156:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/01/29(土) 20:32:18.92 ID:Vac5WSOJo
神様でも何でもない、どこにでもいそうな少年。
人よりちょっと運が悪くて、ちょっと特別な力を持っていて、ちょっと面倒な事を抱えてて、
人がよくて、鈍感で、でも妙なところだけ聡くて。
157:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/01/29(土) 20:36:04.92 ID:Vac5WSOJo
でもそれはたった一人が全部の不幸を背負う事と同じだ。
知らない。誰だっけ。そう思ってるのは他ならぬアイツ自身。
周りみんなが知っているのに自分だけが知らない。それでも知ってる振りをしなければ。
失敗は許されない。そうしてしまえば誰かが泣いてしまうから。
158:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/01/29(土) 20:40:26.60 ID:Vac5WSOJo
でも、それは。
「そんな理由で頑張って……余計に辛くなるだけじゃない」
アイツは誰かのために頑張って、必死になって戦って、誰かの不幸を打ち砕くのだろう。
159:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/01/29(土) 20:45:01.25 ID:Vac5WSOJo
それまで必死に頑張ってたのにとうとう涙がこぼれてしまった。
泣き顔なんて見せたくなかったのに。でも一度溢れてしまったものは止められない。
私は必死に自制心を総動員して叫びたいのを堪えて、でもほとんど叫ぶみたいに言葉をぶつけてしまう。
「誰もアンタを見てないじゃない……!」
160:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/01/29(土) 20:50:02.43 ID:Vac5WSOJo
「……」
私はもう言葉を続けられなくなって、俯いて必死に涙を堪えるしかなかった。
最悪だ。勝手にわめき散らすだけわめき散らして後は泣いちゃうんだもん。卑怯すぎる。
これじゃアイツは何も言えなくなってしまう。
161:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/01/29(土) 20:55:20.57 ID:Vac5WSOJo
「どうして――」
……ああ。やっぱりアイツはバカだ。
ここで、この場面でこんな言葉が出てくるあたり掛け値なしの本物のバカだ。
鈍いにもほどがある。そんなの決まってるじゃない。
162:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/01/29(土) 20:59:56.32 ID:Vac5WSOJo
アイツの瞳に映る私はどんな顔をしていただろう。
アイツはしばらく私の顔を見ていて、ゆっくりと目を瞑り、しばらく何かを考えた後、またゆっくりと目を開いた。
アイツはなんだかとても真剣な表情で、でも私にはなぜだかどこか悲痛なものを堪えているように思えた。
163:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/01/29(土) 21:16:04.51 ID:XNZDEY1Lo
今日の分は終わりかな?乙
美琴健気だなあ……続きが気になる
164:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/01/29(土) 21:40:10.91 ID:Vac5WSOJo
辺りはすっかり夕日の色に染まり、なんだか世界が燃えているようだった。
公園に茂る木々の上から覗くビルの屋上で風力発電のプロペラが回るたび、きらり、きらりと光を反射して輝いていた。
左手が持つレモネードの缶はもうすっかり冷めてしまっている。
165:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/01/29(土) 21:45:09.88 ID:Vac5WSOJo
「いいよ」
私は左手に持っていた缶をベンチの上に置き、右手を握るアイツの手に重ねた。
「お願い。胸を張って。アンタは何一つ悪い事なんてしてないじゃない」
166:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/01/29(土) 21:50:20.42 ID:Vac5WSOJo
「私は言い続けるよ」
ハリネズミは触れてしまえば確かに痛みを伴うだろう。
でもね。一人じゃあまりに寂しいよ。
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