過去ログ - える「折木さんも…ご経験がおありなんですか?」奉太郎「」
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2012/09/16(日) 05:44:33.59 ID:2r6A/1tO0
「千反田、俺に姉貴がいるのは知っているよな」
「はい、確か、供恵さん、でしたよね」
流石だ、記憶力がいい。
「姉貴は二年前にここを卒業した」
「ええ、去年折木さんから聞きました」
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2012/09/16(日) 05:46:02.27 ID:2r6A/1tO0
千反田は口を小さく開け、何度か瞬きを繰り返した。
「あの表情は、折木さんのお姉さんを思い出していたから……?」
「ああ、そうだと思う」
「でも、お二人は学年も部活動も違いますし、どういった経緯でお知り合いになったなのでしょう? どういう関係だったのでしょう?」
それについても、俺はある程度の想像がついていた。だが、それを語るのは非常に恥ずかしい。なにぶん、身内のことなのだ。姉貴め、卒業した後も遺恨を残しやがって。
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2012/09/16(日) 05:47:03.08 ID:2r6A/1tO0
「千反田、最初に話した、薬品金庫の話は覚えているな」
「は、はい、他人に見られたくないものを隠していたからだ、と」
「俺は、とんだ思い違いをしていたらしい。遠垣内が他人に見られたくなかったものが、俺が想像していたものとは別物だったんだ」
「それは、つまり……どういうことでしょう?」
「正確には、俺が薬品金庫に隠してあると確信していた物……紛らわしいから、『A』としよう。『A』も、確かに見られてはまずいものだった」
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2012/09/16(日) 05:48:38.70 ID:2r6A/1tO0
千反田はこくりと頷いた。先ほどまで下がっていた彼女の肩が、天井から引っ張り上げられたように上向いている。
「だが、『A』よりもっと見られたくない――他人に触れられたくないもの、『B』があった。それが、きっと薬品金庫に入っていたんだ」
「その、『B』というのは?」
「そこに入る前段階として、俺が疑問に思ったのは、何で薬品金庫なんかを、わざわざテーブルの下に隠していたか、ということなんだ」
そう、段ボールを積み上げた簡易テーブルの下に置かれていただろう、薬品金庫。もし煙草とライター……あとは灰皿に類似したものか、それらをとっさに隠すのなら、いちいち手間がかかる場所に俺だったら設置しない。それこそ、鞄の中に放り込めば済む。いくら臭いがするからといって、そこまで追及するとは考えにくい。
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2012/09/16(日) 05:50:23.72 ID:2r6A/1tO0
「あっ」
「薬品金庫そのものだったからだ。遠垣内が隠しておきたかったのは。きっと、金庫というぐらいだから、そんなに大きくないだろう。せいぜい、市販の電子レンジくらいの大きさだ。それをわざわざ、簡易テーブルを作る為の土台に使えるとは思えない」
「では、遠垣内さんが、見られたくなかった『B』とは……」
「ああ、『氷菓』のバックナンバーだ」
千反田は立ち上がって、本棚に並べられた氷菓のバックナンバーを、左から順に目で追っていく。左が最も古い号だ。やがて、一番右側の号を抜き出した。
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2012/09/16(日) 05:53:43.62 ID:2r6A/1tO0
◇ ◇ ◇
『私にとって、これが最後の文化祭、そして最後の文集となる。
古典部に在籍したこれまでを思い返すと、本当に楽しいことばかりだった。私は、古典部の関谷純先輩が氷菓に込められた想いに応えたい。
私も十年後、この毎日をきっと惜しまないだろう。
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2012/09/16(日) 05:55:36.29 ID:2r6A/1tO0
千反田と俺は、姉貴が書いた序文を読んだ。
千反田の叔父、関谷純に纏わる真相は、既に姉貴が語っていたに等しい。この序文だけで詳細を知ることは無理だが、高校生だった姉貴は、きっと全部理解していたのだろう。
「お姉さんは、きっと素晴らしい女性になっているんでしょうね……いつか、お会いしたいです」
それは、実に躊躇われる。姉貴に千反田を紹介したら、あれこれと邪推されて弄り倒されるはめになりそうだ。
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2012/09/16(日) 05:57:15.85 ID:2r6A/1tO0
それから、俺と千反田は特集記事にざっと目を通した。当然、壁新聞部について書かれているだけで、姉貴と遠垣内が親密な関係だった、という事実に結びつくような文章は見当たらない。だが、二人が知り合いになるには、この神高月報の特集記事だけで、十分な材料だろう。
「じゃあ、お姉さんと遠垣内さんは、この特集記事がきっかけでお知り合いになったんですね」
「ああ」
「でも、どうして折木さんは、その……遠垣内さんが、お姉さんをお慕いしていたと思うんですか?」
答えにくい質問だ。俺は頬をかいて、千反田から目を逸らす。
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2012/09/16(日) 05:58:25.43 ID:2r6A/1tO0
「折木さんも……、ご経験がおありなんですか?」
千反田に上目遣いで訊かれ、俺は思わず「へっ?」と頓狂な声をあげてしまった。
「い、いや、俺個人の話じゃなくて、男の心理ってのはそういうものだという、一般論だ」
「そ、そうなんですか」
気まずい。微妙な空気を振り払うように、俺は大げさにばん、と文集を閉じて、机に置いた。
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2012/09/16(日) 06:03:23.94 ID:2r6A/1tO0
「どうした、もう可処分エネルギーは残ってないぞ」
「あの……、遠垣内さんは、全てのバックナンバーを私たちに渡してくださいました」
「それがどうかしたのか?」
「この氷菓は、遠垣内さんにとって最も特別な氷菓だったと思うんです。ですから、何でしょう……私なら、これだけは自分の手元に置いておきたいと我侭を言ってしまうと思うんです」
なるほど、道理に適った問いだ。
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2012/09/16(日) 06:04:11.83 ID:2r6A/1tO0
「……あ」
俺は姉貴もらった小包のことを思い出し、ポケットを探った。有り得ないと信じたいが、これを渡す相手は、どう考えても、一人しかいない。
「ちょっと、用事を思い出した。すぐ帰ってくるから、部室で待っていてくれ」
俺は千反田の返事を待たずに、部室を飛び出した。
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