過去ログ - かがみ達は深い霧に囚われたようです
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112:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/07/31(日) 00:51:34.48 ID:xm2Rv5pmo
『312』と彫られた金属のプレートが乳白色の扉に取り付けられている。
何度見ても、この扉から放たれる重々しい威圧感には慣れることができない。
泉さんがドアを開き、私が化物に対処するためにドア横で消火器を構え、みなみさん・つかささん・小早川さんは不測の事態に備えて後方で待機。
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2011/07/31(日) 00:52:38.31 ID:xm2Rv5pmo
「―――ひゃん!」
不意に首筋に冷たいものが触り、私は小さく悲鳴を上げた。
首元を確認すると、泉さんの小さな指が私の首に触れている。
114:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/07/31(日) 00:53:51.95 ID:xm2Rv5pmo
泉さんが改めてドアノブを掴み、私は消火器を構える。
先程のように合図を交わすと、彼女はゆっくりと右手をひねっていく。
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2011/07/31(日) 00:54:30.70 ID:xm2Rv5pmo
それからの数十秒のこと。生涯私の記憶から消えはしないだろう。
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2011/07/31(日) 00:55:50.58 ID:xm2Rv5pmo
少しだけ開いた隙間から腕が伸び、泉さんの手首を掴む。
蝋のように白く、痣のような青黒い斑点が散らばる、幽鬼のような左手。
そう、それが左手であったことすら、鮮明に脳に刻み込まれた。
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2011/07/31(日) 00:57:17.91 ID:xm2Rv5pmo
「やだ! 痛い! 痛いよ!」
彼女はもう肩まで室内に吸い込まれている。
小早川さんとみなみさんが、彼女の左手を掴んでいた。
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2011/07/31(日) 00:58:16.06 ID:xm2Rv5pmo
脳は芯まで冷たくなりながらその光景を克明に記憶していく。
私は痛む胸を押さえ、無理矢理に呼吸をして、彼女へ歩を進める。
私が助けるべきその人の名前を、うわごとのように吐き出しながら。
彼女に触れられた唇から、彼女の名前をこぼしながら。
119:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/07/31(日) 00:59:27.94 ID:xm2Rv5pmo
その指は、私の掌から虚しくすり抜けていった。
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2011/07/31(日) 01:01:16.12 ID:xm2Rv5pmo
彼女は悲鳴の残響だけを残して室内へ引き摺り込まれ、閉じられた扉からは鍵を下ろす冷たい金属音が響く。
私はただ呆然と扉の前に座り込む。
掌にはすり抜けていった指先の感触がじんわりと残り、網膜には引き摺り込まれる瞬間の彼女の瞳の色が焼き付いていた。
121:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/07/31(日) 01:02:21.09 ID:xm2Rv5pmo
誰かのすすり泣きが響く中で、私の頭の中では彼女の最期が幾度も繰り返されていた。
いっそ気が狂ってしまったほうが、どれほど楽になれるだろう。
何がいけなかったのか。
122:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/07/31(日) 01:04:36.63 ID:xm2Rv5pmo
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