過去ログ - 少女「ずっと、愛してる」
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256:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/11(土) 19:30:02.62 ID:87ru5DuQ0
それはただ単なる、純然とした答えだった。
ここにいてもいいよという答え。
ここにいて欲しいという答え。
ここにいることを許してあげられるという答え。
そして。
以下略



257:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/11(土) 19:31:44.06 ID:87ru5DuQ0
お疲れ様でした。第9話に続かせていただきます。

詳しいご案内は>>173でさせていただいています。
お時間がありましたら、ご一読いただけますと嬉しいです(*´ω`*)

以下略



258:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/02/11(土) 23:55:06.42 ID:rDIPv8jDO
マルディ…頑張れ


259:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/12(日) 19:57:52.77 ID:z5UY+Nzb0
>>258
頑張って欲しいですね……(´・ω・)ガンバレ…
果たして彼が頑張った先に救いが待っているのか……

第9話を投稿させていただきますー


260:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/12(日) 20:00:53.02 ID:z5UY+Nzb0
9 見るな

 朝までずっと、カランはゼマルディの手を握っていた。彼の手は数時間前とは打って変わって氷のように冷たかった。最初は座ったまま眠り込んでしまったそれを、ベッドに座り込んだまま握っていたのだが。
やがてカランは床にペタリと腰を下ろし、毛布をベッドから引き摺り下ろすとゼマルディの体に寄り添うようにして、自分と彼の体にそっとかけた。
レモンの匂いに混じって、強烈な血の匂いがした。それに混じって、どこか土臭い……何だか水揚げされた魚のような匂いもしている。
以下略



261:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/12(日) 20:01:25.27 ID:z5UY+Nzb0
ゼマルディの隣で彼の血の臭いを嗅いでいただけで、カランには彼がどのような目に遭ってきたのか……それをはっきりと。まるで映画の中のワンシーンのように記憶として把握することが出来た。
絶句。言葉もない。
しばらく、ゼマルディに体を寄せ合いながら小さく震えていた。痛みも、苦しみも。
自分なんかには推し量ることが出来ない領域だった。
どうしてそんなことをするの?
以下略



262:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/12(日) 20:02:00.65 ID:z5UY+Nzb0
だが一つだけ分かったことは。
カランは、その時産まれて始めて。
怒りを感じたということだった。
無意識のうちに彼女は、猛獣の母親が子供を守る時のように、やけに細く伸びた犬歯を剥いて歯軋りをしていた。それは、いついかなる時にも動じることなく、鈍く生きてきたカランの顔からは想像も出来ないほどの確かな怒りの顔だった。
もう、ゼマルディの腕はない。
以下略



263:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/12(日) 20:02:29.03 ID:z5UY+Nzb0
ゼマルディは。
この、男の人は。
死ぬかもしれなかったのに。
それでも尚、笑ってみせてくれた。
好きになってくれるか?
以下略



264:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/12(日) 20:03:25.69 ID:z5UY+Nzb0
痛かったでしょう。苦しかったでしょう。

――どうして逃げなかったの。
――どうして逃げてくれなかったの。

以下略



265:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/12(日) 20:03:51.85 ID:z5UY+Nzb0
酷すぎる。
これは人間のやることじゃない。
やっていいことじゃない。
ゼマルディの薬の作用なのかカサブタが張っているが、所々グジュグジュに膿んでいる。白い一族の女は、ある程度の医療知識を小さい頃から叩き込まれて育つ。それだけではなく、家内のことなら全て一人で出来るように躾けられる。
カランは出来の悪い娘だった。
以下略



266:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/12(日) 20:04:46.25 ID:z5UY+Nzb0
そのまま水泡の中に溜まって腐り始めていた体液の混合物を吸い取り、小さく咳き込みながら脇のもう一つのバケツに吐き出す。口を拭いてから息をつき、それを何度も何度も繰り返す。あまり強くやったらゼマルディが起きてしまうかもしれない。あくまで静かに、なるべく刺激を与えないように。
綺麗に崩れた皮も舐めとり、ある程度見れるようになった部分から、自分の一着しかない一張羅……小さい頃部屋の中で育てていた地下蚕の繭から作った糸で織った白いケープを手に取り、手で引いて小さな切れ目に分ける。
確かこの蚕の糸には強力な殺菌効果があったはずだ。ゼマルディは傷口に薬を塗っていたが、どうも痛みで当てが外れていたらしく、その殆どが火傷の外に向かって流れてしまっていた。これではあまり効果がない。かといってカランにはそんな薬を作る知識も、その技能もなかった。
とりあえず精一杯、布を水につけて手で挟み、息を吹きかけて温めてからゼマルディの顔の傷口に貼り付けていく。膿を吸い取ってから布を貼るのを何度も繰り返す。


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