7:名無しNIPPER[saga]
2025/12/15(月) 02:28:44.28 ID:FdHXE52MO
夜科の友人の坂口、通称サカが夜科の体を抱え起こし、夜科が震える声で言った。
顔色は、見るからに悪い。青白いのを通り越して夜科は土気色の顔をしていた。
坂口「わざわざ説明ありがとう!! しっかりしろ!! 傷は浅いぞ!!!」
8:名無しNIPPER[saga]
2025/12/15(月) 02:32:36.04 ID:FdHXE52MO
三人で話をしながら廊下を歩く。
話す内容は昨日のテレビがどうだっただの、今日の授業はどうだの、他愛の無い物達ばかりだ。
だが悪く無いと、夜科は思う。
9:名無しNIPPER[saga]
2025/12/15(月) 02:35:24.45 ID:FdHXE52MO
夜科が教室の扉を手にかけた。
教室に響く扉の開く音に既に教室の中にいた生徒達は一瞬扉の方を見遣るが、また直ぐにそれぞれの友人たちとの会話などへ帰っていく。
男子生徒の中の夜科達とそれなりに親しい者達は一言二言夜科達に声を掛けた。そしてクラスメート達と挨拶する途中で、夜科はハッと視界に映った物に気付いた。
廊下側から2番目の列、そして後ろからも2番目の席。
10:名無しNIPPER[saga]
2025/12/15(月) 02:37:37.07 ID:FdHXE52MO
雨宮の席の周りに人影は無く、雨宮は一人で本を読んでいた。
文字の羅列から決して目を離す事の無いその姿勢はまるで他人と関わる事を、他人が自分の世界に入って来る事を拒んでいるかのようだった。
もっとも、例え雨宮が本を読んでいなくとも、進んで雨宮と関わろうとする生徒は皆無だっただろう。
それは、雨宮が入学したての4月の上旬に話かけてきた生徒に言い放った言葉による。
11:名無しNIPPER[saga]
2025/12/15(月) 02:38:33.84 ID:FdHXE52MO
雨宮の席の周りに人影は無く、雨宮は一人で本を読んでいた。
文字の羅列から決して目を離す事の無いその姿勢はまるで他人と関わる事を、他人が自分の世界に入って来る事を拒んでいるかのようだった。
もっとも、例え雨宮が本を読んでいなくとも、進んで雨宮と関わろうとする生徒は皆無だっただろう。
それは、雨宮が入学したての4月の上旬に話かけてきた生徒に言い放った言葉による。
12:名無しNIPPER[saga]
2025/12/15(月) 02:41:37.09 ID:FdHXE52MO
その言葉で、雨宮桜子のクラスでの立ち位置は完全に決まってしまった。
話かけてはならない女(アンタッチャブルガール)。
危なげな妄想を内に秘めていて、そしてそんな妄想と現実を区別出来ていない頭のおかしい女だと、そう見なされたのだ。
当然そんな雨宮を気味悪がって近付く生徒は存在しなくなった。
13:名無しNIPPER[saga]
2025/12/15(月) 02:45:02.29 ID:FdHXE52MO
坂口「アゲハ?」
自らの席に荷物を置いて友人たちとの会話に戻ろうとしていたサカは、夜科が自分達とは違う方向へ向かっている事に気付き、声を上げた。
しかしそんなサカの声をも無視して夜科は近付いて行った。
背中を丸め、本を読む雨宮桜子の元へ。
14:名無しNIPPER[saga]
2025/12/15(月) 02:48:23.21 ID:FdHXE52MO
雨宮「なっ、なっ……!」
言葉にならない言葉を、雨宮は顔を赤らめながらに言った。
それは羞恥と言うよりは驚いたための紅潮であったが、夜科はその雨宮の赤みを帯びた顔に一瞬見とれてしまった。
一方で不意に衝撃を食らわせられた雨宮は、まるで睨みつけるが如く夜科を見つめる。
15:名無しNIPPER[saga]
2025/12/15(月) 02:51:33.83 ID:FdHXE52MO
雨宮「おっ……」
夜科「お?」
雨宮「……おっす!!!!!!!!!」
16:名無しNIPPER[saga]
2025/12/15(月) 02:55:00.30 ID:FdHXE52MO
雨宮「あ……ご、ごめん、なさい……」
やってしまったと、直ぐに自分の行動に後悔。
ふと気が付くと先程までの教室のざわめきは姿を潜めシン、と静まり返り、誰もが雨宮を見つめていた。
正確には夜科が雨宮に挨拶した瞬間には静まり返っていたのだが動揺に塗りつぶされている雨宮はそれに気付かない。
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