過去ログ - モダンブレイバー 〜三人のこと〜
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2011/03/29(火) 19:21:06.82 ID:EKtKGndpo
勇者と魔王。
そんな単語を口にできるのは小学生まで。俺はそう思う。成人する年になればそんなもの、つぶやくだけで恥
ずかしい。
たとえ子供のころそういった類のゲームに夢中になっていたとしても、だ。
勇者。
人民を苦しみから救済する英雄。
魔王。
人民を苦しみに叩き込む悪魔の化身。
それは、たかだか一人の人間に左右される過去の小さな、あるいは架空の世界の話。現代の世界にはそんな者
が存在できる訳もなく。日常はただ平坦に過ぎていく。
それを幸福と見るか不幸と見るかは別の話で、その事実は揺らぎはしない。
そう、それは過去の、あるいは架空の世界の話。
そのはずだった。
「汝に力を与える」
俺はぽかんと目の前に立つ人影を見つめていた。
どこまでも続く光の世界の中、しかしその姿は光にかすむことはなく。
「それでもって世の不幸を打ち払え」
それは天使だったのか、あるいは神だったのか。
ならば俺は死んでしまったのか。
誰かが答えてくれるはずもなく。
ただ平坦に過ぎる日常が、俺をそちらに引き戻す。
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2011/03/29(火) 19:22:14.13 ID:EKtKGndpo
モダンブレイバー 〜三人のこと〜
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2011/03/29(火) 19:22:49.95 ID:EKtKGndpo
to be continued...
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2011/03/29(火) 19:27:26.98 ID:EKtKGndpo
フラッシュ作品アンブレラファイターに感銘を受けたため筆をとる。オマージュ
雰囲気はその作品に近いものとなる
いわゆる能力バトルものではない
見切り発車
また次回
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2011/03/30(水) 00:17:10.41 ID:9b91y1IMo
規則正しい揺れだった。退屈な日常を代弁しているかのようなそれに俺は身を任せる。肩かけのスポーツバ
ッグも合わせて小さく揺れていた。
朝の電車はすかすかだった。それほど早い時間というわけでもない。今は夏休みだから、普段乗客の大部分
を占める学生が激減している。
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2011/03/30(水) 00:22:17.31 ID:HEW5kM5SO
期待
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2011/03/30(水) 00:26:33.65 ID:9b91y1IMo
俺の所属する野球サークルは特別熱心だというわけではない。夏休みにも有志で活動はするが所詮お遊びの
サークル。中には目的があって熱心に身体を鍛える者もいないではないが、「いないではない」程度。大会に
出るわけでもないのに鍛錬する馬鹿はとりあえず変人のレッテルをはられる。俺のように。
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2011/03/30(水) 00:37:41.27 ID:9b91y1IMo
今年はサークルの新入生が多かった。夏休みの練習に参加する酔狂も多かった。練習試合ができる、という
ことだ。
外野の一ポジション――適当だ――につき、適当に集中する。
たまに飛んでくるボールを追いながら、意外に暇な脳みそは考え事を始める。
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2011/03/30(水) 00:50:43.17 ID:9b91y1IMo
……真っ白な世界が広がっていた。
どこまでもどこまでも続く純白。光があふれているようでもあり、ただ白いペンキが塗られているだけのよう
でもあり。
俺はぽかんとしてそこにいた。
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2011/03/30(水) 00:54:30.85 ID:9b91y1IMo
to be continued...
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/03/30(水) 19:04:06.51 ID:9b91y1IMo
冷たい感触に俺は飛び起きた。
はっとしてまわりを見回す。全体的に白っぽい部屋。しかし、先ほどの白さには到底及ばない。
馴染みはないが見覚えはある場所。
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2011/03/30(水) 19:04:58.31 ID:9b91y1IMo
「お前は幸せか?」
戻ってきたそいつは、その問いにきょとんと瞬きした。
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2011/03/30(水) 19:05:47.35 ID:9b91y1IMo
『世の不幸を打ち払え』
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/03/30(水) 21:06:43.68 ID:9b91y1IMo
再び俺は電車に揺られていた。特に異常もなかったものの念のため早退。そういうことになった。
別に特別野球が好きなわけじゃない。身体を鍛えることにしか興味はない。だから気にせずとっとと大学を出
てきた。
ボックス席にスポーツバッグと一緒に身体を押し込み、窓の外を何の気もなしに眺めていた。
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/03/30(水) 21:11:41.43 ID:9b91y1IMo
「……ハムスター?」
思わず声が漏れる。少女が顔を上げ、濡れた瞳とぶつかった。
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/03/30(水) 21:21:23.80 ID:9b91y1IMo
「可愛がってたんですよ。両親は動物嫌いですが、なんとか説得して許可してもらって。とっても大切にしてきたんです」
「……」
「なのに、なんで……」
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/03/30(水) 21:31:27.42 ID:9b91y1IMo
途端、俺は後悔した。
手の中にあるのは、まぎれもなく死の重みと温度だったから。
重く冷たく。そこに何かの救いが入る余地はなかった。
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/03/30(水) 21:36:24.93 ID:9b91y1IMo
ピクリとしたそれは、再びピクリ、と自己主張した。
「……?」
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/03/30(水) 21:37:12.51 ID:9b91y1IMo
to be continued...
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/04/01(金) 05:51:49.01 ID:oA15g2f/o
不幸とはすなわち欠落だ。
あってしかるべきものがそこにないこと。それが不幸だ。
欲していたものがそこにないこと。それも不幸だ。
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/04/01(金) 05:53:18.40 ID:oA15g2f/o
病院の屋上には、それなりに強い風が吹いていた。
俺はフェンスに寄りかかり空を見上げた。
夏の雲が、底抜けに高い昼の空を滑って行くのがよく見える。
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