82:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 21:54:40.27 ID:CGXDMCHp0
「どうして?」
「クライアントのたっての希望だからだ」
そう言って、圭介は小白の首の皮をつまみあげた。
83:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 21:55:23.71 ID:CGXDMCHp0
圭介の言葉を打ち消して、汀は大声を上げた。
こうなってしまっては、彼女は頑固だ。
圭介は一瞬、彼女を怒ろうと口を開いたが、すぐにそれを閉じた。
そして考え直して言う。
84:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 21:56:23.63 ID:CGXDMCHp0
*
「遅くなりました」
圭介が車椅子を押しながら、長テーブルが置かれた広い会議室に足を踏み入れる。
85:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 21:57:15.08 ID:CGXDMCHp0
「あの……マインドスイーパーというのは……」
「あそこにいる白髪の子供です」
「そんな……まだ、小さな……」
86:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 21:58:05.04 ID:CGXDMCHp0
「私知ってる。この人、この前死刑判決が出た人だ」
汀の細い声を聞き、喪服の女性が老人達を見る。
老人達は、汀の手の中で眠っている猫を見て、不快そうな顔をしていた。
87:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 21:58:48.18 ID:CGXDMCHp0
「意外だな。もう少し話を聞かなくてもいいのか?」
「お受けすると言っただけです。それ以上でもそれ以下でもありません」
圭介はそこで息をついて、資料を見終わったのか、目の前に放った。
88:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 21:59:49.37 ID:CGXDMCHp0
彼はそう言って資料を開いた。
「患者は、中島正一。二十八歳。無職。知っての通り、先日死刑判決が出た。最高裁への上告は、棄却されている」
圭介は興味がなさそうに、手を組んで言った。
89:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 22:01:00.81 ID:CGXDMCHp0
「分かっている。こちらの秋山女史たっての希望だったのだ」
老人に促され、秋山と呼ばれた喪服の女性は、頷いて、潤んだ目を圭介に向けた。
「……娘は、中島に拷問され、殺されました」
90:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 22:02:17.67 ID:CGXDMCHp0
「…………」
「これ以上理不尽なことってありますか? ありませんよ、ええありませんとも! 法の鉄槌を下したくて、何が悪いんですか!」
女性の声がしばらく会議室に響き渡っていた。
91:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 22:03:18.28 ID:CGXDMCHp0
切り捨てられ、秋山は呆然とその場に立ち尽くした。
そこで議席の老人が咳払いをし、圭介を見た。
「高畑医師。口が過ぎる」
92:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 22:03:56.61 ID:CGXDMCHp0
「それでは、この子は一旦退席させます。秋山さん、マインドスイーパーに余計なことを吹き込もうとするのは、規定違反です。罰則を受けていただきます」
秋山が、一瞬間をおいてから、怒りで顔を真っ赤にする。
「何を……」
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