【ミリオン】君がいる愛しい世界
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19: ◆nmcoT1iylg[saga]
2018/04/26(木) 23:57:30.46 ID:f2WBlHUh0
「だからエミリーに歌ってほしかったんだ」
「え……?」
「だって大和撫子になりたいんだろ?」
「そう、ですけど。でも……、私は」
「私は大和撫子じゃないから、歌っちゃいけないとか言わないでほしい」
以下略 AAS



20: ◆nmcoT1iylg[saga]
2018/04/26(木) 23:58:08.25 ID:f2WBlHUh0
「まだ、わからないんです。雨音が水たまりではしゃぐことも、花びらが雨粒を身にまとうことも、雲を解くということも、わからないんです。どういう解釈をするのが正しくて、どういう風に歌うのが正解なのか。……わからなくて」
「それでいいんだよ」
「え……」

 かけられた思いがけない言葉に思わず顔をあげる。そうして自分がいつの間にかうつむいていたことに気づいた。
以下略 AAS



21: ◆nmcoT1iylg[saga]
2018/04/26(木) 23:59:06.58 ID:f2WBlHUh0
 立ち上がって景色を見渡す。
 雨は上がりかけていて、雲の隙間から太陽の光が差し込んで。花についた滴がそれを乱反射してきらきらと輝いていた。
 
 そっと雲を解いて。
 
以下略 AAS



22: ◆nmcoT1iylg[saga]
2018/04/26(木) 23:59:42.98 ID:f2WBlHUh0
 あぁ、そうか。
 この世界は、愛しい。
 
「仕掛け人さま」

以下略 AAS



23: ◆nmcoT1iylg[saga]
2018/04/27(金) 00:00:20.83 ID:VteCTvt80
 エミリーは振り返って笑った。その目からは一筋の涙がこぼれていた。迷いは晴れただろうか。

「私、今なら歌えそうな気がします」
「なら良かった」

以下略 AAS



24: ◆nmcoT1iylg[saga]
2018/04/27(金) 00:01:24.73 ID:VteCTvt80
 *

 新曲のリリースイベント当日。リハーサルを終えて待機しているエミリーに会うために楽屋を訪れる。

「緊張してる?」
以下略 AAS



25: ◆nmcoT1iylg[saga]
2018/04/27(金) 00:02:24.50 ID:VteCTvt80
「新曲の評判も良かったぞ。貴音から良かったと言っておいてくださいだってさ」
「貴音さまが……? し、仕掛け人さま! 本当ですか!」
「はは、嘘はつかないよ」
「そうですか、貴音さまが……。すごく嬉しいです」
 えへへっと頬を緩めたエミリーはなんだかいつもより幼く見えた。
以下略 AAS



26: ◆nmcoT1iylg[saga]
2018/04/27(金) 00:03:39.29 ID:VteCTvt80
 微笑み日和は、初めていただいた曲でした。私のために作られた曲というのがすごく特別なことのように思えて、嬉しくなって。無我夢中で収録に臨んで。初めて立った舞台のことは今でも鮮明に思いだせます。すごく緊張もしましたがそれ以上に楽しくて、舞台の上から見た景色は綺麗で美しくて。ずっとここにいたいとさえ思えました。
 だから、微笑み日和は私にとって決意の歌なんです。この世界で、大和撫子を目指して舞台に立つという意思を込めた歌です。

 君だけの欠片は、初めは恋のうただと思っていました。女の子が幼馴染の男の子を陰で支える歌なんだと。大和撫子の大切な部分を歌っているんだと思っていました。
 ですが、読み込むうちに恋のうたじゃない気がしてきて。これは愛のうたなのかもしれないと思えてきました。私の隣で泣いてもいい。そう言えるのは愛だなぁと思えてきて。
以下略 AAS



27: ◆nmcoT1iylg[saga]
2018/04/27(金) 00:04:53.41 ID:VteCTvt80
 そうしていただいた今回の新曲で。
 たくさん悩んで、たくさん泣いて、仕掛け人さまに「歌って、大和撫子になる」と言われて。そうしてあの景色を見て自分の小ささに気がつきました。私はこの世界に生きていて、この世界に生かされている。
 だからあの時「愛しい」と素直に感じることができました。曲への怖さはどこにもなくて。壊してしまう怖さよりも、この歌で私はもっと近づきたい。もっと、大和撫子になりたい。
 父の仕事の都合で日本に住むことになったこと。神社で、あの舞を見たこと。そうして仕掛け人さまに出会えたこと。たくさんのお仕事や歌。仲良くしてくださる大和撫子のみなさん。仕掛け人さまに見せていただいた景色。その全部が、私の中にあります。
 そんな世界で生きているから。
以下略 AAS



28: ◆nmcoT1iylg[saga]
2018/04/27(金) 00:06:25.87 ID:VteCTvt80
「エミリーさん、そろそろスタンバイよろしくお願いしまーす」

 エミリーが言い終わる前に楽屋の扉がノックされて二人で肩を跳ねる。いつの間にかこんな時間。大分聞き入ってしまった。

「あ! すみません、長々と」
以下略 AAS



29: ◆nmcoT1iylg[saga]
2018/04/27(金) 00:08:11.06 ID:VteCTvt80
 とびきりの笑顔で楽屋を後にするエミリーに手を振りながら見送る。アイドルの楽屋に一人でいるというのも変な話なので舞台袖に行くかなと思って腰を伸ばした。
 エミリーの先ほどの言葉を思い出す。

「世界への愛の歌かぁ……」

以下略 AAS



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