【悪魔のリドル】兎角「一線を越える、ということ」
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17:名無しNIPPER[sage saga]
2017/08/21(月) 22:16:45.13 ID:u1xI7N2CO
兎角と千足は全身が麻痺してしまったかのように動けなくなり、首だけで壊れた人形のように声のした方を向いた。
部屋に照明はなく光源は窓から差し込む外の夜間灯の光しかない。
それでも薄暗がりの中立っているのは見間違いようもなく晴と柩であった。
二人は呆然と立ち尽くしていた。表情に力はなく、瞳に街灯の光が写っているのは涙を湛えているからだろうか。
18:名無しNIPPER[sage saga]
2017/08/21(月) 22:17:44.93 ID:u1xI7N2CO
それは言い訳のしようのない状況だった。
使われていない空き部屋で、互いに一糸纏わぬ姿で、肌を上気させ、抱き合い、互いの秘部をもてあそびあう。
それでも何か行動をと思った兎角は慌てて晴に手を伸ばした。
19:名無しNIPPER[sage saga]
2017/08/21(月) 22:18:37.98 ID:u1xI7N2CO
一方の千足と柩も兎角達の行動を見て少しは我に返ったようであった。
柩は晴のように立ち去ろうとはしなかった。
ただ立ち尽くしたまま、いつもの熊のぬいぐるみを抱き締めて声を圧し殺すようにして泣いていた。
「ん、……グッ、ウウ……、ウウッ…………」
20:名無しNIPPER[sage saga]
2017/08/21(月) 22:21:41.92 ID:u1xI7N2CO
短慮な行動の代償は大きかった。
翌日晴と柩は学校を休んだ。そもそも二人は昨晩自室にすら帰っていなかった。
気付けば1号室に帰ってきていた兎角は一晩晴を待ったが帰ってこず、そのまま夜が明けた。やがて登校時間になったがそれでも晴は帰ってこなかった。
21:名無しNIPPER[sage saga]
2017/08/21(月) 22:23:50.87 ID:u1xI7N2CO
ようやく兎角が晴と会えたのはさらにその翌日の六日目、月曜日の教室でのことであった。
この日も兎角は朝から晴を探してから教室に来たがその時はまだ晴も柩も来ていなかった。
今日もまた会えないのかと半ば諦めながら席についていた兎角であったが、授業が始まろうかという頃急に扉が開いて二つの人影が入ってきた。
兎角は思わず立ち上がった。その人影こそが晴と柩だったからだ。
22:名無しNIPPER[sage saga]
2017/08/21(月) 22:25:50.53 ID:u1xI7N2CO
事態が動いたのは翌週の水曜日のことであった。
その日も晴達は授業開始ギリギリに来て兎角達と会話することなく過ごしていた。
今日も変化なしかと兎角らも受け入れていたが、間もなく今日の授業が終わろうかという頃兎角のタブレットに一通のメールが届く。
一目見て兎角は叫びたくなるくらいに衝撃を受けた。
23:名無しNIPPER[sage saga]
2017/08/21(月) 22:26:48.48 ID:u1xI7N2CO
兎角はゆっくりと自室に戻ることにした。
理由は特にない。何となくそうしようと思っただけだ。
メールの「待ってて」という文面から晴が来るのはしばらくしてからだろうから問題はないだろう。
兎角がのんびりと教室内を見渡すと千足が慌てて出ていく姿が見えた。もしかしたら千足にも同じようなメールが来たのかもしれない。
24:名無しNIPPER[sage saga]
2017/08/21(月) 22:29:20.20 ID:u1xI7N2CO
それから大分時間が経った。空はもう赤く染まっている。
何気無しに外を見ていた兎角であったがふと廊下に気配を感じて意識を高めた。
扉の前に誰かがいる。しかし兎角は振り返らず窓の外を眺め続け、時が来るのを待った。
二分ほど経って控えめに二度ノックがされ、そしてドアノブの回る音が聞こえた。兎角はまだ振り返らない。
25:名無しNIPPER[sage saga]
2017/08/21(月) 22:31:41.25 ID:u1xI7N2CO
二人が腰かけてから少しばかりは沈黙が続いた。
きっかけが掴めないのか踏ん切りがつかないのか、あるいはその両方か。
しかしこのままではらちがあかない。だからこそ兎角の方が先に口を開いた。
「晴……」
26:名無しNIPPER[sage saga]
2017/08/21(月) 22:32:40.34 ID:u1xI7N2CO
「まずは、そうだな……色々と、その、満足できてなかったんだ……」
兎角は時系列順に丁寧に話すことにした。
晴とのセックスで満足できていなかったこと。
それを言い出せなかったこと。
27:名無しNIPPER[sage saga]
2017/08/21(月) 22:36:06.54 ID:u1xI7N2CO
沈黙はどれほど続いただろうか。
十分か二十分か。しかしもしかしたらまだ一、二分かもしれない。兎角にとってはそれほどまでに長く感じる時間だった。
やがて晴がぽつりとつぶやいた。
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