1: ◆twOYNJxMJs[saga]
2017/10/06(金) 00:30:00.66 ID:h7xFOhfZ0
「……ここは」
目を開けると私は真っ白な世界に立っていました。
そこはなにもない世界でした。あるものを除いて、ですが。
「むぅ……」
私の視線の先には1つの扉がありました。静かに佇むそれは、何もない真っ白な世界に唯一存在しているものでした。
その扉は鍵がかかっているようで、押しても引いても開く気配はしません。
「どうやったらこの扉は開くんだろう? ……そうだっ!」
普段から首にかけている鍵のネックレス、この鍵なら……
……ってあれ?
「鍵がないっ!?」
ネックレスの先には鍵がありませんでした。
「そんな……」
頼みの鍵も無くなってしまい、私にできるのは目の前にある扉を見つめることだけでした。
……ピピピッ!……ピピピッ!
扉を見つめているとどこからともなく聞きなれたアラーム音が聞こえてきます。
アラーム音は私を呼ぶようにどんどん大きくなって最後は……
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2: ◆twOYNJxMJs[saga]
2017/10/06(金) 00:30:56.48 ID:h7xFOhfZ0
ピピピッ……!ピッ…!
「ふわぁ……また同じ夢を見ちゃった」
3: ◆twOYNJxMJs[saga]
2017/10/06(金) 00:31:34.04 ID:h7xFOhfZ0
「ふぅ……」
レッスン後の更衣室、着替えながらレッスンで見つけた課題点を振り返ります。
ダンスは大丈夫なのですが、最後のポーズがなかなか上手く決まりません。
4: ◆twOYNJxMJs[saga]
2017/10/06(金) 00:32:25.31 ID:h7xFOhfZ0
私がまだ3歳だったかな、家族で遊園地に行った時のことです。
当時の私は初めての遊園地でとってもはしゃいでいたって両親が言ってました。
観覧車にメリーゴーランド、どれも初めての経験でとても楽しそうだった、って!
5: ◆twOYNJxMJs[saga]
2017/10/06(金) 00:32:52.24 ID:h7xFOhfZ0
「人形じゃなくて鍵を選ぶとはね」
「うーん、私だったらお人形かなぁ」
6: ◆twOYNJxMJs[saga]
2017/10/06(金) 00:34:46.07 ID:h7xFOhfZ0
けれど、事件は突然起こってしまうのです。
7: ◆twOYNJxMJs[saga]
2017/10/06(金) 00:35:19.20 ID:h7xFOhfZ0
「今日は上手くできてよかったな」
みりあちゃんと飛鳥さんに鍵の話をした数日後、今日のレッスンが上手くいった私は上機嫌で更衣室に戻ってきました。
シャワーをゆっくり浴びすぎてしまったので、他には誰もいません。
8: ◆twOYNJxMJs[saga]
2017/10/06(金) 00:35:54.25 ID:h7xFOhfZ0
何度も見た夢の中、真っ白な世界には相変わらず扉が佇んでいました。
「でも鍵は……」
9: ◆twOYNJxMJs[saga]
2017/10/06(金) 00:36:50.94 ID:h7xFOhfZ0
バターン!
「いててっ……」
10: ◆twOYNJxMJs[saga]
2017/10/06(金) 00:38:54.39 ID:h7xFOhfZ0
「はぁ……」
レッスン終了後、ロッカーを前に私は深いため息をついていました。
それもそのはず……
11: ◆twOYNJxMJs[saga]
2017/10/06(金) 00:40:42.66 ID:h7xFOhfZ0
「今日は調子が悪いみたいだね、いつもの笑顔はどうしたんだい?」
「飛鳥さん、お疲れ様です」
12: ◆twOYNJxMJs[saga]
2017/10/06(金) 00:41:11.15 ID:h7xFOhfZ0
「………」
「でも、ごめんなさいっ! ライブの直前なのにこんなことでみなさんに迷惑をかけてしまうなんて……本番では失敗しないようがんばりますからっ!」
13: ◆twOYNJxMJs[saga]
2017/10/06(金) 00:41:57.52 ID:h7xFOhfZ0
「最初はやっぱり……ここかな」
「ここって、プロデューサーさんの部屋?」
14: ◆twOYNJxMJs[saga]
2017/10/06(金) 00:44:54.49 ID:h7xFOhfZ0
「そういうことはもっと早く言わんかい!」
私の話を聞いた巴さんは少し怒ったかのように言います。
飛鳥さんもそうでしたが、自分が思っていた以上に皆さんは私の事を心配していたみたいで、心がズキズキしてしまいます。
15: ◆twOYNJxMJs[saga]
2017/10/06(金) 00:45:44.55 ID:h7xFOhfZ0
「まったく! 行き当たりばったりとはなんて計画の無さなんじゃ!」
不満を吐き出すかのように、ボタンを連打する巴さん。
16: ◆twOYNJxMJs[saga]
2017/10/06(金) 00:46:43.78 ID:h7xFOhfZ0
「鍵が消えちゃった……」
鍵が消える演出を見てしまい、ゲームの中の出来事とは言え言葉が出なくなってしまいます。
そんな私を見た飛鳥さんと巴さんもさっきまでの喧騒が嘘だったかのように口を閉ざしてしまいました。
17: ◆twOYNJxMJs[saga]
2017/10/06(金) 00:47:09.76 ID:h7xFOhfZ0
「しっかし目一杯遊んだのう! たまにはテレビゲームを悪くないもんじゃな」
「私もあまりゲームはしないので楽しかったですっ!」
18: ◆twOYNJxMJs[saga]
2017/10/06(金) 00:47:56.23 ID:h7xFOhfZ0
「この時間帯に屋上に来るなんて、貴女達にも世界を見る素質があるようね!」
「まさかヘレンの姉御がいたとはのぅ」
19: ◆twOYNJxMJs[saga]
2017/10/06(金) 00:48:51.62 ID:h7xFOhfZ0
「貴女……」
一体どんな言葉が飛び出してくるのか……ドキドキしながらヘレンさんの言葉を待ちます。
20: ◆twOYNJxMJs[saga]
2017/10/06(金) 00:49:38.44 ID:h7xFOhfZ0
「と、いう訳なんです。今は新しい鍵を探しているんですけど、これが見つからなくて……」
私が話している間、ヘレンさんはずっと目を閉じながら耳を傾けてくれました。
そして話が終わるとヘレンさんは目を見開いて……
21: ◆twOYNJxMJs[saga]
2017/10/06(金) 00:50:05.26 ID:h7xFOhfZ0
「急ぐ必要は無いわ。焦らず、ゆっくり考えなさい」
難しい顔をしていたのでしょうか、ヘレンさんは少し背伸びをすると私の頭を軽くポンと叩きます。
年上のお姉さんにこういうことをされるのは珍しいことなので、なんだか恥ずかしくなってしまいます。
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