過去ログ - 勇者「淫魔の国の王になったわけだが」
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112: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:34:36.05 ID:h7sEMOtHo
そこまで言いかけ、咄嗟に言葉を切る。
今の発言は……不用意、だった。

今の言い方では、彼が上位の「ワルキューレ」に比肩、いやそれ以上の力を備えている事になる。
普通ならば、それは誇るべき事のはずだ。
以下略



113: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:35:15.18 ID:h7sEMOtHo
勇者「酷く傲慢だろう。……軽蔑してくれ」

その言葉に、彼女の沈黙は更に長引く。
軽蔑の感情から、ではない。
諦念、自嘲、そして物悲しさをたたえた彼の顔を、見てしまったからだ。
以下略



114: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:35:46.44 ID:h7sEMOtHo
堕女神「…『強くなる』のは、怖い事なのですか?」

勇者「……砦の中で魔物と出くわしても、恐怖も昂揚もなかった。……まるで、『作業』だったんだよ。戦いなんかじゃない」

堕女神「『作業』……」
以下略



115: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:37:14.45 ID:h7sEMOtHo
こんこん、と、再びノックの音が聞こえる。
ふわりとした諦観が充満する室内の空気が、それで若干和らいだ。

堕女神「何用ですか?」

以下略



116: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:37:42.62 ID:h7sEMOtHo
城内を大股で歩いていき、浴場につくと彼は即座に服を脱ぎ、突進するように浴室へと踏み入った。
何かを振り払うように、無遠慮にモザイク模様の濡れた床を踏み締めながら一直線に浴槽へ。

かけ湯をする事もなく、飛び込むように――否、文字通りに飛び込んだ。
どぷん、と水柱を立てて湯の中へ身体を放り込むと、すぐに顔を浴槽へと浸ける。
以下略



117: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:39:13.47 ID:h7sEMOtHo
勇者「……ああ、もう!恥ずかしいな!」

一応の結論を言葉にして、何とか身体に走る妙な感覚を鎮める。
未だに妙な疼きは残るが、どうにか落ち着いたようだ。
そこでやっと、湯に浸かっている事を実感できた。
以下略



118: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:39:46.12 ID:h7sEMOtHo
その後、妙に気まずい晩餐を終え、約束の「夜」がやって来る。
チラチラと熱っぽい視線を向ける堕女神を意識しながらでは、夕餉の味など分かりもしなかった。
勇者は実のところ、彼女を抱く気は無かった。
勝者の権利、と言えば聞こえは良いが、これは実質、レイプにしかならない。
勝ちはしたが、彼女に対する一種の崇敬は未だなくなったわけではない。
以下略



119: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:40:11.60 ID:h7sEMOtHo
勇者「そっか。……これが、『心が死ぬ』って事なのかな」

昔手こずらされた魔物を、何の感慨もなく虫のように切り伏せられた事。
呪文も回復も行う事無く、ただ「戦う」だけで作業のように処理できた事。
次いで、今回のワルキューレとの戦い。
以下略



120: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:41:36.95 ID:h7sEMOtHo
促され、入ってくる彼女はどこかスッキリとした面持ちだった。
素肌に真っ白いガウンをまとい、持ち前の金髪は美しく整えられていた。
俯き加減ではあるが、その表情に悲痛さはない。
むしろ認められたのは、どこかしらの恥じらい。
栄誉を受ける新兵にも似た、はにかんだ表情。
以下略



121: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:42:10.50 ID:h7sEMOtHo
ワルキューレ「……貴公に任せる。私は、今晩は貴公の物なのだろう……?」

勇者「……覚悟は、出来ているようだな」

ワルキューレ「それで……何を、すればいい?」
以下略



122: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:42:47.82 ID:h7sEMOtHo
ワルキューレ「………そうか」

勇者「『淫魔を総べる王』には相応しくないと思ったか?」

ワルキューレ「そんな事は無い。……昼間の闘いで、貴公の事は理解できたつもりだ」
以下略



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