488:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/18(土) 19:06:43.87 ID:rIc6JsyG0
燐は息をついてギアをチェンジさせると、里の方を向いた。
「私達が、前のドームを出てから二ヶ月くらい経ちますわ。本当にその地図、合ってるんですの?」
「高額で落札したものです。信憑性は高いと思われます」
489:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/18(土) 19:07:15.62 ID:rIc6JsyG0
それを聞いて、里と燐が顔を見合わせる。
そして燐は深くため息をついて、トレーラーを停めた。
「本当ですの?」
490:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/18(土) 19:07:59.19 ID:rIc6JsyG0
「困りましたわ……食料がないのは、死活問題ですの」
燐が頬に手を当てて、全く危機感がない声で言う。
ガゼルは、運転室の奥のハンモックに横になって沈黙している主、金髪の少女、虹に、前部に搭載されているカメラアイを向けた。
虹の首筋には、ガゼルから伸ばされたコードが接続されている。
491:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/18(土) 19:08:30.21 ID:rIc6JsyG0
すぅ、すぅ、という寝息が聞こえる。
深い眠りに入っているらしい。
最近、虹は寝ていることが多くなった。
前のような人格分裂の症状はあまり見られなくなったものの、ガゼルは、基本的に虹の指示がないと動けない。
彼にとっては歯がゆい状況が続いていた。
492:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/18(土) 19:09:05.82 ID:rIc6JsyG0
「ああ」
「やっぱり前のドームで、お医者に診せた方が良かったのでは……」
里がそう言うと、ガゼルは押し殺した声で言った。
493:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/18(土) 19:09:38.77 ID:rIc6JsyG0
*
「起きろよ、フィルレイン」
彼がそう言った。
494:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/18(土) 19:10:25.91 ID:rIc6JsyG0
上を見ると、ドームの内面に、大小さまざまな光が投影されているところだった。
「わぁ」
小さく感嘆符を口に出し、フィルレインは口をポカンと開けた。
495:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/18(土) 19:11:08.01 ID:rIc6JsyG0
「昔は、ドームの天井じゃなくて、本当の空に、星があった」
「本当の空?」
またフィルレインが首を傾げる。
496:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/18(土) 19:11:33.51 ID:rIc6JsyG0
「あれは? あの、凄く大きいの」
「月だ」
「月?」
497:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/18(土) 19:12:03.15 ID:rIc6JsyG0
「今は、あるのかな」
「ないよ」
彼は端的にそう言って、きょとんとした彼女の頭を撫でた。
498:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/18(土) 19:12:32.39 ID:rIc6JsyG0
「よく弟達が、人間はゴキブリのようだと言うが、俺は違うと思うんだ」
不意に、泉がそう言った。
「違うの?」
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