過去ログ - 少女「ずっと、愛してる」
1- 20
252:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/11(土) 19:27:04.79 ID:87ru5DuQ0


 目が覚めたとき、そこに彼はいた。
体には血で点々とコーティングされたマントを羽織り、肩を落としてその場に座っていた。細く、断続的に息をしている。
言葉を失った。
以下略



253:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/11(土) 19:28:24.12 ID:87ru5DuQ0
本当に、そこには何もなかった。
包帯には血がにじんでいるものの、あふれ出したりはしていないようだ。歯で噛んで結び目をつくり、彼は左手を何度か握って開いてを繰り返してから、額の脂汗を拭った。
彼は、ピエロのようなマスクをつけていた。丁度右半分を覆い隠すような、薄汚れてヒビが入った……何処から見つけてきたのかというくらい古い半面マスクを、ボロボロのゴムで顔に固定している。彼が加工したのか、それは右半分の頭頂部までを覆うような構造になっていた。
……彼の高い鼻。そして左目の下まで、何かゴムが溶けたような傷跡が広がっていた。ピンク色にミミズを連想とさせる痕が走っている。唇も、上の部分が変な形に癒着しているのが見て取れた。
彼はまた大きく息をつくと、カランが常備していた水差しを手に取り、中身を一気に口の中に流し込んだ。そしてむせて何度か咳をした後、青白い顔で停止しているカランの方を向く。


254:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/11(土) 19:28:57.08 ID:87ru5DuQ0
マントで綺麗になくなっている右腕をサッと隠し、彼はまだ小さく震えている左手を伸ばし、そしてカランの手を強く握った。

「おう……どうした?」

「……」
以下略



255:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/11(土) 19:29:27.53 ID:87ru5DuQ0
「…………」

「これで…………」

「…………」
以下略



256:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/11(土) 19:30:02.62 ID:87ru5DuQ0
それはただ単なる、純然とした答えだった。
ここにいてもいいよという答え。
ここにいて欲しいという答え。
ここにいることを許してあげられるという答え。
そして。
以下略



257:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/11(土) 19:31:44.06 ID:87ru5DuQ0
お疲れ様でした。第9話に続かせていただきます。

詳しいご案内は>>173でさせていただいています。
お時間がありましたら、ご一読いただけますと嬉しいです(*´ω`*)

以下略



258:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/02/11(土) 23:55:06.42 ID:rDIPv8jDO
マルディ…頑張れ


259:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/12(日) 19:57:52.77 ID:z5UY+Nzb0
>>258
頑張って欲しいですね……(´・ω・)ガンバレ…
果たして彼が頑張った先に救いが待っているのか……

第9話を投稿させていただきますー


260:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/12(日) 20:00:53.02 ID:z5UY+Nzb0
9 見るな

 朝までずっと、カランはゼマルディの手を握っていた。彼の手は数時間前とは打って変わって氷のように冷たかった。最初は座ったまま眠り込んでしまったそれを、ベッドに座り込んだまま握っていたのだが。
やがてカランは床にペタリと腰を下ろし、毛布をベッドから引き摺り下ろすとゼマルディの体に寄り添うようにして、自分と彼の体にそっとかけた。
レモンの匂いに混じって、強烈な血の匂いがした。それに混じって、どこか土臭い……何だか水揚げされた魚のような匂いもしている。
以下略



261:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/12(日) 20:01:25.27 ID:z5UY+Nzb0
ゼマルディの隣で彼の血の臭いを嗅いでいただけで、カランには彼がどのような目に遭ってきたのか……それをはっきりと。まるで映画の中のワンシーンのように記憶として把握することが出来た。
絶句。言葉もない。
しばらく、ゼマルディに体を寄せ合いながら小さく震えていた。痛みも、苦しみも。
自分なんかには推し量ることが出来ない領域だった。
どうしてそんなことをするの?
以下略



262:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/12(日) 20:02:00.65 ID:z5UY+Nzb0
だが一つだけ分かったことは。
カランは、その時産まれて始めて。
怒りを感じたということだった。
無意識のうちに彼女は、猛獣の母親が子供を守る時のように、やけに細く伸びた犬歯を剥いて歯軋りをしていた。それは、いついかなる時にも動じることなく、鈍く生きてきたカランの顔からは想像も出来ないほどの確かな怒りの顔だった。
もう、ゼマルディの腕はない。
以下略



979Res/589.08 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice