高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「『あいこカフェ』で」
1- 20
13:名無しNIPPER[sage saga]
2021/05/16(日) 14:34:36.48 ID:eE/KPeRw0
「この後のこと、決めた?」

 藍子は最初、明日から始まる3日間のことだと思ったみたい。不思議そうに首を傾げ、そして私の言葉の意味に気がつき、わずかに目を見張る。

「カフェのこと。……どう? 実際に『あいこカフェ』がこうして形になった……なりつつある訳だけど、藍子の中で何か決まったこととか分かったこととかある?」

 手近なメッセージカードを1つ取る。お礼の言葉に、「明日もいいことがありますように」という一文が付け加えられたレア物。
 きっとアイドルとしてこの言葉を書いたに違いない。文字がそう物語っている――
 藍子は首を横に振った。
 困ったように、小首を傾けた。

「ううん、まだ何も。それに、加蓮ちゃんに言われるまで、何も考えていませんでした」
「……あぁそっか。ごめんね、無粋なこと言っちゃって」
「いえ。焦らすようになっちゃって、ごめんなさい……」
「そういうつもりじゃないって……」

 嫌な沈黙。2度目の気まずさ。加えて周囲の気配が遠ざかるような感じが、髪の後ろのくくった辺りを焦がし始める。
 まるでカフェにいる時に他のお客さんがBGMでしかない時と同じよう。顔と名前と、だいたいの性格と好きな物まで覚えたスタッフさんが一瞬にして全然知らない、なんとなく顔を見たことがあるかもしれない程度の同伴者となる。

 そして。

 ……私がこうして心臓を締め付けられた時、優しくしてくれる人がいるのも、いつものカフェと同じ。

「加蓮ちゃん、謝らないで?」

 あの場所と同じ。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
43Res/82.00 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice