5:名無しNIPPER
2025/07/31(木) 00:21:24.15 ID:DoK8Vme/0
まず気になったのは、サインの筆跡だった。親子はある程度字が似るとは言うが、彼女の母のサインと彼女のそれはあまりにも似通っていた。
さらに、待っている間に何度か外を見ていたのも気になった。本格的に降り始めた雨の音が気になるのかと思ったが、ただ見ているだけではない、怖がるような目を見て察した。余程親が怖いのだろうか。
彼女の反応は予想通りだった。答えることはなく、俯いている。その目には薄っすらと涙が浮かんでいるようにも見えた。自分に嫌悪感は抱かない。涙を見る覚悟はこの悪しき世界に飛び込んだ時に済ませている。
「親御さんのご職業は?」
「父がコンサルタントで、母が弁護士です……」
「ふむ。お忙しいのかな?」
「はい……あの、この質問は何の意味が」
怯えたような目。親に通報されることを怖がっているんだろうか。ようやく年相応の反応を見ることが出来たような気がする。
「担当するアイドルの家族のことは、ある程度は知っておきたいんだ。とりあえず、僕は君をアイドルにしたい。それだけは理解してくれるかな」
「っ!本当ですかっ!」
「本当だよ。君は間違いなくこの事務所を支えるようなアイドルになれる。こっちから頭を下げないといけないぐらいだ」
「じゃあー」
その先の言葉はなかった。建物を壊そうとするかのような足音が迫り、顔を見合わせているうちに部屋のドアがかなり乱暴にノックされる。鍵が開いていると気付くやいなや蹴破らんばかりの勢いで2人が入ってきたのだ。
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