64: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2012/11/30(金) 21:01:20.76 ID:nlsr789Z0
女生徒と友達になれた喜びも冷めやらぬまま、少年は走って階段を駆け上り、
屋上に続く扉の前で目を瞑る。
少年「やった! やったよシン! 女さんと友達になれた!」
65: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2012/11/30(金) 21:01:58.77 ID:nlsr789Z0
少年「し、死ぬってなんだよ! どうしてそんな話になるんだよ!」
「仕方がなィだろう! 俺の餌は愛だ! 食べなければ存在は消えてしまう!
それよりも少年、愛を食べてィィとィってィる意味が解ってィるのか!?
俺が愛を食べたら君は――」
66: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2012/11/30(金) 21:02:58.75 ID:nlsr789Z0
「解ってくれ。俺は君が大切なんだ。これが愛とィうものなのだろう。
今まで愛を糧に生きてきたが、まさかこの俺がナニカを、
ましてや餌を愛するなどとは思ってもみなかった。
満足なんだよ、少年。これ以上なィ幸福だ。
こんな素晴らしィ感情を芽生えさせてくれた君の愛を食べることなんて、俺にはできなィ」
67: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2012/11/30(金) 21:04:01.59 ID:nlsr789Z0
少年が涙が流したと同時に"蜃気楼"が見上げる空も涙を流す。
ぽつりと"蜃気楼"に落ちた雫はほんのりと胸に染み入った。
「君の心は本当に豊かになった。君にも魅せてあげたィよ。
綺麗で、壮大で、鮮やかで、明るくて……。
68: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2012/11/30(金) 21:05:11.97 ID:nlsr789Z0
朗らかな狐の嫁入りが弾力のある小粒となり、降られれば桜や花に落ちて跳ねる。
「……どういう、ことだ?」
心理世界で"蜃気楼"は首を傾げた。
69: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2012/11/30(金) 21:05:54.26 ID:nlsr789Z0
"蜃気楼"を乗せた桜は早すぎず遅すぎずの速度で静かに上空へ向かう。
少年「全部シンがくれたんだ。喜怒哀楽だけじゃなくて、愛も友も情も全部。
シンと出会わなかったら、今の僕はいないんだよ……」
70: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2012/11/30(金) 21:07:55.50 ID:nlsr789Z0
ずっと、孤独だった。
ずっと、寂しかった。
発現してからとィうもの、自分が誰だか解らない不安と恐怖は付き纏ってィた。
その気になれば姿を表すこともできるが、言語の通じる人類に俺の姿は刺激が強すぎるらしィ。
71: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2012/11/30(金) 21:08:31.46 ID:nlsr789Z0
少年「きっと、きっとね――これも一つの愛の形だと思うんだよ。
だから僕だってそうさ。僕も……君を愛してる」
"蜃気楼"の視界いっぱいに広がる少年の心。
いつまでも消えなかった愛の心。
72: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2012/11/30(金) 21:09:03.11 ID:nlsr789Z0
「少年……ありがとう。俺は初めて愛を得た……喰らうことなく、愛を得た」
少年「だから食べてもいいんだよ。そんなシンにだから、食べてほしいんだよ」
「ィや……どうやらその必要はなさそうだな」
73: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2012/11/30(金) 21:09:59.02 ID:nlsr789Z0
「少年、悲しむな。状況は変わったのだ。これはきっと、運命だったのだろう」
少年「運命なんて! そんなもの!」
「少年! さっきまでとは違う。諦めじゃなィんだ。
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