53:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 01:18:23.64 ID:CGXDMCHp0
圭介は少し沈黙してから、言った。
「嫌だね。一度依頼された治療は必ず行う。それが俺の方針だよ」
「汀ちゃんを見ろ。負担がかかりすぎてる。この患者の治療をするには、十三歳では難しすぎると私は思うがね」
54:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 01:19:18.17 ID:CGXDMCHp0
*
汀が目を覚ました時、丁度圭介が点滴を替えているところだった。
汀は起き上がろうとして、体に力が入らないことに気がつき、息をついてベッドに体をうずめる。
55:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 01:20:22.38 ID:CGXDMCHp0
「お前、覚えてないだろうけど、昨日の夜かなり具合が悪かったんだ。どの道、クスリ飲んでたから話は出来なかったと思うよ」
「せんせ、ここに入ってきたの?」
「ああ」
56:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 01:21:01.65 ID:CGXDMCHp0
そして首を傾げる。
「誰?」
「覚えてないならいいんだ。今回の患者だ」
57:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 01:21:53.23 ID:CGXDMCHp0
*
「……そうか。一緒に遊んだ記憶が飛んだか」
赤十字病院の一室で大河内がそう言う。
58:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 01:22:53.79 ID:CGXDMCHp0
壁のスピーカーから彼女の声が聞こえる。
圭介は、壁に取り付けられたミキサー機のような巨大な機械の前に腰を下ろすと、そのマイクに向けて口を開いた。
「説明したとおり、その患者は普通の患者じゃない。重度のアルツハイマー型痴呆症にかかってる。普通の人間と精神構造が違うから、注意してくれ」
59:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 01:23:57.94 ID:CGXDMCHp0
*
汀は、古い日本家屋の中に立っていた。
床に、立っていた。
60:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 01:24:36.11 ID:CGXDMCHp0
「ダイブ完了。でも、良くわかんない」
『分からないってどういうことだ?』
「煉獄に繋がる通路じゃないみたい。トラウマでもないし。普通の、通常心理壁の中みたいだよ」
61:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 01:25:31.61 ID:CGXDMCHp0
「訂正。通常心理壁じゃない。ここ、異常変質心理壁だ。H型だね」
『知ってる。そこから出れるか?』
「何で知ってるの?」
62:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 01:26:30.67 ID:CGXDMCHp0
上下がさかさまになった空間の外で、下から上に、血の雨が降っている。
それは途端に土砂降りになると、たちまちゴーッという耳鳴りのようなスコールに変わった。
汀の頭の上で、床下浸水したかのように、溜まった生臭い血液が、家屋の中に進入してくる。
狭い部屋の中、血液の波は一気にタンスやテレビを飲み込んだ。
テレビの電源が勝手につき、そこからけたたましい笑い声……男性の、引きつった痙攣しているような声が響き渡る。
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