31: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 00:18:51.44 ID:Qezuh/qr0
  
  
  中にあったのは、乱暴に折り畳まれた一枚の便箋と、一枚のポラロイド写真。 
  便箋には、殴り書きでこうありました―― 
  
32: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 00:19:35.93 ID:Qezuh/qr0
  
  
 P「………………なるほど」 
  
 美穂「ど、どどどどっどうしましょうっ私っ、い、一体何がなんだか……!」 
33: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 00:20:02.55 ID:Qezuh/qr0
  
  
  雨吹山の狸一族は、鏡山の小日向一族と長年の仇敵だったといいます。 
  
  私の代ともなればそれほど激しく憎み合ってはいなかったみたいだけど、それでも化け合戦を行うことは時たまあって。 
34: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 00:20:51.49 ID:Qezuh/qr0
  
  時刻が正午を回る頃、私達はみんなで指定の場所を訪れました。 
  藤崎八幡宮の裏手は川沿いの細道で、人通りは全くありませんでした。 
  
  そんな道路のど真ん中に、座敷がありました。 
35: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 00:21:24.81 ID:Qezuh/qr0
  
 「な、何をしたんですか!?」 
 「安心しい。寝とるだけたい」 
 「でも、だからってこんなこと、どうして!!」 
  
36: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 00:22:02.12 ID:Qezuh/qr0
  
  だんっ、と叩き付けるようにグラスを置いて狸が気勢を上げます。 
  
 「そもそも小日向は俺(おい)らの長年の怨敵! こげんする理由は元より有り余っとる!」 
  
37: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 00:22:57.64 ID:Qezuh/qr0
  
  口を開いたのは、檻の近くにじっと座っていた狸。 
  化けていてもすごく小柄で、長い白髪のせいで目も口も見えませんでした。 
  多分、この中では長老格です。 
  
38: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 00:23:42.70 ID:Qezuh/qr0
  
  
 「…………黙って聞いてりゃ手前勝手なことばかりぐだぐだぐだぐだ…………」 
  
 「……そなたー?」 
39: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 00:24:34.42 ID:Qezuh/qr0
  
 「うんむ」 
  
  と頷くが早いか、白毛玉のお爺ちゃんは茶釜の蓋をぺっと開けて、一升瓶の焼酎をどぼどぼどぼどぼ注ぎ込みます。 
  かと思えば、茶釜がいきなり唸りを上げて震え出しました。 
40: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 00:25:23.37 ID:Qezuh/qr0
  
 「ひこさん、ぶぜんぼう……」 
  
  飛び去る空中座敷。 
  UFOのようなそれを呆然と見送りながら、私は耳慣れない言葉を復唱していました。 
41: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 00:26:24.17 ID:Qezuh/qr0
  
     ―― ホテル ロビー 
  
  
 美穂「お父さん、お母さん……」 
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