1:名無しNIPPER
2018/03/24(土) 20:17:17.94 ID:bU2BHSY40
・アイドルマスターシンデレラガールズの二次創作です。
SSWiki : ss.vip2ch.com
2: ◆cgcCmk1QIM[sage saga]
2018/03/24(土) 20:18:24.27 ID:bU2BHSY40
  
  誰かを幸せにするために、アイドルを目指したい。 
   
  そう決めて東京に出てきて、私が初めて所属できた事務所は、とっても素敵なところでした。 
  
3: ◆cgcCmk1QIM[sage saga]
2018/03/24(土) 20:18:58.07 ID:bU2BHSY40
  
  今でも、度の強い眼鏡をはずして笑うPさんの顔がはっきりと思い出せます。 
  
  少し眉が寄ったような、どこか困ったような笑顔がなんだか自分に似ているような気がして、私はひそかにPさんの事を『お兄さんみたいだ』と思っていました。 
   
4: ◆cgcCmk1QIM[sage saga]
2018/03/24(土) 20:19:37.02 ID:bU2BHSY40
  
  
  故郷の鳥取で、私は人を不幸にする子だと言われてきました。 
  
  きっと、それは本当の事。 
5: ◆cgcCmk1QIM[sage saga]
2018/03/24(土) 20:20:04.03 ID:bU2BHSY40
  
  だから―――初めてあの事務所に採用されたとき、私は迷いました。 
  
  もしここで、自分の『不幸』を知らせたら、採用を取り消されてしまうかも知れない。 
  
6: ◆cgcCmk1QIM[sage saga]
2018/03/24(土) 20:20:30.61 ID:bU2BHSY40
  
  ―――だけど、それは儚い望み。 
  
  ある日、仕事に出ていた年長組のアイドルの子の乗った車が事故に遭いました。 
  
7: ◆cgcCmk1QIM[sage saga]
2018/03/24(土) 20:21:07.25 ID:bU2BHSY40
  
  
  それから次々、悪いことが起こりました。 
  
  突然、事務所の仕事が引き上げられてしまったり。 
8: ◆cgcCmk1QIM[sage saga]
2018/03/24(土) 20:21:38.82 ID:bU2BHSY40
  
  それなのに、それなのに――― 
   
  私は―――言えなかったんです。 
  
9: ◆cgcCmk1QIM[sage saga]
2018/03/24(土) 20:22:10.41 ID:bU2BHSY40
  
  事務所を離れようとも思いました。 
  
  そうしたら、事務所は助かるかも知れない。 
  
10: ◆cgcCmk1QIM[sage saga]
2018/03/24(土) 20:22:45.33 ID:bU2BHSY40
  
  
 「僕たち大人のの力が足りなかったんだ。そのことを、まず謝っておきたい」 
  
  事務所が閉鎖されると決まって、最後の夜。 
11: ◆cgcCmk1QIM[sage saga]
2018/03/24(土) 20:23:15.08 ID:bU2BHSY40
  
  みんな、事務所の最後を惜しんでいました。 
  
 「―――さっきも言ったけど、事務所が閉鎖されるのは、僕たち大人の力不足のせいだ」 
  
12: ◆cgcCmk1QIM[sage saga]
2018/03/24(土) 20:23:46.54 ID:bU2BHSY40
  
 「―――ごめんなさい!!」 
  
  私の口から、ずっとずっと言えなかったことが吹き出しました。 
  
13: ◆cgcCmk1QIM[sage saga]
2018/03/24(土) 20:24:13.71 ID:bU2BHSY40
  
  黙っているなら、最後まで黙っていればよかったのかも知れません。 
  
  だけど、もう我慢できなかった。 
  
14: ◆cgcCmk1QIM[sage saga]
2018/03/24(土) 20:24:58.33 ID:bU2BHSY40
  
 「うん、知ってたよ」 
  
  Pさんはいつものように、ちょっと困ったように笑って―――そう言ったのです。 
  
15: ◆cgcCmk1QIM[sage saga]
2018/03/24(土) 20:25:27.46 ID:bU2BHSY40
 「―――君のエントリー用紙が来たとき、親御さんにも連絡をしたんだよ。そのとき、君の事を聞いた」 
  
  穏やかに、Pさんが語りはじめます。 
  
 「不幸のこと。親御さんが君をとても心配していて―――だからこそ、アイドルになることには反対していた、ということも」 
16: ◆cgcCmk1QIM[sage saga]
2018/03/24(土) 20:26:07.95 ID:bU2BHSY40
 「皆同じだと、思ったから」 
  
  年少の、そばかすの子が笑いました。 
  
 「ここの子はね、みんな同じなのよ。『不幸』じゃないけど、才能とか、ルックスとか、お金とか。 色々理由はバラバラだけど―――みんな、アイドルになるの、反対されてた子なんだよ」 
17: ◆cgcCmk1QIM[sage saga]
2018/03/24(土) 20:26:34.18 ID:bU2BHSY40
  
  
 「僕たちは、解っていて、満場一致で君を迎えた。大人たちは、絶対なんとかしようと思って頑張った」 
  
  Pさんが、胸を張ります。 
18: ◆cgcCmk1QIM[sage saga]
2018/03/24(土) 20:27:22.40 ID:bU2BHSY40
  
  そう、なのでしょうか。 
  
  この苦しみに、この重さに負けずに、進んでいけば。 
  
19: ◆cgcCmk1QIM[sage saga]
2018/03/24(土) 20:27:54.60 ID:bU2BHSY40
  
        
  ―――そして、あの事務所は閉鎖されて、私達はちりぢりになりました。 
  
  連絡が取れる子も、取れない子もいます。 
20: ◆cgcCmk1QIM[sage saga]
2018/03/24(土) 20:28:41.27 ID:bU2BHSY40
 読んでいただいて、ありがとうございました。 
21:名無しNIPPER[sage]
2018/03/24(土) 21:21:09.47 ID:VNfmkzZ90
 おつー 
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