過去ログ - 男「だったら俺が悪いのかよ!」
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61:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/31(水) 19:20:44.43 ID:mBLofP+Zo

 実地を終えて待合室に戻る。窓から茜色の日差しが差し込んでいた。
 冬の空は膜がかかったようにぼんやりとしていることが多いが、今日はいやにさわやかな晴れ空だと彼は感じた。

 そういえば先日、初雪が降ったことを思い出す。寒さはより深刻になっていく。積もれば運転にも支障が出るかもしれない。
以下略



62:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/31(水) 19:21:10.41 ID:mBLofP+Zo

 ハルノはムラサキと仲の良かった女子で、けれどムラサキとは違い、男子に対しても積極的に話しかけるタイプだった。
 彼女は隣に座るムラサキとは違い、高校の制服ではなく、普段着だった。
 そのことが彼をなんとなく不安にさせる。なぜ普段着なのだろう。高校に通っていれば制服を着ているはずだ。
 単に着替えてきただけなのか、私服登校の学校なのか、あるいは……あるいは。
以下略



63:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/31(水) 19:21:47.37 ID:mBLofP+Zo

 たった二年、三年の間とはいえ、人は充分に変化できるものであるはずだ。 
 ムラサキも、ヤマトも、アキラも、ハルノも、皆そうであるはずだし、彼自身もまたその余地があるはずだった。

 それなのにこれはなんだろう? 三年という時間は短くない期間であるはずだ。にも関わらず、誰も変化していない。
以下略



64:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/31(水) 19:22:14.87 ID:mBLofP+Zo

 彼女たちふたりに混ざり、たわいも無い世間話をする。何の意味も無い会話の中に、ふとした変化が潜んでいる。
 みんなそうだ。一見しただけでは分からない。けれど離れて、再び近付いたときになって気付く変化を隠し持っている。

 けれど、それは本当に変化だろうか? 些細な変化。だってそれは絶対的な変化ではないのだ。
以下略



65:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/31(水) 19:22:50.85 ID:mBLofP+Zo

 体調が悪いのかも知れない。頭が上手に働かない。

 疲れているのだろうか、と彼は考えた。
 そう、疲れているのだ。ここのところは冷え込みが激しく、夜も寒さで目覚めることがある。
以下略



66:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/31(水) 19:23:21.37 ID:mBLofP+Zo

 ――緊張? 彼はそれに気付いて違和感を抱いた。なぜ緊張しているのだろう。ムラサキといるからだろうか?
 ムラサキといると、どうして自分は緊張するのだろう。

 なぜ? 異性と話す機会に恵まれなかったからだろうか。そういえば家族以外の人間と話すのは久しぶりなのだ。
以下略



67:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/31(水) 19:23:47.94 ID:mBLofP+Zo

 ヤマトは彼の隣に座るムラサキに気付き、奇妙な表情になった。意外そうとも取れるし、納得したようにも見える。

 一瞬後、ヤマトは表情を崩し、明朗な笑顔でムラサキに話しかけた。

以下略



68:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/31(水) 19:24:18.79 ID:mBLofP+Zo

 未知の感覚が、彼の胸中で渦を巻き始めた。これはなんだろう。劣等感に近いものだ。でも違う。
 嫉妬――そう、嫉妬だ。彼はヤマトに嫉妬している自分に気付いた。
 友人が多く、快活で人気者で、物怖じせず、リーダーシップを発揮する。いつも輪の中心にいる人気者。 

以下略



69:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/31(水) 19:25:13.51 ID:mBLofP+Zo

                   ◆

 
 また、夜の街にいた。彼は肌寒さを掻き分けるように歩いている。
以下略



70:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/31(水) 19:25:57.52 ID:mBLofP+Zo

 大抵の人は努力をしたくないし、嘘をつくし、なぜ生きているのか分かっていない。
 大多数がそうなのだから、そのバンドが共感を呼ぶのは当然のことだ。

 努力をすれば夢は叶うかもしれない。でもそれは面倒なのだ。だから努力をしても無駄だ、ということにしておく。
以下略



71:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/31(水) 19:26:23.85 ID:mBLofP+Zo

 記憶が不意に蘇る。
 
 劣等感、嫉妬、羨望。あいつはいつでもそうだ、と彼は思う。
 自分が必死になっても手が届かないものを、いつも簡単に手に入れてしまう。
以下略



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