37:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/29(月) 11:46:45.58 ID:PjuOVipoo
自分の中で落ち着き始めていた劣等感が、またうねり始めたのを彼は感じた。
帰りのバスのなかで、彼は文庫本を広げたが、目が滑っているかのように文章の意味が頭に入ってこない。
落ち着かない気持ちで、自分以外に乗るもののいない車内を見回す。
居場所のない感覚、社会に対する非属感が、また鎌首をもたげてきた。
何もかもやめてしまおうかと、また考える。
さっきまでの由来の知れない充足感は消えうせ、彼にはもう、世界のすべてが無意味に思えて仕方なかった。
とにかく、この世のすべてが、自分を悩ませる種でしかなく、楽しいことなどひとつもないのだ。
どこにいたっていつも不安に駆られるし、将来を絶望視して死んでしまいたくなる。
ふとした瞬間、他の人間はなんとも思わないような場面で、けれどそれは現れる。
悲しいのではなく、苦しいのではなく、疲れたわけでもなく、ただ彼には、楽しく思えることが何もなかったのだ。
バスから降りて自宅に帰る途中で、彼は泣き出したい気持ちになった。
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