【デレマス】橘ありす「花にかける呪い」
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6:名無しNIPPER
2025/07/31(木) 00:23:06.73 ID:DoK8Vme/0
「あの……頭を上げていただけますと……」
「いえ、我々の管理不行届ですから」

 直角に頭を下げられた時はどうすればいいのだろうか。
 2人の侵入者ー橘さんの両親は心底申し訳なさそうに頭を下げていた。どちらも仕立てのいいスーツに身を固めてはいるが、髪の毛は不釣り合いなほどに濡れている。忙しいというのは本当だったようだ。
以下略 AAS



7:名無しNIPPER
2025/07/31(木) 00:25:22.30 ID:DoK8Vme/0
「……あー、少しよろしいでしょうか?」
「……お見苦しい所をお見せしました。どうぞ」
「私としましては、彼女をアイドルとしてプロデュースさせていただければと思っております。彼女自身のダンスや歌等は確かに未熟です。ですが、彼女は非常にアイドル向きだと言えます。それらのー特に歌唱力の才能が秀でていますから。私としては、あの如月千早に並び、超えることすら出来ると考えます」
「それでも我々としては」

以下略 AAS



8:名無しNIPPER
2025/07/31(木) 00:26:27.43 ID:DoK8Vme/0
「言葉もありません。ですが、小さな事務所であるが故のメリットもあります……まずは細かな指導が出来るという点。私は大手から独立したのですが、かつていたプロダクションでは私の担当していたアイドルは決められたレッスンをこなすだけ。本人にあった指導というものはありませんでした」
「それは……」
「ついで、仕事が回ってきやすいという点。意外なようですがアイドルが参加する小さな仕事というものはたくさんあります。地域のイベントへの出演オファーですとか、大手が取りたがらないような仕事が」
「……」
「さらに言えば大手ですとそういう仕事が来ても娘さんに来るとは限りません。他にもアイドルがたくさん居ますから。ここならそのような心配はあまり無いかと思います。もしよろしければ他のアイドルのスケジュールをお見せしましょうか?」
以下略 AAS



9:名無しNIPPER
2025/07/31(木) 00:27:17.89 ID:DoK8Vme/0
 時計の針すら聞こえない、永遠に近い沈黙。それを破るように、母親は頭を横に振った。ゴネリルとオールバニ公が同居したような表情であった。

「……それでも、娘をアイドルにすることは出来ません」
「お母さん!」
「来る時にこの会社を少し調べました。契約に関するトラブルを抱えているにも関わらず、資金不足により何も出来ていないようですね」
以下略 AAS



10:名無しNIPPER
2025/07/31(木) 00:28:12.15 ID:DoK8Vme/0
「馬鹿なの?」

 時計の針がやけにうるさく鳴る事務所。曇り空を不満げに眺めながら、この事務所のエースたる姫川友紀は心底馬鹿馬鹿しそうに吐き捨てた。手元のビール缶のことは一旦無視しよう。

「プロデューサー、ほんっと現実論に弱いよねぇ」
以下略 AAS



11:名無しNIPPER
2025/07/31(木) 00:30:45.43 ID:DoK8Vme/0
「……ありすちゃん、欲しい人材やったなぁ」
「うじうじするなら今からでも追っかけていく!プロデューサーも男でしょ!」
「やからあれで押すのは無理やって。実際親御さんの気持ちも痛いほど分かるし、違約金の支払いものらりくらりかわされたままやし」
「えー」

以下略 AAS



12:名無しNIPPER
2025/07/31(木) 00:34:14.87 ID:r9ema6LhO
 それから数日後。俺はある駅に来ていた。本当は使うべきではない情報を使っているのだが、まぁそこはどうとでも言い訳ができる。そのためにわざわざ私服で来ているのだ。
 腕時計を見た。これで8回目ぐらいか。回数とは裏腹に、たった30分しか進んでいない。恋人を待っているような感覚とはこういったものだろうか?ある意味で俺は彼女に恋したと言えるのかもしれないな。ふん。
 売店で買ったコーヒーの底が見えてきた頃、彼女は現れた。

「……あ」
以下略 AAS



13:名無しNIPPER
2025/07/31(木) 00:35:21.96 ID:r9ema6LhO
 彼女の最寄り駅から少し離れた、私鉄の大きな駅のコンコース。光が差し込むベンチは、運の良いことにまるまる1つ空いていた。

「申し訳ない、君をアイドルに出来なくて」
「あっあの、それはもういいんです……あの後、お母さんから沢山怒られましたし」

以下略 AAS



14:名無しNIPPER
2025/07/31(木) 00:35:48.51 ID:r9ema6LhO
「……歌に関わる仕事に就きたいんです」
「いい夢だね。理由を聞いてもいい?」
「歌には力があります。誰かを勇気づけたり、楽しくさせたりする力が。だから、私もそうなりたいんです。なりたいんですけど……」

 輝いていた声がしぼんだ。彼女の家族のことだ、そうやすやすと認めはしないはずだ。
以下略 AAS



15:名無しNIPPER
2025/07/31(木) 00:37:44.14 ID:r9ema6LhO
「で、僕は決めた。君を待つ。アイドルとして輝いたあと、どうやって音楽に関わるか決まるまで」
「!」
「業界を一度見るといい。成功するのはそう難しい話じゃないし、橘さんはまだまだ若い。どう音楽に関わるかを決めるのは、今じゃなくていいんじゃないかな?」
「でも……急がないと。私に才能なんてありませんし」

以下略 AAS



16:名無しNIPPER
2025/07/31(木) 00:38:26.33 ID:r9ema6LhO
 その翌日。俺はとあるカフェに呼ばれていた。目の前には鋭い目つきの女性。出されたコーヒーに手を付ける気になれないと思ったのは久しぶりだ。
 目の前の女性ー橘さんの母親、珊瑚さんは不信感を隠そうともせずに言った。

「何のつもりですか?」
「文字通りの意味です。貴女の腕を見込んでの」
以下略 AAS



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