やちよ「魔法少女裁判よ」ひなの「私が裁判長?」

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32 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 12:54:14.78 ID:ISCE55f30
ななか「それは前も聞いた話ですね」

ななか「正直理解しかねる話ではあるのですが、現実として環ういさんの存在が世界から消失していたこと自体は事実のようですね」

ななか「二人の人格の中で環ういさんが極めて重大なものを担っていた、その環ういさんを忘れてしまったことで二人の人格が変わってしまったと」

葉月「ねえ、それ、いろはちゃんも含めてってことでいいの?その人格の中で極めて重要なものを担っていた、って」

ねむ「そうだと思うよ」

灯花「実際には同時に二人を忘れたわけだから、厳密には不明なのかな。心情的にはどっちもだけど」

葉月「それで、その、いろはちゃんとういちゃんがまたいなくなってしまったら、二人はどうなるのかなってのは気になるよね」

いろは「え?」

葉月「いろはちゃんとういちゃんのことを忘れてしまったからこんなことをしてしまった、二人のことを覚えていたらあんなことはしなかった」

葉月「そういう話だと、じゃあ二人がいなくなったらどうなるのかなって」
33 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 12:56:21.17 ID:ISCE55f30
灯花「お姉さまとういがいなくなったら……」

ねむ「考えたことないよね。僕たち三人は近しい時に死んで、お姉さんだけが残されるものだとばかり思ってきたから」

葉月「魔法少女だからね。当然ながらある日突然死ぬことはあり得ることだよ」

灯花「ういとお姉さまがある日死んだら……」

ねむ「……何をしでかすかわからないかな」

いろは「!?」

灯花「わたくしたちの唯一のストッパーがなくなるわけだからね」

灯花「悲しみにくれてずっとひきこもるかもしれないし、あとを追うかもしれないし」

ねむ「二人がいなくなっても変わらず回り続ける世界に逆恨みして、全部壊してしまおうとするかもしれないね」

ねむ「あるいはマギウスとしてやったみたいに、やりたいことやりたいままにやって暴走してしまうとか」
34 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 12:58:06.78 ID:ISCE55f30
ななか「……そういうわけですね。」

ななか「環さん姉妹が二人の中からいなくなってことを起こした、二人がいる限りもう何もしないということは」

ななか「裏を返せば二人がいなくなったら何をするかわからない」

ななか「検察側はマギウスの二人をかなりの危険因子だと考えます」

いろは「大切な人がいなくなって自暴自棄になるなんてありがちなことじゃないですか!そんなことを口にしたから危険因子ってそれは――」

ななか「先のワルプルギスの夜襲来が、まさにこの二人の大切な人がいなくなった結果です」
35 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:00:14.25 ID:ISCE55f30
うい「ちょ、ちょっと待ってください!」

うい「ええとですね、もちろん灯花ちゃんとねむちゃんがしたことはひどいことですけど、始まりはお姉ちゃんを、魔法少女を運命から解放しようとしたことにあるんです」

うい「そのために私たちは契約した。そもそもの出発点はここだったんです!」

うい「想像していなかったことが起こっていろいろ歪みはしましたけど、それでも二人が過激なことをしたのは、私たち魔法少女を解放するためだったんです」

うい「そのためにマギウスの翼はずっと活動してきたんです」

ななか「目的自体は正しかったはずだ、と、そういうことですか」

うい「そうです。さっき救われるために何でもしてしまうのは分かるって話をしてたじゃないですか」

うい「灯花ちゃんとねむちゃんはみんなを救うために行動していたんです!」
36 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:02:46.07 ID:ISCE55f30
灯花「悪いけど、それは違うよ、うい」

うい「……え?」

ねむ「契約したときは解放のことを第一に考えてたのはそうなんだけど、ういとお姉さんのことを忘れてからは、主に自分の目的を追究していた」

ねむ「もともと長くは生きられない身だったから、正直魔女化からの解放というものに自分自身そこまでこだわりはなくなっていたんだ」

ねむ「助けたかった人のことも忘れてたしね」

灯花「解放なんてものは目的のための手段に過ぎなかった。そもそもの目的が手段になってたんだよ

灯花「わらっちゃうよね。どこまで強欲なんだか」

ねむ「僕たちは解放をマギウスの翼の広告手段くらいにしか考えていなかった」

ねむ「ういが言うような崇高な目的のために動いていたわけではなかったんだよ」

37 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:03:55.32 ID:ISCE55f30
こころ「ちょっと、赤裸々すぎない……?」

まさら「あの二人、助かろうという意思が無いように見えるわね」

美雨「結局、自分を守ろうとしない人間の弁護は難しいというものかもしれないネ。環姉妹もなかなかかわいそうな役回りネ」
38 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:05:47.48 ID:ISCE55f30
ひなの「弁護側、追加したい主張はあるか?」

うい「……それでも」

うい「それでも、今、私たちは二人のおかげで魔女化から解放されてる。それは事実だと思います」

ななか「もちろんそれは理解しています」

ななか「私たちが当面魔法少女の運命から目をそらすことができるのはマギウスのおかげです。それは量刑に考慮されるでしょう

ななか「そのうえで、解放のためとは言え神浜を蹂躙されることは容認できないと、私たちはあの時立ち上がったのです」

ななか「そうですよね?環いろはさん」

いろは「はい……」
39 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:08:31.78 ID:ISCE55f30
ななか「何を犠牲にしてでも救われたいと願うことは理解できます」

ななか「ただ、そんな犠牲を払うならば救われなくていいと考えている人もいるんです」

葉月「自分の存在を差し出してでも守りたいものを持っている人だっている」

葉月「君たちにもあるんだよね」

灯花・ねむ「……うん」

葉月「君たちは、そういうものを根こそぎ踏みにじろうとしたんだ」

葉月「あの騒動で自分の大切なものが壊されなかった人達の中には、むしろ君たちに感謝している人もいると思う。口には出せないだけで。」

葉月「だけどね、壊された人だっているんだよ。そういう報告も来ている」

葉月「その人たちはきっと君たちを許せない。アタシにも気持ちは痛いほど理解できる」

葉月「アタシは救われた側だけど、ちょっと運が悪ければ壊された側にいたかもしれない。その人たちの思いは汲み取りたい」

葉月「二人にもそれには向き合ってほしい」

40 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:09:29.10 ID:ISCE55f30
ひなの「弁護側追加主張はあるか?」

いろは・うい「……」

ひなの「ないなら制限刑あたりになると思うが……」
41 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:11:14.54 ID:ISCE55f30
葉月(二人とも涙目でプルプル震えてる)

ななか(自分の不甲斐なさに憤ってるように見えますね。弁護側の問題ではないように思いますが)

ねむ(あーあ。灯花がういとお姉さんをなかせちゃった)

灯花(ねむのせいでもあるでしょー!?)

ねむ(そりゃあね。心苦しいけど、ういとお姉さんが思ってる僕たちと実際の僕たちに乖離がありすぎるから……)

灯花(そんなきれいな人間じゃないもんねえ……)

ねむ(やぱり罰はきちんと受けないと……)

ひなの(おいおい、このまま終わるのか?まだあの話してないぞ?)
42 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:13:27.04 ID:ISCE55f30
やちよ(ふたりとも。言うべきことは分かってるでしょう?)

灯花(わたくしたちは極刑希望なんだよ?)

やちよ(それはもう通らないってわかったでしょ)

ねむ(そうだけど、やっぱり検察側の話聞いたら、ますます極刑しかないんじゃないかって思うよ)

やちよ(葉月さんは生きて罪に向き合えって言ってるのよ?)

灯花(わかるよ?わかってるけどさ……)

灯花(……というか制限刑なら、ういとお姉さまにとってもよくない?事実上の最低刑だよ?)

ねむ(……でも納得してないみたい)

ねむ(後から、まだ言えることがあったって気づいて、ういとお姉さんが自責の念に駆られるのは避けたいよね……)

灯花(……うーん

灯花(…………出しちゃおっか、助け船)
43 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:14:52.03 ID:ISCE55f30
灯花「ねえ、ねむ、この前ニュースで見たんだけど、司法取引ってなんなの?」

ねむ「ああ、それを使ってアメリカ大統領の元側近から証言を引き出したってやつだよね。あれは――」

ひなの(なんて白々しい……)



いろは(司法取引……)

いろは(あ!)
44 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:16:25.49 ID:ISCE55f30
いろは「ええとですね!二人が作ったドッペルシステムは健在なんです!それの維持はもちろん、私たちはそれを世界に広めていく必要があると思ってるんです!」

ななか「それは、ええ。必要なことだと思います」

いろは「それについて、やっぱりもとのシステムを作った二人の力添えが必要だと思うんです」

いろは「というかこのシステムってういとねむちゃんと灯花ちゃんの魔法からできてるものなので!」

葉月「そうだねそう聞いてる。それで?」

いろは「ですから、無力化刑だと維持や今後の研究とかが難しくなる可能性もあって」

いろは「かといって変身するたびに痛みを感じる人にそんなのを押し付けるのもどうかと思うんです」

灯花(それくらいの処遇は受け入れないといけないと思うけどなー)

ねむ(まあまあ)
45 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:17:57.71 ID:ISCE55f30
ななか「つまり司法取引をしろと」

葉月「日本に司法取引ってあったっけ?」

ななか「あるにはありますが、こういう、みんなのために働けば刑が軽くなる、という代物ではなかったかと」

ひなの「どうなんだ弁護側。さっきはこの法廷は基本日本法準拠って話だったが」

やちよ「魔法少女の解放は私たちにとっても切実なものよ。例外が認められるべきだと考えるわ」

ひなの「だろうな。」

ななか「しかし、そうは言っても放免というわけにはいかないでしょう?」

葉月「やらかしたこと考えるとただの監察ってのもねえ」

ひなの「じゃあ、こういうのはどうだ?」
46 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:18:53.87 ID:ISCE55f30
判決主文素案

1.両被告人は都ひなの、七海やちよ、和泉十七夜の監督のもとで解放の研究と魔法少女としての活動を行う

2.両被告人のソウルジェムを、遠隔の指令が与えられることで自壊するように加工する

3.両被告人の一方、あるいは双方が何らかの大規模犯罪を犯そうとしていると認められるときは、都ひなの、七海やちよ、和泉十七夜の多数決の決定により、大規模犯罪を企てた者のソウルジェムを破壊する
47 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:22:41.67 ID:ISCE55f30
いろは「人の命を多数決で奪うのはどうかと……せめて全会一致とか……」

ななか「それだと硬直するでしょう」

ひなの「環いろはの主張は正しいとは思う」

ひなの「ただ、こう言ってはなんだが、ここで七海やちよが反対したら止まるシステムを採用できるなら、そもそも裁判長は七海やちよがやっている」

ひなの「わかってくれ」

やちよ「いろは、十七夜も都さんも、信頼できる人よ」

いろは「……はい」

ななか「その和泉十七夜さんはどうなんですか?客観性に疑問があるからこそ裁判長から外れたのかと」

ななか「和泉さんと七海さんの二人が反対すれば止まるシステムになっています」

ひなの「いざとなった時に私情を捨てられるくらいの信頼性はみんな持ってるんじゃないか?」

ひなの「環姉妹とのかかわりだって七海ほどのものはないわけだから」

やちよ「弁護側としてはその素案を概ね受け入れるわ。ただ、期限が必要だと――」
48 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:23:58.12 ID:ISCE55f30
あきら「落としどころが見つかったみたいだね」

美雨「弁護側と検察側、それに裁判長、それぞれにこういう相場観があったからうまくまとまっているんだろうネ」


灯花「結局こーなるのかー」

ねむ「どうする?司法取引である以上、こんな取引望んでないって言う権利もあるはずだけど」

灯花「うーん。でもわたくしたちが出した助け船だしねー」

ねむ「お姉さんとういが頑張ってくれた成果でもあるからね。受け入れようか」
49 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:24:31.93 ID:ISCE55f30
うい「お姉ちゃん。決まりかけてるけど」

うい「なんだろう……これ……」
50 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:25:15.18 ID:ISCE55f30
ういの言いたいことは分かる、なにかもやもやする

監察なんて処分では、みんなに受け入れられないことは分かってる
今話し合われている案は、制限刑よりは見方によっては軽い
51 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:26:21.89 ID:ISCE55f30
ううん
二人が大規模犯罪を犯そうとするわけがないんだから
やちよさんと十七夜さんが判断を誤ることなんてないだろうから
ひなのさんも、今日の裁判を通して、信頼できる人だと知ったから
これはほとんど無罪と同じなんだ
52 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:28:23.28 ID:ISCE55f30
二人には魔法少女の解放のための研究をこれから押し付けてしまうことになるけれど
解放を謳ってあれだけの人を集めた二人には
解放のためにこれからも行動する責任があると思う
二人もそれは受け入れているみたい
53 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:29:04.09 ID:ISCE55f30
なのにどうして……このひっかかりは何……?


思えば私は、このもやもやを、裁判が始まる前から引きずっていた気がする…


……
54 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:31:07.72 ID:ISCE55f30
………あ


この法廷が始まる前に言った言葉――




――だから、その罪を私たちにも背負わせてほしい――





ああ、そうか

私たちは二人の罪を背負っているのに

二人だけが裁かれて、罰を受けようとしているからなんだ
55 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:32:02.19 ID:ISCE55f30
いろは「……うい」

うい「やっぱり、考えることは同じだよね」

いろは「念のため聞くけど、限りなく可能性は低いけど、死ぬこともあり得るよ?」

うい「灯火ちゃんとねむちゃんと、お姉ちゃんが一緒なら、どこにだっていけるよ」
56 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:34:59.41 ID:ISCE55f30
ねむ「うい……?」

灯花「お姉さま……?」
57 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:36:43.08 ID:ISCE55f30
いろは「裁判長、お願いがあります」

ひなの「うん?どうした?」

いろは「灯花ちゃんとねむちゃんが道を外した時、ソウルジェムが破壊される対象に」

いろは「私とういを含めてください」



「……」



「!?!?!?!?!?」


58 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:39:39.40 ID:ISCE55f30
ひなの「何を言っているんだ……?」

うい「ですから、二人のソウルジェムが破壊されるときは一緒に私とお姉ちゃんのソウルジェムを――」

ひなの「いや、だから、なんでそうなるんだ!?」

いろは「私たち、二人の罪を背負ってるのに罰は受けないのは何か変だなって」

灯花「何がどう変なの!?意味わかんない!!」

うい「罪には罰が与えられるものでしょ?」

ひなの「実際に同じ罰を受けるやつがいるか!!そういうのは心意気で示せ!!」

ねむ「ういとお姉さんに何の罪があるって言うんだよ!」

いろは「私がもっと早く思い出していればこんなことにはならなかったってずっと後悔してるんだ……」

ねむ「そもそもお姉さんが思い出したのが奇跡なんだよ!」

うい「私、イヴになって街を破壊したり、なんかいろんなところで魔法少女を神浜に勧誘したりしてるんだよ……」

灯花「意識もなかった時にしてたことでしょー!?誰がそんなことを問題にしてるってゆーの!?そんなやつがいたら許さない!!」

うい「私だよ?」

灯花「じゃーういのこと許さない!!」
59 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:41:24.14 ID:ISCE55f30
ねむ「裁判長、まさかこんな愚かしい主張受け入れられないよね!?日本のどの法律に照らしたってあり得ないよ!」

灯花「弁護人を解任する!クビだから!」

灯花「和泉十七夜!今すぐういとお姉さまをつまみ出して!こんな主張無効だから!!!!」

ねむ「そもそも僕たちはこんな弁護人選任していない!!!勝手についてきたんだ!!!」

十七夜「う、うーむ、裁判長殿の指示がないと……」

灯花・ねむ「裁判長!!!!!」

ひなの「わかってる!わかってるから!ちょっと待て!」
60 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:43:12.49 ID:ISCE55f30
あきら「……急にすごいうろたえようだね」

まさら「二人にとって自分の処遇よりも余程重大なものが、天秤にかけられているのね」

フェリシア「今まで余裕しゃくしゃくって感じだったのにな。今はなんの話してんだ?」

鶴乃「あの二人が死ぬときはいろはちゃんとういちゃんも死ぬって……」

フェリシア「はあ!?なんだそりゃ!?ありえねーだろ!!おいお前らいったい何を――」

鶴乃「大丈夫だから!!やちよが絶対にそんなの認めないから!!だから落ち着いてフェリシア!」

フェリシア「これが落ち着いていられるかよ!!やちよもなんか泡吹いてるぞ!?」

さな「」

フェリシア「さなもだ!」
61 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:44:01.76 ID:ISCE55f30
十七夜「というか両被告人、このうろたえようはなんだ」

十七夜「大規模犯罪をたくらまなければいいだけだと思うが」

ねむ「僕は自分をそこまで信用できない!」

灯花「そうだよ!わたくしたちはあんなことしでかした人間なんだよ!?」

ねむ「ふむ。確かに」
62 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:46:20.76 ID:ISCE55f30
葉月「で、どうなのこれ」

ななか「妙手です」

葉月「そうなの?」

ななか「ええ。感動すら覚えます」

菜月「いやでも、こんなの裁判長が認めないでしょ?」


ひなの「ありえん!絶対に認めないぞそんなこと!!!」


葉月「ほら」


いろは「そうですか。じゃあ二人のソウルジェムが破壊されたことを知ったら自分で砕くことにします」


ななか「こう返されたら同じことです」

葉月「なるほど……」

ななか「もちろん、ただ単に、二人が死ぬときは私も死ぬ、なんて言われても程度の低い脅迫にしかなりませんが」

ななか「さもそれが当然のことだというように、自分にも死を与えてくれと切り出しましたからね」

ななか「常軌を逸しています。本当にやりかねないと思わせるすごみがありました。」
63 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:48:37.82 ID:ISCE55f30
葉月「マギウスの二人のあの慌てようも、環姉妹なら本当にやると思ってるからこそなんだろうね」

ひなの「七海やちよ!!どうなんだ!!これはハッタリなのか!?」

やちよ「」

ひなの「七海!!」

やちよ「」

やちよ「……」

やちよ「ええと……」

やちよ「いろははブラフとかを使える娘ではないわ……」

やちよ「いろははとても頑固だから……」

やちよ「大事なものを守るために、本当になんでもできてしまう」

やちよ「自分の持っているものすべてを差し出してしまう」

やちよ「そしてそれは、ういさんも同じなんでしょうね」

やちよ「だから、本気で言ってるんだと思う……」

やちよ「本気で、二人が死んだら自分も死ぬ気なんだ……と……」

バタン
64 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:49:17.73 ID:ISCE55f30
いろは「やちよさん!?」

うい「急になんで!?」

ねむ「全部君たちのせいだよ……」
65 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:51:58.03 ID:ISCE55f30
十七夜「落ち着いたか、七海」

やちよ「」

十七夜「ふむ。まだ心ここにあらずか」

ひなの「とにかく無理だ」

ひなの「無実の人間が死ぬかもしれないと思ったら、たとえマギウスの二人が何かやばいことをしようとしていたとしても」

ひなの「アタシには[ピーーー]決断は無理だ」

ひなの「七海やちよは……聞くまでもないか」

ひなの「和泉、お前はどうだ?」

十七夜「うーむ」

十七夜「必要とあれば……と今は言えても、実際にその時が来たらどうかな」

ひなの「……」

ななか「監督者の三人が匙を投げましたね」

葉月「あの案は無理か」
66 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:55:33.60 ID:ISCE55f30
ひなの「……環いろは!環うい!」

いろは・うい「はい!」

ひなの「ここまでやってくれたんだ。あの言葉には責任を持ってもらうぞ……」

ひなの「……さっきの監督者から七海やちよと和泉十七夜を外して、環いろはと環ういを加える!」

ひなの「両被告人は都ひなの、環いろは、環ういの監督の下で解放の研究と魔法少女の活動を行う!」

ひなの「監督者は両被告人の更生に責任を持つ!」

ひなの「ソウルジェムへの細工はなし!」

ひなの「両被告人が何らかの大規模犯罪を犯そうとしていると認められるときは、監督者は全力でそれを阻止し、叶わなかったときはしかるべき責任を取る!」
67 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 13:57:57.32 ID:ISCE55f30
灯花「ちょっとまって!しかるべき責任!?そのあやふやな概念はなに!?」

ひなの「おのおのが取るべきと考える責任を取るということだ」

灯花「答えになってない!!」

ねむ「そんなの、さっきの流れを考えたら――」

ひなの「それ以上のことはこの場では決められない」

ひなの「異論ないか、弁護側、検察側」

ねむ「大ありだよ!」

灯花「極刑でも無力化刑でもなんだって受け入れるから!ういとお姉さまと巻き込まないで!」

ひなの「被告人の意見は聞いてない」

やちよ「弁護側から異議あり。監督者から私の名前を外さないで」

十七夜「助手からも同じく」

ひなの「……いいんだな?」

やちよ「気を使ってくれたのはありがたいけどね。私たちが責任をとらないわけにはいかないわ」

ひなの「では、監督者に七海やちよと和泉十七夜を加える」

ひなの「検察側はどうだ」

ななか「異議はないです」

ひなの「ではこれにて閉廷!」
68 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 14:00:30.94 ID:ISCE55f30
裁判終了後
検察側控室にて

ななか「狙っていたんですかね」

葉月「七海やちよも言ってたけど、あれは狙ってないね。本気で『二人の罪を背負う』ことを実行しようとしただけと見る」

ななか「いやはやすさまじい」

葉月「末恐ろしいよ。あれは。」

ななか「……一番苦手なタイプです」
69 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 14:07:46.81 ID:ISCE55f30
裁判長控室にて

梨花「みゃーこ先輩、お疲れー」

衣美里「大変だったねー」

ひなの「」

ひなの「ああ」

ひなの「本当に疲れた。大変だった」

ひなの「……やっぱり失敗だったかな」

衣美里「ろっはー姉妹にも監督者やらせたこと?」

ひなの「あの二人、どう考えても私たちと同じ立場にはないからな。とれる責任なんてあるはずないんだ……」

ひなの「終わった直後に謝られたが、謝るのはこっちの方だ……」
70 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 14:09:58.87 ID:ISCE55f30
梨花「でも他にやりようなくない?」

れん「ソウルジェムを担保に取るってやり方ができなくなりましたから……後からみんなで責任とることしかできないと思います……はい」

ひなの「環姉妹があの二人のストッパーになっていることは、公判で十二分に示されたからな」

ひなの「あの二人の力がアタシたちに必要なのも間違いないし」

ひなの「みんなが納得できるようなあの二人への抑止は、もうあれ以外にないと思ったんだ。」

衣美里「それに、いろはちゃんとういちゃんに死んでもらうつもりってわけじゃないっしょ?」

ひなの「そりゃそうだが……あの二人、責任感強そうだからなあ……」

ひなの「そういう事態にならないことを祈るばかりだ……」

ひなの「環姉妹に何かあったらどうするのかってのも未解決だしなあ……」

ひなの「……やっぱり年長者が、かな」
71 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 14:12:34.84 ID:ISCE55f30
いろは「ごめんなさい、やちよさんと十七夜さんまで巻き込んでしまって……」

やちよ「いいのよ。私が自分で決めたことだから」

十七夜「責任なんてものは自分で決めて自分で取るものだ」

やちよ「謝るならむしろこの世の終わりみたいな顔をして放心しているそこの二人に――」

十七夜「いや、どうだろう、この二人にとっては到底受けがたいのだろうが……」

鶴乃「刑としてはマシにはなってるからね……当人にとっては逆なんだけど……」

鶴乃「二人に悪いことしたと思ってないなら謝らない方がいいよ」

いろは・うい「はい」
72 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 14:13:50.78 ID:ISCE55f30
すいません。さっきのレスに、弁護人控室にて、とつけ忘れました
73 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 14:15:16.07 ID:ISCE55f30
フェリシア「いろは……お前、死ぬのか……?」

いろは「え?死なないよ?」

フェリシア「だよな!焦った焦った」

いろは「だって、灯火ちゃんとねむちゃんが大規模犯罪を犯すなんてありえないもん」

フェリシア「……そうなのか?」

灯花「……どうなんだろうね?」

ねむ「なんで君たちは、そんなに僕たちを無条件で信頼できるのか……」

うい「それが友達だよ。灯花ちゃんとねむちゃんも同じでしょ?」

灯花「……いや、それは、ういとお姉さまは信じるけど」

灯花「何が起こっても信じられるけど」

灯花「ねむを信頼できるかと言われると……」

ねむ「ねえ……?」
74 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 14:16:14.26 ID:ISCE55f30
やちよ「とにかく、もう決まってしまったことだから」

やちよ「絶対に何もしでかさないでね?」

やちよ「あそこまでしてしまっては、今後何かあなたたちがしでかしたら、いろはとういちゃんはもう……」

灯花「……」

ねむ「……うん」
75 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 14:18:50.67 ID:ISCE55f30
灯花とねむ、帰り道にて

ねむ「ねえ灯花」

ねむ「[ピーーー]なくなっちゃったね」

灯花「わたくしたちが死んだら死ぬなんて、あんな当たり前に言うんだもんね……」

灯花「……そもそも、さ、わたくしたちが誰も人を殺めずに済んだのって、結構な部分はお姉さまのおかげなんだよね」

灯花「全部を思い出した時に、わたくしたちが罪の重さに押しつぶされることがないようにって、ずっと計画を阻止してくれてた」

灯火「それでもたくさんの人たちを傷つけてしまって、罪の重さに押しつぶされたんだけど」

灯花「死人が出ていたら、日本の法律はどうあれ、やっぱり極刑、というかわたくしたち裁判を待たずに自殺していたと思う」

灯花「だから、わたくしたちが今この場に立っていられるのは、お姉さまのおかげなんだよね」

ねむ「これが自分の罪と向き合うようにと、お姉さんが僕たちに与えてくれた余生ならば」

ねむ「勝手に放棄する資格なんて、持ち合わせていなかったのかな」

ねむ「それを理解せずに楽な道に逃げようとした報いだね、これは」

灯花「……それでもわたくしたちの罰にお姉さまとういを巻き込むのは納得いかない」

ねむ「……まあ、あの流れじゃ仕方ないよ」
76 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 14:22:33.36 ID:ISCE55f30
ねむ「後悔先に立たず。未来のことを考えよう」

ねむ「僕たちが道を誤らなければ、ういとお姉さんにこれ以上迷惑をかけることはない」

灯花「簡単に言うねえ。法廷じゃあんなに荒れてたのに」

ねむ「……」

灯花「ねむ?」

ねむ「僕自身自分の人格がよくわからないんだ」

ねむ「ういとお姉さんを忘れていたときの思考と、今の思考を比べるとあまりにも差がありすぎて」

灯花「……それは分かるよ」

灯花「目的のために大勢の人を不幸にして、[ピーーー]ことになんのためらいもなかったわたくし」

灯花「ういとお姉さまのことを思い出したとたんに罪の意識に絡み取られて、死ぬしかないと思い悩んで」

灯花「それでもせめて、自分の招いたことの後始末はつけようと動いたわたくし」

灯花「本当のわたくしはどっちなんだろう」

灯花「今のわたくしが本当なら、大丈夫だとは思うんだけど……」

ねむ「いつ前の自分が顔を出すかと思ったら怖いよ。あの時確かに僕らは人を傷つけること、[ピーーー]ことをためらわなかったんだから」

灯花「よくわからないよね、ういとお姉さまのことを思い出したとたんに罪の意識が出てくるって」

ねむ「僕たちを人間足らしめているのがういとお姉さん、ということなんだろうね」

灯花「それを忘れなければ大丈夫とは思うんだけど……」

ねむ「これから先、ういとお姉さんの記憶を失う可能性は絶無とは言えない」

ねむ「まさに僕たちがやったように魔法を使われるかもしれないし、魔法とは関係なく頭を打って忘れることだってあるかもしれない」
77 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 14:24:24.30 ID:ISCE55f30
ねむ「……」

ねむ「ねえ、灯花、さっき言われてた、ソウルジェムを遠隔で破壊する加工って、できる……?」

灯花「え?……わたくし自身が、ってこと?」

ねむ「うん」

灯花「ソウルジェムを純粋魔法的に自壊させるのは調整屋じゃないと難しいだろうけど」

灯花「科学と魔法を合わせて外部から破壊できるようにすることは、今家に帰ってからでもできると思うよ?」

ねむ「灯花だもんね」

ねむ「それ、こっそりやってしまおうか」

ねむ「お互いに、相手がういとお姉さんを忘れたときにために」

灯花「……ちょっとは安心できるかもね」


ひなの「いや、そんなにまで自分に向き合えてるなら必要ないと思うぞ」


「!?」
78 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 14:26:20.20 ID:ISCE55f30
ねむ「……都ひなの」

灯花「……透明人間か」

さな「ご、ごめんなさい……」

灯花「いいよ。わたくしたちもあなたにひどいことしたもん。こんなことじゃ足りないくらい」

ねむ「まあ、やっぱり僕たちに内心の自由はないんだなという感じはするけど」

ひなの「悪かったな。あんな判決だしてやっぱり死にましたってなったらかなわんからな」

ひなの「まあ、環姉妹は大丈夫だと言ってたし、それについては杞憂だったが」

ひなの「やっぱりついてきてよかったとは思うよ」

灯花「ソウルジェムの遠隔操作のやつ?ダメなの?」

ひなの「ガキが何もかも自分で始末をつけようとするな。年長者を少しは頼ってみろ」

ひなの「何より、環姉妹に胸を張ってやれないことをすべきではないと思うぞ。そんなに感謝しているならな」

ひなの「たとえその意図がなかろうと、環姉妹が身を挺して、お前たちのソウルジェムが加工されないように守ってくれたわけだから」

ひなの「その結果の束縛からの解放は、お前たちが一番尊重すべきものだ」

灯花・ねむ「……」
79 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 14:28:19.18 ID:ISCE55f30
ひなの「おおかれすくなかれ、みんな身に合わぬ袈裟に苦しんでいるんだ。そんなに深刻になるなよ」

灯花「でもわたくしたちの袈裟は特別だよ?」

灯花七海やちよや和泉十七夜がかないもしなかったんだから」

ひなの「それはお前たちがイヴを自由に使えたからこそだろ。もうアタシたちがそんな環境を作らせない。」

ねむ「……それはそうかもね。神浜中の魔法少女から監視されているようなものだし」

ひなの「あまり好ましいものではないんだろうが……」

ねむ「それくらいでいいよ」

灯花「ほんとに頼るからね?何も小細工しないからね……?何かあったら、殺してでも止めてよね……?」

ひなの「それくらい引き受けられないなら、裁判長なんてやらないさ」
80 : ◆ubUwzHgOw5Q4 :2019/04/01(月) 14:29:23.75 ID:ISCE55f30
これにて完結です
html化申請しておきます

ありがとうございました
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/01(月) 18:46:29.14 ID:czZ7c4q60
おつ!
読み応えあった。面白かったよ!
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