過去ログ - 禁書「イギリスに帰ることにしたんだよ」 上条「おー、元気でなー」
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981: ◆ES7MYZVXRs[saga]
2014/05/01(木) 02:47:25.41 ID:wiguRyO8o

「俺、強くなったから……どんな奴が相手だろうと、全部残らず、一人残らずぶっ飛ばしてお前を守れるから!
 ここに留まるのが難しいなら、一緒にどこだって、地獄の底にだってついて行くから!!
 そうだ、このまま学園都市を出ちまおうか。夜の方がまだ逃げやすいだろうし、タイミング的にはここしか……」

「…………」

「だから……」

「…………」

「…………」

物音一つしない、完全な沈黙が辺りを包む。

インデックスは、どんな表情をしているのだろうか。
今の自分は、どんな表情をしているのだろうか。

上条は瞑目し、何も言えなくなってしまった。

本当は分かっている。
自分が言っている事は、ただの子供のワガママに過ぎない。
そして、今までと同じようにそのワガママを押し通す事ができない事も、分かっていた。

それは何より、彼女が望まない事だから。

もう少し、時間が経てば大丈夫なのだろうか。
現にこうした沈黙は、徐々に上条を冷静にさせていく。
先程までの熱は、現実という冷気によって失われていく。

これがもっと長い時間になれば。
この辛い想いさえも、だんだんと和らいでいくのだろうか。
あんな事もあったな、と。軽く笑って話せるようになるのだろうか。

ただ、それはなんだか寂しくて。
上条は目を伏せ、やっぱり沈黙を貫くしかない。

すると。


「……来月になれば、暖かくなるのかな」


優しい声が、背後から聞こえる。

なんだか久々に彼女の声を聞いたような気がした。
包み込むようなその声に、こんな時でも落ち着いていくのを感じる。
単純なものだが、それだけで胸に暖かいものが巡っていく。

「……そうだな、とりあえず今月を越えれば暖かくなるって天気予報で言ってた気がする」

「そっか……私ね、桜が楽しみなんだよ。やっぱり日本の春と言えば、桜の下でお花見だよね。あとお団子とか」

「最後に付け足されたやつが一番の目的なんじゃねえの、インデックスさんは」

「むっ、そんな事ないかも。私だって日本の趣深さをしみじみと感じる事くらいするんだよ。
 あ、だからといって、お団子がいらないっていうわけじゃないけどね」

「はは、イマイチ説得力ねえな……けど、花見ってのも結構大変なもんらしいからな。まず、場所取りから凄まじい戦いらしいし。
 まぁ、その辺りは土御門に相談すれば、何か妙なコネ使ってどうにか融通してくれそうな気がするけどさ」

「うん、確かにイベント事にはとっても強いよね、あの人」

「あぁ……ただ、アイツには毎回毎回とんでもねえ事に引っ張り回されたりしてるからな。そのくらいはこき使ってやらねえと。
 だから安心して、夏には海とか花火、秋は紅葉、冬はまたスキーに挑戦してもいいし、とにかく遊びまくろうぜ」

「ふふ、とっても楽しみなんだよ」

頭の中にはその光景が浮かんでくる。
それはとても幸せなもので、とても輝いていた。

理想は美しいものだ。
遠くにあるからこそ、より一層その美しさは際立つ。
近付く事は難しい。それは今の自分の位置を知る事になるから。

でも、上条は近付きたいと思った。
理想との距離を知る事になっても、手を伸ばしたかった。

だから。



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