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【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【十七輪目】

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353 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/02(水) 21:49:25.69 ID:nC6lxQkVO
きてたー
354 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/02(水) 21:52:23.06 ID:NEHGwuATo

天乃「ねぇ、夏凜は神様に呪われるの、本当に怖くないの?」

夏凜「ん? あぁ……そんなこと」

天乃「そんなことじゃないでしょ」

天乃の力を借りれば何とか出来る。と、

九尾による補償がなされているとはいえど、

それが超常的に危険なことであることに変わりはない

同じく神である神樹様の守護があるとは言っても

それと対である神格級の呪いに襲われたら弱った神樹様の守護など軽々く貫いてくることだろう

それで、怖くないはずがない

なのに……夏凜は「そんなこと」と言う

夏凜「怖いか怖くないかだけで言えば、そりゃ、少しは怖い気持ちもあるわよ」

天乃「なら、どうしてそんな」

夏凜「平気そうなのかなんて、聞くまでもないって思わないの? あんた」

神の祟りを前にしてまるで緊張感を感じられない夏凜

その油断にもみられる姿にむっとした表情を天乃は見せるが、

夏凜の態度は変わらない

夏凜「私たちが一番恐れてるのは、アンタを失うことだからよ。あんたの願いが叶わなくなることだからよ」
355 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/02(水) 22:01:54.64 ID:NEHGwuATo

神様に祟られてしまう

確かに、それ単体で考えれば非常に恐ろしいことかもしれない

しかし、それはあくまで過程なのだ

自分たちが望む、天乃が望む

全員が生き残っている未来に向かうための、困難の一つ

であるならば、畏れて竦む理由などない

慢心しないために恐れを捨てはしない

けれども、決して怯むことはない、緊張に震えることもない

生きていくうえで乗り越えなければならない難関なのだから、当然だ

夏凜「だから、神の祟りがあるからって奉火祭を止めない理由にはならない。私たちが私達であれない理由にはならない」

天乃「どうして……そう」

先んじた考え方をするのかと。

その言葉を言いかけた口を閉じる

そう変えたのは、自分だ

自分の生き方が、自分の存在が、みんなを変えたのだ

夏凜「……」

黙り込んでしまった天乃を一瞥し、夏凜は微笑む

夏凜「そもそも、私たちが自分で選んだ茨の道なのよ? 痛いから、怖いから。そんなことで、引き下がるわけないじゃない」
356 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/02(水) 22:17:06.50 ID:NEHGwuATo

そんな痛みなど、そんな苦しみなど、そんな辛さなど

すべてを理解したうえでの選択、覚悟をしたうえでの一歩

茨に傷ついた足は血だらけで、道をかき分ける手は痛々しい

けれど。

夏凜「その先に自分たちの望んだものがある。それなら、痛みにも、苦しみにも、辛さにも勝る力が湧いてくるものよ」

天乃「…………」

天乃は無理をした、無茶をした

自分のことなんて全く考えることなく突き進んだ

それだって、そういう思いがあってこそ進める茨の道

夏凜「アンタの疑問にだけ答えるなら怖いものは怖い。でも、それとこれとは話は別ってこと」

天乃「馬鹿ね……ほんと。馬鹿だわ」

夏凜「そうかもね」

天乃のために淫らなことに全力になる勇者部

天乃のために神樹様に逆らうことも辞さない勇者部

バカばっかりだ。と夏凜は同意する

もちろん、自分のことを含めて

夏凜「けど。好きな奴のためにだからこそ、馬鹿になれるのよ」

天乃「っ」

夏凜「そうさせるだけ想われてること慕われてることを、天乃は誇ってりゃいいのよ」

悩んで、苦しむ

そんな天乃に、夏凜ははっきりと考えを打ち明けた
357 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/02(水) 22:18:03.36 ID:NEHGwuATo

√ 12月6日目 夕(病院) ※土曜日


01〜10  陣痛
11〜20 
21〜30 
31〜40  東郷
41〜50 
51〜60 
61〜70  大赦
71〜80 
81〜90  陣痛
91〜00  樹

↓1のコンマ
358 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/02(水) 22:19:34.49 ID:nC6lxQkVO
あ
359 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/02(水) 22:31:29.15 ID:NEHGwuATo

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から


東郷「やだ、夏凜ちゃんったらそんなこと言っちゃって、恥ずかしい」

東郷「でも、そうよね……久遠先輩のためだからこそ、なんだってできる」

友奈「久遠先輩がいなかったらどうなってたのかな……」

風「樹のために大赦壊しに行ってたと思う」

東郷「友奈ちゃんのために壁を壊したりしてたかな」


園子(冗談かなー本気かなー……本気だね〜)
360 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/02(水) 23:05:30.34 ID:nC6lxQkVO
乙
むしろ久遠さんの存在で勇者部の試練の難易度は原作以上に激増してるというね
それでもこれを乗り越えてこその勇者部だとも思う
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/03(木) 01:34:14.20 ID:Pfj7AFct0
乙
そういやなんとか頑張るとして待機組って嫁じゃ沙織と若葉だけか?
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/03(木) 11:43:51.85 ID:3vfyaYzjO
呪いで勇者部全員ダウンしたらその二人にがんばって貰うことになるだろうね

そもそも今作での呪い自体原作仕様なのかどうかまだわからないからなぁ
友奈一人でもあれだけ精神ズタズタにされてたのに全員となると…
363 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/03(木) 19:11:51.42 ID:lYpOYhAPo

では、少しだけ
364 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/03(木) 19:38:19.89 ID:8sYbGH9rO
かもーん
365 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/03(木) 19:57:01.00 ID:lYpOYhAPo

√ 12月6日目 夕(病院) ※土曜日


天乃「……あら、夕方なのね」

夏凜「何言ってんのよ。ボケちゃったわけ? 若いのに」

天乃「すぐそうやっていうんだから」

酷い人ね。と

天乃は嫌味っぽく呟いて笑みを浮かべると、夏凜から窓へと目を逸らす

もう、日は暮れて暗く

夜に近づきつつある空には太陽と入れ替わろうとする月が見える

天乃「ずっと見えていたのに、見えていなかったってこと」

夏凜「あんたって、本読むの好きだったっけ?」

天乃「それなりには嗜んでいるつもりよ」

夏凜「そっ」

今のはどういう意味なのか。

聞くのは何か違う気がして、頷く

時間の経過を感じ取れてしまっている自分はきっと、

心の半分が、そこに囚われてしまっているのだろう

夏凜「その感じで、陣痛の痛みも忘れてくれればよかったんだけど」

天乃「幸か不幸か、今日はそう言う日じゃなかったみたい」

もしくは、

せっかく夏凜がいてくれるのだからと、

体が気を使ってくれたのかもしれない

だとしたら、迷惑……だと言いたい気持ちが少しだけわく
366 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/03(木) 20:17:50.98 ID:lYpOYhAPo

夏凜「幸か不幸か……確かに、どちらとも言い難い話よね」

天乃が陣痛に苦しむことがなかったからこそ、

こうやって他愛もない話をすることが出来ているし、

勇者部の誰も、気を遣わずに済んでいる

だが、天乃が最もいて欲しい時に一緒にいてあげられない可能性が出てきてしまう

いや、出てくることになる

逆に陣痛に苦しむことになってしまった場合、

客観的に見ている事しかできなかった園子からも伝え聞いているが

その時の苦痛は二度目ということもあって、計り知れないものだろうから

それを味わわせたいなどとは口が裂けても言えない

例えその陣痛が子供を産むための物であるとしてもだ

天乃「夏凜には、そのあたりはっきりしてほしいかなって思うんだけどね」

夏凜「なんでよ」

天乃「だって、子供を産むときも辛いって聞くし」

夏凜「そこはあんたが決めるべきでしょ」

子供を産む痛み

それが来たときに幸とするか不幸とするか

二人は顔を見合わせて、苦笑する

それはもちろん、幸というべきだからだ
367 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/03(木) 20:50:28.33 ID:lYpOYhAPo

夏凜「ま、もしもあんたの子供が産まれるってなったら壁の外であろうと地球の裏側だろうと飛んできてやるわよ」

天乃「軽口で言ったらだめよ? 本気にするから」

にやりと笑って見せる

閉じた瞼の裏にある瞳の本気度は夏凜には見えないけれど

それがただの冗談で言っているだなんて、夏凜は思わない

夏凜「しとけしとけ」

それで、少しでも天乃が安心できるのなら

それを裏切ったことで天乃が少しでも傷つくというのなら

夏凜「約束したら破る気はないわよ」

天乃「…………」

夏凜「どうする?」

まだ一方的な言葉で、約束ではない

けれど、もしも約束する気があるのなら

それを、【三好夏凜の誓い】とするのならば

夏凜は意地でもその約束を果たす

天乃「そうねぇ……」

布団の上、夏凜の手を優しく握って指を絡める

そのまま、流れるように小指だけを結ぶ

天乃「嘘ついたら何が飲みたい?」

夏凜「麻婆豆腐でも一気飲みしてやるわよ」

天乃「千人前だけど……平気?」

夏凜「平気だとでも思ってんの?」
368 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/03(木) 21:07:26.41 ID:lYpOYhAPo

せめて二人前にしなさいよ

そう言う冗談に付き合う夏凜の優しい表情に

天乃はかつて見た、三ノ輪銀の無茶を思い出して苦笑する

あの時は本当に驚いた

勇者だからって何でもできるわけじゃない

なんでも耐えられるわけじゃない

天乃「冗談よ。分かって……一人前で良いわ。もう半分は私が食べるから」

夏凜「あんた、今の体で辛いものなんて」

天乃「産まれた後の話だもの。一人前くらいなら大丈夫でしょ」

でも。と、呟く

天乃「二人前は流石に体に悪いから、ね」

夏凜「……ん」

結んだ小指が、より強く結ばれる

約束、契約、結束

思いを込めて結んで、夏凜は頷く

夏凜「言い出しっぺの法則。そのお約束は運命レベルの決定事項だから、大丈夫」

天乃「何の保証なんだから」

夏凜「さぁ? でも、そう言うのってよくあるでしょ。じゃんけんで負けたら罰ゲームとかいうとその人がやる羽目になるやつ」

天乃「でも、この場合言い出したのって私じゃないの?」

夏凜「……罰ゲーム決めたのは私だし。ま、何とかなるでしょ」



1、友奈達を呼ぶ(外出組)
2、大赦について
3、夏凜の将来
4、約束だからね? ちゃんと、みんなで帰ってくるの
5、イベント判定

↓2
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/03(木) 21:10:15.58 ID:aZwnfXms0
4
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/03(木) 21:11:17.77 ID:8sYbGH9rO
2
371 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/03(木) 21:33:20.88 ID:lYpOYhAPo

天乃「……はぁ」

他愛のない話も

愛を囁くような話も

心がとても温かくなれるから

不安を包み込んでくれるから

決して無駄では無いけれど、

これだけの時間があるならと、天乃は息を吐く

天乃「ところで、夏凜は大赦に関してはどう思ってるの?」

夏凜「だんまりな現状? それとも、奉火祭を終えた後のこと?」

天乃「全部ひっくるめて」

夏凜「あんまり広くしすぎるとそれはそれで答えが出しにくくなるっていうか、面倒なんだけど」

天乃「そういう、素直な話が聞きたいの」

素直さなら東郷たちの方が上だろうに

一瞬のうちに浮かんだ本音を押し隠して、素っ気なく返事を返す

もう東郷たちも帰ってきているけれど、

今ここにいるのは自分だし、天乃が効きたいのは夏凜の答え

それに、答えない理由は別にない

夏凜「だんまりな部分に関しては、見逃してあげるからこっちにもちょっかい出すな。的な考えもありそうな気がしなくもない」
372 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/03(木) 21:50:22.61 ID:lYpOYhAPo

夏凜「考えてみれば、私達を封殺するのなんて向こうには簡単な話でしょ?」

天乃「精霊も――」

夏凜「アンタをとっ捕まえて隔離すりゃいいだけって話」

天乃「っ」

夏凜はわざとらしく両手を広げて肩をすくめて見せる

それでも一応、ちゃんとした医療機関に移されるだけで

決して危害を加えるとかぞんざいな扱いを受けるとかいうわけではないと思うが

夏凜達から隔離し、監禁し、居場所も何も一切の情報を渡さず

ひとたび邪魔をすれば二度と会えないようにする。とでも脅しをかければ

夏凜達は手出しができなくなる

この世界中に大赦の息のかかった場所はいくらでもある、資金もある

ありえないような場所に医療施設を隠し持つことだって不可能じゃない

そうなったら、本当に会うことは不可能になるからだ

もっとも、そうしないというよりもそうするほどの悪心はないだけかもしれないが。

夏凜「満開の件を黙ってたり、ダメと言われても奉火祭を行うってことは必要ならそういうことだって大赦はできるはず」

天乃「じゃぁ、大赦はあえてそうしないって?」

夏凜「学校の暴動があったからかもね。自棄になって大暴れされちゃ堪らないし」

だから、こちらは手を出さないのでそっちも大人しくしていてほしい

と、考えている可能性は無きにしも非ずだと夏凜は答えた
373 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/03(木) 22:00:18.43 ID:lYpOYhAPo

では、途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


東郷「ですが実際、もしも世界を取り戻した場合大赦はどうなると思いますか?」

風「さぁねぇ……多かれ少なかれ説明責任は問われるんじゃないの?」

樹「状態にもよりますが、西暦時代に襲撃されたままの世界なら滅んでいることは事実なので……」

園子「そもそも、世界を覆う壁が消えることになるのなら人間である大赦だけに責任の追及はされないと思うんよ」

友奈「多分、神樹様に最も近かった人たちだからそう言う意味では変わることはないんじゃないかな」
374 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/03(木) 22:14:55.18 ID:8sYbGH9rO
乙
久遠さんに何かしようものなら九ちゃんがもれなく神隠ししそう…
375 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/03(木) 22:39:52.12 ID:jMHMQTk/O
乙
いろいろ気になることが多いな
376 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/04(金) 13:17:41.75 ID:l54rEysAO
乙
夏凜ちゃんに夢中で時間が気にならなかった久遠さん可愛い

奉火祭ってたしか全員で行くんじゃなかったか?
樹が残るのはまだ満開が犠牲有りの時だったような…違うっけ
377 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/04(金) 23:38:31.07 ID:3BKVaYHHo

すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日、出来れば17時ころから
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/05(土) 06:49:38.00 ID:NgE5QI8YO
乙
379 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/05(土) 18:07:19.54 ID:Vw5JGiYIo

遅くなりましたが、少しずつ
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/05(土) 18:16:50.11 ID:t3tyRT3WO
あいよー
381 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/05(土) 18:35:56.51 ID:Vw5JGiYIo

夏凜の考えは、確かにありえない話じゃなかった

いや、むしろそれが正しいのかもしれない

祖母の話が事実なのなら、

その思いを信じてもいいのなら、

奉火祭によって犠牲になる巫女の命も大赦は軽んじているわけではない

これしか現状を打破する道はないのだろうかと考え、

そのうえで下した苦渋の決断であるのならば、

これは、絶対に阻まれるわけにはいかないことだろう

そのためなら、天乃を人質として扱うことも大赦は……祖母は厭わなかったはずだ

なのに、今も天乃はこうしてみんなと、なんの邪魔建もされずに過ごすことができている

考えてみれば余りにも、平和すぎる

天乃「……なるほどね、そうね。そうかしれないわね」

夏凜「ネガティブな考えとは言え、ありえないって一概に言えないのが問題なのよね。こういうのって」

天乃「でしょうね……手が出しにくくなっちゃうものね」

それが大切な者であれば、なおのこと。

考えすぎだと言われても、大事な人のことなら念には念を入れたいと思うのが情だ
382 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/05(土) 19:21:07.85 ID:Vw5JGiYIo

ただ、さっきも言っていたように

天乃を人質に取ったことで勇者部が敵に回ることは確実なうえに自棄になって反抗してくる可能性があるほか、

それが以前暴動を起こしたクラスメイト達にまで伝わりなんてした暁には

大変なことになりました。なんて一言で片づけるのは難しい事態に陥るだろう

神樹様の寿命が尽きるまであと僅か

天の神による侵攻も行われるかもしれない

そんな状況下での内乱など、馬鹿でもやらない……はずだ

もちろん、本当なら勇者部だって大赦の邪魔をするべきではないのだが

それがだれかを犠牲にするやり方なのだから、止めるしかない

邪魔をするしかない

夏凜「奉火祭の後に関しては、知ったことじゃないわね。やらせるつもりなんてないわけだし」

天乃「阻止された後は?」

夏凜「そりゃ、責任はどうとるんだ。なんて詰め寄ってくるかもね」

後はもう勇者がどうにかするしかない。とか言って

残念ながら、単純な話ならそうなるというだけで

実際にはそうなってくれないだろうけれど

夏凜「もしもそうなったとしても、守るわよ。絶対に」

天乃「うん……」

守って貰えるだろうことは天乃も疑っていない

でも、その結果勇者部に何かがあるのではないかと、天乃は少し眉をひそめた
383 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/05(土) 19:23:04.12 ID:Vw5JGiYIo

√ 12月6日目 夜(病院) ※土曜日


01〜10  風
11〜20 
21〜30  陣痛
31〜40  沙織
41〜50 
51〜60 
61〜70  園子
71〜80 
81〜90 
91〜00  陣痛

↓1のコンマ
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/05(土) 19:32:16.59 ID:t3tyRT3WO
あ
385 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/05(土) 20:00:34.69 ID:Vw5JGiYIo

√ 12月6日目 夜(病院) ※土曜日


天乃「日曜日……」

気づけばもう、夜になっている

土曜日が終われば日曜日がやってくるのは必然

12月に入って初めての週末、あるいは週初

終わりでありながら始まりであるその日に、大赦は動くのだろうか

天乃は考え、息を吐く

祖母は大人だ

天乃たちよりもはるかに多くのことを経験している

そのうえ、大赦にはほかにも知識が集っている

きっと、天の神に対する対策は考えつかなくとも

子供たちの我儘に対する対策くらいは、何か用意されていることだろう

天乃「普通なら、みんなが出払う平日なのよね」

普通は。

だが、その裏をかいて日曜日に行ってくる可能性もゼロではない

しかし、それを読んだ勇者部の裏をさらに書いてくる可能性もあるわけで。

天乃「後手に回るのは、辛いことが多いわね」

それが有利に働くこともあることにはあるのだが。
386 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/05(土) 20:37:00.08 ID:Vw5JGiYIo

夏凜「もう21時になのに起きてていいの? あんた」

天乃「そんなに早く寝なくても平気よ」

夏凜「7時間程度寝たほうが良いって話だし、天乃の場合は14時間必要でしょ」

天乃「そんなに寝られるから出してないわよ」

そもそも14時間寝るのならば、

21時に寝ても起きるのは正午手前になってしまう

それはさすがに、体がもたない

天乃「それとも、夏凜が早く私と寝たいの?」

夏凜「言うじゃない、天乃」

ぎしり……と、夏凜の手がベッドをきしませて距離が近づく

天乃の誘うような言葉にも夏凜は余裕の表情で

むしろ、天乃を挑発するように、天乃を見上げるまでに視線を低くする

夏凜「……天乃先輩、そんな余裕がありますか?」

天乃「っ」

びくっと反応する天乃に、夏凜は苦笑する

夏凜「なんて、冗談よ。冗談」

天乃「鳥肌立った」

夏凜「おい」

せめて似合わない。で良いでしょうよ……と、夏凜はぼやく


1、ねぇ夏凜。大赦にはきっと、奉火祭以外の手段がある……気を付けて
2、夏凜は、みんなは私の王子さまだもの。見上げるのは私の役目だわ
3、今日は、一緒に寝てくれるのよね?
4、子供が産まれたら、名前はどうしようかしら

↓2
387 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/05(土) 20:41:24.50 ID:t3tyRT3WO
1
388 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/05(土) 20:42:17.52 ID:Z1xe1fho0
1
389 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/05(土) 21:50:20.66 ID:Vw5JGiYIo

むっとした、怒った表情

けれど、本気ではないとわかる優しい雰囲気

失いたくない、大切なもの

天乃は夏凜に気取られないよう、笑みを浮かべる

天乃「ねぇ夏凜。大赦にはきっと、奉火祭以外の手段がある……気を付けて」

夏凜「奉火祭以外の手段……ねぇ。前にも言って無かったっけ。そんな感じのこと」

天乃「ええ。でも、今回は確信があるというか……でも、嫌な予感というか……」

憶測でしか語ることができないのが無念だが、

奉火祭が失敗した場合、大赦は確実にそれを行おうとするだろう

問題は、【それ】が何かわからないという点だ

天乃「ごめんなさい。うまくは言えないけど、嫌なことだとは思う」

夏凜「なにその脅ししかないセリフ」

天乃「…………」

夏凜「……巫女としての勘。みたいなやつ?」

茶化すための言葉にも反応せず黙り込む天乃をじっと見つめ、

夏凜は小さく問いかける

天乃にというより、久遠家には元々巫女としての力が備わっている

それが、天乃によからぬ何かを感じさせている可能性があるのだ
390 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/05(土) 22:12:56.26 ID:Vw5JGiYIo

夏凜「嫌な予感ね……まぁ、そりゃ……」

奉火祭だって、何人もの巫女を犠牲にしなければならない嫌な手段だ

それでも、奉火祭を選んだということは

もう一つの手段は奉火祭以上に選ぶべきではない何かである可能性が高い

もちろん、奉火祭は何らかの反逆手段の下準備というだけで

その先があるかもしれないけれど。

夏凜「奉火祭が頓挫した場合、取れる手段は強硬手段だけになると思う?」

天乃「多分……勇者の力で押し切るか、神樹様の何かで押し切るか」

あるいは……と

口にした天乃を夏凜は一瞥する

それはない、それはあってはいけない

だが、力さえとりもどせれば勇者のごり押し以上に確実な手段

もしも、神樹様の種の件がその布石だとしたら……

夏凜「ない、それはない」

天乃「でも」

夏凜「無理をしたらアンタが死ぬわ」

天乃「子供が産まれる」

夏凜「っ……でも、それでも、普通……」

産まれたばかりの赤子から母親を奪う

さんざん奪われてきた天乃から命まで奪う

そんなことをさせるような鬼が、いていいわけがない
391 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/05(土) 22:39:44.79 ID:Vw5JGiYIo

夏凜「ない。あり得ないわよそんなの。考えていいことじゃない」

天乃「だと、良いのだけど……それに私が一番心配してるのは夏凜達なのよ?」

夏凜「私達より、アンタの方が――」

天乃「今回の件で、物は違うとはいえ神様の影響を大きく受けることになるのよ? 分かるでしょう?」

それによって苦しめられることはもちろん、

神の祟りを受け、天乃との誓約を結ぶことになっている

その結果、久遠家の力と神の力

両方に大きく近づくことになる

場合によっては、天乃よりも利用価値があるかもしれないのだ

天乃「死ぬ可能性があるのは、みんなの方よ」

夏凜「だとい……良いわけではないか」

まだ普通に動くことのできる自分たちのほうが良いと、夏凜は思う

しかし、そう単純な話ではない

夏凜「でも、少なくとも確実に死ぬ可能性のある天乃よりはましだわ」

天乃「…………」

夏凜「痛っ! 痛いっ痛いってのっ!」

ふふん。と

すました顔を見せる夏凜の腕を、天乃はぎゅぅぅぅぅっと摘まんだ
392 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/05(土) 22:40:50.06 ID:Vw5JGiYIo

√ 12月7日目 朝(病院) ※日曜日


01〜10 九尾
11〜20 
21〜30 
31〜40  千景
41〜50 
51〜60  陣痛
61〜70  夕海子
71〜80 
81〜90 
91〜00  陣痛

↓1のコンマ 
393 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/05(土) 22:41:44.59 ID:eglGvjc80
あ
394 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/05(土) 22:52:41.39 ID:Vw5JGiYIo

では、ここまでとさせていただきます
明日もできればお昼ごろから


天乃「っ……ぅ……」

夏凜「なるほど……嫌な予感ってのはこういうことか」

夏凜「天乃」ギュッ

夏凜「大丈夫、私が……ここにいてあげるから」
395 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/05(土) 22:57:25.07 ID:eglGvjc80
乙
しんどそう
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/05(土) 23:01:26.51 ID:t3tyRT3WO
乙
ここで二回目の陣痛、それも今度はみんなの前で来たか…
そして余裕がないとはいえ大赦は本当に外道と化してしまうのだろうか
397 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/06(日) 15:16:35.07 ID:V4Pm01/eo

では、少しずつ
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/06(日) 15:46:14.06 ID:Bc2SgvMkO
はいよ
399 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/06(日) 16:27:58.69 ID:V4Pm01/eo

√ 12月7日目 朝(病院) ※日曜日


二度目の陣痛は、まだみんなが寝静まっている早朝に起こった

刺し貫かれるような鋭い痛み

飛び上がりかけた体の強い圧迫感に押し出された吐き気

意志に関係なく目元からあふれる涙と、言葉にならないうめき声

天乃「ぁ……かっ……」

死ぬ。と、思った

体の内側から引き裂かれて、子供だけが残る

そんな、ありえない出産になるのではないかと思うほどに、

陣痛による激痛は異常だった

天乃「い゛っ痛っ!」

夏凜「ッ」

僅かに浮いた体がベッドを揺らし、かろうじて動いた天乃の手が夏凜の腕を鷲掴む

その瞬間、夏凜は飛び起きそうになって半身がベッドから落ちていく

夏凜「看護師ッ!」

滑り落ちた右足から左足へと組み換え、床を踏み飛ばしてナースコールを握るように押してすぐに、

病室内に常駐している看護師へと大声で呼びかける

園子たちが目を覚ますだのなんだのは、関係無かった
400 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/06(日) 16:45:40.35 ID:V4Pm01/eo

天乃「あっあ゛ぅ……うぅぅっ」

夏凜「天乃、大丈夫。大丈夫だか――」

宥めるような夏凜の声を遮るように、天乃の悲鳴が轟く

戦いに明け暮れた天乃でも、耐えがたい痛み

我慢するなんて出来ない苦痛

それを、すぐそばで見守る看護師は腕時計の時間を険しく見つめ、天乃を一瞥する

東郷「何か気になることでもありますか?」

「いえ……今は後にしましょう」

看護師はそういうと、どうしても仰向けになってしまう天乃の体をゆっくりと横向きにさせていく

普通の妊婦なら、腰回りの手当のためにも必要な動作だが、

天乃相手には正しいかどうかわからない

その緊張感からか、看護師の息を飲む音が夏凜の耳に届いた

夏凜「どうすんのよ」

「腰を優しく擦っていてあげてください。それと、仰向けにならないように擦ってあげてください」

ボール状のものでも置いて形作るというのも手ではあるが……

今の体にそれをやってはむしろ悪影響でしかないような気がするので。と、看護師は院内連絡用の端末を手に取る

「久遠さんです……はい、はい……陣痛は……ええ……そうですね」

連絡を取る看護師の表情は、終始険しいままだった
401 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/06(日) 17:09:18.45 ID:V4Pm01/eo

専属としている医師たちが病室へと駆け付けたのを見送った看護師は、

夏凜と東郷を天乃の傍に残し、ほかの勇者部メンバーを連れ出す

念のため、説明する必要があるからだ

「陣痛の時間が長すぎます」

風「双子だからですか?」

「いえ、双子なら本来は……もちろん、これにも特殊な部分はあるのですが……」

まだ中学生の小さな体ということは、子宮もそれに合わせた大きさなはずだ

そこで双子が誕生したとなると、子宮自体の広がりは腹部を見ても明らかに限界を超えている

そうなっている場合、陣痛自体が通常とは異なって微弱なものとなる可能性が高い

むしろ、天乃の場合はそうならざるを得ないようなコンディションだったはずだ

にもかかわらず、陣痛は普通に起こっていて、破水していない

加えて、陣痛の継続時間が数十秒ではなく数分間と非常に長い

稀にみる……なんて話ではなかった

樹「帝王切開……するんですか?」

「それも視野に入れる必要がありますが、何分特殊で……おそらく、麻酔が使えません」

風「麻酔無し!?」

「ええ。久遠さんの場合、麻酔を使うことで急激に衰弱する可能性があります」

そもそも、元々は元気だったという言葉が嘘のように病弱な体質になってしまっている

そこで、帝王切開のためにと麻酔を投与したら子供しか助からない可能性が非常に高い

だが、それはかねてからのみんなの要望にはそぐわない

だから、麻酔が使えない。と、看護師は言う

無論、現代において麻酔なしでの帝王切開など御法度もいいところなのだが。
402 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/06(日) 17:24:54.90 ID:V4Pm01/eo

「ですので、出来る限り自然分娩でと……ですが……」

今なお続く天乃の苦痛の叫び

だんだんと叫ぶ声も弱って、枯れて

悲鳴に交じって咳き込んでいる音までも聞こえてくる

友奈「久遠先輩は、助からないんですか?」

「帝王切開を行う場合は、まず助からないと考えていただくことになるかと思います」

園子「今の陣痛を耐えきったら、大丈夫?」

「……先生の診断によりけりですが、今日一日は陣痛に苦しめられる可能性もあります」

もしかしたら、日を跨いでも続くかもしれない

明日も明後日も続くかもしれない

友奈「……久遠先輩に必要なことはありますか?」

園子「ゆーゆ?」

友奈「久遠先輩が少しでも楽になれること。どんなことでもいいです。教えて貰えませんか?」

樹「久遠先輩を死なせたくないんです。ただ、辛い姿を見ているだけなんて嫌なんです」

できることがあるとかないとか、そんなことは関係ない

今の天乃にとって必要なことがあるのなら、それをやるのだ

「そうですね……では、ケアをしてあげてください」

楽な姿勢を取らせたり、マッサージをしたり、汗を拭いてあげたり

水分を取らせたりなど、一通りの介護をしてあげる必要がある

「それと、慌てないことです。皆さんが慌てていたら久遠さんまで余裕がなくなってしまいますからね」
403 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/06(日) 17:50:48.15 ID:V4Pm01/eo

√ 12月7日目 昼(病院) ※日曜日


01〜10 九尾
11〜20 
21〜30  陣痛
31〜40 
41〜50  夏凜
51〜60 
61〜70  陣痛
71〜80 
81〜90  陣痛
91〜00  陣痛

↓1のコンマ 


※陣痛以外は少し話せる。という程度
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/06(日) 17:55:14.98 ID:Bc2SgvMkO
あ
405 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/06(日) 18:30:59.62 ID:V4Pm01/eo

√ 12月7日目 昼(病院) ※日曜日


友奈「久遠先輩、体拭きますね」

横になった天乃の裾をめくって、腹部から脇腹、背中へと

友奈はできる限り優しい力でタオルを流していく

大きく膨らんだお腹が動く、胸が動く

そのたびに苦痛に身をよじろうとする天乃を、樹たちが支える

陣痛が始まってからも軽い運動などはすべきだが

それもやはり、天乃には辛いうえに下手に動けば悪化してしまう

何もさせてあげられない残酷さに友奈は表情を険しくさせて、息を吐く

東郷「夏凜ちゃん、平気?」

夏凜「このくらい、なんてことないわよ」

昼になっても、以前のように陣痛が収まってくれる……などということはなく

ひっきりなしに襲う激痛に、天乃はずっと夏凜の腕を握りしめたままで

食い込んだ部分からは少しだけ、血が滲んできていた

夏凜「そんなことより、陣痛の時間少しは短くなったんじゃない?」

風「いや、全然誤差の範囲よ。でも、陣痛の間隔は狭まってきてくれてる……はず」
406 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/06(日) 18:51:53.48 ID:V4Pm01/eo

樹「本来なら、1〜2分間隔になったらもう十分らしいよ」

沙織「というより、まだ破水もしてないんだよね……」

通常の妊婦にもそれはあることで

そういう場合には、少しだけ穴をあけるといった、

人工破水。というものを行うこともある

だが、天乃の場合は先ほど行った検査結果ではまだ6cmほどしか子宮口が開いていないため、

均衡が崩れた悔過一気に流れ出してしまうかもしれない

それでは、子供が危ない

かといって……

東郷「このままだと、過強陣痛を引き起こす可能性もあるって」

園子「でもわっしー帝王切開はできないよ」

もし、麻酔なしでの帝王切開をやったとして

それが、運よく成功したとして

それで万事解決になるわけではない

沙織「それはそれで、別の症状を引き起こす可能性が高いからね。特に、久遠さんの場合は」
407 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/06(日) 19:12:06.73 ID:V4Pm01/eo

焦るなと友奈たちは心の中で繰り返す

自分たちが焦っていても何も変りはしない

天乃が救われるわけではないのだから。

天乃「はっはっはっ……はぐっ……ぅっ!」

ぎりっ……と、噛みしめられた歯が音を立てる

呼吸を整えるので精いっぱいで

少しだけ落ち着いた痛みを踏み潰す勢いで猛烈な痛みが襲う

腰から折れてしまいそうな気がする

股が裂けてしまいそうな気がする

このまま、子供が産まれ落ちるのとともに自分の命までも落としてしまいそうな気になる

そんな考えを持つべきではないと

それは分かっているはずなのに、限界だった

でも

天乃「ぐっぅ゛ぅぅぅぅぅぅ」

夏凜「天乃……」

ぐっと、歯を噛みしめる

ぎゅっと、夏凜の腕を掴む

それは天乃にとっての、命綱だった
408 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/06(日) 19:41:33.99 ID:V4Pm01/eo

風「腰のあたり少しマッサージでも――」

友奈「それなら私がやりますっ」

東郷「友奈ちゃんは、ちょっと」

友奈「えっ」

体を拭いてあげてね。と

東郷は友奈を引き下がらせて、腰に手を触れさせる

友奈は確かにマッサージが上手なのだが

聊か、今の天乃にはそぐわないのだ

東郷「久遠先輩、少しずつマッサージしていきますね」

まずは一声かけて、撫でる

どこを揉むか、押すか

合図をしながら、進めていく

樹「園子さん、飲み物を買いに行きませんか?」

園子「そうだねぇ〜冷蔵庫に水しかないもんね」

沙織「あっ、それならあたしもいくよ。精霊でつながってるから何かあったときにすぐ戻れるから」

天乃のためにとそれぞれで役割を決めて、分担する

少しでも楽になるようにと、願って
409 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/06(日) 19:48:34.98 ID:V4Pm01/eo

√ 12月7日目 昼(病院) ※日曜日


01〜10 破水
11〜20 
21〜30 陣痛
31〜40 
41〜50 破水
51〜60 陣痛
61〜70 
71〜80 九尾
81〜90 
91〜00 千景

↓1のコンマ 

※空白以外なら本日中 確定
410 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/06(日) 19:52:59.28 ID:WJyRFiHGO
うおおお
411 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/06(日) 19:57:09.15 ID:Bc2SgvMkO
ついに出産来るか…!?
412 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/06(日) 20:56:50.68 ID:V4Pm01/eo

√ 12月7日目 夕(病院) ※日曜日


天乃「はぁ……はっ……はっ……ぁぅ……」

夏凜「頑張りなさい、あともう少しだから」

朝からずっと、苦しめられていて息も絶え絶えの厳しい状況の中

樹たちが買ってきた飲み物を、むせないようにストローで飲ませる

陣痛に苦しむ時間は相変わらず長いが

陣痛の感覚もゆっくりとだが縮まってきている

この調子なら、今日中に生まれる可能性は高い

正直なところ、ここまでひどく衰弱した状態での出産など考えたくはないが

そうならざるを得ないだろう

風「なんていうか、出産ってここまで大変なことだったのね」

樹「久遠先輩は本当に特殊なんだとは思うけど、でも、きっとそうなんだと思う」

人一人、二人

そんなとても大きなことをするのだから

簡単なことではないのは当たり前のことだろう

風「樹ったら知ったようなこと言っちゃって……どこまで先を行くんだか」
413 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/06(日) 21:17:46.86 ID:V4Pm01/eo

自分が知っているよりもどんどん大人になっていく

そんな樹を横目に、風は深く息を吐き出すと

樹と一緒に、天乃たちを覆うカーテンから出ていく

全員でずっと見ていても仕方がない

それよりも交代制にして長丁場にも耐えられるようにしましょう。という東郷の提案に乗ったのだが

すぐそこで苦痛に呻いているのを知っていて休むのも難しかった

「本当は私達が手を貸すべきなのですが……」

風「いえ、出来ることをやらせてくださいって言ったのはあたしたちですから」

看護師の困った表情に、風は笑みを返す

もちろん、専門的なことはお任せする

何か変化があった場合も交代する

でも、体のケアや寄り添うこと

それくらいのことであれば自分たちがやってあげたいというのが勇者部の意志だった

風「でも、本当に今日産まれるんですか?」

樹「陣痛の感覚は短くなってきてるんですけど……」

「そうですね。陣痛の間隔の短縮に比べて、陣痛継続時間が比例していないので断言は難しいですが」

産婦人科の先生ですら、頭を悩ませています。と、看護師は言う

実際、双子で、過強陣痛気味で、中学生で、妊娠周期も何もめちゃくちゃな妊婦など扱ったことはまずないだろうし

そんな前例は恐らくだが、ない
414 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/06(日) 21:29:02.80 ID:V4Pm01/eo

樹「……そうですか」

勇者としての力が、複雑にしてしまっている

とはいえ、神樹様の力です。だの、穢れの影響です。だの

大赦所属の霊的医療班ですら半分―もちろん穢れの方―は良く分かっていないのだ

看護師に話したところでどうにもならない

「でも、大丈夫だと思いますよ。この調子で進んでいるなら子供が今日中に産まれる可能性は十分にあります」

問題は、産むための体力が天乃に残るかどうかだと看護師は眉を顰める

これまでの入院生活で天乃は体力が落ちてしまっていて

朝からの陣痛の激痛に耐えた後の出産は本当に命がけになってしまう

しかし、今日は疲れているからまた明日ね。なんて

赤ちゃんには通用しない

「皆さんには、非常に申し上げにくいことなのですが……」

風「そんなことっ」

樹「久遠先輩なら、大丈夫です」

大丈夫なんです。と

樹は天乃たちには聞こえないほどの声で力強く言う

それは確信しているというよりも、そうであってほしいと願っているような声だった
415 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/06(日) 21:56:34.77 ID:V4Pm01/eo

風「そうね樹……大丈夫」

「……みんなのサポートがあれば大丈夫ね」

看護師は笑みを浮かべて、頷く

だが、現実は甘くない

手厚いサポートがあって、生きて欲しいと願う家族がいて

生きたいというお母さんの願いがあってなお、命を落としてしまう母親もいる

それほどに、過酷なことなのだから

だけれど、無理だというわけにはいかない

死んでしまうと首を振るわけにはいかない

まだ若いからこそ過酷

だけれども生命力はあるはずなのだから

東郷「ふぅ……」

樹「東郷先輩っ」

風「手は大丈夫なの?」

手洗い場から戻ってきた東郷は苦笑いを浮かべながら、手を振る

東郷「まだ疲労感は残ってますが、久遠先輩に比べればこの程度何ともありません」

「あまり、無理はしないでくださいね」

東郷「はい」

きっと、この戦いは夜通し続く

そのために、交代制にしてまで休憩をとることにしたのだ

寝る間を惜しむ程度の無茶はしても、無理はしない

それでは本末転倒だと、東郷は頷いた
416 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/06(日) 22:00:06.43 ID:V4Pm01/eo

では、途中ですがここまでとさせていただきます
明日はできれば通常時間から

ここから夜にシフト、出産までノンストップ
ただし久遠さんの体調に関しては判定


九尾「ふむ……産まれるかや」

九尾「難産になるじゃろう」

九尾「これから困難が待ち受けていることじゃろう」

九尾「それでも決めたのは主様らなのじゃ。精進するがよい」

九尾「少しなら、妾も手を貸してやろうぞ」
417 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/06(日) 22:15:01.53 ID:Bc2SgvMkO
乙
一気に出産まで物語が動き始めたか…
陣痛のシーンが凄く生々しい描写だったなぁ

ところで双子ちゃんの名前は募集するのかな?それとも自動で決まってる?
418 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/06(日) 22:55:13.66 ID:J96XamO80
乙
穢れもそうだしそもそもが人間と妖怪のハーフだもんなあ
わからないことだらけで難しいね
419 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/07(月) 12:25:08.43 ID:VLBDs57XO
何気に双子の誕生日が12/7で樹と一緒になるんだな
420 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/07(月) 17:53:25.27 ID:fBLk8fCGO
陣痛描写でも手を抜かない謎のこだわり
そして忘れ去られているいっつんの誕生日
421 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/07(月) 20:37:47.07 ID:AHDigxajo

では少しだけ
422 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/07(月) 20:45:12.11 ID:9QcBwNv1O
よしきた
423 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/07(月) 21:09:37.35 ID:AHDigxajo

√ 12月7日目 夜(病院) ※日曜日


天乃「はっはっはぁぅ……ぅぅ……」

夏凜「………」

ひと呼吸にも呻き声の混じる天乃の額に落ちた髪を指で払うと、

ジトっとした汗が指に張り付いてくる

友奈や樹が交代交代で汗を拭いてくれているが、

拭いても吹いても、脱水症状になってしまうのではないかと不安になるくらいに、汗だくになってしまう

沙織「久遠さん、口開けて」

天乃「んっ」

沙織「怖いのは分かるけど、水分は取らないとダメだよ」

少し前に、飲み物を飲んでいる最中に咳き込んで息ができなくなってしまったからか、

天乃は唇を結んで拒否する仕草を見せるが、

沙織はペットボトルに直接差し込んだストローの口を、天乃の方へと向ける

辛くても、苦しくても飲まなければだめだ

朝から食事も何もできていないのに、

水分まで取らなくなってしまったら大変なことになる

夏凜「少しでもいいから飲みなさいよ。子供もアンタも、無事でいるために」
424 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/07(月) 21:49:01.20 ID:AHDigxajo

天乃「ぅ……」

沙織「あ……ごめんね。ちょっと待って」

震える唇で、ストローを挟む

けれどペットボトルの中身は微動だにせず、ストローの中を這い上がっていくような様子もなくて

沙織ははっとしたように謝って一度ストローを加えてごくりと喉を鳴らす

本当はあまりしないほうが良いのだけれど

天乃の体の反応に関係なく流し込むのはさすがに危険すぎる

かといって、飲ませないわけにもいかないのだから、仕方がない

誰に言われたわけでもなく言い訳を心に描いてもう一度天乃にストローを咥えさせる

沙織「そうっとね。ゆっくりだよ」

天乃「ん……ぅ゛っぇっ」

園子「っ! 天さんっ」

こくり、こくり……と

僅かに飲んだところで、また陣痛の痛みが訪れて息が詰まる

飲み切れなかった液体が気管に流れようとして、咳き込む

園子「落ち着いて、落ち着いてね」

園子はすぐに体を横にして、そこからさらに45度ほど傾けて、吐き出せる

天乃「げほけほっぅ゛ぅぅっ」

園子「大丈夫、大丈夫だよ〜」
425 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/07(月) 21:59:06.44 ID:velSnFRgo
みんなに母性を感じちゃう
426 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/07(月) 22:04:57.35 ID:AHDigxajo

夏凜「…………」

天乃の視界の外にいる園子を一瞥した夏凜は、

言うか迷った口を開いて、優しく声をかける

夏凜「……休んでてもいいのよ。園子」

園子「平気なんよ。全然」

気丈な返事

それとは裏腹に、辛そうな表情

疲れているからじゃない

天乃の姿があまりにも痛々しくて、心が苦しくなってくるからだ

夏凜「それなら良いけど、無理はするんじゃないわよ」

沙織「我慢しないで出しちゃっていいからね……」

飲み込めずに出てくる唾液を、タオルで拭いながら声をかける

遠慮しなくていい

迷惑だなんて考えなくていい

頼り切っていいからね。と、微笑む

友奈「沙織さん、代わります」

沙織「うん、お願い」

綺麗なタオルをもってカーテンを開いた友奈と沙織が入れ替わる

陣痛に苦しめられてからすでに十数時間

半日以上、途切れることなく続く陣痛の疲労を隠し切れない天乃の姿に、友奈は唇を一度噛んで笑みを作る

これがすべて穢れだったら笑顔にはなれない

でも、これは違う。子供が産まれるのだ

だから……と、友奈はできる限りの笑みを浮かべた
427 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/07(月) 22:15:28.81 ID:AHDigxajo

天乃「はぁっはっ……ぁ……っぐ!」

夏凜「……っ」

天乃の疲弊、憔悴、衰弱

それを直接感じている夏凜は爪痕さえつけることができなくなりつつある天乃の手に手を重ねる

自分の腕から滑り落ちるようなことだけは、させない

天乃「ひぐっ……うぅぅあ゛ぅっ」

友奈「もう少しです。もう少しですよ、久遠先輩……」

嗚咽交じりのうめき声

汗に隠れて流れていく涙をぬぐって声をかける

看護師から聞いた話で、確証がある。とは言われていないが

本来の陣痛の流れにのっとって考えるのならば

陣痛の間隔がしっかりと短くなりつつあるのはもうすぐ子供が産まれる兆候

本来ならいいことなのだが、

天乃の場合は陣痛に苦しめられる時間が長すぎるため

休息時間がほとんど削られてしまっており、厳しさは増すばかりで。

友奈「あともう少しですよ。可愛い子供が産まれてくるんですっ」

それでも、友奈は明るく声をかける

それが一番元気づけられると信じて
428 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/07(月) 22:27:59.97 ID:AHDigxajo

本来なら、陣痛の合間に検査をしたりするべきなのだが、

苦しめられている時間が長すぎて、検査どころではない

調べるべき子宮口の広がりもそうであってくれと願うばかり

さすがの産婦人科の医師も、いざというときのバックアップ体制を念入りに備えるのが限度だった

「……これ以上はお母さんも子供も危険だわ」

沙織「でも、帝王切開するわけにはいかないんですよね?」

「ううん、それはあくまで久遠さんや貴女達の要望に沿うならの話よ。子供だけでも……という話なら別」

酷な話だけどね。と、

悲し気に漏らした産婦人科医を、沙織は見開きかけた瞳で捉える

医師だから、患者の願いを出来る限り叶えてあげたいと思ってくれているのだろうか

少し考え、息を吐く

沙織「すみません」

園子「謝ることじゃないんよ」

沙織「園子ちゃん……もういいの?」

園子「風先輩が代われって」

しっしっという手ぶりをしながら、園子は苦笑いを浮かべる

身体的疲労はないが、精神的な疲れを感じる笑みだった

園子「天さんは頑張ってきたんよ。だから、少しくらい我儘も許されていいと思う」

「赤ちゃんにとって、お母さんは重要よ。ううん、子供にとってお母さんはとっても重要なの……だから、出来る限りどちらも救ってあげたい」

産婦人科医の女性は言いながらカーテンを見つめて、険しい表情を見せる

今のままではそれが難しい。というような表情だ
429 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/07(月) 22:44:03.98 ID:AHDigxajo

産婦人科医の女性は、きゅっと唇を固く結ぶ

その瞬間、何かを覚悟したのだと察して園子が目を見開く

園子「ダメなんよっそれはっ」

「…………」

東郷「そのっち……?」

園子「っ」

園子たちのいる出入り口付近のベッドに座っていた東郷の心配そうな声に、園子は乗り出しかけた体を抑える

天乃たちの意思を尊重したい

そう考えている医師が険しい表情で決断することなど、悪いことでしかない

園子の考えを察しているかのように、産婦人科医の女性は園子を見る

「申し訳ないけれど、母子ともに失うわけにはいかないの。分かって」

ごめんね。と

女性は言いながら伸ばした手を、引っ込める

嫌なことを言っている自分には、悲しそうな園子の頭を撫でてあげるわけにはいかないと思ったからだろう

東郷「するつもりなんですか? 帝王切開」

「このまま、陣痛だけが続くようなら麻酔を使って行うことも検討するわ。親御さんにも連絡は取ってあります」

園子「許可、したんですか?」

「……子供たちが望んでいないのなら同意は出来かねます。と、ですから、ここにいる貴女達の同意があるかどうか。なのよ」
430 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/07(月) 22:46:31.81 ID:AHDigxajo

では、途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


もうちょっと苦しみます……
431 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/07(月) 23:00:47.33 ID:9QcBwNv1O
乙
中学生には重たすぎる決断
久遠さんはもちろん勇者部も辛いよな…
432 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/08(火) 04:23:49.31 ID:KIKesf5h0
乙
ここまで難産になるとは
433 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/08(火) 08:24:20.56 ID:cbDkhBThO
乙
久遠家と普通に連絡とれるんだ…って思ったけど連絡くらいはとれるよな
問題は会いに来ないことだ
434 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/08(火) 20:44:25.50 ID:AkijykZ3o

では、少しだけ
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/08(火) 21:04:36.80 ID:jLpMAnBqO
あいよ
436 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/08(火) 21:23:41.21 ID:AkijykZ3o

沙織「あたし達の同意……」

園子「…………」

本来なら、真っ先に否定すべきことだろう

だが、天乃までも危険なら

そう考えて、園子は首を振る

だめだ、それはダメだ

それでは今までと変わらない

勇者部の誰かが犠牲になって、天乃が助かる

そんな、天乃が一番望んでいないことと変わらない

固く唇を結んで、園子は一歩踏み込む

園子「それは、出来かねるんよ」

「久遠さん自身も危険なんですよ?」

園子「それでも……それでも、私たちは夢を掴むと決めた」

だから、止まらない

この不安に、負けるわけにはいかない

園子「久遠先輩は大丈夫」

そう信じてる。

いつだって、どんなに困難な状況だって

天乃は何とか成し遂げてきたのだから

東郷「なせば大抵なんとかなる。それが、勇者部五箇条の一つです」
437 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/08(火) 22:10:14.62 ID:AkijykZ3o

そうは言えども、怖いのだろう

東郷の表情は不安を隠しきれていない

園子も、沙織もだ

何とも言えない複雑な表情だった

沙織「……久遠さん、このままだと死ぬ可能性。あるんですよね?」

「そうねぇ……貴女達には、ちゃんと話しておくべきことよね」

悩ましげな息を吐きながら言う女医は、

ちらりと天乃を囲うカーテンの方へと目を向けて、眉を顰める

不意にぐっと下がった目線は園子達を一周した

「さっきも言ったように、母子ともに失う可能性があるの。つまり、久遠さんも亡くなってしまうということよ」

東郷「…………」

「医者である私の口からそれを言ってしまうのは、貴方達には悪いことだと思うけれど」

帝王切開を行うか否か

その判断をゆだねられてる以上、現実を突きつける必要があった

「このままだと、万が一に自然分娩できたとしても母体への影響は計り知れないものになるわ」
438 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/08(火) 22:37:27.73 ID:AkijykZ3o

ただでさえ、予想がつかない体調の変化と胎内の動きに翻弄されているのに

女医がはっきりと言えてしまうのはきっと、この体調の変化が天乃にとって辛いものばかりだからだ

産後は体を悪くしがちで、場合によっては病気にもなってしまう

そこで悪い状況に転がると言ったらもう、それ以外にはない

「みんなが、久遠さんも子供もちゃんと助けたいって思っているのはね。良く分かっているのよ」

でも。と、女医は口にする

できるのなら付け加えたくない否定

だが、そうならざるを得ないのが今の天乃の状況だった

「……もし、その理想を抱き続けるというのなら、失う覚悟をしてください」

園子「久遠先輩は……天さんは……」

話し声が途切れると、

天乃の苦しみに満ちたうめき声が病室に木霊する

沙織「………」

園子「天さんは……大丈夫なんよ……」

沙織はそうっと、園子を抱き寄せて頭を撫でる

沙織「……分かってるよ。大丈夫だよ……大丈夫」

そう、囁いて心を寄せた
439 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/08(火) 22:43:56.87 ID:AkijykZ3o

√ 12月7日目 夜(病院) ※日曜日


天乃の容態判定


↓1のコンマ 一桁

※1〜0の10段階
※1が最低値  0が最大値
※0に近いほど悪い
440 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/08(火) 22:44:54.11 ID:jLpMAnBqO
たのむ
441 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/08(火) 22:52:43.06 ID:AkijykZ3o

では、ここまでとさせていただきます
明日は恐らくお休みになるかと思います
再開は明後日、出来れば通常時間から


ぞろ目ですが、ボーナスはありません
442 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/08(火) 22:59:32.96 ID:jLpMAnBqO
乙
これは奇跡が起きてなんとかなるか…!?
明後日の続きが待ち遠しいなぁ
443 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/08(火) 23:00:38.60 ID:KIKesf5h0
乙
これが信頼の力か
444 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/10(木) 21:41:56.63 ID:Bs9VRvXko

では、少しだけ
445 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/10(木) 21:45:43.37 ID:q0uKUYY2O
よっしゃー
446 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/10(木) 22:21:58.28 ID:Bs9VRvXko

もうすぐ日付が変わろうかという、夜遅い時間だった

交代交代で休憩をとっているとは言っても

不安で眠るなんてことはできなかった勇者部の面々にも疲れが見え始める中、

天乃の苦しい声に覆いかぶさるように、何かが噴き出すような音が病室に響いた

夏凜「!」

樹「あっ、ぇっ!?」

周囲に立ち込めるさっきまで感じることのなかった刺激的なにおい

飛び出し続けるウォシュレットに蓋をしたような音

察知した樹が布団をめくってようやく、その正体に気付いた

東郷「破水しました!」

消灯時間もとうに過ぎているなどお構いなしに声を張り上げた東郷は、

自分の手元にあるタオルを一瞥して、カーテンをめくり、

駆け寄ってくる看護師と沙織の姿を認めて、出ていく

東郷「伊集院先輩、お願いします。私は新しく拭きものを用意してきます」

沙織「お願い!」

「犬吠埼さん、ナースコール」

風「とっくに!」

「なら良いわ、待機してるはずだからすぐに来るはず――頑張って」
447 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/10(木) 22:39:40.34 ID:Bs9VRvXko

友奈「破水したって言うことは、もう産まれてくるんですか?」

「破水かどうかは、一応検査してから判断するわ」

ほとんど確定と言ってもいいけどね。と、

女医は少し安心したように答えながらも、落ち着いた様子で応急処置を行っていく

漏れてくる羊水―破水なら―をタオルに吸収させつつ、

東郷の用意したタオルを惜しむことなく使って下腹部の清潔さを保つ

そして、それから5分もしないうちに看護師数人が病室へと入ってきた

「先生!」

「遅い、ストレッチャー用意は!」

「出来てます!」

「恐らく破水してる……完全だけど勢いが強すぎるから注意して!」

数人の看護師で天乃の体をストレッチャーへと移していく

本職の人たちということもあってその手際の良さは流石のもので、

手数が足りていることもあって、友奈たちにはただ見ていることしかできない

ベッドからストレッチャーへと移された天乃は、

もはや掴むほどの力がなかったのだろう、ずっとつかんでいた夏凜の腕を手放す
448 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/10(木) 22:55:13.50 ID:Bs9VRvXko

園子「にぼっしー! ぼうっとしない!」

夏凜「っ!」

気が抜けていたわけじゃない

寝ていたわけでもない

けれど、うまく反応することができなかったのだろう

天乃の手が離れても身じろぎしなかった夏凜へと、園子が強い声を叩きつけた

東郷「立ち合い、誰がするかなんて話し合ってなかったけど、分かるでしょう?」

陣痛の時はまだ、

天乃が夏凜の腕を強く掴んでいたこともあって、広い病室のまま行われた

けれど、分娩に関してはもう、それ専用の分娩室に行かなければならない

当然、そのための医療設備や付き添っていた医師はもちろんのこと、

さらに助産師や看護師など複数人が入ってくるため、勇者部のみんなが来るなんて言うことはできない

だからこそ、みんなは夏凜を見る

天乃がずっと縋っていたのは夏凜だ

きっと、こういう時に一番一緒にいて欲しいのは夏凜だ

そう、思って

「来るなら早く! 置いていくわよ」

言いながらも全く待たずに天乃を連れていく医師

その姿を見て、みんなを見て

困った表情を見せた夏凜は息を吐く

夏凜「あぁもう、分かってる。分かってるわよ! 腕の一本くらいくれてやればいいんでしょ! アンタたちは休んでなさい」

まだ痕の残る腕を一瞥して、夏凜は天乃の後を追う
449 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2019/01/10(木) 23:11:08.68 ID:Bs9VRvXko

では、途中ですがここまでとさせていただきます
明日は所用でできない場合がありますが
その場合、明後日土曜日は少し早い時間から

最初の方は恐らく、安価なしでの進行になるかと思います


※本来、立ち合い出産は任意ですが、
  久遠さんの場合は心身共に支えが必要なため夏凜の立ち合いは強制です
450 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/10(木) 23:15:00.16 ID:q0uKUYY2O
乙
ついに、久遠さん出産の時が来たか
もしコンマで体調最悪を引き当ててたらどうなってた事やら…
451 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/10(木) 23:48:13.25 ID:rXTgeE5C0
乙
正念場だな
452 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/11(金) 19:15:10.52 ID:ya5z5TKsO
妊娠と出産にリソース割きすぎてない?
医療系SSだっけ?
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