イケメン「……君が好きだ」美少女「……え?」男「やべぇ変な玩具の音がとまんねぇ」

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217 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/02(土) 14:53:49.09 ID:fmhnQHuu0
これは地味にきついな
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/02(土) 16:20:48.53 ID:R+oPfMQCO
……こっからハッピーエンドなるか?
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/02(土) 20:21:19.77 ID:QQ9jGgZhO
ここから怒涛の復讐パートになるんだきっと
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/02(土) 20:49:44.52 ID:05N79PfA0
社会の暗部の闇と対決する!みたいな話にはならんでほしい

もし、そういう構想であるなら早めに明かしてほしい
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/02(土) 22:40:41.08 ID:KZBUS3bdo
細かいけど

「〜して見た」「やって見よう」

のような「見」の使い方が気になる
222 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/02(土) 23:22:15.41 ID:ubCZnFMC0
戻ってきました
今から続き書きつつ出来た都度に投下していきます
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/03(日) 02:25:13.64 ID:SdJphz7Ko
まだか
224 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/03(日) 03:13:40.33 ID:g7pSPmhq0
白髪少女「ちょっと、等と言う感じの表情では無いように見えるが?」

男「……」

白髪少女「何かあったんだな?
       私には話せないか……?」


白髪少女に問われて、
男はこの連絡について話すべきか否か悩んだ。

それは、これが白髪少女には関係の無い事だったからだ。
二人に面識があるわけでも無く、
あくまで男にとっての個人的な繋がりの人物でしかない。

ただ、そうだとしても、
特別に隠す意味がある連絡なわけではない。

男は幾秒か悩む。
しかし、最終的には説明をすると言う答えに至った。
隠す必要がない事を、
隠す意味は無いだろう、と。


男「……実はな」


そう切り出して話し始めた男の説明を、
白髪少女は黙って頷いて聞いてくれた。
それから全てを聞き終えてくれたうえで、


白髪少女「……であるならば、この後すぐにでも話を聞きに行くべきだろう」


と、助言をしてきた。


男「この後すぐ、か……」

白髪少女「気になるのだろう?
       顔を見れば分かる。
       であれば、話を聞きに行った方が良い。
       後で後悔しないようにする為にも、だ。
       長引く前に色々な気持ちを整理して、次に進んだ方が良い」

男「……そう、か」
225 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/03(日) 05:14:38.33 ID:g7pSPmhq0
白髪少女の言葉は、
どこか男の心の中にすとんと落ちた。
だから、


男「分かった。今からでも行けるかどうか、聞いてみる」


ラインを通して正社員女の両親へ、

今からでも大丈夫です。
お伺いしても宜しいでしょうか。

と言う旨を伝えた。

それから、
まもなくして返ってきた返事は、
了承を告げる言葉で綴られている。

正社員女の親――ありがとうございます。
正社員女の親――場所は○○大学病院になります。
正社員女の親――総合受付の方にお話を通しておきますので。
正社員女の親――妻ともども、お待ちしております。


男は言葉にし難い気持ちを抱えながらも、
白髪少女の言う言葉の通りに、
後悔しない為にも、
気持ちを整理する為にも、
外出の準備を早々に終えて、
正社員女の親に会う為に、
大学病院へと向かう事にした。


白髪少女「私はここで待っていよう。気をつけてな」


自分は待っていると、
そう言った白髪少女の声音が、
男の耳には酷く優しく聞こえた。


……



○○大学病院 入り口

ザワザワ
ザワ


男「えーと……。
  大きな病院って人が多いんだよな。
  総合受付、総合受付……あった。

  ――すみません」

病院の総合受付「はい。
           本日はいかがなされましたか?
           診察を希望の方でしょうか?

           えーと、診察の場合、
           初診であれば紹介状が必要になります。
           再診の場合は診察券が必要となります。

           当窓口では診察のご予約等はお承り出来ませんので、
           受診をされる希望の科の窓口に、
           直接ご提示頂いて――」

男「あー、そうではなくて。
  昨夜事件に巻き込まれた、
  正社員女さんと言う方が、
  こちらに緊急搬送され、
  お亡くなりになられたと思うのですが……」

病院の総合受付「昨夜の……失礼ですがもしかしたら、
           あなたは記者か何か……ですか?」ウン?

男「いえ違います。
  彼女とは知人で……。
  彼女の両親とこちらで会う約束をしていまして。
  お話通っておりませんか?」
226 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/03(日) 08:00:29.06 ID:g7pSPmhq0
病院の総合受付
「ぁあ……貴方が。
 ええ、はいお伺いしております。
 お待ち合わせ頂いている方は、
 現在霊安室の方に居られます。
 道順は案内板にそって進んで頂ければ着きますので」


男「いえ、こちらこそ……まぎらわしい言い方をしてしまったかも知れません」

病院の総合受付
「……た、大変失礼致しました」ペコーリ

男「では」


会釈を交わして、
男は言われた通りに案内板にそい、
霊安室方面へと足を運んだ。

そして進むにつれ、
騒がしかった入り口とは違い、
徐々に人気が無くなってくる。

まもなくして霊安室の場所まで辿り着くと、
長いすに腰かける、憔悴しきった様子の初老の男女が一組見えた。

男はこの男女を見て、
すぐに正社員女の親だと気づいた。
その顔に正社員女の面影を見たからだ。


男「すみません……」

正社員女の父
「はい……」

男「男と申しますが……正社員女さんのご両親でお間違えは?」

正社員女の父
「あなたが……えぇはい。私が正社員女の父です。
 お待ちしておりました。
 こちらが家内です」

正社員女の母 ……ペコリ

男「色々とお忙しい中とは存じますが、
  この度はお時間を作って頂き、
  ありがとうございます」

正社員女の父
「いえ、こちらこそ。
 それでその……よろしければですが、
 お話をする前に一度、
 娘の顔を見てやってください。
 綺麗なものです」

男「……」


誘われるがままに、
男が霊安室の中へと入ると、
そこには、
ぴくりとも動かない正社員女が、
静かに安置されていた。


男「確かに……綺麗ですね」

顔だけが見えるように安置されていたのだが、、
そこから見える正社員女の寝顔は、
生気が無いせいかまるで人形のようで、
確かに……綺麗だった。


正社員女の父
「えぇ綺麗です。
 でも顔だけです。
 顔だけなんです……。
 体の方は……ぼろぼろで」ウゥ

正社員女の母 ウッ……


ポタ、ポタ……と涙が床に落ちる音が響く。
227 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/03(日) 08:03:01.99 ID:g7pSPmhq0
名前が長い人の台詞の場所を一段下げにして見ました
途中でもしかしたらスマホだと見辛いかも、と思ったので……
228 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/03(日) 08:13:36.02 ID:g7pSPmhq0
すみません、一旦中断です
今回スローペース過ぎて申し訳ないです
戻ってきたら続き書きます
なるべく早めに戻って来たいと思います
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/03(日) 10:13:30.27 ID:36DbMnLiO
このペースでVIPに書いてたら荒れるわな

まぁここなら関係ないが
230 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/03(日) 19:58:41.40 ID:g7pSPmhq0
戻りました
今から続き書きつつ
いつも通りに出来た都度投下します
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/03(日) 20:14:53.73 ID:BrCvhmwA0
読んでるぞ

でも中国マフィア(とフツメン)はもう出なくていいよ
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/03(日) 20:25:16.44 ID:j1HkVCquo
内容に指図しだしたら書かなくなるぞ
233 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/03(日) 20:28:10.29 ID:g7pSPmhq0
正社員女の父
「どうして、どうして娘が……」ウゥッ


正社員女の両親は、
父母ともに溢れる涙滴を、
拭う事しか出来ない様だった。

娘の死に顔と再び直面する事で、
亡くなってしまったのだ、と言う現実と、
否が応にでも向き合う事になるからだろう。


男には分からなかった。
何を言えば良いのか、
何を思えば良いのか、
それすらも……。

今はただ。
男の脳裏には、
あの日の事が思い浮かんでいた。

あの日……二人で一緒にお酒を飲んだ夜の事が。



――あー遅−い。

――おぶっておぶっておぶってぇ〜。

――だいじょーぶでありまーす! たいちょー。

――……泊まってきなよ。



男「……」


今更思い返した所で、
どうにかなる事でも無いけれど、
それでも少しだけ二人の距離が縮まったこの日の事が、
男には忘れられない。
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/03(日) 20:34:14.01 ID:BrCvhmwA0
指図する気はないから大丈夫
ただの希望

中国マフィアはもう出なくていいよ
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/03(日) 20:40:34.59 ID:K2SrjcAZo
せっかく布石打っておいたのに回収しないでほしいってそんな滅茶苦茶な
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/03(日) 21:39:56.79 ID:PHazclMSo
イタリアンマフィアと中国マフィアは伏線じゃないの?
237 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/03(日) 22:13:12.25 ID:g7pSPmhq0
決して二人はそこまで深い仲ではない。

ただの元同僚で、
ただちょくちょく連絡を取り合うような、
そんな薄っぺらい関係。

……ただ、もしかしたらその先が。
あるいは今回の件が無ければ、
もしかしたら、その先があったかも知れなくて。

男は自分自身が、
彼女の事を好いていたかは分からなかった。
でも、そもそも男は、
彼女の事を何も知らなかった。

言えることは一つしかなくて、
それを知る為の機会を未来永劫に、
突然に奪われてしまった、と言う事だけ。

男はどうにもやるせない気持ちになり、
ふと、自らの人生に対して、
嘆きや憤りをぶつけたくなった。


男(なんでいつも……突然なんだ。
  嫌な事はいつだって、どうして突然なんだ。

  親父が俺を祖父の所に置いて、
  どこかに行ったのも突然だった。

  祖父が亡くなって、
  言葉も分からない日本に、
  母親が俺を連れて来たのも突然で……、
  ついこの間に仕事をクビになったのも突然なんだ。

  だから、今回の事だって突然の事で。

  いつだって突然に、心を乱されて行く……)


考えれば考える程に、
男は頭を掻き毟りたくなる衝動に駆られる。


正社員女の父
「……どうかお話させて下さい。
 娘がどうしてこうなったのか。
 知っていて欲しいんです」


すすり泣く声混じりの、、
正社員女の父の言葉が、
男の背中に投げかけられた。

そしてそのお陰で、
現在に一番に苦しんでいるのは、
自らではなくて、
この二人なのだと男はハッとさせられる。


男(……そうだ。
  俺の過去は今はどうでも良い既に過ぎ去った事だし、
  今回の事で一番に行き場が無く悲しんでいるのは、
  ご両親であるこの二人なんだ)


男は自らの気持ちを無理やりに落ち着かせる。
そしてそれから、
正社員女の父の話に耳を傾ける事にした。
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/03(日) 22:15:48.48 ID:BrCvhmwA0
構想はあるんだろうが対決方向にもってって欲しくないな

戦うタイプじゃない男が巻き込まれても面白くない
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/03(日) 22:21:36.09 ID:ZrgFNR3KO
うーん鬱展開
240 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/04(月) 00:40:20.65 ID:RAx5H3LO0
男「はい……お伺い致します」

男が短く頷くと、
正社員女の父は、
ぽつり、ぽつりと話し始めた。


正社員女の父
「……昨夜に起きた、
大学生による連続殺人事件は知っていますか?」

男「今朝方ニュースで拝見しました。
  何でも計13名の方が亡くなられたとか言う……」

正社員女の父
「ええ。その事件です。
 ……娘はその事件の犠牲者の一人でした」


昨夜の事件の犠牲者だった。
しかしその言葉を聞いても、
男の顔色が変わる事は無かった。

それは……話の切り出しが、
事件を知っているかどうかから始まったがゆえに、、
もしかして、と勘付いたからだった。

それに、総合受付で記者と間違われたのも、
そうであれば辻褄が合っていたと言うのもある。

正社員女が事件の被害者だからこそ、
それを嗅ぎ付けた記者か何かと一瞬間違えたのだろう。


そして、正社員女の父による話がまだ続く。


正社員女の父
「……娘は昨夜に買い物に出ていたようで、
 その時に運が悪くも、
 連続殺人犯に遭遇してしまったそうです。

 連続札事犯は、
 近くにあった鈍器のようなもので、
 何度も何度も娘を殴打したらしく……。

 しかもその後に、
 何か女性の名前を叫びながら、
 街の……人の往来がある場所で、
 泣き叫ぶ娘が死ぬその時まで、
 辱めたとの事でっ……。

 先ほど娘の体がボロボロだと言いましたが、
 そういう事なんです。
 肉体的にも酷いもので、女としての尊厳も……。

 ……一応警察からは、その事に関して、
 メディアには報道に配慮をするように、
 内容の放送はしないように圧力をかけると、
 そう言われましたが……
 ……そういう事じゃないっ。

 ――殺してやりたい。
 その大学生とやらを、
 私のこの手で殺してやりたいっ……」ウゥ
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/04(月) 00:56:06.84 ID:tP44hwHPO
やっぱつれえわ
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/04(月) 01:12:55.82 ID:B1pvGr1bo
そりゃつれえでしょ
243 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/04(月) 02:32:40.56 ID:RAx5H3LO0
一旦休憩挟みます
仮眠取ります頭痛い
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/04(月) 06:22:27.97 ID:fOcDBhz0O
下痢便
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/04(月) 06:51:23.34 ID:QZJN3BbA0
拝見しましたは違うだろ
男も親御さんの張りつめた空気に当てられたかな?

しかしイケメン、単に狂気の殺傷じゃなく
四肢損壊と致命傷をくわえてから死ぬまで犯すとか狂ったにしては徹底してるな
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/04(月) 07:14:45.97 ID:xmDEZIZAO
温度差すごい
247 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/04(月) 08:02:17.97 ID:RAx5H3LO0
休めたので続き書きます
248 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/04(月) 11:31:53.69 ID:RAx5H3LO0
切切と語られる詳細に、
男は顔を顰める。

事件に巻き込まれた可能性には考えが及んでも、
さすがにその内容がここまでの惨事であったとは、
思いも付かなかったのだ。

男の口からは言葉が出ない。
ただ……同時にその瞳に涙が浮かぶ事も無く。

思い出はあるけれど、
知らない仲では無いけれど、
自分は彼女の人生に足を踏み込んでは居ないし、
踏み込まれても居ない。

結局はそこまでの関係。
つまりはそういう関係。

だから、自分が涙を見せるのは、
何か違う気がしていた。


男(……俺は薄情なのかも知れないな)


そう呟いた男の心中を、
見つける事が出来る人物は、
果たしているのだろうか。


正社員女の父
「……悔しくて、悔しくて仕方が無い。

 娘のラインを見て分かりました。
 あなたが気づいていた通りに、
 娘はきっとあなたの事が好きだった。

 親だから、分かります。

 ……もしも娘が生きている間に、
 あなたがそれを知っていたら、
 どういう答えを出したのかは分かりません。

 しかし結ばれるにしろ敗れるにしろ、
 それを喜んだり悲しんだりして、
 普通の女として生きていく未来が娘にはあったハズなんだ。
 
 ……全て奪われてしまった」


正社員女の父の口から、
あのラインの返事を伝えられる。
俺の事が好きなのか、
と言うあのラインの返事が。

しかし……もうそれが続く事は無い。

何の変哲も無い恋物語は、
始まる前に既に終わってしまったのだ。


それから、この後。
いくらかの会話を挟んだ後に、
男はお悔やみの言葉を告げてから、
正社員女の両親とは別れる事とした。


男「……雪だ」


男が総合病院の外に出ると、
あと一ヶ月二ヶ月で春になると言うのに、
小さな雪がちらちらと降り始めていた。

それはまるで、
世界が春の訪れを拒んでいるかのようだった。
249 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/04(月) 13:52:23.04 ID:RAx5H3LO0
けれども、
いくら世界が拒もうとも、
時は過ぎるし季節は必ず巡る。

そうなるように、
世界は出来ているのだ。

帰路についた時に男は、
途中にあった花屋の店先で、
ミモザの花が売られている事に気づいた。

ミモザの花は春を訪れを知らせる花だ。
アカシアの花。


男「もうそんな季節か……」

店員女「……ん? お兄さんモミザに興味があるの?」

男「いやミモザの日が近いなと思って……」

店員女「ありゃー珍しい。
    知ってるんだそれ。
    私は花扱ってるから知ってるけど、
    日本じゃ全然知ってる人がいない日だよそれー」

男「ふーん……」

店員女「そもそも春の花は日本じゃ桜だしね……。
    
    ……で、ミモザ買うの?
    香りも良いんだよミモザは」スンスン

男「知ってる。
  香水にも使われてるしな。
  ……そうだな、それじゃあ一束貰おう」

店員女「ありあとーございまーす」


それから、
てきぱきと包装されたモミザを受け取ると、
男は再びゆっくりと歩き出す。


男「さて……」


日ごろの感謝を込めて贈る花。
誰に渡すかは、もう決めている。

今日は正社員女の両親と会い、
本人の死に顔とも会った。
釈然としない気持ちは少し残るものの、
男は今の自分の気持ちには、
少しだけ向き合えた気がしていた。

そしてそれはきっと、
あの女のお陰に違いは無い。

――気持ちを整理して、次に進んだ方が良い。

その言葉に後押しされたから、
足を運べて、それが出来て、
だからこそ男は思う。

――花を贈ろう。
――感謝を込めて。


ちらちらと降り始めていた雪は、
良く見れば宙で溶けてしまったり、
路面や建物に触れて溶けている。

そう……世界がいくら拒もうと。
春は必ず訪れる。
250 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/04(月) 16:33:41.38 ID:RAx5H3LO0
……




美少女「……」


それを見た時、
美少女は言葉が出てこなかった。

キャバクラの仮眠室で起きた後、
自分が目覚めるまで待っていてくれたキャバ嬢が、
世間話を挟みつつ点けてくれたテレビ。

ちょうどそこでやっていたニュースで、、
信じられない出来事が報道されていたのだ。

イケメンによる通り魔事件の発生と、
友少女2がそれの最初の犠牲者になっていた、
という内容の報道である。


美少女「……なんで」


呆ける、とは正にこの事だろう。
瞼をぐいと上げて、口は半開き。
その状態のまま、
美少女は静止してしまっている。


キャバ嬢「……知り合いか何かなの?」


美少女の様子を訝しんだキャバ嬢が、
眠そうな眼を擦りながら、
訊ねて来た。


美少女「……いえ、どっちも知ってる人、なので」

キャバ嬢「どっちもって、この犯人と被害者の両方……?」

美少女「はい。というか、この飲み会に私顔出してました。
    ただ、この事件が起きる前に店からは出ちゃって……」

キャバ嬢「そっか……。でも、早く出て本当に正解だったね。
     この犯人どうやら薬物の疑いがあるようだし、
     多分やっぱり盛られてたよ、何か」

美少女「……」

キャバ嬢「……ん? どうしたの?」

美少女「……その、この被害者の女の子、
    私が昨日帰るのに手伝ってくれた子なんです。

    でも、その時はこんな事件起きそうじゃなくて、
    だから私よくわからなくて、
    なんでこんな事になってるのか、
    全然わからなくて……」キョロキョロ

美少女(なんで……こんな事。
    ……も、もしかして私が帰るのを手伝ったのが、
    バレたからって事……?

    イケメンが私に執心なのは知ってるけど、
    でも、こんな事まで普通しない……)


考えれば考えるほど事態が飲み込めず、
美少女の目の焦点が、
纏まらない考えと比例するかのように、
合わなくなっていく。

だが、そんな止まらなくなりそうな動揺を、
止めてくれた人が居た。
キャバ嬢だ。


キャバ嬢「ちょ、ちょっと落ち着きなさいってば」背中バンバンッ
251 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/04(月) 19:53:33.54 ID:RAx5H3LO0
美少女「……っ」

キャバ嬢「ショックなのは分かるけど、
     あなたは関係無いでしょ。
     だってこれが起きる前に帰ったんだから」

美少女「……でも」

キャバ嬢「……何かあるの?」

美少女「私……この犯人の男の子から執着されてました。
    昨日も何か変な絡み方されて……、
    それだけが理由じゃないんですけど、
    早く帰りたかった理由の一つでもあって……。
    それで、それを気にかけてくれた子がこの子で」

キャバ嬢「……なるほど。
     それが昨日言ってた、
     顔だけ出して帰ろうとしたって事の理由なのね」

美少女「はい……。
    それでその……もしかしたら、
    私を帰してくれた事がバレて、
    巻き込まれたんじゃないかな、って……」

キャバ嬢「……何かこう、
     色々と考えちゃうのは分かるけど、
     でもそれは少し自意識過剰じゃない?
     いくらなんでもさ。

     確かにあなた可愛いけど、
     そこまで相手を狂わせるとなったら、
     それだけじゃ不十分だし。
     意図的に相手を狂わせない限り無理だって。

     ……それとも、そんなにあなた性格悪いの?」

美少女「いえ、そんな意図的にだなんて……」

キャバ嬢「ならたまたまでしょ。
     あなたが気にする事じゃ――」


と、その時だった。
美少女の携帯が鳴る。
相手は見知らぬ番号であった。


美少女「誰だろう……すみません、ちょっと電話出ます」

キャバ嬢「……分かった」

美少女「……もしもし」


――あっ、突然のお電話失礼します。
――○○警察署の××と申します。


美少女「えっ……警察、ですか?」


――はい、そうです。
――それでえーと、実は少しお話が聞きたくてですねぇ……。
――お時間の良い時に○○警察署まで来て頂けますか?
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/04(月) 20:58:48.06 ID:JUeAKAJe0
見てるぞ
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/04(月) 21:01:53.57 ID:QZJN3BbA0
うーん…
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/04(月) 21:22:55.00 ID:l/m3DvXtO
今のところ最悪のルートぶっちぎってるように見えるけど打開できるのこれ
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/04(月) 21:39:08.98 ID:+lrm5VqYo
感想はおわってからでもおそくないぞ
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/04(月) 21:59:07.46 ID:B2zSXvi50
今のところ良くなるルートは見えんがまぁ完結してくれれば
257 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/05(火) 00:32:15.58 ID:BSi/OfS90

美少女「……」


――あの、もしもし?


美少女「は、はい……」


――来て頂けますよね?


美少女「……な、何でですか?」


――ですから、お話が聞きたいんですよ。


美少女「……」


――もしもーし?


美少女「……そ、そんな事言われても。
    話せる事なんてほとんどないです」


――無いなら無いで良いんですよ。
――ただ、こちらが聞いた事に答えて頂きたいだけなので。


美少女「で、電話じゃ駄目ですか……?」


――ちょっとそれは……。
――すみません、直接来て頂けますか?
――無理なようなら、
――都合の良い時間だけ教えて頂ければ、
――こちらからお伺いしますが……。


美少女「……」


――もしもし?
――あのー、どちらが宜しいですか?


美少女(……どうしよう。
    なんで? なんで警察が私に話しがあるの?)血の気サァァァァ

キャバ嬢「……様子おかしいけど、どうかしたの?」
258 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/05(火) 06:30:47.24 ID:BSi/OfS90
やばっ寝落ちしてた
すみませんでした
今から続き書いて出来た都度投下します
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2019/03/05(火) 09:03:07.21 ID:CocuFNPD0
初代スレから見てるぞ
俺も特にレスはしないけどROMってる奴は結構いるだろうから完結まで応援してるから頑張って
260 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/05(火) 10:13:07.77 ID:BSi/OfS90
美少女「……け、警察からの電話で、私と話がしたいって」

キャバ嬢「ふーん……一応は昨日その飲み会に出てたからって事じゃないの?」

美少女「……え?」

キャバ嬢「それって多分全員に聞いてるんじゃない?
     あとは執着されてたってのが本当なら、
     それについても色々聞きたい事もあるのかもだし」

美少女「色々って……?」

キャバ嬢「だからどういう性格だったとか、
     怪しい薬……やってたっぽいし?
     それについて何か聞いてたりしないか、
     とかじゃないの?」

美少女「そ、そっか。そうですよね……別にびびる必要無いですよね」

キャバ嬢「……まあ何にしろ、
     行かないより行った方が良いと思うけどね。
     渋ると、逆に何かあるのか?
     って思われるかもだし」

美少女「……確かに。
    あ、ありがとうございます。
    早めに行ってみる事にします」

キャバ嬢「ん? うん」


――もしもーし!
――もしかして……来れないって今遠出とかしてます?
――電波悪い所とかに居られるのですか?


美少女「す、すみません。もう大丈夫です」


――あっ、はい。
――それで…・…。


美少女「行きます。行きますので……」


――本当ですか?
――ご協力ありがとうございます。
――では、いつごろ来られますか?


美少女「……じゃあもう今日とかでも良いですか?
    早めに済ませたいので、
    午前中とかでも大丈夫ですか……?」


――わかりました。
――では、こちらまで来たら、
――○○課の××に呼ばれて来たと言って下さい。
――それでは、お待ちしてますので。
――失礼しますねー。

プツッ
261 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/05(火) 18:22:22.63 ID:BSi/OfS90

美少女 ……フゥ。

キャバ嬢「……まあ、頑張って」

美少女「……はい」


答えられる事なんてほどんとない。
何かも聞かれても、
何も分からないのだから、
分からないと言うだけ。

だから変に心配したり臆病になる事なんて無い。

美少女はこの時、
そう思っていた。

だから、まさか自分も――薬物の摂取を疑われているなんて。

美少女は今の時点で、
それに気づく事や勘付く事が、
出来なかった。




……




美少女「……え? ど、どういう事ですか!?」


張り上げるような美少女の声が、
警察署内に響き渡る。

言われた通りに警察署に赴き、
入り口の所で電話の通りに伝えたら、
個室へと通されたまでは良かった。
それは話を聞く為と考えれば、
特段変な事でも無いので、
美少女も気には留めなかったのだ。

だから問題はそこでは無く。
美少女がこうも声を張り上げたのは、
部屋の中に入ってそうそう、
刑事だと名乗る男から、
開口一番に言われた言葉のせいだった。


――早速で悪いんだけど、
――話をする前に薬物検査を受けて欲しい。


そう、なにやら刑事は、
美少女に薬物の疑いをかけているようなのだ。


美少女「意味が分からないんですけど!?」


刑事「まぁまぁ落ち着いて下さいよ」

美少女「落ち着けません!
    話を聞くだけって、
    電話で言ってたじゃないですか!
    なのになんで話の前に薬物検査って、
    私がそんな疑いをかけられなきゃいけないんですか!」

刑事「……あのね、本当ちょっと落ち着いて。
     これはあの場に関わっている全員にね、
     受けて貰ってるの、ね?
     昨夜の事件の事は知ってるよね?」

美少女「それは……今朝ニュースで……見ましたけど」
262 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/05(火) 21:23:32.43 ID:BSi/OfS90
刑事「なら、言いたい事は分かるよね?
   あの犯人の男の子は薬物を使ってた。
   それはもう確定してる。
   他に服用しているような子が居ないか、
   我々は確かめなきゃいけないわけだ」

美少女「……」

刑事「何もやましい事が無いなら、
   協力してくれるよね?

   ……と言うかこれは、君の為でもあるんだよ?」

美少女「私の……為?」

刑事「薬を服用してないって言うのが分かれば、
   君はたまたまあそこに行ただけの女の子だ。
   それ以上は何も詮索しない事を誓おう」

美少女「何ですかその言い方……」

刑事「……犯人の男なんだけど、
   昨夜一般人も殺害している。
   まあ薬の作用による極度の興奮状態だったわけだけど、
   その中に女性が居たんだ」

美少女「……それが何なんですか」

刑事「……彼はその女性が絶命するまでの間に、
   君の名前を叫びながら、
   性的暴行を加えていてね」

美少女「――っえ?」

刑事「えーと……それに、
   一番最初に殺害された女子大生。
   友少女2ちゃんって言う女の子。

   ……この子、君の友達だったそうだね?

   何て言えば良いのかな。
   君――すごく関係者っぽいよね」

美少女「ちがっ――違います、私は」

刑事「うん、私もそう思うよ。
   こんなに可愛い女の子が、
   片棒担いでたとか思えないし。

   だから……検査しようよ」
263 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/05(火) 21:44:04.64 ID:BSi/OfS90

ごめんなさい
ちょっと読み辛いので訂正します。

>>262
↓の部分

刑事「薬を服用してないって言うのが分かれば、
   君はたまたまあそこに行ただけの女の子だ。
   それ以上は何も詮索しない事を誓おう」

美少女「何ですかその言い方……」

刑事「……犯人の男なんだけど、
   昨夜一般人も殺害している。
   まあ薬の作用による極度の興奮状態だったわけだけど、
   その中に女性が居たんだ」

美少女「……それが何なんですか」

刑事「……彼はその女性が絶命するまでの間に、
   君の名前を叫びながら、
   性的暴行を加えていてね」


これを↓に訂正します。


刑事「薬を服用してないって言うのが分かれば、
   君はたまたまあそこに居ただけの女の子だ。
   それ以上は何も詮索しない事を誓おう」

美少女「何ですかその言い方……」

刑事「……犯人の男なんだけど、
   昨夜一般人も殺害している。
   その中に女性がいてね」

美少女「……それが何なんですか」

刑事「まあ彼は薬の作用による、
   極度の興奮状態ではあったけれど、
   ……ともかくその被害女性が絶命するまでの間に、
   君の名前を叫びながら、性的暴行を加えていたんだよ」


264 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/05(火) 21:46:54.72 ID:BSi/OfS90
では続き書いていきます。
265 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/05(火) 23:46:43.86 ID:BSi/OfS90
美少女「私は違う……関係無い……」

刑事「だから、それを証明する為にも必要なんだよ?

   ……さっきも言ったけど、
   これは君の為でもあるし、
   何より証明が出来れば、
   それ以上の詮索はしないよ。

   今回我々が追っているのは、
   その薬物だからね」

美少女「……」

刑事「もしも君が使っているのだとしたら、
   それをどこで手に入れたか、
   教えて貰わないと行けない。

   どうやら男の子の方は、
   喋る気が無いようだからね。

   嫌な思いをさせているとは分かっているけれど、
   我々は市民の安全を守らないと行けないんだ。

   君らの関係性に違法や害意が絡んでいないか、
   確かめる必要があるんだよ」

美少女「……しょ」

刑事「ん?」

美少女「証明が出来れば、良いんですね……?」

刑事「うんそうだね」

美少女「……分かりました。検査しましょう」

刑事「おおっそう言ってくれると助かるね」


美少女からすれば、
疑われた、と言う事実が、
どうにも釈然としない気持ちにさせる。

友達の訃報に悲しむ暇もなく、
それところかその訃報の原因に、
自らが関与しているのでは無いか等と思われて、
穏やかな気持ちになる事など出来ない。

ただ、このまま反発だけしていても、
よりその疑いを強めるだけ。

だから美少女は、
苦々しい気持ちになりながらも、
検査を了承して――


美少女(……でも待って。薬物……?
    そう言えば昨日、
    私が具合悪くなったのって、
    何か薬盛られてた可能性があるんだよね?

    ……じゃあもしかして、
    検査したら陽性反応とかが出るんじゃ……)ハッ


――自らに薬物反応が出る可能性に、気づいた。
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/05(火) 23:55:22.66 ID:Wgz238qCo
「昨夜一般人も殺害して〜」
って言い回しからすると一般人以外も殺害してるの?
267 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/06(水) 00:38:02.65 ID:+bz38tKd0

美少女(ど、どうしよう……)

刑事「じゃあ早速検査なんだけれど、
   これは尿検査になるね。

   他人の検体を出されると困るから、
   一応本人のだと確認出来るようにして置くんだけど……。

   まあ女性警官にその辺りは頼むから安心して――」

美少女「い、いや……」ブンブンッ

刑事「――へ?」

美少女「検査は嫌……」

刑事「いやいや今さっき分かったって……」

美少女「――っ!!」ダッ


美少女は、
もしも反応が出たら……と言う恐怖に勝てず、
気がつくと勢い良く扉を開けて走って逃げ出した。


刑事「――ま、待ちなさい!」


当然に後ろからは刑事が追いかけてくる。
しかし、美少女は脇目も振らずに全力疾走し、
そのまま警察署から出ると、
街中の雑踏に紛れて行った。


美少女「どうしよう、どうしよう……逃げちゃった。
    絶対もっと疑われる事になっちゃうよ……」


人ごみに紛れ進む美少女の目尻には、
大粒の涙が浮かんでいる。

……どうするのが正解だったのか?

まだ社会にも出ていない、
一大学生でしかない美少女に、
その答えが分かるわけなんて無かった。
268 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/06(水) 01:36:12.04 ID:+bz38tKd0
もっとも、こういった事柄の正解など、
仮に大人だったとしても、
分かるものなど一人として居ないのだが……。

美少女は走りながら、
スマホを手に取った。


美少女「……助けて。誰か助けて。……男さん」


不安と焦りに押し潰されそうになりながら、
美少女はふと思い出したかのように、
想い人の名前を呟きながらラインを開いた。



……
………
……




男がミモザの花束を片手に帰宅すると、
玄関口に派手な色のシャツを着た、
顔も体もゴリマッチョな男性が立っていた。
見知らぬ男である。


ゴリマッチョ
「ちっ、俺のとっておきの隠れ家が……。
 くそが、いつの間にこんな事になっちまったんだ?

 ……ホームレスが住み着いたって感じじゃねぇなぁ。
 はぁ……持ち主居たって事かよ。

 でも、やべぇなどうする。
 ただでさえ今冤罪で追われてんのによぉ。
 隠れる場所ここ以外にもう思い当たんねぇんだよな。

 ったく、誰がラリって通り魔殺人なんかするかっつぅんだよ」


何かぶつぶつと呟いている様子だが……、
ともかく、どうにも怪しさしか無い男性であるが、
用事があっての来訪の可能性もゼロでは無いので、
男は話しかける事とした。


男「……何か用ですか?」

ゴリマッチョ
「んお? あんた……ここの持ち主か?」

男「持ち主って言うか、住んでるけども」

ゴリマッチョ
「……そうか」

男「で、何か用でも?」
269 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/06(水) 02:29:03.48 ID:+bz38tKd0
ゴリマッチョ
「いや……用っちゃ用なんだが、
 もう終わったっつーか。
 懐かしさを感じたと言うかだな」

男(……懐かしさ?
  もしかして前に、
  ここに居た事ある人なのか?

  いや、でもここ来た時だいぶ寂れてたよな?

  前に居た事ある人だとすると、
  良い歳をしてる人だと思うんだけど。
  でもこの人、
  俺とあんまり変わらないか、
  少し上くらいに見える人なんだよな……。

  まあ聞いて見れば分かるか)


ゴリマッチョ
「うーん……」ウム

男「えーと、もしかして……前に住んでた人とか?」

ゴリマッチョ
「まあそう言えばそうだな」

男(……あー、住んでた人なんだ)

ゴリマッチョ
「誰もいねぇから、いざと言う時の隠れ家に認定してたんだ」

男「えっ……?」

ゴリマッチョ
「……ん?」

男「誰もいないから隠れ家……?」

ゴリマッチョ
「んおっ、そうだな……やべーなあ不法占拠だな!」ダッハッハッ


誰も居なかったから、
勝手にいざと言う時の隠れ家に認定していたと、
悪びれもなくゴリマッチョは言った。
男は自分の頬が引き攣るのを感じる。


男「い、いや笑い事じゃ……」

ゴリマッチョ
「そうだな、笑い事じゃねぇな。
 ……悪かった。
 誰か居るなら、もう勝手はしねぇ」

男「いや居なくても勝手したら駄目でしょ……」

ゴリマッチョ
「そいつはそうなんだが、
 俺にもちょいと差し迫った、
 のっぴきならねぇ事情ってヤツがあってな」

男「……事情?」
270 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/06(水) 02:44:50.67 ID:+bz38tKd0
ゴリマッチョ
「ああ、ちょっと追われててな」


ふぅむ、と顎を撫でたゴリマッチョを見て、
男は何やら言いようの知れぬ、
嫌な予感のようなものを感じた。

なんとなく、
この男と関わったら駄目な気がしてならない。
追われているだなんて、
まともな人間では無いだろうし、
服装の派手さもどことなくその筋の者を感じさせる。

聞き返しておいて何なのだが、
男は早めにこの男を追い払った方が良い気がし始めていた。
何も聞かないうちに、
知らない他人のままで終わらせるのが吉であろう、と。

だがしかし、
男が制止をかけるよりも早く、
ゴリマッチョの口の方が動く。


ゴリマッチョ
「昨日起きた連続通り魔殺人事件、知ってるか?
 そいつの……二件あったと思うんだが、
 そのうちの大学生じゃねぇ方の通り魔、
 それに俺間違われてんだ」

男「へ、へぇ……」

男は思わず渇いた笑みを浮かべる。
予想が当たっていたのである。
この男は疑いようもない、ヤバイやつだった。

そして……話を聞いてしまった以上、
何も知らぬ分からぬ他人同士では無くなってしまう。


ゴリマッチョ
「……俺じゃねぇんだ。
 ハメられたんだ」

男「ハ、ハメられた……?」
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/06(水) 06:32:24.81 ID:hXzHyFRA0
美少女の思考が若干まーんさん
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/06(水) 08:45:11.44 ID:pvKyG92hO
よく逃げ出せたな
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/06(水) 19:36:12.34 ID:W5tYrCVco
>>271
白髪少女√なら問題ない
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2019/03/06(水) 19:38:07.41 ID:qIUfcjnC0
あれを見てた女友達が生きてるんだからな
275 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/06(水) 19:46:52.00 ID:gu11y0EGO
1は生きてて2が死ぬのほんと胸糞
276 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/06(水) 21:08:16.79 ID:+bz38tKd0
すみません遅れました
今から続き書いて出来た都度ごと投下します
277 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/06(水) 21:16:31.92 ID:+bz38tKd0
その前にちょっと違和感あった部分を訂正です。

>>270
↓この部分、

男は思わず渇いた笑みを浮かべる。
予想が当たっていたのである。
この男は疑いようもない、ヤバイやつだった。

そして……話を聞いてしまった以上、
何も知らぬ分からぬ他人同士では無くなってしまう。


これを↓で。

男は思わず渇いた笑みを浮かべる。
どうやたら予想は当たってしまったようだ。
この男は疑いようもない、
ヤバイやつだった。

しかし……話を聞いてしまった以上、
何も知らぬ分からぬ他人同士では無くなってしまう。
278 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/06(水) 21:21:14.22 ID:+bz38tKd0
ちょくちょく文章の訂正入ってすみません。

正直なところ他にも直したい所はいっぱいありますが、
なるべく話を進めるほうを優先したいと思うので、
ぱっと見てすぐに違和感あると気づいた文章とかだけ訂正してます。

では続き書いていきます。
279 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/06(水) 22:09:41.75 ID:+bz38tKd0
ゴリマッチョ
「そうなんだよ。
 俺はそんな真似はしねぇってのに……。
 絶対そんな真似だけはやらねぇんだよ。

 ……ああいや、すまねぇ。いきなりこんな話して。

 見ず知らずのあんたにこんな事言っても、
 どうにかなるこっちゃねぇのは分かってんだけどな……」

男「……まあその、それはその通りだけど。
  でも、口から出てしまった言葉はもう引っ込められない。
  言ってしまった事を後悔してもしょうがないだろ」

ゴリマッチョ
「あんた優しいな」

男「そうでも無いけどね」

ゴリマッチョ
「そんなことはねぇさ。

 ……まあでも、本当にすまねぇ。
 結構俺も参っててな」

男「……大変そうなのはなんとなく分かる。

  まあその、
  手伝うとか協力する云々は置いておいて、
  ひとまず詳細ぐらいなら話を聞いても良いが……?」


男としては正直、
このゴリマッチョを追い払いたい、
そんな気持ちでいっぱいではある。

だがしかし……、
中途半端にでも事情を耳にしてしまった以上、
中身を聞かないというわけにも行かない。

面倒くさい厄介事である気配を如実には感じるが、
多少でも事情を知ってしまえば、
どこかから飛び火が来る可能性が、
低いながらに考えられた。

知ってしまった――と言う事実そのものが、
飛び火の矛先になる可能性を孕んでいるのだ。

そして……だからこそ、
関係を持つかどうかはひとまず横に置いて、
詳細は知っておく必要があると言えた。

どこまでを知っているか否かで、
いざという時の対処の幅に違いが出てくるのである。

何も知らなければ、
もしも万が一があったとしても、
本当に知らないのだから、
まったく分からないで押し通せるのに……と、
男は舌打ちの一つでもしたい所だった。


ゴリマッチョ
「……良いのかよ」

男「話聞くだけなら。……念押しするけど、話聞くだけなら」
280 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/07(木) 00:50:17.64 ID:mfkrLMXq0
ゴリマッチョ
「……でも今さっきも言ったが、
 あんたにゃあ関係ねぇ話ではある」

男「知ってしまったってだけ、
  で火の粉が飛んでくる可能性もあるだろ?
  詳細聞いておけば、
  そういう時にも良い手が浮かぶかも知れない」

ゴリマッチョ
「そう言えばそうか……。
 つい愚痴っちまっただけな気がしてたが、
 確かに何かあるってのが無いとも言い切れん。

 ……巻き込んじまったか」

男「何もない可能性のが普通に高いし、
  あくまで最悪の場合だろ巻き込まれるって」

ゴリマッチョ
「……本当にあんた優しいねぇ。
 初対面だけど、
 そいつだけは分かる」

男「分かったから、上がっていきなよ」

ゴリマッチョ
「……分かった。そいじゃあ、ちょいとお邪魔するぜ」ドカドカッ


男はため息混じりに、
ゴリマッチョを三階の居住スペースに招き入れる。
すると、部屋の中に入った途端に、
洋菓子の甘い匂いが漂ってきた。


ゴリマッチョ
「……何だ良い匂いがするな」

男「確かに」

白髪少女
「おっ、戻ってきたか。
 ちょうど良い時間に帰ってきたな。
 食べて貰おうと思ってお菓子を作っていたぞ」トテトテ

男「……それ、アマレッティか?
  小さい頃に良く食ってたな」

白髪少女
「口に合えば良いんだが――ん?
 ところで……その手に持ってるミモザと、
 後ろの見知らぬ男は誰だ?」

男「花はお前にだ。
  ミモザの日も近いしな」

白髪少女
「……良いのか?」目パチクリ

男「日ごろの感謝って言うのを、
  形にしておこうと思っただけだよ。
  その為のミモザの日だろ」

白髪少女
「嬉しい事をしてくれるな。……ありがとう」

男「で……後ろの男はちょっと話を聞く為に上がって貰ったんだ」

白髪少女
「……なるほど、お客さんって事だな。
 では紅茶の一つでも入れるとしようか。
 待っていて貰えるか?」

ゴリマッチョ
「あ、あぁ俺は別に構わねぇが……」
281 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/07(木) 03:06:45.73 ID:mfkrLMXq0
白髪少女
「大した手間ではない。
 気にする必要はない」

ゴリマッチョ
「……」

男「……どうかしたの?」

ゴリマッチョ
「いや……綺麗な人だなと思ってよ」

男「そうか」

ゴリマッチョ
「いい女を手に入れたんだな」

男「……手に入れたってわけでもないけど」

ゴリマッチョ
「そうなのか? 
 でも見た感じ、
 一緒に住んでるんだろ?
 なら手に入れたも同然じゃねぇか。

 ……それとも何だ、
 顔は似てねぇけど兄妹とか?」

男「そういうわけでも無い」

ゴリマッチョ
「……って事は何か訳ありか。
 まあ野暮な詮索はしねぇさ」

男「そうしてくれると助かる。
  ……さて、じゃあ座ってくれ。
  話を聞こう」


男が座るように促すと、
ゴリマッチョはまるで我が家の椅子に座るかのように、
勢いよく腰掛けた。

見た目通りに豪快というか無遠慮と言うか……。

まあ気にしてもしょうがない事であるんだけれどと、
男は息を軽く吐くと対面に座った。


男「……で、ハメられたって言う話だけど」

ゴリマッチョ
「ああ、そうだった。
 その話をするんだった。

 ……ただ、それについて話す前に、
 これは先に言って置きたいんだが……。

 俺は正直言ってあんまり頭が良くねぇ。

 だから、もしかしてあまり要領を得ない、
 そんな説明になっちまうかも知れねぇんだが、
 そこは許してくれ……」

男「別に気にしないよ」
282 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/07(木) 03:24:45.78 ID:mfkrLMXq0
すみません。
一旦ここまでです。
今日は特に用事等が無いので……、
早めに続き書きに戻って来れると思います。
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/07(木) 11:01:53.55 ID:boNyk6WAo
見てるよー
284 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/07(木) 16:40:37.10 ID:mfkrLMXq0
戻ってきました。
今から続き書きます。
285 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/07(木) 18:11:49.60 ID:mfkrLMXq0
ゴリマッチョ
「……助かる。それじゃあ、ぼちぼち話すとするか」


そう言うとゴリマッチョは鼻から大きく息を吐き、
どこか遠くを見つめて、経緯を話し始めた。


ゴリマッチョ
「俺はな……とある二次団体の組の構成員だったんだ。
 そこは昔堅気の義理と人情に厚い良い組で、
 特に親父がそうだったよ。
 まあ組の雰囲気を決めるのは頭だ。
 当然っちゃ当然だがな。

 ……まあともかく、でも、だからこそな、
 皆がそういう親父を慕ってた。
 義理人情を忘れねぇ人で、
 俺もそいつに救われて組員になったもんで、
 同じように慕ってた。

 だけどよ……親父も年寄りだった。
 少し前にあの世に逝っちまってな。
 まあ皆で悲しんで、
 ド派手に葬儀もしてやったんだ」


……薄々勘付いてはいたものの、
この発言で男は確信を得た。

間違いなくこいつはヤ○ザなのだと。

ゴリマッチョがたった今捲った袖の下に、
綺麗なお絵描きがしてあったのも、
それの裏づけと言えるだろう。
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/07(木) 19:02:28.60 ID:CdZb2/QsO
どんどんヤバいの出てるな
287 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/07(木) 20:17:57.23 ID:mfkrLMXq0

男(ヤバイやつだとは思ってたけど、
  まさかその筋の人って言う方向性のヤバイだったか……)


自分の額に冷や汗が滲み出るのを感じつつも、
男は黙ってゴリマッチョの話の続きを聞いた。


男「……」

ゴリマッチョ
「……で、そんな風に親父とのお別れを済ませた後の事だ。
 次に誰が頭をやるか、と言う跡目の話になるんだが、

 順当に行けば……そいつは俺だった。

 俺が親父に拾われたのが十五の時で、
 こう見えてかなりの古株だからな。
 それに――若頭っていう立場だったから、
 誰もがそれに異なんか唱えやしねぇ。

 上の方の組織のお偉方も、
 それが伝統だ、と。

 だが……俺は考えに考え抜いた結果、
 降りる事にした。
 
 何せ今は時代が時代だからよ、
 昔のやり方じゃあ、
 まかり通らねぇ事も多くなったんだ。

 俺は昔のやり方しか出来なくて、
 言わばそいつは化石みてぇなもんで、
 だが、それじゃあもう駄目なんだ。
 
 昔のやり方に拘ってたら、
 必ずいつか組は無くなる。
 でも俺はそれしか出来ねぇ。
 だからこのまま行けば、
 俺が跡目を継げば、
 おそらく大切な場所が、
 ……俺のせいで無くなっちまうと思ってよ。

 そいつだけは……耐えられなかった。

 だから、頭が良くて時代を取り込んでいけるような、
 そんなヤツに譲る事にした。

 けどよ、そいつが間違いだった。
 その選択が全ての間違いの始まりだったんだ……」
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/07(木) 21:48:15.84 ID:GcXV9MoAo
なかなか話が進まないな
289 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/07(木) 22:21:39.00 ID:mfkrLMXq0

ゴリマッチョの眉間に皺が寄った。
どうやら、ここから話が急展開するらしい。

と、その時だった。
剣呑とした雰囲気を和らげるような匂いが漂う。
先ほど作ったと言っていたアマレッティと、
淹れたての紅茶を白髪少女が持ってきたのだ。


白髪少女
「……待たせた」


「……美味いしいな。
 折角持ってきてくれたんだし、
 あんたも食べると良い」パクッ

ゴリマッチョ
「……頂こう」


一口含むと、
ゴリマッチョの頬が幾らか緩む。


ゴリマッチョ
「ははっ……この菓子、美味ぇな。
 ただ紅茶の方はな……こんなお上品な飲み物、
 飲んだ事ねぇや」

男「あまり馴染みは無いだろうから、
  飲めないなら無理はしなくて良い」

ゴリマッチョ
「出されたもんだ、きちんと飲むさ――お、おおう。
 抹茶とか麦茶と全然違うな……香りが強い」

白髪少女
「……そういう飲み物だ。
 その香りが気持ちを落ち着けたりする」

男「先ず香り、とも言うしな」

ゴリマッチョ
「そういうもんなのか……。
 お洒落だな」

男「お洒落ってわけでもないけどね。
  まあ、そういうイメージが付いちゃってるのは否定しないけど」

白髪少女
「……ところで」

男「ん?」

白髪少女
「真剣な話のようだが……私は居ない方が良いか?」

男「……俺はどっちもで良いけど、
  あちらさんが嫌かどうかだな」チラッ

ゴリマッチョ
「俺か……? 俺は別に居て貰っても構わねぇが」

男「だそうだ」

白髪少女
「……それでは、同席させて貰おうか」
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/07(木) 22:35:01.87 ID:52/h+SdA0
>>288-289
ワロタ

語りを通してのキャラ描写が1の得手なのか拘りなのかわからんが
男が典型的なやれやれ系(本来関わらないままでいられる事に首をつっこんでいく)でないことを祈る
291 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/07(木) 22:57:00.03 ID:mfkrLMXq0

そう言ってから、
白髪少女は男の隣に座り、
それを確認した男が、
ゴリマッチョに話の続きを促した。


男「……それじゃあ続きを」

ゴリマッチョ
「分かった。
 で……確か、代目を別のやつに譲った、
 って所まで話したよな?」

男「ああ、そこまで聞いた」

ゴリマッチョ
「じゃあその続きからだな。

 ……まあその、それで、
 俺は代目を譲った当初なんだが、
 ある意味安心しきっててな。

 さっきも言った通り、
 みんな親父の事慕ってたから、
 やり方が変わったって、
 時代が過ぎたって、
 親父の説いた心のありようだけは、
 絶対に変わらねぇんだってさ。

 ……あいつに任せれば、
 親父の心意気を残したまま、
 組を維持出来ると思ってた。

 俺は適度に見守りつつ、
 何か事が起きたら、
 力づくで助けてやるくらいの気持ちだったな。
 俺は馬鹿だが喧嘩だけは自信がある。
 それぐらいなら、
 組の為ならお安い御用だったからな。

 ……まあその、このやり方で、
 これからは上手くやってけるんだって、
 俺は思ってたんだ。

 ……だが、あいつはそれを裏切ってくれた。

 あいつは実際に組長を襲名して、
 それからすぐに薬の売買に手を出し始めた。
 これは資金源として重要だって言ってな。

 けどよ、そいつは……親父がもっとも嫌ってたもんでもあった。

 ……親父は昭和初期産まれでよ。
 若い頃に戦前戦後を経験してる。
 その時にヒロポン――当時の麻薬を使って、
 おかしくなっちまったヤツを何人も見てきたらしい。

 だからアレに手を出したら終わりだ、と。
 俺たちがアレを扱う事も何があっても許さない、と。
 そう常々言ってたものでもあった」

男「……」

白髪少女
「……」
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/07(木) 23:21:58.90 ID:ro4Dl6L3O
あいつだよなあたぶん
組長とかマジかよ
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/07(木) 23:22:06.01 ID:thUVpFkGO
深刻な話なのにゴリマッチョでなんか感じが変になる
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/07(木) 23:25:29.20 ID:JCMnY1cF0
キン肉マンとかの方がいいのか
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2019/03/08(金) 00:25:24.00 ID:mCN/Hz/E0
禿頭で上半身風船みたいに膨れてる奴だろ
龍が如くの嶋野みたいな
296 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/08(金) 01:24:47.89 ID:PoLGidKm0
すみませんちょっと一旦中断です、
午前中には戻ってきます。
297 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/08(金) 11:26:36.21 ID:PoLGidKm0
戻ってきました。
今からぽつぽつ続き書いてきます。
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/08(金) 12:39:43.92 ID:80El/9O8o
舞ってた
299 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/08(金) 12:46:28.71 ID:3u8a/zHA0
現時点では男と関係ないこの長話、今日で終わるんだろうな…
300 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/08(金) 13:32:07.34 ID:GfPOYx++o
ゴリマッチョは話をダラダラ勿体ぶるからウザすぎる
301 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/08(金) 14:42:13.72 ID:PoLGidKm0

ゴリマッチョ
「だから……当然に俺は咎めた。
 そいつだけはやっちゃいけねぇんだろ、と。

 お前だって親父の葬儀で泣くぐらいに、
 慕ってたじゃねぇかよってよ。
 なら、不義理するような真似するんじゃねぇよってな。

 ……だがそしたら。

――親父の事は慕ってたが、
――それでもそのやり方まで良しとするわけじゃねぇ、
――こいつは利益になるんだよ、
――組の未来の為なんだよ。

 なんて……言い返されちまって、
 はっ、俺も短気だからよ、
 すぐに喧嘩になっちまった。

 その結果は当然……腕っ節が強い俺が勝ったが、
 それから組はぎくしゃくしちまった。

 ……で、そのうちに、
 あいつは変な中国マフィアのガキとつるむようになってな。
 薬を良く買ってくれるお得意さんらしいが、
 どうにもそいつは色々と怪しすぎた。

 ただ金が欲しくて薬が欲しい――って感じじゃあなかった。

 ……俺はすぐに進言しようと思ったよ。
 これは面倒な事になるって直感したからだ。
 だが、それはすぐに思い止まった。
 今更俺の言う事なんて聞きゃあしねぇだろうし、
 無理に言えばまた喧嘩になるからな。

 だから……俺は中国マフィアのガキの尻尾を掴む為に動く事にしたんだ。
 化けの皮さえ剥いじまえば、
 俺がそれを暴けば、
 少しは俺の話に耳を傾けてくれると信じて。

 そして――その最中に起きたのが連続通り魔の事件だった。

 最初は物騒な事件が起きただけだと思ったが、
 内容を見りゃあ薬の可能性があると来たもんだ。

 何か嫌な予感がした。

 そこで俺は馴染みの情報屋に連絡を取って、
 色々と話を聞いてみる事にしたんだが……。

 そしたら出てきた」


男「……出てきた? 何が」


ゴリマッチョ
「連続通り魔に関わる一連の流れが、だ。
 うちの組が関わってた。
 通常の薬の五倍の値で買うってそのガキに言われて、
 開発中止になった危険な薬をどっかから仕入れて、
 大量にそのガキに売ったらしい、と」
302 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/08(金) 17:46:02.48 ID:PoLGidKm0
ゴリマッチョ
「……それが、今回の事件で使われた麻薬だ」


男「……」


ゴリマッチョ
「そんで――それを聞いた瞬間、
 俺は気づいたら激怒して組に乗り込んでた。

 何のつもりだ!
 金の為に変な薬を世の中にバラまいて、
 連続殺人鬼を作るのが、
 俺らの在り方なのか!

 って、暴れまくってやった。
 壁なんか穴だらけになっちまったし、
 窓ガラスも全部割れちまったし、
 辺り一面血みどろにしてやって……で、その内に警察が来たよ。

 まあ俺としても、
 やっちまったって感はあった。
 すげぇ音はしたから、
 近所の誰かが通報したのかってよ。

 ただ、あくまでこれは組内での揉め事だ。
 だからお宅には関係ねぇよって、
 警察に丁重にお引取り願おうと話をしようと思ったら、
 俺にワッパかけようとしてきやがった。

 連続通り魔事件の容疑者として拘束します、って言葉と共にな。

 俺は一体何の事か分からなかったね。
 ただ、その光景を見て、
 あいつが笑った。
 そして俺にだけ聞こえるように、
 耳元で言った。


――もうあんたは必要ねぇんだ。
――大人しく豚箱にでも入っててくれ。
――最近……イタリアマフィアも入国してるって話もあった。
――目的は分からねぇが、俺らの領分を侵す可能性がある。
――その場合は抗争に必要な武器を買う金が要る。
――あんたのやり方じゃあ、
――この先やってけねぇんだ。


 ……この時ハメられたんだって、
 前々からそのつもりだったのかってよ、
 薬で利益を得るついでに、
 俺の事も消し去るつもりしてやがったのかって、
 いくら馬鹿な俺でも理解して、
 全身の力が抜けるような気分だった。
 いくら喧嘩したって、
 家族みてぇなもんじゃねぇか。
 ハメるなんて……」


うっうっ、とゴリマッチョは涙ながらに語る。
余程裏切られたのが堪えたのだろう。
303 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/08(金) 19:36:54.03 ID:PoLGidKm0

男「……なるほど。
  で、どうにかしてそこから逃げ出して、
  勝手に隠れ家認定していた家に来た、と」

ゴリマッチョ
「……おうよ。
 何せやってねぇんだ。
 誰かの身代わりで捕まるならともかく、
 こんな捕まり方は納得行かねぇって、
 すぐに気取り直して、
 そのまま警官殴り倒して逃げ出したんだ。

 でよぉ、隠れながら薬中の真犯人を探すつもりしてたんだ。
 そいつ見つけて冤罪を晴らすつもりしてた……」



鼻水をすすり、
大粒の涙を流すゴリマッチョを見て、
男はこの人物が段々とかわいそうに見えてきた。
とは言え……話は聞くだけと言ったし、
そのつもりをしていたので、
どうこうは出来ないが……。

と、思っていると、
おもむろに白髪少女が口を挟んできた。



白髪少女
「……すまん。今の話で少し気になる部分があった」

ゴリマッチョ
「お、おう? なんだよ」ズビィ

白髪少女
「お前はいわゆるジャパニーズ・ヤク○で間違いないな?」


ゴリマッチョ
「そうだが……。し、しかし何だその言い方。
 お前さん外国人か何かか……?
 そういや顔もどことなく日本人ぽくねぇ感じの、
 ハーフみてぇな美人だが……」


白髪少女
「日本語は喋れるが、確かに生まれは日本ではない。

 ……まあそれはともかくとして、
 先ほどの話にあった入国したと言うイタリアマフィアについてだ。

 それがジャパニーズ・ヤ○ザの領分を侵すと、
 そう考えられている、と言ったな?」


ゴリマッチョ
「……目的が分からねぇから、
 そうかも知れねぇって思ってるのは、
 確かに居るかも知れねぇってだけだがな。

 俺は組では……言った通りに、
 ぎくしゃくしちまってたから、
 情報入って来なくて、
 俺も情報屋から聞いて始めて知った話だ。

 ただありえなくはねぇ話だろうな。
 一時期ロシアのマフィアが進出して来ようとした時もあったし、
 中国マフィアだって……今は住み分け出来てるが、
 いつどうなるか分からねぇ。
 海外勢は動きが読み辛ぇ……」


白髪少女
「……動きを読む必要などない。恐らくその心配はいらない」

ゴリマッチョ
「あ……?」キョトン

白髪少女
「大方そのイタリアマフィアは、
 日本に居る息子の顔でも見に来ただけだ」フッ
304 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/08(金) 19:46:15.28 ID:PoLGidKm0
ごめんなさい。
またまた訂正です。


この発言↓を

ゴリマッチョ
「……目的が分からねぇから、
 そうかも知れねぇって思ってるのは、
 確かに居るかも知れねぇってだけだがな。

 俺は組では……言った通りに、
 ぎくしゃくしちまってたから、
 情報入って来なくて、
 俺も情報屋から聞いて始めて知った話だ。

 ただありえなくはねぇ話だろうな。
 一時期ロシアのマフィアが進出して来ようとした時もあったし、
 中国マフィアだって……今は住み分け出来てるが、
 いつどうなるか分からねぇ。
 海外勢は動きが読み辛ぇ……」



↓に訂正です。ゴリマッチョの発言がおかしすぎました。ごめんなさい。


ゴリマッチョ
「……まあ俺もワッパかけられそうな時に、
 新しい組長のそいつにちらっと言われただけで、
 良くはわからねぇが……。

 ただありえなくはねぇ話かも知れねぇがな。

 一時期ロシアのマフィアが進出して来ようとした時もあったし、
 中国マフィアだって……今は住み分け出来てるが、
 いつどうなるか分からねぇ。
 海外勢は動きが読み辛ぇ」
305 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/08(金) 19:56:01.66 ID:PoLGidKm0
>>304での訂正の発言は>>303のゴリマッチョの発言の訂正です。
すみません。
情報屋のくだりでイタリアマフィア云々は入れるか迷ったのですが、
結局入れずに代わりに新組長の発言にして、
ついさっきの事なのにそれを忘れて続き書いてしまったせいです。
許して下さい。

それでは続き書いていきます。
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/08(金) 20:03:46.82 ID:3u8a/zHA0
このあと美少女からのラインを見る場面になるんだろうが
その場の状況がどうであれ、落ち着かせて警察に戻るよう促す以外の選択肢なくね
なんなら一緒にいくとか、そこからなにがしか展開はあるにせよ
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/08(金) 20:37:43.65 ID:LnCadfIlo
ぬぽーん
308 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/09(土) 00:30:47.19 ID:hbDcko0o0

ゴリマッチョ
「何でそう言い切れるんだ……?
 知り合いか何かなのか?」

白髪少女
「……いや、そんな感じがすると思っただけだ。
 だが、ただの予想だと思ってくれるな。
 私のこの言葉は信じて良い言葉だと約束しよう」

ゴリマッチョ
「……詳しくは言えねぇ訳でもあるって感じだな。
 まあウソ言ってるように見えねぇし、
 信じても良いっちゃ良いけどよ」

白髪少女
「そうしてくれると助かる」

男「……」

男(……結構ハッキリ事柄を言うハズの白髪少女が、
  妙に変な言い方をするな……。

  何かあるのか?
  イタリアマフィアと。

  そう言えば元々は親父に助けられたんだったよな。
  親父も確か基本的な活動拠点がイタリアだったハズだ……。
  その繋がりから考えれる事とすれば――
  
  ――イタリア、オヤジ、マフィア。

  ……んん? んんん!?
  ……いや、まさかな?

  でも妙に親父は羽振りが良さそうだよな。
  白髪少女に大金持たせてたようだし。
  普通の仕事してたら、
  こんな金持ってるか……?)


男の脳裏にはふと、
自らの父親の素性についての考察が巡った。
まさか……と思う気持ちが強くなり始め――

――るるっ、とスマホがラインの着信を告げる音を発した。

……何だこんな時に、
と男が思いながらにラインを開くと、
それは美少女からの助けを求める連絡だった。


――男さん。
――突然の連絡ごめんない……。
――でも今、凄く大変で。
――助けて欲しいんです……。


男「……え? 助けて欲しい?」
309 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/09(土) 01:43:14.25 ID:Qmn0+V2Ao
vipのやつ落ちてから見てなかったけどここに移動してたのか
310 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/09(土) 01:53:55.43 ID:hbDcko0o0

漠然とした「助けて」に、
一体どういう事なんだと、
男は事情が飲み込めなかった。

だから、ひとまず何が助けてなのか、
それを尋ねて見る事に決める。


――どうしたの。


と、男がラインを送ると、
すぐさまに返事が返ってきた。


――何て説明したら良いのか……。
――でもこのままだときっと、
――私ひどい目に合っちゃうんです。
――男さんに会いたい、会いたいです……。


どうやら美少女は、
冷静さを欠いているようだった。
助けてという強い思いが前面に出て、
詳しい事情は語ってはくれない。
恐らく焦りや不安が先に出て、
こちらの意図がきちんと通じていないのだ。

これは……直接会って聞くしかないかも知れない。
男はそう思った。
しかし同時に、これに自分が首を突っ込むべきなのか、
と言う思いも抱かずには居られなかった。

男からすれば美少女はただの元お隣さんだ。
それなのに、どうして自分に助けての連絡をするのか。
そんな自分よりもまず先に、
しかるべき相談すべき人や場所があるように思えるのだが……。

それを考えると、
男としても何も考えずに今すぐ行くとは言い辛い。



男「……」

白髪少女
「……急にどうした?」

ゴリマッチョ
「そうだな。何だスマホをじっと見てよ」

男「……いや実はたった今こんなラインが来てな」



自分では少し判断がし辛い。
そう思った男は、この二人に意見を貰おうと思い、
ラインの連絡を見せた上で、
美少女との関係性やこの連絡に対する自らの考えを述べた。



ゴリマッチョ
「なるほど……まあお前の考えは分からんでもない。
 だがこの文章見る限り――」

白髪少女
「――助けてを言おうと思って、
 最初に頭の中に思い浮かんだのが、
 男だと言う事では無いか?」

ゴリマッチョ
「だろうな……」

白髪少女
「これは……頼るべき者が他に居るのにという話ではなくて、
 誰を頼りたいか、と言う話だ。
 お前はただのお隣さんだと思っているかも知れないが、
 相手は違うかも知れない」

男「は……?」
311 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/09(土) 02:15:39.19 ID:hbDcko0o0
すみません一休みします。
午前中には戻ってきます。
ようやく長々としたゴリマッチョのこれまでの経緯話が終わりました・・・。
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/09(土) 02:33:34.84 ID:gGLMFOCkO

これだけ時間割いたからには役に立って欲しいなゴリマッチョ
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/09(土) 07:19:59.62 ID:eYEGFDZA0
>男「は……?」

ブレねえなwww
こういうとこ好感触

ゴリマッチョは既に指名手配されてる筈なんで、
家ならともかく屋外で行動を共にするのはない
一度別れるのか、それとも美少女からの連絡を機に家に置いていくか
314 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/09(土) 11:45:43.25 ID:hbDcko0o0
戻ってきました
ぼちぼち続き書きつつ出来た都度投下します
315 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/09(土) 15:35:04.72 ID:hbDcko0o0
すみません
ただでさえ遅いのに
今日はさらにちょっと時間かかってます

PCの電源が途中で勝手に落ちるようになってしまいまして・・・
夜までにはなんとかしますので・・・

本当に申し訳ないです・・・
316 :1 ◆mUjz4FCa2c [sage saga]:2019/03/09(土) 19:37:49.94 ID:hbDcko0o0
よし、ひとまずなんとかなったので、
続き書きます
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