過去ログ - 少女「ずっと、愛してる」
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218:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/11(土) 19:08:34.50 ID:87ru5DuQ0
「大変?」

「だろ?」

「大変じゃないよ」
以下略



219:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/11(土) 19:09:06.16 ID:87ru5DuQ0
相当精神的にも肉体的にも疲労しているらしい。正直、ゼマルディからしてみても有頂天になっていたため、それが閉塞空間で囲われている少女の体力にどんな影響を与えるのか、それを推し量ってはいなかった。
何しろ五年以上前から狙っていた女の子なのだ。自分には到底届かないような高嶺の花だと思っていた。実際にそうだ。こうして喋っているところを他の誰かに見られれば、自分は黒い一族からの討伐隊にたちどころに駆除されてしまうだろう。
そう。
だからこそ……。
ゼマルディは真っ青になりながら、ルケンの花をチラチラと見ていた。その視線にやっとカランが気づき、不思議そうに口を開いた。
以下略



220:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/11(土) 19:09:35.19 ID:87ru5DuQ0
生返事を返す。それをカランは、彼が苛立っている証拠ととったらしい。

「触りたくないんだよ」

慌ててそう言って、彼女はコップを手にとってルケンの花を突き出した。
以下略



221:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/11(土) 19:10:12.74 ID:87ru5DuQ0
「どこか遠くのところに……」

「……」

「お願い……」
以下略



222:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/11(土) 19:10:42.15 ID:87ru5DuQ0
硬直しているゼマルディに気づいていないのか、カランは疲れきった顔で目を閉じた。そして、よほど疲弊していたのか、何分も経たずにゼマルディの手を握りながら寝息を立て始める。
その手は、異常なほど冷たかった。体力が著しく低下しているせいがあるんだろう。事実、彼女の部屋の隅に丸められたシーツはほぼ血みどろの様子を呈していた。ここで行った羽生やしの儀式は、予想を遥かに超えて血を奪ったのだ。それに加えて無茶な動き、そしておそらくは大して食事を行っていないことで回復をしていないのだ。
左手でコップを握りながら、ゼマルディは小さくて柔らかい手をそっと外し、折れんばかりに歯を噛み締めた。

――俺は。
以下略



223:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/11(土) 19:11:11.09 ID:87ru5DuQ0
一目惚れとでもいうのだろうか。
それとも、運命とでもいうのだろうか。
あの腐った下層からこの子を見た瞬間、自分のことを救ってくれるのは彼女だけだと理由なき確信をした。
そう。
理由はないけど。
以下略



224:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/11(土) 19:11:46.88 ID:87ru5DuQ0
ここでルケンの花を置き去りにして逃げるのは容易かった。でも、それをしてしまったら。
彼女の願いを打ち払ってしまったら。
本当にこの子は、味方が誰一人といなくなってしまう。それは昨日、今日とストーカーのように花を通して気配や状況を感じたことによる一つの結論だった。
この子は今、自分を支えにして生きている。本当にそれだけなのだ。
折ることは出来ない。
以下略



225:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/11(土) 19:12:12.29 ID:87ru5DuQ0
俺に。
捨ててこいというのか。

正気の沙汰ではなかった。
ルケンの侮蔑を含んだ、見下すような視線を思い出す。あのクソガキの目を思い出す。
以下略



226:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/11(土) 19:12:40.57 ID:87ru5DuQ0
できる、わけがない。

無理だ。
無理だよ。

以下略



227:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/11(土) 19:13:27.68 ID:87ru5DuQ0
ゼマルディは発しかけていた滓のようなドス黒いものを、必死に喉の奥に飲み込んだ。そして何度か深呼吸をし、コップに入っている赤い花に目をやる。

――捨てるだけだ。

そう、捨てるだけ。
以下略



228:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/11(土) 19:14:26.49 ID:87ru5DuQ0
8 顔焼き

 目が覚めた時、そこにゼマルディはいなかった。カランはもぞもぞと毛布の中で動き、しっかりと掴んでいたはずの手に暖かさがないのを、ぼんやりと瞳を開いて見つめていた。

――夢。
以下略



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