38:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/29(月) 11:47:11.96 ID:PjuOVipoo
家についてから階段を駆け上がり、また自室に篭る。鍵を噛ませて、床に荷物を投げ捨ててベッドの上に体を投げ込む。
ことあるごとに、この不安は身を貫くように暗い穴倉から這い出してくる。
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2011/08/29(月) 11:47:38.55 ID:PjuOVipoo
夕方を過ぎると、仕事が早く終わったらしい姉が帰ってきた。
なんとなく誰かに会いたい気持ちになって、彼がリビングに降りると、姉は冷蔵庫からジュースを取り出していた。
姉は彼の表情を見て、何かを察したのか、不審そうに眉をひそめた。
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2011/08/29(月) 11:48:05.20 ID:PjuOVipoo
本でも読もうかとページをめくるが、やはり頭には何も入ってこない。
ぐるぐると堂々巡りを続けている。これはひょっとして、ずっと続くのではないだろうか。
仮に社会復帰できたとしても、また何かが起これば、すぐにこうして部屋にこもりたくなるのではないか。
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2011/08/29(月) 11:48:36.16 ID:PjuOVipoo
――本当に?
頭の中で自分を疑う声がした。耳を貸すな、と彼は胸中で呟く。
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2011/08/29(月) 11:49:12.21 ID:PjuOVipoo
「俺は確かに怠惰だった。苦労を背負うのが嫌で、全部投げ出した。でも、これはなんだ?」
あるいは、自分が思っているほど、現状は絶望的ではないのだろうか。
誰でも簡単に抜け出せるような場所なのか。それとも、こんなのは問題にすらならないのだろうか。
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2011/08/29(月) 11:49:42.67 ID:PjuOVipoo
絶対に、自分のせいじゃない。
でも、現状から抜け出そうとするならば、自分が労力を負わなければならない。
苦労してまで、あのわずらわしい社会に回帰する理由はあるだろうか?
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2011/08/29(月) 11:50:11.16 ID:PjuOVipoo
どうすればいいのだろうと、脳裏に再び言葉が過ぎった。
叫びだしたい衝動を抑え付け、彼は歯を食いしばった。
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2011/08/29(月) 11:50:37.58 ID:PjuOVipoo
思考というのはそういうものなのだと彼は感じた。
考えているそのときは理路整然として正論であるかのように見えるが、客観視すると大抵の場合は矛盾を孕んでいる。
とにかく、理屈を考えるには、時間を置くことが必要なのだ。
46:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/29(月) 11:51:04.40 ID:PjuOVipoo
つづく
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2011/08/30(火) 15:19:34.66 ID:qI3zpfXyo
◆
――恐れ。
48:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/30(火) 15:20:15.92 ID:qI3zpfXyo
ただ不安と恐怖だけが体を支配している。
何かを失ってしまった、と彼は思った。
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