過去ログ - 【ガルパンSS】西住隊長は天才だから!凡人の気持ちなんてわかるわけがないですよ!
1- 20
1:名無しNIPPER[saga]
2016/10/02(日) 21:47:52.32 ID:hsNhL/EX0
あせる。

あせるあせる。

一秒でも早く。一歩でも先に。そう思い、焦る自分の心とは裏腹に、戦車は一定のスピードで前に進んでいく。

わかっている。操縦手も最高速度で走行してくれていることくらい。
でも、一秒でも早く、一歩でも先に。そうしないと、そうでないと。。。

パーンと、遠くで何かがはじけるような音。車内で音がうゎん、と反響する。
頭に音が響き、軽いめまいがする。間に合わなかった、という後悔で体がしびれる感覚。

『フラッグ車、走行不能!勝者、BC自由学園!』

ノイズ交じりのアナウンスが鳴り響き、高らかに私たちの敗北が宣言された。

   ***

大洗女子学園は規模が小さいことと、“ある一点”を除けば、ごくごく一般的な学校艦だ。
町には一通りのお店や設備がそろい、学校の成績は平均的なレベル。
生徒たちの一番の楽しみは、たぶん他の学園艦の生徒と同様、月に一度、母港に入港することで。
現にそれを明日に控えた今は、クラスの子たちはその話題で持ちきりである。

「私、新しい服買いたいんだー。大洗じゃないとかわいい服、そろってないし。」

「私はケーキ食べたいなぁ。艦内のお菓子屋さん、ずっとラインナップが一緒なんだもん。
そろそろ新しいもの、食べたいよぉ。」

「あー!やりたいことが多すぎて、お金が全然足りないよ。でも、楽しみだね。明日の寄港!ね、隊長!」

空白の時間が数秒流れて、ようやくそれが今の私のあだ名であり、私に向けられた言葉なのだと思い至る。

「え…。あ、うん。」

物思いに耽っていた頭はとっさのことにうまく動いてくれず、曖昧な返事しかできない。

「もー。何ぼーっとしてんのよ。たーいちょー!」

「そうそう。高校戦車道に名高い、大洗女子学園戦車道の隊長なんだから、しっかりしてよね。」

笑顔で話しかけてくる彼女らに、もちろん悪意などは無く、純粋に休み時間の会話を楽しんでいることが分かる。
ただ、その言葉に勝手に傷ついている私がいるだけで。

「ごめんごめん。ただ、今日はポカポカ暖かいから。なんだかウトウトしちゃって。」

「まったく。そういうところは前の隊長似だよね。あの人も、学校で見かけるときは、いつもぽやーっとしていて。」

「わかるわかる。私、あの人が電柱にぶつかるところ、何度か見たことあるもん。」

「私も見たことある!でも、試合の時は人が変わったようにきりっとして。かっこいいよね。」

「そりゃそうだよ。だって、私たちの学校の救世主だもん!」

「こうして、まだこの学校に通えているのも、彼女と戦車道の人たちのおかげだもんね。」

三人が一斉にこっちを見る。

「もちろん、あんたにも感謝してるよ!」

こんな、私を。尊敬のまなざしで。

「でも、だから頑張ってよね!隊長!」

あの人とはまるで違う、私を。期待の目で。

「今年もばーんと優勝しちゃってね。」

今すぐここから逃げ出したい。

「ね!澤隊長!」

   ***


SSWiki : ss.vip2ch.com



2:名無しNIPPER[saga]
2016/10/02(日) 21:53:24.65 ID:hsNhL/EX0
大洗女子学園、といえば今ではもう戦車道の強豪校というイメージが世間に広く定着している。
長年廃部となっていた学校が、新造チームで初参加初優勝。大学選抜を打ち破り、続く次年の全国大会でも
優勝して連覇を果たした。

強豪校、と言われるにふさわしい輝かしい実績。
以下略



3:名無しNIPPER[saga]
2016/10/02(日) 22:01:13.86 ID:hsNhL/EX0
先輩たちが引退して、新チームになってから、部隊編成も大きく変わった。
戦車道経験者が入学してくれたとはいえ、半数以上は未経験者なのだ。
また、受講者の数が増えるにしたがって新しい戦車が増強され、ウサギさんチームのみんなも、
それぞれ新しいチームで車長として頑張っている。

以下略



4:名無しNIPPER[saga]
2016/10/02(日) 22:08:26.71 ID:hsNhL/EX0
場所を港近く、海岸沿いにある公園に移し、ベンチに並んで腰かける。

港からここに来るまで2、3言葉を交わしたが、内容がもう思い出せないから、当たり障りのない、なんてことのない会話だったと思う。

ベンチに座ってからは、お互い一言もしゃべってはいない。西住隊長は、何度か口を開きかけ、
以下略



5:名無しNIPPER[saga]
2016/10/02(日) 22:14:31.00 ID:hsNhL/EX0
走る。

走る走る。

つまづいても、とにかく走る。
以下略



6:名無しNIPPER[saga]
2016/10/02(日) 22:24:50.19 ID:hsNhL/EX0
「えぇ、そう。あんたが何て言ってるか、ベソかきすぎて全然わからないけど、ようは後輩を探してほしいってことでしょ?」

逸見さんとぶつかった後、その場で倒れこんでいるわけにもいかず連れだってすぐそばのカフェに入った。
いや、茫然自失の私は手をにぎられ、引っ張って来られた、のほうが正しいかもしれない。

以下略



7:名無しNIPPER[saga]
2016/10/02(日) 22:32:19.53 ID:hsNhL/EX0
鼻の奥がツンとして、瞬間、去年の全国戦車道大会決勝戦を思いだす。
決勝の相手は私が一年生の時と同じく黒森峰女学園で、隊長は逸見さんだった。

練度高く、乱れのない進軍で前半は大洗女子学園が圧倒されたが、西住隊長の機転で形勢が逆転。
しかし、そこから逸見さんはあきらめずに反撃に転じ、最後は双方フラッグ車のみを残しての壮絶な一騎打ち。
以下略



8:名無しNIPPER[sage]
2016/10/02(日) 22:35:03.05 ID:lmjTEydy0
地の文、ある程度書き慣れているようでとっても読みやすい。
これは力作、期待!


9:名無しNIPPER[saga]
2016/10/02(日) 22:39:23.21 ID:hsNhL/EX0
「あの、澤さん。私…。」

涙声な西住隊長を前にして、ようやく私はちゃんと彼女を見ることができた。

少し気弱で優しくて、でも戦場では心まで見透かされるようにきりっとするその目。
以下略



10:名無しNIPPER[saga]
2016/10/02(日) 22:55:38.74 ID:hsNhL/EX0
強い日差しに、歩きながら手をかざして上を見る。
空には雲一つなく、絶好の戦車道日和だ、と思った自分に、戦車道日和ってなによ。と突っ込みを入れる。

審判の人達がいる戦場の中央に到着して足を止める。前を向くと黒いパンツァージャケットを身にまとった西住先輩がいた。

以下略



11:名無しNIPPER[saga]
2016/10/02(日) 23:02:35.58 ID:hsNhL/EX0
以上です。

SS初投稿だったので、何か不手際ありましたらすみません!

IDが変わらないうちに、HTML化依頼をしてきます。


12:名無しNIPPER[sage]
2016/10/02(日) 23:03:37.49 ID:s53HT+t80



13:名無しNIPPER[sage]
2016/10/02(日) 23:09:28.01 ID:0Y7yrSD70
乙でした!


14:名無しNIPPER[sage]
2016/10/02(日) 23:16:56.58 ID:r5k4IOw3o




15:名無しNIPPER[sage]
2016/10/02(日) 23:18:37.53 ID:wHmgL1tVO

初投稿とは思えないほど面白かったよ


16:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/02(日) 23:27:04.76 ID:hsNhL/EX0
ありがとうございます!

普段は自分で書いたものを自分で読むだけで完結させていたので。
今回はなんとなく投稿してみましたが、感想を聞けるのはやっぱりうれしいですね。


17:名無しNIPPER[sage]
2016/10/02(日) 23:33:35.38 ID:zwJ4Cblp0
面白かったぞ乙


18:名無しNIPPER[sage]
2016/10/02(日) 23:37:20.41 ID:QdZf4zV+O
乙であります!


19:名無しNIPPER[sage]
2016/10/03(月) 00:18:47.19 ID:pgVoNuL/o
乙!


20:名無しNIPPER[sage]
2016/10/03(月) 02:24:10.41 ID:x4D76N2Yo
乙!
すごい面白かった!
また何か投稿してくれたら嬉しいなって


21:名無しNIPPER[sage]
2016/10/03(月) 08:30:43.53 ID:kEBNkTito
普段地の文のSS読まないけど自然に読めたな
すごくよかった乙


23Res/26.60 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice