか?」

ミスティ「自分では全くわからないわね……」

フラナ「でもあの時は本当に頭に来たわ……。死んだと思っていた勇者が現れて、一気に戦線を破壊してくれたんだもの」

セイン「僕のことか?」ヒョコッ

フラナ「そうよ! 今はまあ……あなたが勇者本人ではないこともわかっているし、あなたが命令に逆らえなかった事情も知っているから、とやかく言うつもりはないけれど」

セイン「そうしてくれると助かる」

妖精「私とクロシュが前線に到着したのも大体その頃だよね」

クロシュ「うん。セインちゃんに……光の魔法を、撃たれそうになった……」

セイン「………あの時、もしフメイとアリシラが現れなかったら、僕はこの手でクロシュを……大事な同胞を殺してしまうところだった。本当に血の気が引く思いだ……」

フメイ「……セインが仲間だったなんて……あの時は、全然気付かなかった」ヒョコッ

アリシラ「ふっふっふ、私の吸収魔法のお陰だね」ヒョコッ

セイン「感謝している。結果的に今僕たちがこうして自由になれたのは、お前たちのお陰でもある」



妖精「あの時セインは撤退する間際に、捕虜になったマリー・セイントレアを投げナイフで即死させていったんだよね」

セイン「……言い訳になるが、グランドマスター卿にそう命令されていた。マリー王女だけは必ず殺せ、と……」

ミスティ「グランドマスター……奴の命令だったのね……。本当に反吐が出る男だわ……」

イリス「でも、フラナ先生が持たせてくれた反魂丹のお陰で事なきを得ました!」

フラナ「まさか私の反魂丹がそんな形で役に立つとは思っていなかったわ。それにイリスは捕虜の扱いにも口を出してくれて、そのお陰で戦後の諸々がかなり良い方へ向かったのよね」

クロシュ「ダークヒーローイリス……!」

イリス「あはは……そういえばダークヒーローの起源はそこだったね。でもダークヒーローの名声は役に立つことがけっこうあったし、こっちもいろいろ助けられちゃったかも!」

 *
203 : ◆eAA16RTlRw2e [saga]:2025/07/28(月) 01:34:10.08 ID:G5sg+pmK0
本日はここまで。思い出話編が長くなりそうな気配があります。よろしくお願いします
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2025/07/28(月) 12:13:56.82 ID:5xMXHu7wo
おつ
振り返りたい思い出が多いからね…
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