47: ◆eZUHOxTppE[saga]
2012/01/15(日) 21:14:54.84 ID:bIt6DJVy0
彼女はもう片方の手も伸ばして、私を引き留めようとしている。
この状況で、この仕草。私はみるみるうちに力が抜けて行くのを感じた。
「え、や、ちょっ・・・歳納、京子ぉ・・・」
48: ◆eZUHOxTppE[saga]
2012/01/15(日) 21:16:20.14 ID:bIt6DJVy0
「・・・。」
「・・・・・・・。」
49: ◆eZUHOxTppE[saga]
2012/01/15(日) 21:17:30.70 ID:bIt6DJVy0
「ゆいぃ・・・行かないで・・・」
「・・・・・・・・・・。」
50: ◆eZUHOxTppE[saga]
2012/01/15(日) 21:18:39.34 ID:bIt6DJVy0
思考が止まらない。
私には今、この手を握る事しかできない。
51: ◆eZUHOxTppE[saga]
2012/01/15(日) 21:21:05.72 ID:bIt6DJVy0
結局私は、夕方近くまでベッドの側で、寝ている歳納京子のタオルを替えたりおかゆを食べさせたりと、フルタイムで働いてしまった。
千歳にはメールを入れて、こういう事情で学校は休むという事を伝えた。
[件名:なし]
52: ◆eZUHOxTppE[saga]
2012/01/15(日) 21:22:39.68 ID:bIt6DJVy0
それに、いつもは私が照れてばかりで歳納京子と実のある会話をした事がなかったような気がした。
例えば、食べ物は何が好きか、とか、彼女の趣味(同人誌も含めて)とか、そういった“普通の”会話をしたのも、ほとんど初めてだったような気がした。
その点については1年以上同じクラスにいるのに、と自分のふがいなさを呪うばかりだ。
53: ◆eZUHOxTppE[saga]
2012/01/15(日) 21:23:44.57 ID:bIt6DJVy0
「それともぉ、綾乃ちゃんはわたちと離れたくないんでちゅか〜?」
「バッ、バカッ! 何言ってんのよ!」
54: ◆eZUHOxTppE[saga]
2012/01/15(日) 21:24:24.82 ID:bIt6DJVy0
辿り着いた自宅の玄関を開けると、そこには仁王立ちのお母さんが待っていた。
「お・か・え・り。今日、学校から電話があってね・・・」
55: ◆eZUHOxTppE[saga]
2012/01/15(日) 21:25:26.42 ID:bIt6DJVy0
昨日から今に至るまで、なんだかあっという間だった。
朝、千歳と登校してから、歳納京子のお見舞いに行こうという話になって、いつの間にか同人誌の手伝いをしていた私。
それが終わったと思ったら、今度は本当に歳納京子が熱を出してしまって私が看病して。
歳納京子が私の手を握って。
56: ◆eZUHOxTppE[saga]
2012/01/15(日) 21:26:02.84 ID:bIt6DJVy0
*
57: ◆eZUHOxTppE[saga]
2012/01/15(日) 21:27:44.90 ID:bIt6DJVy0
翌日の朝、空模様は昨日までと打って変わっての曇天だ。
今日は週の真ん中で、私は何となく重たい気分で空を見上げていた。
歳納京子は無事に学校に出てこられるのかしら。
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