64:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/31(水) 19:22:14.87 ID:mBLofP+Zo
彼女たちふたりに混ざり、たわいも無い世間話をする。何の意味も無い会話の中に、ふとした変化が潜んでいる。
みんなそうだ。一見しただけでは分からない。けれど離れて、再び近付いたときになって気付く変化を隠し持っている。
けれど、それは本当に変化だろうか? 些細な変化。だってそれは絶対的な変化ではないのだ。
65:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/31(水) 19:22:50.85 ID:mBLofP+Zo
体調が悪いのかも知れない。頭が上手に働かない。
疲れているのだろうか、と彼は考えた。
そう、疲れているのだ。ここのところは冷え込みが激しく、夜も寒さで目覚めることがある。
66:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/31(水) 19:23:21.37 ID:mBLofP+Zo
――緊張? 彼はそれに気付いて違和感を抱いた。なぜ緊張しているのだろう。ムラサキといるからだろうか?
ムラサキといると、どうして自分は緊張するのだろう。
なぜ? 異性と話す機会に恵まれなかったからだろうか。そういえば家族以外の人間と話すのは久しぶりなのだ。
67:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/31(水) 19:23:47.94 ID:mBLofP+Zo
ヤマトは彼の隣に座るムラサキに気付き、奇妙な表情になった。意外そうとも取れるし、納得したようにも見える。
一瞬後、ヤマトは表情を崩し、明朗な笑顔でムラサキに話しかけた。
68:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/31(水) 19:24:18.79 ID:mBLofP+Zo
未知の感覚が、彼の胸中で渦を巻き始めた。これはなんだろう。劣等感に近いものだ。でも違う。
嫉妬――そう、嫉妬だ。彼はヤマトに嫉妬している自分に気付いた。
友人が多く、快活で人気者で、物怖じせず、リーダーシップを発揮する。いつも輪の中心にいる人気者。
69:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/31(水) 19:25:13.51 ID:mBLofP+Zo
◆
また、夜の街にいた。彼は肌寒さを掻き分けるように歩いている。
70:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/31(水) 19:25:57.52 ID:mBLofP+Zo
大抵の人は努力をしたくないし、嘘をつくし、なぜ生きているのか分かっていない。
大多数がそうなのだから、そのバンドが共感を呼ぶのは当然のことだ。
努力をすれば夢は叶うかもしれない。でもそれは面倒なのだ。だから努力をしても無駄だ、ということにしておく。
71:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/31(水) 19:26:23.85 ID:mBLofP+Zo
記憶が不意に蘇る。
劣等感、嫉妬、羨望。あいつはいつでもそうだ、と彼は思う。
自分が必死になっても手が届かないものを、いつも簡単に手に入れてしまう。
72:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/31(水) 19:26:50.41 ID:mBLofP+Zo
これはやっぱり夢なんだろうと彼は思った。こんなにも恐怖を感じることはない。
誰も彼に興味を持つことなく、ただ行き交っていく。そこに確かなものなんて何もないように思えた。
頭痛が強まる。自分はいったい何をこんなに恐れているのだろう。
73:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/31(水) 19:27:16.57 ID:mBLofP+Zo
ふと、ムラサキのことを考えた。
彼と話したときのムラサキの表情。それは彼にとって、なんとなく、とても据わりが悪いものだ。
でも、あいつなら……あいつなら、彼女はもっと別の表情を見せるのだろうか。
132Res/141.53 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。