過去ログ - 後輩「それじゃ、本当にこれでお別れです」
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6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/04/24(火) 23:24:07.38 ID:qSbSwrSBo

 不意に、隣に座る後輩が顔を上げた。俺は面食らってのけぞる。
 彼女は懇願するような表情で、「大丈夫ですよ」と言った。

「忘れないでください」
以下略



7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/04/24(火) 23:24:41.64 ID:qSbSwrSBo




 もし「校内でいちばん指が綺麗な男子は」と問われたなら、迷わず「トンボだ」と答える。
以下略



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/04/24(火) 23:25:11.63 ID:qSbSwrSBo

 俺とトンボは同じ部活に所属している。小学校の頃からずっと一緒のクラスだ。 
 そういう面だけ見れば、トンボと俺はかなり長い付き合いになる。だが、あくまでそれは表面上の話だ。

 毎日のように顔を合わせているにも関わらず、俺は彼と三回しか話をしたことがない。
以下略



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/04/24(火) 23:25:47.20 ID:qSbSwrSBo

 お前がこんな部に入るなんて意外だと言うと、今度は自然な微笑を浮かべ、

「そっちは別に意外じゃないね」

以下略



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/04/24(火) 23:26:14.50 ID:qSbSwrSBo

「意外だ」と口に出すと、彼は照れくさそうに笑って、「そうでもないだろ」と言った。

 たしかに、そうでもない。
 子供時代から品行方正だったトンボの本心を、俺は以前からかなり疑わしく思っていた。
以下略



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/04/24(火) 23:27:10.82 ID:qSbSwrSBo

「なにが?」

「自分が」

以下略



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/04/24(火) 23:27:47.96 ID:qSbSwrSBo




 トンボは「ときどきは休みたかった」と言った。「そっちと一緒だよ」とも言った。
以下略



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/04/24(火) 23:28:35.06 ID:qSbSwrSBo

 ただぼんやりと過ごす。これはなかなかの苦行だ。

 他の人間は、熱心に部活動に打ち込んだり、勉強に励んだり、あるいは友人関係や恋愛に夢中になったりしている。
 そんな有意義な時間の過ごし方を外側からぼんやりと見ていると、強い不安や焦燥に駆られる。
以下略



14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/04/24(火) 23:30:43.58 ID:qSbSwrSBo




 俺は校舎の屋上に寝転がっていた。太陽が燦々と輝き、空は青く、遥かまで澄んでいる。
以下略



15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/04/24(火) 23:31:32.91 ID:qSbSwrSBo

 ここにいる限り、俺はずっとひとりきりだ。孤独というものはある種の安心を伴う。
 
 闖入者がいるとすれば――おそらくは、鳥か虫か。あるいは、もっと別な何かだけだろう。

以下略



16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/04/24(火) 23:33:17.06 ID:qSbSwrSBo

 それでも俺は、スズメに対して可能なかぎり正直であることを心掛けている。
 なぜだったかは忘れてしまった。……近頃はずっとこうだ。自分がいつから屋上にいるのかさえ判然としない。分からないことが多すぎる。
 
 俺は立ち上がって、制服を叩いて埃を落とした。
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