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ドロシー「またハニートラップかよ…って、プリンセスに!?」
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780 :
◆b0M46H9tf98h
[sage saga]:2026/09/06(日) 01:58:47.40 ID:D1niIlq30
…三つ目のネスト…
ベアトリス「ふう……」
…尾行がないか、あるいはネストを監視している人間がいないかをさりげなく見定めて、安全とみると入り口をくぐったベアトリス……通信機のある部屋に入るとバリケード代わりのクローゼットをドアに寄せて身体を椅子に休めたが、疲れを感じているのは歩き回ったからというより、むしろエージェントとして精神を研ぎ澄ましていることからくる気疲れからだった…
ベアトリス「……っと、座っていちゃダメですね。はやく増幅器を取り替えないと」
…パーティや舞踏会のような騒がしい環境よりもむしろ心落ち着けて黙々と取り組める機械の方が安心するような気がするベアトリス……往診に通う医者のような小さい茶革の鞄から工具を取り出すと、通信機の化粧板を外した…
ベアトリス「増幅器もそうですが、ここの接合もゆるい気がするんですよね……今度また調整しないと……」
ベアトリス「ん……よし、入りました」
…細い指がピアニストのように手際よく動き、増幅器を取り替えた……取り外した方の増幅器は持っているわけにもいかないので、後で運河に捨てられるよう食べ終わったサンドウィッチの包み紙にくるんでおく…
ベアトリス「さて、それじゃあ立ち上げましょう」
…手回しハンドルを回して電源を起こすと「ぶぅ……ん」と低いうなり声をあげて通信機が立ち上がり、たちまちロンドンを飛び交う電波が通信機を駆け抜ける…
ベアトリス「それと周波数は……と」波長のダイヤルを回していく……
ベアトリス「この波長は船舶用の電信ですね……」
ベアトリス「それにしてもドロシーさんの言う通りですね、今日は空電が多い……」
…ヘッドフォンを当て、右手には電文を書き留めるための鉛筆を持ち、左手は周波数のダイヤルを回しているが、電信の小気味いい「トン・ツー」に交じって砂利を振るうような空電が入る…
ベアトリス「この調子じゃあ無事に聞き取れるか難しいですね……」
…卓上に置いた懐中時計をちらりと見るベアトリス……予定通りならあと数分で敵方のエージェントが通信を始めるはずだが、通信機は今のところはうんともすんとも言わないで黙っている…
ベアトリス「……」
ベアトリス「……」鉛筆を持って身構えたまま、ダイヤルを小さく左右に回して近くの波長で送信していないか探す……
ベアトリス「……あと十五分」
…通信機の前に座って必要以上に長居をしているとそれだけ危険性が高まる……制限時間が迫りベアトリスがそろそろ撤収を考え始めた矢先、ヘッドフォンにモールス電文の断続音が響き始めた…
ベアトリス「……っ!」
…王国側の暗号帳はプリンセスの協力もあってすでに手に入れている……もちろん用心の上にも用心を重ねるノルマンディ公のことゆえ、定期的に暗号は変更されるが、少なくとも今回はまだ同じ暗号が使われている……ベアトリスは頭に叩き込んである解読表を使って通信を書き留めていく…
ベアトリス「……共和国……情報部……いえ、情報部員……植え込みあり……氏名……ジョン……カウリー……」
ベアトリス「……チェックポイント・ベーカー(B)より……明後日……」
…暗号文を解読しながらも、敵に自分の偽装が筒抜けであることを知らずにいる情報部員の身の上を思い悲痛な気持ちになるベアトリス……が、それでも暗号文を正しく書き留め、同時に振れている針が示す目盛りを確かめて通信の強度を確認する…
ベアトリス「……ウォルシンガム卿に……よろしく……ピリオド……通信終わり」敵の情報部員はいつもの締めくくりで通信を終えた……
ベアトリス「……」
ベアトリス「とにかく通信は聞き取れたわけですし、あとは戻ってドロシーさんたちと強度の比較をして発信の位置を絞り込むだけですね」
…何かの手違いで通信機が発見されても王国の暗号通信を傍受していたことが分からないよう、波長のダイヤルをごく一般的な商用暗号の周波数に合わせてから電源をおとした…
ベアトリス「なんだかどっと疲れちゃいました……帰りにお茶でも飲んでいきましょうか」そう一人ごちると暗号文を書き留めたメモをくしゃくしゃっと丸めて書き損じのメモやノートの紙に混ぜ、柳のバスケットに押し込んだ……
…その夜…
ドロシー「よう、忙しいところ集まってもらって悪いな」
プリンセス「いいえ、久しぶりの「定例会」ですもの♪ 楽しみにしておりましたわ」
ちせ「うむ。こうして菓子も出るしの」甘い紅茶とジャム付きのクッキーにご機嫌なちせ……
プリンセス「でも食べたらちゃんと歯を磨かないとだめですよ?」
ちせ「分かっておる」
アンジェ「さあ、おしゃべりはその辺にしてちょうだい……プリンセス、ちせ、それぞれ報告を」
プリンセス「ええ♪」
ちせ「うむ」それぞれメイフェア校や行動先で発見したことや入手した情報、協力者として有望そうな人物、反対に王国防諜部や内務卿の息がかかっていそうな人間について報告・共有する……
アンジェ「分かったわ、ありがとう……それじゃあ二人は上がってくれていいわ」
プリンセス「あら、もういいの?」
アンジェ「ええ」
プリンセス「分かったわ……それじゃあまた後でね、アンジェ♪」
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